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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

脱出する方法
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。




シャングリラ学園、今日も平和に事も無し。新年が明けて一連のドタバタ行事も終わって、ホッと一息、お次はバレンタインデーといった所です。入試なんかもありますけれども、合格グッズの販売員は未だにさせて貰えませんし…。
「やりてえよなあ、グッズ販売…」
サム君がぼやく、放課後の中庭。寒風吹きすさぶ中を「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へと移動する途中です。
「無理だよ、ブルーとリオさんが独占状態だし…。それに第一、ぼったくりだし」
あの値段をお客さんに言える勇気は無い、とジョミー君。
「相手は中学生なんだよ? なのにお値段、高すぎだってば!」
「それは言えるな、俺も自分が副住職になったら痛感したぞ」
下手な法事の御布施並みだ、とキース君も。
「クソ寒い中を月参りに行っても、貰える御布施は合格ストラップの値段にもならん」
「…そこまでなわけ?」
月参りよりも高かったわけ、とジョミー君が呆れて、シロエ君が。
「そうですか…。プロのお経よりも高かったんですか、あのストラップ…」
「でも、ある意味、プロの仕事よ、あれは? ぶるぅが手形を押してるんだし」
ちゃんと点数が取れるストラップだし、とスウェナちゃん。
「私は買っていないけど…。効き目はあるでしょ、ぶるぅなんだもの」
「そうですよね…」
今年も入試シーズンが近付いて来たらストラップ作りですね、とマツカ君が言う通り、そのシーズンになったら「そるじゃぁ・ぶるぅ」は忙しくなります。三日間ほどおやつは手抜き、いや作り置き。でもでも、そのシーズンはまだ先ですから…。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
授業、お疲れ様! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が迎えてくれた、いつもの溜まり場。暖房が効いたお部屋で熱い紅茶にコーヒー、温かいオレンジスフレなんかも。
「「「いっただっきまーす!」」」
これが最高! とスプーンで掬って熱々をパクリ、冬はやっぱりスフレですよね!



合格グッズの値段の高さに始まり、あっちへこっちへと飛びまくる話題。もはやカオスと化してますけど、この賑やかさが放課後の醍醐味だよね、と思っていたら。
「えっとね、昨日のマジックショー、見てた?」
夜にテレビでやっていたヤツ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「いや、俺は…。その時間には本堂で親父の手伝いを…」
仏具の手入れをさせられていた、とキース君がブツブツ、ジョミー君は。
「ぼくは別のを見てたんだけど…。マジックショーは特に興味もないし…」
「ぼくもです。機械弄りをしていましたね」
作業部屋で、とシロエ君が続いて、サム君もマツカ君も、スウェナちゃんも私も、マジックショーを見てはいませんでした。何かいいこと、あったんでしょうか?
「あのね、とっても凄かったの! 脱出マジック!」
鎖で縛られて手錠もかけられて鉄の箱なの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「すっごく分厚い鉄の箱の中に入れられてたのに、その人、ちゃんと出て来ちゃったの!」
なんでも「そるじゃぁ・ぶるぅ」が言うには、その鉄の箱はレールの上に乗せられ、ジリジリと移動してゆく仕掛け。時間内に脱出できなかったら箱は海へとドボンだそうで。
「海に落ちたら大変でしょ? 引き上げてくれる前に溺れちゃうかも…」
「そりゃそうだけどよ…。ああいうヤツって、ほぼ大丈夫だぜ?」
ちゃんと出られるのがお約束だし、とサム君が笑うと、シロエ君が。
「…どうでしょう? たまにニュースになっていませんか、脱出マジック失敗の事故」
「あるな、スタッフが救出しなければ死んでいたという恐ろしいのもな」
あの手のマジックにリスクはつきもの、とキース君が頷いています。
「自分がショーをやらかすからには、多分、覚悟の上なんだろうが…」
「えとえと、覚悟はどうでもいいの! 凄かったから!」
普通の人にもサイオンはちゃんとあるんだね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「「「はあ?」」」
サイオンって…。アレは私たちの仲間だけが持つ特殊能力で、存在も極秘の筈ですが…。一般人なんかが持っているわけないんですけど、何処からサイオン?



謎だ、と思った「そるじゃぁ・ぶるぅ」のサイオン発言。シャングリラ学園でさえも「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議パワーの一言で誤魔化してあるのがサイオン、普通の人が持っているならエライことです。けれど、言い出しっぺの「そるじゃぁ・ぶるぅ」は。
「だって、サイオンだよ、脱出マジック! 鎖をほどいて、鉄の箱から大脱出!」
どっちもサイオンが無ければ無理だし、とマジックショーを勘違いしているようです。脱出マジックは種も仕掛けもあるもの、その道のプロならサイオンなんかは…。
「俺は要らないと思うんだが…。あの手のマジックにサイオンなんぞは」
何か仕掛けがある筈だ、とキース君が返すと、会長さんが。
「ぼくもそう言っているんだけどねえ…。それこそずっと昔から言ってるんだけど…」
もう何十年言っていることか、と会長さん。
「テレビで脱出マジックを見る度に、ぶるぅが「凄い!」と喜ぶからさ…」
「「「あー…」」」
素直なお子様、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。マジックの種には気付きもしないで、手放しで褒めてしまうのでしょう。
「でもでも、ホントに凄いんだもん! 普通の人でもサイオンだもん!」
ホントに凄いの! と言い張る「そるじゃぁ・ぶるぅ」の姿に、会長さんが苦笑い。
「この段階まで到達するのに、何年かかったことやらねえ…」
昔はショーを見る度に「仲間発見!」と大騒ぎだったらしいです。急いで連絡を取らなければ、と思念波を飛ばしかかったこともあったとか。
「…なるほどな。そうなる気持ちは分からんでもない」
仕掛けがあると思わなければ瞬間移動で片付きそうだ、とキース君が頷くと。
「違うもん! 仕掛けじゃないもん、本物だもん!」
ああいう時だけ瞬間移動で大脱出! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「えーっと、火事場の馬鹿力? 普通の人でも出来るんだってば、頑張れば!」
「…それが出来たら、ぼく、もうちょっと楽なんだけど…」
これでもタイプ・ブルーだから、とジョミー君が割って入りました。
「瞬間移動が出来る素質はある筈なのにさ、隣の部屋にも飛べないし!」
「それなら、ジョミーも脱出マジック、頑張ってみる?」
火事場の馬鹿力でサイオンの力が目覚めるかも! と無邪気な「そるじゃぁ・ぶるぅ」ですけど。目覚めなかったら事故になりますよ、そっちの方が有り得そうです~!



会長さんや「そるじゃぁ・ぶるぅ」と全く同じなサイオンを持っているのがタイプ・ブルーで、現時点ではジョミー君も含めて三人だけ。
ところがジョミー君のサイオンときたら、私たちと変わらずヒヨコレベルで思念波を使うのが精一杯といった状態です。坊主頭限定でサイオニック・ドリームを一ヶ月近く使い続けたキース君の方がまだマシなわけで。
「ハッキリ言うがな、ジョミーに脱出マジックなんぞをやらせても無駄だ」
俺たちが救助に向かわされる方だ、とキース君がバッサリと。
「俺でさえもサイオニック・ドリームを使えるようになる前が実に大変で…」
「そうでしたっけね、先輩、派手にサイオン・バースト…」
ぶるぅの部屋が吹っ飛びましたっけ、とシロエ君。
「そういや、あれが切っ掛けだったんだよなあ、ぶるぅの部屋の公開イベント」
今じゃ学園祭の定番だけどよ、とサム君も。
「キースでさえもあの騒ぎだしよ、ジョミーが火事場の馬鹿力ってヤツをやったらよ…」
「成功したらいいんですけど、バーストした時は…」
凄くマズイような、とマツカ君が。
「キースの騒ぎの時に聞いていたような気がします。ジョミーがサイオン・バーストしたら…」
「シャングリラ学園が丸ごと吹っ飛ぶのよねえ?」
マズすぎるわよ、とスウェナちゃん。
「やめときましょうよ、ジョミーに脱出マジックの才能があるとは思えないもの」
「まったくだ。シャングリラ学園が吹っ飛んだとなったら、俺たちもただでは済まないぞ」
下手をしなくても退学だ、とキース君が顔を顰めています。
「この馬鹿のせいで退学は御免蒙りたい」
「馬鹿って、何さ!」
「俺はそのままを言ったまでだが?」
サイオンを上手く扱えないお前が悪い、とピッシャリと。
「瞬間移動も出来ないからこそ、そう言われるんだ。…一般人でも出来るのにな?」
脱出マジック、という指摘に「マジックだから!」とジョミー君。
「ぼくと一緒にしないで欲しいよ、あっちは仕掛けがあるんだからさ!」
出来て当然、と喚いてますけど、瞬間移動は夢ではあります。ヒョイと飛べたら便利でしょうけど、アレって本当にタイプ・ブルーしか出来ないのかな…?



サイオンを持っているなら使いたいのが瞬間移動。でも、会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」がやっているだけで、他の人がやった話は知りません。ソルジャーや「ぶるぅ」は別の世界の人だけに話が別ですし…。
「瞬間移動はタイプ・ブルーでないと無理なんですか?」
シロエ君の質問に、会長さんが。
「そういうことになっているねえ、ぼくとぶるぅしか使えないし」
「違うよ、マジックショーの人がやってるんだから、多分、誰でも!」
頑張ったら使えちゃうんじゃないかな、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「タイプ・ブルーとかグリーンとかは普通の人には無いもん、だからサイオンがあれば誰でも!」
普通の人より上手く出来ちゃう筈だもん! とマジックショーを信じている「そるじゃぁ・ぶるぅ」は根っからお子様、私たちにだって瞬間移動が出来るものだと思っています。
「そうは言われても、無理なものは無理だと思うんだが…」
実際、出来んし、と唸るキース君、ちょっと夢見たことがあるらしいです。
「出来たらいいな、と頑張ってみたが、どうすればいいのかもサッパリ分からん」
「だよねえ? ぼくにも分からないんだよ」
やってみたいとは思うんだけど、とジョミー君が相槌を打った所へ。
「こんにちはーっ!」
ぼくにもスフレ! と飛び込んで来たお客様。例によってソルジャー登場です。
「かみお~ん♪ いらっしゃい! ちょっと待っててねーっ!」
スフレは焼くのに時間がかかるし、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が紅茶をサッと。スフレもオーブンに入れて来たようです。おかわり用にと用意してあったみたいですけど、流石の素早さ。
一方、現れたソルジャーは空いていたソファにストンと座って。
「面白そうな話題だねえ…。瞬間移動だって?」
「そうなの! 昨日のマジックショーが凄かったの!」
こんなのだよ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は思念で伝達した様子。ソルジャーは「ふうん…」と納得、「そう見えないこともないよね、これは」と。
「それで普通の人でも瞬間移動が出来ると言ってるんだね、ぶるぅはね?」
「うんっ! ホントに瞬間移動だもん!」
でなきゃ鉄の箱ごと海にドボンで大変だもん! という主張。マジックショーの人、本当に瞬間移動が出来る人間に技を認められるとは、天晴れな…。



脱出マジックは瞬間移動だと信じ込んでいる「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ソルジャーは数々の脱出マジックの話を聞かされ、「これだと無理もないよね、うん」と。
「マジックの仕掛けは知らないけどさ…。瞬間移動だと思い込むのが普通かな?」
「仕掛けじゃないもん、本物だもん!」
そう叫んでから「あっ、スフレ!」と飛び出して行った「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、ホカホカの出来立てを持って戻って来ました。
「はい、オレンジのスフレ! しぼまない内に熱いのを食べてね!」
「ありがとう! ぶるぅのスフレは絶品だしね!」
美味しい! とスプーンで頬張ったソルジャー、スフレをパクパク食べながら。
「瞬間移動の話だけどねえ、タイプ・ブルー以外は無理なのか、ってヤツ」
「ああ、君だったら詳しいのかな?」
ぼくより若いけど、サイオンがあるだけで追われる世界に住んでいるし、と会長さん。
「ぼくたち以上に追い詰められるケースも多いだろうから、レアケースとかもありそうだよね」
「ぶるぅの言ってる火事場の馬鹿力だね?」
タイプ・ブルー以外の人間に瞬間移動は出来るかどうか、とソルジャーが言って、会長さんが「そうなんだけど…。どう?」と。
「やった人間はいるのかな? そのぅ…。言いにくいんだけど…」
「いいって、いいって! アルタミラのことだろ、実験動物だった時代の話!」
あの頃だったら究極の極限状態なんだけど…、とソルジャーは「うーん…」と首を捻って。
「実を言うとさ、このぼくでさえも、アルタミラではやっていないんだよ。瞬間移動は」
「「「ええっ!?」」」
まさか、と驚いた私たちですが、「本当だから!」と返したソルジャー。
「出来ていたなら、それこそ脱出マジックだよ! 他の檻にいる仲間も逃がして大脱出だよ、大人しく実験されていないで!」
船を奪ってトンズラしている、と言われてみればその通り。それじゃ、瞬間移動はいつから出来るようになったと言うんですか?
「えーっと…。ある程度、船が落ち着いてからかな? 心に余裕が出来てからだね」
それまではサイオンの上達なんかはとてもとても…、とソルジャーは両手を広げてお手上げのポーズをしています。火事場の馬鹿力はアルタミラ脱出の時に閉じ込められてた場所をサイオンでブチ壊した程度、瞬間移動は後付けでしたか…。



ソルジャーでさえも最初は出来なかったらしい瞬間移動。そうなってくると、やっぱりタイプ・ブルー以外の人間には無理な技ですか?
「どうなんだろうね? 現時点では、君たちの世界と同じでタイプ・ブルーに限定だけど…」
しかも遅咲きの力だったけど、とソルジャー、苦笑。
「ただねえ、ぶるぅは生まれて直ぐから使えたからねえ、環境の方も大切かもね?」
「「「環境?」」」
「そう、環境! 火事場の馬鹿力を使うにしたって、心の余裕が要るのかもねえ…」
死ぬか生きるかの状況では発動しなかったから、と挙げられたソルジャーのアルタミラ時代。真空だの高温だの、絶対零度だののガラスケースや、有毒ガスやら。「此処から出られさえすれば」という極限状態に置かれていたって、瞬間移動は出来なかったとか。
「今だったら余裕でヒョイと出られるのに、あの頃のぼくは馬鹿だったよねえ…」
素直に実験されていたし、とブツクサと。
「だからね、きっと「此処は安心して暮らせる場所だ」という前提が要るんだよ! 心の余裕!」
そういう安全な場所で非常事態に追い込まれたならば、あるいはタイプ・ブルー以外の人間でも瞬間移動が出来るかも、というのがソルジャーの仮説で。
「ふうん…? ぶるぅはともかく、誰か出来そうだった例でもあると?」
君のシャングリラで、と会長さんが尋ねると。
「一回だけね!」
たったの一回だけなんだけど、とソルジャーは指を一本立てました。
「しかも、それを知ってるのはぼく一人だけ!」
「「「えっ?」」」
なんで、と驚いた私たち。タイプ・ブルーしか出来ない筈の瞬間移動に成功しかけた人がいるのに、どうしてソルジャーしか知らないんですか?
「それはねえ…。深い事情があると言うべきか…」
「機密事項なわけ?」
君のハーレイも知らないとなると、と会長さんは言ったのですけど。
「まさか! 機密事項だったら、こんな所で喋っていないよ」
「でも、君だけしか知らないんだろう?」
「なんて言うかな、プライバシー…? 人間、誰でも知られたくないことはあるよね」
こう色々と…、と頷くソルジャー。瞬間移動が出来そうだったとなれば誇って良さそうですけど、それを知られたくないって、どういうこと…?



ソルジャーのシャングリラで一度だけあったらしい、瞬間移動未遂。やった人間の存在はソルジャーだけしか知らないとなると…。
「もしかして、戦闘要員には不向きだとか?」
そんなタイプだから内緒だろうか、と会長さん。
「瞬間移動が出来るとなったら、君のシャングリラじゃ戦闘班に回されそうだし…。そっち方面の訓練にも実戦とかにも向きそうにない人材なのかい?」
だから本人も黙っているとか、という質問ですけど、ソルジャーは。
「違うね! それに本人には自覚無しだしね、瞬間移動をやりかけたという!」
「…だったら、どうして秘密なのさ?」
その才能を伸ばしてやれば良さそうなのに、と会長さんは首を傾げたのですけれど。
「ズバリ、恥ずかしさの問題かな!」
「「「恥ずかしさ?」」」
ソルジャーの口から出るとは思えない言葉。およそ恥じらいとは縁の無いソルジャー、そのソルジャーが赤の他人の恥ずかしさなどを考えるとも思えませんが…?
「うん、セックスなら楽しく喋りまくるんだけどさ! 恥じらわないで!」
「そういう話は今はいいから!」
瞬間移動の件を喋ってくれたまえ、と会長さん。
「どう恥ずかしいと言うんだい? 君の台詞とも思えないけど…?」
「だってねえ…。知られたいかい、トイレ事情を?」
「「「トイレ?」」」
「そう、トイレ!」
現場はトイレだったのだ、とソルジャーは斜め上な現場を口にしました。トイレって…。どう間違えたらトイレで瞬間移動になると?
「それは簡単な話だけどね? 危機的状況に陥ったわけで…」
「トイレでかい?」
いったい何が起こったのだ、と会長さんも見当がつかないようですけれど。
「いわゆる脱出マジックと同じ状況! なんとかして出ないとマズイという!」
「…どんなトイレなわけ?」
「普通だけど?」
ぼくのシャングリラの普通のトイレ、という返事。どう転がったら、普通のトイレが脱出マジックに繋がりますか…?



タイプ・ブルーしか出来ないと噂の瞬間移動をしかかった人。現場はソルジャーの世界のシャングリラのトイレということですけど、トイレで脱出マジックだなんて、どんな状況?
「至って普通のトイレなんだけどねえ、それも共同トイレじゃなくって個人用の」
ぼくのシャングリラは一人一部屋が基本だから、とソルジャーは威張り返りました。バストイレつきの個室が貰えるのだそうで、多分、私たちがシャングリラ号に乗せて貰う時に使うゲストルームのようなものでしょう。あのトイレ、何か問題ありましたっけ?
「強いて言うなら、思念波シールドが裏目に出たって所かなあ…」
「「「思念波シールド?」」」
「ぼくの世界はホントにあの船が世界の全てだからねえ、プライバシー保護のために個室は覗き見できない仕様! トイレともなれば、もっと強力に!」
入っていることすら分からないレベルで思念波を漏らさないトイレ、とソルジャーの解説。
「そんなトイレに入って鍵をかけたって所までは良かったんだけど…」
「ひょっとして、鍵が壊れたとか?」
会長さんの問いに、ソルジャーは「ピンポーン!」と。
「その通りだよ、壊れちゃったんだよ! 不幸なことに!」
なんでも用足しが済んで出ようとしたら、トイレの鍵が開かなかったとか。共同トイレだったら他の人が来た時に「閉じ込められた」と言えば済みますけど、個人の部屋では…。
「そうなんだよ、誰も来ないってね! 叫ぶだけ無駄!」
防音の方も完璧だから、とソルジャー自慢のシャングリラの設備。それが裏目に出てしまった悲劇、トイレに閉じ込められた男性、誰にも助けて貰えなくて。
「また、運の悪いことにさ…。当番明けで部屋に帰ったトコだったしねえ、不在に気付いて訪ねて来る人も全くいないという状況!」
「「「うわー…」」」
それは嫌だ、と誰もが震え上がりました。トイレに閉じ込め、助けが来るまで何時間かかるか謎な状況。トイレの中だけに、食料も水も無いですし…。
「ね、危機的な状況だろう? もう脱出しか無いという!」
鍵のかかったトイレの個室から脱出マジック! と言われなくても、誰だって出たくなるでしょう。鍵が開かないならまさしく密室、脱出マジックの出番ですってば~!



ソルジャーのシャングリラで起こった、個室のトイレに閉じ込めな事故。水も食料も無し、しかも当番明けで当分は誰も来てくれないという恐ろしさ。誰でも脱出したくなります、もしもマジックが使えるのなら。でも、脱出マジックは種も仕掛けもあるわけで…。
「脱出マジックとは其処が違うね、トイレの個室は! 仕掛けなんかは無いんだから!」
出るなら自力、とソルジャーはニッと。
「ぼくが瞬間移動をするのは、ぼくのシャングリラでは常識だしね? 出るならソレだと!」
「えっ、でも…。タイプ・ブルーしか出来ないんじゃあ…?」
君の世界でもそうだったんじゃないのかい、と会長さんが確かめてますが。
「まあね。だけど、火事場の馬鹿力なんだよ、ぶるぅが言ってる脱出マジックの人みたいに!」
とにかく出たい一心で、とソルジャー、クスクス笑いながら。
「俺は出てやると、此処から出るんだと精神統一! そして!」
「「「…出られたとか?」」」
出てしまったのか、と私たちの声が重なりましたけれど。
「そこで出てたら、タイプ・ブルー以外でも瞬間移動は可能なんだと言い切ってるよ、ぼくは!」
「…駄目だったわけ?」
未遂だったのか、と会長さんが訊くと。
「ぼくが救出しちゃったんだよ、非常事態だと気付いたからね!」
精神統一中の彼の思念をキャッチした、と自分の能力の高さを誇るソルジャー。
「シャングリラ中の誰も気付いていなかったけどね、ぼくだけは!」
「…それで?」
「可哀相だから駆け付けてあげたよ、瞬間移動で!」
でもって個室の鍵をガチャリと開けた、という発言。外側からなら開けられたそうで、ソルジャーが開けたその瞬間に、中にいた男性はまさに瞬間移動の直前だったという話で。
「あと三秒ほど遅れていたら、もう間違いなく出ていたね! 瞬間移動で!」
この道のプロだからこそ分かる、とソルジャーはハッキリ証言しました。
「だから言えるんだよ、タイプ・ブルー以外でも瞬間移動が出来ないことは無いってね!」
ただし極限状態でないと無理そうだけど、と深い溜息。
「あれ以外に例は見たこともないし、報告だって上がってこないし…。でもねえ…」
唯一の例がアレでは可哀相で報告できやしない、と言うソルジャー。おまけに瞬間移動の寸前だった男性に「出来そうだった」との自覚はゼロらしく、ゆえに未だに「出来ない」と言われる瞬間移動。現場がトイレじゃ仕方ないですかね、誇れる場所ではないですしねえ…?



ソルジャーが目撃していたらしい瞬間移動未遂なるもの。「トイレから瞬間移動で脱出未遂は恥ずかしいだろう」と考えたソルジャーのお蔭で報告はされず、今も誰一人知らない話。やりかけていた人もそうだと気付いていなかったのでは、これはもう…。
「…タイプ・ブルー以外には出来ないと思われていても仕方ないだろう?」
瞬間移動、というソルジャーの言葉に頷くしかない私たち。でもでも、出来そうだった人は確かにいたわけですね?
「その点はぼくが生き証人だよ、ちゃんと現場を見たんだから!」
瞬間移動のプロのぼくが、とソルジャーが言い切り、会長さんが。
「ちなみに、タイプは何だったんだい? そのトイレの人のサイオン・タイプ」
参考までに聞きたいんだけど、という質問は多分、会長さんもソルジャーだからでしょう。サイオンを持った仲間たちを纏める最高責任者みたいなものだけに、他の世界で起こったことでも頭に入れておきたい、と…。
「ああ、彼かい? ごくごく平凡、タイプ・グリーンだよ」
ハーレイと同じ、とソルジャーの答え。
「どうせだったらハーレイにやって欲しかったねえ、栄えある瞬間移動未遂、第一号は!」
「…トイレでかい?」
「別にトイレでもかまわないじゃないか、どうせ助けるのはぼくなんだから!」
それに知らない仲でもないし…、とソルジャー、ニコニコ。
「ハーレイがトイレに閉じ込められていたら、もちろん助けて、御礼に一発!」
「…それもトイレで?」
「たまにはトイレも刺激的だよ、まだトイレではヤッてないけど!」
「やらなくていいから!」
そしてその先は言わなくていい、と柳眉を吊り上げた会長さんですが、「待てよ?」と顎に手を当てて…。
「…栄えある第一号がハーレイねえ…?」
「いいと思うんだけどね、残念なことに他人がやってしまったけどね!」
第一号の座を持って行かれた、とソルジャーは悔しそうですけれど。
「うん、分かる。でも、それは君の世界に限定だから…」
「えっ?」
「こっちの世界じゃ、第一号はまだ出ていないんだよ!」
誰も瞬間移動未遂はやっていない、と会長さん。その通りですけど、それが何か…?



私たちの世界では誰もやっていない、タイプ・ブルー以外の瞬間移動や瞬間移動未遂。ソルジャーの世界ではトイレに閉じ込められたタイプ・グリーンの男性が第一号だそうですが…。
「第一号の座、こっちじゃ空席のままだってね! 此処で一発、脱出マジック!」
「「「へ?」」」
なんのこっちゃ、と会長さんの顔をポカンと見詰めたら。
「決まってるだろう、タイプ・グリーンがやったというなら、同じタイプ・グリーンの人間がこっちにも一人!」
それもブルーが第一号の座に着け損なったハーレイが! と拳を握る会長さん。
「極限状態に置かれた場合は出来るというなら、イチかバチか!」
「かみお~ん♪ ハーレイがやってくれるの、脱出マジック?」
見てみたぁ~い! と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「えとえと、鎖と手錠で鉄の箱がいいな、海にボチャンは無理かもだけど…!」
「そこまでやったら大袈裟だしねえ、普通に閉じ込めだけでいいかな」
トイレの代わりにトイレ無しで…、と妙な発言。
「「「トイレ無し?」」」
どういう意味だ、と目を見開いた私たちですが、会長さんはニヤニヤとして。
「トイレ無しだよ、文字通りだよ! トイレに行くなら脱出しろと!」
仮設トイレもつけてやらない極限状態! と突き上げる拳。
「鉄の箱に入って貰う前にね、「頑張ってね」と栄養ドリンク! ただし、下剤入り!」
「「「うわー…」」」
嫌すぎる、と誰もが思った下剤入り。それでトイレの無い空間に閉じ込められたら…。
「ほらね、出るしかないってね! 瞬間移動で!」
上手くいったら記念すべき第一号の座に輝けるであろう、と会長さん。
「トイレのためにと脱出したって、脱出には違いないわけで…。トイレから脱出するってわけでもないから、きちんと記録も残せるわけで! 第一号と!」
「…それは分かるけど、第一号になれるっていうだけで入るかい?」
こっちのハーレイが脱出マジック用の箱なんかの中に入るだろうか、というソルジャーの疑問に、会長さんは自信たっぷりに。
「入るね、餌はこのぼくだからね!」
もう喜んで入る筈だ、と言ってますけど、会長さんが餌って、何をすると…?



ソルジャーの世界では第一号の座を名も無い男性が持って行ってしまった、タイプ・ブルー以外の瞬間移動未遂。私たちの世界では例が無いだけに、第一号を教頭先生にやらせようというのが会長さんの案ですけれど。
鉄の箱に入れて脱出マジックもどき、トイレ無しで事前に下剤つき。下剤の件は沈黙を守っておけばいいとしても、教頭先生がチャレンジなさるとは思えません。なのに会長さん曰く、喜んで入るらしい教頭先生、餌は会長さんなのだとかで。
「ぼくが餌だよ、これで釣れなきゃハーレイじゃないね!」
「何をする気さ、君が餌って?」
「それはもちろん! 脱出に見事成功したなら、ぼくと熱くて甘い一夜を!」
「「「ええっ!?」」」
いいんですか、そんな御褒美を出したりして?
「お、おい…! あんた正気か、成功なさるかもしれないんだぞ…!」
キース君が突っ込み、シロエ君も。
「そうですよ、前例はあったと言うんですよ!? 記録に残っていないというだけで!」
「しかもトイレだぜ、その時よりも遥かにトイレが切実な極限状態じゃねえかよ!」
トイレ無しで下剤つきなんだから、とサム君は真っ青。なにしろ会長さんに惚れて今でも公認カップル、教頭先生に盗られてたまるかといった所かと思いますが…。
「別にいいんだよ、成功しても! 熱くて甘い一夜なだけだし!」
会長さんはケロリとした顔、ソルジャーが「うーん…」と。
「信じられない話だけどさ…。君が自分からハーレイと…」
甘い一夜を過ごすだなんて、とソルジャーも首を振ったのですけど。
「えっ、単なるお汁粉パーティーだけど? 他におぜんざいとか、チョコレートフォンデュも!」
「「「チョコレートフォンデュ?」」」
「そうだよ、今が美味しいシーズン! 寒い冬にはお汁粉とかで!」
熱くて甘い夜を過ごそう! と会長さんは勝ち誇った笑み。つまりは本当に甘いんですね、お砂糖とかの甘みたっぷり、それを徹夜で食べまくると…。
「うん、ハーレイにとっては地獄の一夜! 甘い食べ物は苦手だからねえ!」
でも二人なら喜んで食べてくれるであろう、と恐ろしい罠。教頭先生、何か勘違いをして釣られそうですけど、脱出マジックに成功したなら、苦手な甘い食べ物で熱い徹夜パーティーと…。



かくして決まった、教頭先生の脱出マジック。鉄製の箱はシャングリラ号でも使う丈夫なコンテナを転用、外からガシャンと鍵をかければ絶対に開かない仕組みらしいです。それを会長さんのマンションの屋上に設置、教頭先生に入って頂くとかで…。
「そうと決まれば、早速、ハーレイに話をつけないとね!」
もう今夜にでも、と会長さんの鶴の一声、私たちは家へと帰る代わりに会長さんのマンションへ揃って瞬間移動。豪華寄せ鍋の夕食の後で、会長さんが時計を眺めて。
「そろそろいいかな、ハーレイも食後の休憩タイムに入ったからね」
「らしいね、コーヒーを淹れているしね」
ソルジャーも「よし」と。後はお決まりの青いサイオン、教頭先生の家のリビングへと瞬間移動で飛び込んで行って…。
「な、なんだ!?」
仰天しておられる教頭先生に、会長さんが。
「ちょっとね、君に提案があって…。脱出マジックに挑まないかい、鉄の箱から瞬間移動で外へ出られたら大成功な!」
「しゅ、瞬間移動と言われても…。それはタイプ・ブルーにしか出来ないだろう…!」
「現時点ではね。…それがね、ブルーの世界で成功しかけた人がいるらしくって…」
君と同じタイプ・グリーンの男性、と会長さん。
「非公式記録で、ブルーしか知らないらしいんだけど…。個室のトイレに閉じ込められちゃって、其処から出たい一心で!」
「…トイレなのか?」
「らしいよ、閉じ込められてるってコトに気付いて貰えるまでに何時間かかるか謎って状況! 自分で出なけりゃ、そのままトイレの中だからねえ…」
ある意味、一種の極限状態、と会長さんがソルジャーに「ねえ?」と。
「そういうこと! たまたま、ぼくが発見したから救出したけど…。あと三秒ほど遅れていたなら、彼は立派に瞬間移動をしていたね!」
場所がトイレだったから彼の名誉のためにも伏せておいた、とソルジャーは笑顔。
「だからね、君も頑張れば出られると思うんだよ! しかも出られたら豪華な御褒美!」
「…御褒美…ですか?」
何か貰えるというのでしょうか、と怪訝そうな教頭先生に向かって、会長さんが。
「ぼくとの甘い一夜だけど? 冬の夜は何かと冷えるしねえ…」
ぼくと一晩、という甘い一言、教頭先生が脱出マジックを承諾なさったのも無理はないかと…。



脱出マジックは週末の土曜日、私たちは朝から会長さんのマンションに出掛けてゆきました。屋上でやるイベントなだけに防寒対策はバッチリです。
「かみお~ん♪ もう鉄の箱、準備出来てるの!」
それにハーレイもブルーも来てるよ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお出迎え。教頭先生は少しでも身体を軽くしたいのか、スポーツ用の防寒ウェアを着用、ソルジャーは普通にセーターの上から厚手のコートという私服。
会長さんもソルジャーと似たようなもので、「じゃあ、行こうか」とゾロゾロ、エレベーターで屋上へ行けば…。
「「「うわあ…」」」
ドカンと置かれた鉄製のコンテナ、会長さんとソルジャーが言うには「宇宙空間に放り出しても潰れない」という頑丈さ。けれども換気用の設備は一応あるのだそうで…。
「だから、何時間入っていたって窒息の心配は無いってね! 要は気合で!」
頑張って脱出してみたまえ、と会長さん。教頭先生はコンテナをコンコンと叩いてみて。
「…アレか、シャングリラ号で一番分厚いヤツなのか、これは?」
「そうだけど? でもねえ、同じ瞬間移動で脱出するなら、このくらいの壁を景気よく!」
それでこそ記録にもなるというもので…、と会長さんは笑みを浮かべて「はい」と栄養ドリンクの瓶を差し出しました。
「こういう時にはファイト一発! これを飲んでタフなパワーをつけて!」
「すまんな、朝飯はしっかり食べて来たのだが…。お前の心遣いが実に嬉しいな、うん」
これは頑張って脱出せねば、と教頭先生はドリンクを開けて一気飲み。…あれって下剤入りなんですよね、蓋は閉まってたみたいですけど…。
『ぼくにかかれば、未開封でも下剤くらいは入れられるんだよ! 簡単に!』
会長さんから届いた思念は、教頭先生にだけは届かなかったみたいです。空になったドリンク剤の瓶を「御馳走様」と会長さんに返して、颯爽とコンテナに入ってゆかれて。
「よし、準備はいいぞ。閉めてくれ」
「かみお~ん♪ ハーレイ、頑張ってね~!」
脱出マジック、とっても楽しみ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」がワクワク飛び跳ねている中、柔道部三人組がコンテナの扉をガシャンと閉めて、会長さんが鍵をガチャリと。
これでコンテナの中は密室状態、蟻も出られないらしいですけど、教頭先生のサイオンは果たして発動するんでしょうか…?



タイプ・ブルーにしか出来ないと噂の瞬間移動。ソルジャーの世界では非公式ながらタイプ・グリーンの男性が成功しかかったという話、私たちは鉄製のコンテナを見守りました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は「成功したら報告しなくちゃいけないしね!」と動画を撮影中です。
「ハーレイ、ちゃんと出られるかなあ? 脱出マジックの人みたいに!」
「さあねえ…。ああいう人たちはプロだからねえ、ハーレイの場合はどうなるか…」
それにそろそろ下剤が効いてくる頃だけど、と会長さん。
「即効性ではピカイチなんだよ、もうグキュルルとお腹が鳴っていそうだけどね?」
「うん、鳴ってる。…軽くパニック状態ってトコ」
ソルジャーはコンテナの中をサイオンで覗き見しているようです。
「出ようという気持ちが変化しつつはあるようだけど…。出ないとヤバイという方向へは向かっているけど、サイオンの集中って意味ではどうだろう?」
「…失敗しそうなコースかい?」
ぼくはどっちでもいいんだけどねえ、と会長さんが笑っています。
「成功したなら公式記録で、ハーレイのお株が上がるわけだけど…。ぼくからの御褒美はアレだしねえ? それに失敗しちゃった時には馬鹿にすればいいっていうだけだしね!」
同じタイプ・グリーンとも思えないと呆れてやるだけだ、と言い終わらない内に…。
『と、トイレ!! トイレに行かねばーーーっ!!!』
もう駄目だあ! と響き渡った教頭先生の思念波、歴史的瞬間を見届けようと乗り出した私たちですけれど。
ドオン!! と爆発音が響いて、マッハの速さで駆け抜けて行った大きな人影。「トイレ!」と声の限りに絶叫しながら。
「…い、今の…」
教頭先生? とジョミー君が目をパチクリとさせて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「…えとえと…。コンテナ、穴が開いちゃったあ~!」
こんなの、脱出マジックじゃない~! と指差す先には穴が開いたコンテナ、極限状態のサイオンで破壊されたようです。



「…こう来たか…。脱出マジックは失敗だね、うん」
せっかく下剤で緊迫感を盛り上げたのに、と会長さんがフウと溜息、ソルジャーが。
「再挑戦はあるのかい?」
「ハーレイ次第ってトコかな、多分、やるだけ無駄だろうけど…」
こういうオチにしかならないと思う、と会長さんはスッパリと。やっぱり瞬間移動はタイプ・ブルーしか出来ないってことになるんでしょうか、この結末では…?
「そうなるねえ…。ブルーの世界でも非公式記録だし、ぼくたちの世界じゃこの有様だし…」
脱出マジックはプロに限るよ、と会長さんが言い、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「普通の人でも出来ちゃうのに~! ハーレイがやったら、記録になるのに~!」
やっぱりコンテナが海にドボンなコースでないと本気で脱出できないのかなあ? とガッカリしている「そるじゃぁ・ぶるぅ」は未だに気付いていないようです。瞬間移動と脱出マジックは全く違うということに。
「…教頭先生でもアレってことはさ、ぼくがやってもさ…」
「似たようなコースだと思うぜ、やめとけよ、ジョミー」
脱出マジックも瞬間移動もプロに任せておくとしようぜ、とサム君の意見。私たちもそう思います。教頭先生、再チャレンジはするだけ無駄です、次も絶対、下剤でトイレなオチですってば~!



          脱出する方法・了

※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 教頭先生が挑むことになった脱出マジック、見事に失敗。破壊して出ればいいんですしね。
 実際は、アニテラのマツカがやっているので、タイプ・グリーンなら出来てしまう可能性も。
 さて、シャングリラ学園番外編、今年で連載終了ですので、残り一年となりましたが…。
 毎日更新の場外編は続きますので、シャングリラ学園生徒会室の方も御贔屓下さい。
 次回は 「第3月曜」 2月21日の更新となります、よろしくです~!
 パソコンが壊れたため、実際のUPが2月5日になったことをお詫びいたします。
 修理期間中、「シャングリラ学園生徒会室」の方で、経過報告を続けていました。
 予告なしに更新が止まる時があったら、そちらのチェックをお願いします。

※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
 こちらでの場外編、1月は元老寺で迎える元日から。檀家さんの初詣があって…。
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