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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

赤い靴の呪い

※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。




シャングリラ学園、また新年を迎えました。恒例のお雑煮大食い大会で教頭先生たちに闇鍋を食べさせたり、水中かるた大会で優勝したりと1年A組は新年早々絶好調です。水中かるた大会優勝の副賞は先生方による寸劇だったんですけれど…。
「かみお~ん♪ 昨日の寸劇、最高だったね!」
みんなとっても喜んでたし、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。今日は土曜日、朝から会長さんの家にお邪魔しています。
「リクエストが沢山あったからねえ、やっぱりやらなきゃ駄目だろうと」
お応えした甲斐があった、と会長さんも。
「ハーレイのバレエは伝説だしさ、たまには披露しておかないと」
「かなり普通じゃなかったがな…」
ただのバレエじゃなかったろうが、とキース君が突っ込むと。
「そりゃまあ…。一応、寸劇ってことになってるし…。先生が二人は必要なんだし」
「あんたが最初にやらかした時は、グレイブ先生も踊っていたと思ったが?」
白鳥の湖の王子役で、とキース君。
「なのに今回は踊りは無しだったぞ、グレイブ先生は」
「演目が赤い靴だしねえ? 踊らなくてもいいんだよ、グレイブは」
最後にハーレイの足を切り落とす役さえ演じてくれれば、と会長さんの返事。昨日のグレイブ先生は一人で何役もこなした挙句に、踊り続ける足を切り落とす首切り役人で…。
「教頭先生の足に一撃、あれは本気がこもってましたよ」
多分、とシロエ君が呟き、サム君も。
「グレイブ先生、一年間、ババを引かされまくっているもんなあ…」
「誰かさんのせいでね…」
誰かが1年A組に来るせいで、とジョミー君。
「本気だって出るよ、足に一撃」
「ぼくのせいだと言うのかい?」
会長さんが訊いて、私たちは揃って首を縦に。会長さんは「心外だなあ…」と頭を振ると。
「グレイブにも娯楽を提供しているつもりだけどねえ? 毎年、毎年」
「娯楽どころか、地獄だろうが!」
娯楽はあんたの勘違いだ、とキース君。その認識で間違ってないと思いますです、グレイブ先生、毎年、毎年、会長さんがやって来るだけで地獄ですってば…。



それはともかく、昨日の寸劇。赤い靴の元ネタはもちろん童話で、靴を履いている限りは踊り続ける呪いがかかった女性のお話。同じタイトルのバレエ映画があるのだそうで、会長さんは童話とバレエを混ぜたのです。
教頭先生は白鳥の湖みたいな白いチュチュに赤いトウシューズで登場、ひたすら色々な踊りを披露し続け、グレイブ先生は赤い靴の童話の靴屋の女将さんとか老婦人とかをこなしまくって、最後が首切り役人なオチ。
グレイブ先生の斧の一撃、教頭先生の踊りが止まっておしまいでしたが…。赤いトウシューズだけが「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議パワーということで、勝手に脱げて踊りながら去ってゆくという拍手喝采の寸劇でしたが…。
「何度も訊くがな、なんでグレイブ先生は踊りは無しになっていたんだ!」
踊れる筈だぞ、とキース君。
「バレエの技はサイオンで叩き込まれた筈だし、今だって!」
「分かってないねえ、何年経ったと思っているのさ」
その技を叩き込まれた時から…、と会長さんがフウと溜息。
「グレイブはあれっきりバレエの方は放置なんだよ、誰かと違って」
「「「あー…」」」
教頭先生は今もバレエ教室に足を運んでおられますけど、グレイブ先生については噂も聞いていません。やっぱり習っていなかったんだ…。
「普通は習わないと思うよ、バレエなんかは。ハーレイの方が例外なんだよ」
そして技術がどんどん上がる、と会長さん。
「昨日のバレエも凄かっただろう、回転したって軸足は少しもブレなかったし」
「それはまあ…。技術の凄さは認めるが…」
認めるんだが、とキース君はまだブツブツと。
「教頭先生だけに絞って笑い物にするというのはだな…」
「いいんだってば、グレイブの下手な踊りも一緒に披露するより、あっちの方が!」
そのための題材なんだから、と会長さんは『赤い靴』の利点を挙げました。
「履いてる間は踊りまくるのが赤い靴だよ、自分の意志とは関係無く!」
「それはそうだが…」
「バレエの技術をもれなく披露! ついでにグレイブは斧で一撃、そしてスカッと!」
あれ以上のネタはそうはあるまい、と会長さんは自画自賛。教頭先生のバレエを披露で大ウケでしたし、グレイブ先生が踊ってなくても拍手はとっても大きかったですよね…。



ともあれ、教頭先生のバレエの技が光った昨日の寸劇。実に上達なさったものだ、とワイワイ賑やかに騒いでいたら…。
「こんにちはーっ!」
遊びに来たよ、とフワリと翻った紫のマント。別の世界からのお客様の登場です。
「ぶるぅ、ぼくにも紅茶とケーキ!」
「オッケー、ちょっと待っててねーっ!」
今日は柚子のベイクドチーズケーキなの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」がサッと用意を。ソルジャー好みの紅茶の方も。
「ありがとう! うん、美味しい!」
それでね…、とソルジャーは柚子のケーキを頬張りながら。
「昨日のハーレイの寸劇だけどさ、あれはなんだい? ぼくにはイマイチ分からなくてさ」
「「「は?」」」
「覗き見していたけど、意味が今一つ…。あの靴が問題だったのかな?」
赤いトウシューズ、とお尋ねが。
「履いてる限りは踊り続けるとか何とか言ったし、グレイブが斧で切り付けた後は、あの靴だけが踊りながら去って行っちゃったし…」
「赤い靴の話、知らないのかい?」
もしかして、と会長さん。
「有名な童話なんだけどねえ、君は読んではいないとか?」
「うん、知らない。どういう童話だったんだい?」
まるで知らない、と言うソルジャーのために、私たちは口々に説明していたのですが。
「かみお~ん♪ これで分かると思うの!」
ちゃんと絵本になっているから、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が差し出した本。赤い靴の絵本、持っていたんだ…。
「ああ、あれかい? 寸劇に備えての参考資料に買ったんだけど?」
会長さんが答えて、ソルジャーは「ふうん…」と絵本をパラパラめくっていって。
「分かった、赤い靴というのが大切なんだね、主人公はやたらこだわってるけど」
「靴も買えないような子供が初めて貰った靴なんだよ?」
心に残って当然だろう、と会長さん。そのせいで赤い靴が大好きになっちゃうんですよね、あのお話の主人公…。



ソルジャーは絵本がよほど気に入ったのか、何度も読み返してからパタンと閉じて。
「足を切り落とすまで踊り続ける赤い靴かあ…。なんだか凄いね」
切り落とした後まで足だけが踊って行っちゃうなんて、とソルジャーが言うと、会長さんが。
「神様の罰ってことになっているけど、元ネタはそういう病気らしいね」
「「「病気?」」」
なんですか、それは? 踊りまくる病気が存在すると?
「ハンチントン病っていうヤツで…。それじゃないかと言われているよ」
元々は舞踏病と言ったくらいだから、と聞いてビックリ、赤い靴は元ネタがありましたか!
「裏付けってヤツは無いけれど…。その辺から来てるんじゃないかって話」
「ふうん…。踊り続ける病気なのかい?」
そんな病気が、と驚くソルジャー。
「ぼくの世界じゃ聞かないねえ…。舞踏病の方も、ハンチントン病も」
「君の世界だと、根絶済みだと思うよ、それ」
遺伝する病気らしいから、と会長さんが返すと、「なるほどね!」と頷くソルジャー。
「そうなのかもねえ、ぼくの世界は遺伝子治療は基本だからね」
そういう因子は除去するだろう、と流石は未来の医学です。遺伝病くらいは簡単に治せてしまうんだろうな、と皆で感心していたら…。
「でもねえ、赤い靴はとっても使えそうだよ、パワフルだから!」
「「「はあ?」」」
何に使うと言うんでしょうか、赤い靴なんか? ソルジャーの正装は白いブーツですけど、それを赤いブーツにしたいとか?
「うーん…。それも悪くはないんだけれど…。履いている間はサイオン全開っていうのもね」
そして人類軍の船を端から沈める、と怖い台詞が。その船、人が乗ってますよね?
「そりゃ、乗ってるよ! でもねえ、相手は人類だから!」
向こうが殺しにやって来るんだし、こっちから逆に殺したって全く問題無し! とソルジャーならではの見解が。
「赤いブーツでパワフルに殺しまくるのもいいけれど…。どうせだったら、もっと有意義に!」
「何をしたいわけ?」
赤いブーツで、と会長さんが尋ねて、私たちも知りたいような知りたくないような。あれだけ絵本を読んでいたんですし、何か思い付いたことは確かですよね?



赤い靴はパワフルで使えそうだ、と言い出したソルジャー。赤いブーツを履いて人類を殺しまくるという話も出ましたが、それよりも有意義な使い方となると…。
「もちろん、夫婦の時間だよ! パワフルとなれば!」
ハーレイとパワフルにヤリまくるのだ、とソルジャーの口から斜め上な言葉が。
「赤い靴を履くのは、ぼくじゃなくって、ぼくのハーレイ!」
「「「え?」」」
赤い靴はキャプテンの方が履くって、それを履いたらどうなるんですか?
「決まってるじゃないか、夫婦の時間と言った筈だよ! ヤリまくるんだよ!」
赤い靴を履いている限りはガンガンと、とグッと拳を握るソルジャー。
「赤という色は特別なんだろ、こっちの世界じゃ! だから赤い靴!」
ノルディに聞いた、とソルジャーは知識を披露し始めました。
「赤は性欲が高まる色だとかで、赤い下着が流行るって言うし…。健康のために赤いパンツを履く人もいるし、赤は特別な色なんだよ! そこが大事で!」
「…赤い靴の童話は無関係だと思うけど?」
神様がお怒りになった理由はそこじゃない、と会長さん。
「今はともかく、あの童話の時代は教会は厳しかったから…。赤い靴で教会は論外なんだよ」
そしてお葬式の時に赤い靴が駄目なのは今でも同じ、とキッパリと。
「決まりを破った上に、自分を育ててくれた人のお世話もしないで舞踏会に行ってしまうから…。そんなに踊りが好きなんだったら踊り続けろ、という罰だってば!」
「細かいことはいいんだよ! ぼくのハーレイは気にしないから!」
赤い靴の童話はサラッと聞かせるだけだから、と言うソルジャー。
「要はそういう童話があってさ、それに因んだ赤い靴っていうことで!」
性欲も高まる色なんだから、とソルジャーは笑顔。
「この靴を履いてる間はヤリまくれる、と暗示をかければオッケーってね!」
「「「暗示?」」」
「そう! ハーレイは疲れ知らずでヤリまくれるだけのパワーを秘めているからねえ…」
漢方薬のお蔭でね! とソルジャー、得意げ。
「ただねえ、元がヘタレだからねえ…。ぼくへの遠慮があったりするから…」
ぼくが壊れるほどヤリまくれと言っても腰が引けちゃって…、と零すソルジャー。つまりは赤い靴を履かせて、キャプテンの心のタガをふっ飛ばそうというわけですか…?



ソルジャーが魅せられた赤い靴。狙いはどうやら、私の考えで合っていたようで。
「ピンポーン! 赤い靴を履くというのが大切!」
脱がない限りはヤリまくるってことで、とソルジャーは頬を紅潮させて。
「もう最高の暗示なんだよ、赤い靴を履いたらヤるしかないと!」
「なるほどねえ…。赤い靴とは、いいアイデアかもしないけれど…」
靴だけに少々難アリかもね、と会長さん。
「えっ、難アリって…。どの辺が?」
ぼくのアイデアは完璧な筈、と怪訝そうなソルジャー。
「赤い靴はただの靴だけどねえ、暗示をかけるのはぼくなんだよ? ぼくが暗示を解かない限りは、ハーレイはヤッてヤリまくるんだよ!」
「…その暗示。靴を履いてる間だけだろ?」
「そうだけど? だからこその赤い靴なんだよ! 早速何処かでゲットしないと!」
こっちの世界で適当なヤツを買って帰ろう、と言うソルジャーですが。
「買って帰るんだ? …無粋な靴を」
「無粋だって!?」
失礼な! とソルジャーは柳眉を吊り上げました。
「赤い靴の何処が無粋だと? ロマンだってば、赤い靴の話と同じでさ!」
もう永遠にヤリ続ける仕様の赤い靴、と夢とロマンが炸裂しているみたいですけど、会長さんは。
「どうなんだか…。靴を履いてコトに及ぶと言うのはねえ…」
君が気にしないなら、そこはどうでもいいんだけれど、と一呼吸置いて。
「ただねえ、ヤリまくっても脱げない靴を買うとなったら、デザインがねえ…」
下手な靴だと脱げるであろう、と会長さん。
「君の目的は激しい運動を伴うんだよ? それでも脱げない靴となると…」
スニーカーとか、ブーツだとか…、と会長さんは例を挙げました。
「そういう無粋な靴になるけど、君はその手の靴を買うわけ?」
「…そ、そういえば…。ハーレイが普段に履いている靴…」
脱げにくい仕様の靴ではあるけど、運動したら脱げるかも、とソルジャーは「うーん…」と。
「ああいう靴を買おうと思っていたけど、脱げちゃうんだ?」
「多分ね、だからスニーカーとかの無粋な靴だね!」
ロマンも何も無さそうな靴、と会長さん。ソルジャーの野望はこれでアッサリおしまいですかね、赤い靴は脱げてしまうんですしね?



ソルジャーが夢見る赤い靴。履いている限りはキャプテンと大人の時間なのだ、と野望を抱いたみたいですけど、靴はアッサリ脱げるというのが会長さんの指摘。脱げてしまったら靴の呪いならぬ暗示の方も解けちゃいますから…。
「…赤い靴というのは無理があったか…」
ソルジャーが腕組みをして、会長さんが。
「そもそも、靴はそういう時には脱ぐものだしね? 履いたままなんて誰も考えないよ」
路上で襲い掛かる類の暴漢くらいなものであろう、とクスクスと。
「君の暗示がかかっていたなら、暴漢並みの勢いってことも有り得るけれど…。肝心の靴が脱げてしまっちゃ、話にも何もならないってね!」
「…じゃあ、靴下で!」
「「「靴下!?」」」
いったい何を言い出すのだ、と目を剥いた私たちですけれども、ソルジャーの方は本気でした。
「うん、靴下! 靴下だったら脱げないしね!」
それに限る、と頭の中身を切り替えたらしく。
「赤い靴の代わりに赤い靴下! これで完璧!」
「…もう好きにしたら?」
その辺で買って帰ったら、と会長さんが投げやりに。
「今は冬だし、靴下も沢山ある筈だよ。分厚いヤツから普通のヤツまで、選び放題で」
「分かった、買いに行ってくる!」
直ぐ帰るから、と立ち上がったソルジャーに「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「んとんと…。お昼御飯は食べないの? もう帰っちゃうの?」
「え、直ぐに帰ると言ったけど?」
「うん、だから…。帰っちゃうんでしょ、靴下を買って」
ちょっと残念、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。お客様大好きだけにガッカリしているみたいです。
「お昼、寒いからビーフシチューにするんだけれど…。朝から沢山仕込んだんだけど…」
「もちろん食べるよ、直ぐに帰るから!」
ちゃんとこっちに帰って来るから、と言われてビックリ、帰るって…こっちに帰るんですか?
「そうだけど? ぼくにも色々と都合があるしね」
じゃあ、行ってくる! とソルジャーは会長さんの家に置いてある私服にパパッと着替えてパッと姿を消しました。赤い靴下を買いにお出掛けですけど、まさかこっちに戻るだなんて…。



赤い靴の童話から、良からぬアイデアに目覚めたソルジャー。履いている限りはヤリまくる靴をキャプテンに履かせるつもりで、それが駄目なら赤い靴下。暗示をかけるらしいですから、靴下を買ったら真っ直ぐ帰ると思っていたのに…。
「ただいまーっ!」
買って来たよ、とソルジャーが紙袋を提げて戻って来ました。会長さんもよく行くデパートの。
「ホントにこの時期、色々あるねえ、赤い靴下! もう迷っちゃって!」
でもシンプルなのが一番だよね、と中から出て来た赤い靴下。キャプテン用だけに大きいです。
「靴下だったら、靴と違ってそう簡単には脱げないし…。これでバッチリ!」
「はいはい、分かった」
それ以上はもう言わなくていい、と会長さん。
「何しに戻って来たかはともかく、そろそろお昼時だから!」
「かみお~ん♪ ビーフシチュー、マザー農場で貰ったお肉なんだよ!」
それをトロトロに煮込んだから、と聞いて大歓声。料理上手な「そるじゃぁ・ぶるぅ」の腕に、マザー農場の美味しいお肉は最高の組み合わせというヤツです。ダイニングに向かってゾロゾロと移動、ビーフシチューに舌鼓。ソルジャーもシチューを口に運びながら。
「これも赤だね、考えようによってはね!」
濃い赤色、と指差すシチュー。
「やっぱり赤にはパワーがあるんだよ、シチューも赤いし、肉だってね!」
生の肉は赤いものなんだし…、とニコニコと。
「赤はパワフルな色で間違いなし! だからね、赤い靴下だって!」
「君の好きにすればいいだろう!」
食事中にまで余計な話を持ち出すな、と会長さんが睨み付けましたが。
「何を言うかな、食事が済んだら忙しくなるし!」
「「「え?」」」
忙しいって…何が?
「赤い靴下だよ、ぼくが暗示をかけるんだから!」
「なんだ、帰るって意味だったのか…。だったら、別に」
今の間に好き放題に喋るがいい、と会長さん。食事が済んだら消えるんだったら、私たちも別に気にしません。赤い靴下だろうが、独演会だろうが、好きにすれば、と思ったんですが…。



「「「教頭先生!?」」」
昼食を食べ終えた私たちを待っていたものは、予想もしていなかった展開でした。食後のコーヒーや紅茶を手にして戻ったリビング、ソルジャーも紅茶を飲んだらお帰りになるものだと信じていたのに、さにあらずで。
「そうだよ、こっちのハーレイなんだよ!」
まずは試してみないとね、と買って来た赤い靴下を手にしたソルジャー。
「履いている限りは解けない暗示をかけられるかどうか、一応、実験しておかないと!」
「迷惑だから!」
そんな実験にハーレイを使うな、と会長さんが怒鳴り付けました。
「ヤリまくるだなんて、困るんだよ! 第一、ハーレイは鼻血体質だから!」
暗示をかけてもヤリまくる前に倒れるから、という意見は正しいだろうと思います。ソルジャーや会長さんが悪戯する度に鼻血で失神、そういうのを何度も見て来ましたし…。
「いきなりそっちはやらないよ! 赤い靴の通りにするんだけれど!」
「「「へ?」」」
「踊る方だよ、踊り続けるかどうかを試すんだよ!」
それならいいだろ、とソルジャーが広げてみせる赤い靴下。
「これはバレエの靴とは違うし、爪先で立って踊るっていうのは無理かもだけど…。とにかく踊り続けるように、という暗示をね!」
「…踊る方かあ…」
そっちだったら害は無いか、と会長さん。
「そういうことなら、好きにしたら? バレエだろうが、フラメンコだろうが」
「フラメンコなんかも踊れるんだ? こっちのハーレイ」
「バレエと同じで隠し芸だよ、バレエほどには上手くないけど」
「分かった、他にも色々な踊りが出来そうだねえ!」
こっちの世界は踊りが多いし、とソルジャー、ニッコリ。
「盆踊りだけでもバラエティー豊かにあるみたいだし…。バレエに飽きたら、それもいいねえ!」
「飽きたらって…。どれだけ踊らせるつもりなのさ?」
「赤い靴下を履いてる限り!」
夜も昼も踊り続けるんだろう、とソルジャーは赤い靴の絵本をしっかり覚えていました。こんなソルジャーに目を付けられてしまった教頭先生、踊りまくる羽目に陥るんですか…?



それから間もなく、ソルジャーが「さて…」とソファから立ち上がったので、出掛けるんだと誰もが思ったんですけれど。
「もうハーレイを呼んでもいいかな?」
「「「え?」」」
呼ぶって、教頭先生を? 此処へですか?
「そうだけど…。踊らせるんなら、家は広いほどいいからねえ!」
ハーレイの家は此処より狭いし、とソルジャーが言う通り、会長さんの家は広いです。マンションの最上階のフロアを丸ごと使っているんですから。
「ハーレイを此処に呼ぶだって!?」
冗談じゃない、と会長さんが言い終えない内にキラリと光った青いサイオン。ソルジャーがサイオンを使ったらしくて、教頭先生がリビングの真ん中にパッと。
「…な、なんだ!?」
何事なのだ、と周りを見回した教頭先生に、ソルジャーが。
「こんにちは。見ての通りに、此処はブルーの家なんだけど…。ちょっと協力して欲しくてねえ、ぼくの大事な実験に!」
「…実験……ですか?」
「そう! 一種の人体実験だけれど、薬を使うわけじゃないから!」
身体に害は無い筈だから、とソルジャーは笑顔全開で。
「害があるとしたら、筋肉痛になるくらいかな? だけど、君は普段から鍛えているし…。そっちの方も平気じゃないかと」
「筋肉痛とは…。それはどういう実験ですか?」
「赤い靴だよ。昨日の寸劇、凄かったねえ!」
君の踊りはぼくも覗き見させて貰ったよ、と踊りの凄さを褒めるソルジャー。
「あれほどの踊りをモノにするには、ずいぶん練習したんだろうねえ?」
「ええ、教室にはずっと通っていますから…」
「頼もしいよ! それなら踊り続けていたって大丈夫だよね?」
「…踊りですか?」
それはどういう…、と尋ねた教頭先生に、ソルジャーが「これ!」と突き付けた赤い靴下。
「この靴下を履いてくれるかな? そしたら分かるよ!」
君が履いてる靴下を脱いで…、と言ってますけど。教頭先生、素直に履き替えるんですかねえ?



「…赤い靴下…」
もしやそれは、と靴下を見詰める教頭先生。
「普通の靴下のように見えますが、赤い靴の話が出て来るからには、履いたら最後、踊り続けるしかない靴下でしょうか…?」
「大正解だよ! 実はね、ぼくが本当に目指す所は踊りじゃなくって…」
「やめたまえ!」
言わなくていい、と会長さんが止めに入りましたが、ソルジャーは。
「誰かが言うなと喚いてるけど、きちんと説明しておかないとね? ぼくが目指すのは、夫婦の時間を盛り上げるための靴下で!」
「…はあ?」
怪訝そうな顔の教頭先生。それはそうでしょう、赤い靴の話とソルジャーの発想が結び付くわけがありません。ソルジャーは「分からないかなあ?」と頭を振って。
「履いてる間はヤリまくる靴下を作りたいんだよ! もうガンガンと!」
自分の意志とは関係なしに無制限に…、と言われた教頭先生はみるみる耳まで真っ赤になって。
「そ、その靴下を作るための実験台ですか…?」
「話が早くて助かるよ! ぼくのハーレイに履かせたくってね、その前に君の協力を…」
お願い出来る? と訊かれた教頭先生、鼻息も荒く「はい!」と返事を。
「喜んでやらせて頂きます! …それで、そのぅ…。私の相手は…」
ヤリまくる相手は誰になるのでしょう、という疑問は尤もなもの。ソルジャーは「えーっと…」と首を捻って。
「ぼくだと嬉しくないんだろうし…。ブルーの方がいいんだよね?」
「もちろんです!」
「ブルーなら、其処にいるからさ…。頑張ってみれば?」
「はいっ!」
この靴下を履けばいいのですね、とソルジャーから赤い靴下を受け取る教頭先生。ソルジャーが先に言っていた踊りの話や筋肉痛の件は頭から抜け落ちてしまったようです。会長さんも気付いたみたいで、怒る代わりにニヤニヤと。
「聞いたかい、ハーレイ? 人体実験、頑張るんだね」
「うむ。…これに履き替えればいいのだな」
赤い靴ならぬ赤い靴下とは面白い、と履いていた靴下を脱いでおられる教頭先生。鼻血体質のくせにやる気満々、赤い靴下を履けばヘタレも直ると思ってたりして…?



教頭先生が脱いだ靴下は「そるじゃぁ・ぶるぅ」が片付けようとしたんですけど、会長さんが「待った!」と一声。
「そんな靴下、置いておかなくてもかまわないから! 臭いだけだから!」
「…く、臭い…?」
そうだろうか、と衝撃を受けてらっしゃる教頭先生。会長さんはフンと鼻を鳴らして。
「自分じゃ分からないものなんだよ、この手の悪臭というヤツは! ぶるぅ、ハーレイの家に送っておいて!」
「オッケー、洗濯物のトコだね!」
消えてしまった教頭先生の靴下、ご自分の家の洗濯物の籠へと瞬間移動で放り込まれたようです。まだ呆然と裸足で立っておられる教頭先生に、ソルジャーが。
「気にしない、気にしない! ブルーも照れているんだよ!」
「…そ、そうでしょうか…?」
「そりゃあ照れるよ、ヤリまくろうって言うんだよ? さあ、気を取り直して!」
赤い靴下を履いてみようか! と促すソルジャー。教頭先生も「そうですね!」と。
「では、早速…。どちらの足から履いてもいいのですか?」
「特にそういう決まりは無いねえ、履くということが大切だからね!」
「分かりました。それでは、失礼いたしまして…」
よいしょ、と右足を上げて立ったままでの靴下装着。続いて左足にも装着で…。
「「「………」」」
どうなるのだろう、と固唾を飲んで見守っていた私たち。両足に赤い靴下を履いた教頭先生の左足が床に下ろされ、初めて両足で立った途端に。
「「「!!?」」」
バッ! と高く上がった教頭先生の右足、頭の上までといった勢いで。バレエでああいうポーズがあるな、と思う間もなく…。
「「「わあっ!」」」
私たちの声と重なった野太い声。教頭先生が上げた驚きの声で、その声の主は凄い速さでクルクルと回転中でした。左足を軸に、さっき上げていた右足を曲げたり伸ばしたりしながらクルクル、いわゆるバレエの回転技で。
「「「うわー…」」」
本当に踊る靴下だったか、と見ている間もクルクル回転、バレエの技術はダテではなかったようです。トウシューズが無くても回れるんですねえ、それなりに…。



いきなり始まった、教頭先生の大回転。グランフェッテと言うんでしたか、バレエの連続回転技は三十二回転がお約束。グルングルンと回り続けた教頭先生、回り終えたら深々とお辞儀、これまたバレエでやるお辞儀。
「あれ、止まってない?」
お辞儀してるけど、とジョミー君が言い終わる前に、教頭先生の片足がまたバッと上がって、今度は両足でクルクル回転しながら移動してゆきます。あれもバレエの技でしたよね?
「うん。…その内にジャンプも出るんじゃないかな、何を踊るつもりかは知らないけれど」
足任せってトコか、と会長さんが無責任に言った所へ、教頭先生の声が重なって。
「なんなのだ、これは! あ、足が勝手に…!」
「ブルーの説明を聞いていただろ、赤い靴だって!」
それに昨日の寸劇も…、と会長さん。
「赤い靴の代わりに靴下なんだよ、履いてる間は踊り続けるしかないってね!」
「わ、私はそうは聞かなかったが…!」
「ヤリまくれると思ったのかい? ブルーは筋肉痛になるとも言ってたけどねえ!」
まずは踊りで実験なんだよ、と会長さんは声を張り上げました。
「ブルーがかけてる暗示らしいよ、その靴下を履いてる限りは踊り続けろって!」
「そ、そんな…!」
これではただの間抜けでしか…、と叫ぶ間も止まらない足、お得意のバレエの華麗な技が次々と。ソルジャーが「素晴らしいよ!」と拍手して。
「フラメンコとかも出来るんだってね? 次はそっちで!」
「ふ、フラメンコ…!?」
教頭先生にはその気は無かったと思います。けれども、赤い靴下なだけに…。
「「「わわっ!?」」」
優雅なバレエの足さばきから変わったステップ、これは明らかにフラメンコ。会長さんが手拍子を打って、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の手にはカスタネットが。
「「「オ・レ!」」」
さあ踊れ! と私たちも手拍子、フラメンコの次は誰が言ったか盆踊り。外の寒さも吹き飛ぶ熱気がリビングに溢れて、教頭先生は次から次へと踊りまくって、踊り狂いながら。
「ま、まだ踊るのか? 止まらないのか…!」
どうして靴下でこんなことに、と叫ぶだけ無駄な止まらない足、赤い靴下で踊る両足。このまま踊るだけなんですかね、あの靴下…。



履いたらヤッてヤリまくれると教頭先生が信じた、赤い靴下。教頭先生の足は休むことなく踊り続けて、たまにお辞儀やポーズなんかで一瞬止まって、また踊るという有様で。
「悪くないねえ、こういうのもさ」
君がハーレイを呼ぶと言い出した時には焦ったけれど、と会長さん。
「ハーレイの家で踊らせておけ、と思ったけれども、これもなかなかオツなものだよ」
「そうだろう? 高みの見物に限るからねえ、他人を見世物にする時はさ」
君の家だからこそ、美味しいおやつを食べながら見られるというもので…、とソルジャーも。
「ハーレイの家で見るんだったら、お菓子とかは持ち込みになっちゃうからね」
「かみお~ん♪ ここなら作って食べられるもんね!」
ハーレイがちょっと邪魔だけど、とヒョイとよけながら「そるじゃぁ・ぶるぅ」が運んで来てくれるお菓子や飲み物。踊り続けている教頭先生は全くの飲まず食わずですけど。
「…おい、いい加減、止めたらどうだ」
何時間踊らせているんだ、あんた…、とキース君が。
「もうすぐ晩飯になるんだが…。ずっと踊っておられるんだが!」
「ああ、そうか…。晩御飯ねえ、ぼくも食べたら帰って本番が待ってたっけね!」
赤い靴下の本物でハーレイと楽しむんだった、とソルジャー、ようやく気が付いたらしく。
「踊り続けられるってことは分かったし、本番の方も実験しないと…!」
「ちょ、ちょっと…!」
本番って何さ、と会長さんが言うよりも早く、キラリと光った青いサイオン。教頭先生の踊りが止まって、もうヘトヘトといった足取りながらもフラフラと…。
「え、ちょっと…!」
何を、と後ずさりした会長さんの両肩にガシッと置かれた教頭先生の両手。そのまま会長さんを床へ押し倒し、のしかかったからたまりません。
「「「ひいいっ!!」」」
会長さんも私たちも悲鳴で、シロエ君が。
「と、止めないと…! ヤバイですよ、これ!」
「よし!」
行くぞ、と駆け出したキース君たち柔道部三人組でしたけど。
「「「………」」」
まるで必要なかった救助。教頭先生は踊り続けて血行が良くなりすぎていたのか、鼻血の海に轟沈なさっておられました。赤い靴下、効いたみたいですけど、意味は全く無かったですねえ…。



こうして赤い靴下の効果が証明されて、ウキウキと帰って行ったソルジャー。失神してしまった教頭先生を瞬間移動で家へと送り返して、まだ何足も袋に入っていた赤い靴下をしっかり持って。
教頭先生に襲われかかった会長さんはプリプリ怒っていましたけれども、あれは未遂で実害は無かったわけですし…。
「いいけどね…。あの程度だったら、よくあるからね」
ブルーが何かと焚き付けるせいで、とブツブツと。それでも頭に来ているらしくて、憂さ晴らしだとかで、夜は大宴会。ちゃんこ鍋パーティーの後はお泊まりと決まり、夜食も食べて騒ぎまくって、眠くなった人からゲストルームに引き揚げて…。
「…来なかったな?」
あの馬鹿は、とキース君が尋ねた次の日の朝。ダイニングに揃って朝食の時です。
「来てないと思うよ、ぼくは知らない」
最後まで起きていたのはシロエだっけ、とジョミー君が言うと。
「そうですけど…。ぶるぅと一緒にお皿とかをキッチンに運びましたけど、見ていませんね」
「来るわけねえだろ、ウキウキ帰って行ったんだしよ」
あっちの世界で過ごしてるんだぜ、とサム君が。
「赤い靴下、どうなったのかは知らねえけどよ…。基本、夜には来ねえよな」
「そうよね、夜中は来ないわねえ…」
キャプテンが忙しい日は別だけど、とスウェナちゃん。確かに、そういう時しか夜には現れないのがソルジャーです。夫婦の時間とやらの方が優先、こっちの世界に来るわけがなくて。
「…すると、危ないのは今日の昼間か…」
赤い靴下の自慢に来るかもしれん、とキース君が呟き、会長さんが。
「レッドカードだね、もう間違いなく!」
あんな靴下の自慢をされてたまるものか、という姿勢。私たちだって御免ですけど、レッドカードが効かない相手がソルジャーです。意味不明な話を延々と聞かされる覚悟はしておこう、とトーストや卵料理やソーセージなんかを頬張っていたら。
「えとえと…。赤い靴の絵本、誰か見なかった?」
リビングから消えていたんだけれど、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。朝一番に片付けに行ったら無かったのだそうで、誰かが持って行ったのかと思ったらしいのですが。
「「「えーっと…?」」」
心当たりのある人はいませんでした。ソルジャーが持って行ったんでしょうかね、キャプテンに赤い靴の話を説明するにはピッタリですしね…?



赤い靴の絵本は出て来ないままで、ソルジャーの方も来ないまま。平和に午前中が終わって、お昼御飯は煮込みハンバーグ。美味しく食べて、リビングに移って紅茶やコーヒーを飲んでいたら。
『誰か助けてーーーっ!!!』
「「「???」」」
誰だ、と顔を見合わせましたが、欠けている面子は一人もいません。気のせいだったか、と紅茶にコーヒー、それぞれのカップを傾けようとした所へ。
『助けてってば、誰でもいいからーーーっ!!!』
「…何か聞こえたな?」
あの馬鹿の声に似ているようだが、とキース君。
「似てるけど…。なんで、ぼくたちに救助要請?」
シャングリラの危機ってわけでもなさそうだけど、とジョミー君が言い、マツカ君が。
「誰でもいいなら、違いますよね?」
「ブルーを名指しじゃねえからなあ…?」
俺たちじゃシャングリラは助けられねえし、とサム君がリビングをキョロキョロと。
「けどよ、助けは要るんじゃねえのか? 何か知らねえけど」
「状況が全く分かりませんしね、どう助けるのかも謎ですよねえ…」
きっと何かの冗談でしょう、とシロエ君が纏めかけたのですが。
『赤い靴下だよ、赤い靴下が脱げないんだよーーーっ!!!』
昨夜からずっとヤられっぱなしで、とソルジャーの悲鳴。
『いくらぼくでも、このままだと本気で壊れるから! もう本当に壊れちゃうから…!』
腰が立たないくらいじゃ済まない、という思念には泣きが入っています。赤い靴下で壊れそうだということは…。
「自分で何とかすればいいだろ、君が暗示をかけたんだから!」
靴下くらいは脱がせたまえ! と会長さんが思念を投げ付けると。
『それが出来たら困らないってば、本当に赤い靴なんだってばーーーっ!!!』
脱げなくなってしまったのだ、とソルジャーの思念は涙混じりで、おまけに何度も乱れがちで。
『今だってヤられまくってるんだよ、もう死にそうだよ…!』
「思念を送ってこられるんなら、脱がせられるだろ!」
君の力なら充分に、と会長さんが言うのも納得です。ソルジャーのサイオンは会長さんとは比較にならないレベルなんですし、赤い靴下を脱がせるくらいは楽勝だと思ったんですけれど。



『ぶるぅだってば、ぶるぅが赤い靴下を…!!!』
赤い靴の絵本を読んだらしい、と泣き叫んでいるソルジャーの思念。キャプテン用にと持って帰った絵本を悪戯小僧の「ぶるぅ」までが読んで、赤い靴下に悪戯したようで…。
『脱げないようにしちゃったんだよ、もう本当に脱げないんだよ…!!』
ぼくもハーレイも努力はしたのだ、という絶叫。
『でも、ハーレイは元々脱げないように暗示をかけてあったし、ぼくはヤられてる最中なだけに、集中するにも限度があるし…。ああっ!』
ダメ、と乱れている思念波。キャプテンにヤられまくっている最中だけに無理もないですが。
『こ、こんな調子じゃ、ぶるぅにも敵わないんだよ…! お願い、誰かーーーっ!!』
ハーレイの赤い靴下を脱がせてくれ、と頼まれたって困ります。救助に行くにはソルジャーの世界へ空間移動が必要な上に、私たちの力で「ぶるぅ」なんかに勝てるかどうか…。
「…まず無理だな?」
俺たちで勝てるわけがないな、とキース君が腕組みをして、会長さんが。
「ぼくとぶるぅでも、二人がかりで勝てるかどうかは謎だしねえ…」
『そう言わないで! 誰か助けてーーーっ!!!』
もう本当に壊れてしまう、と叫ぶ思念に、会長さんは。
「赤い靴の絵本を読んだからには、脱げなくなったら、どうするかは分かっているだろう?」
『ま、まさか…』
「足を切り落とせばいいってね! それが嫌なら、そのままで!」
ヤられておけ! と会長さんが張った思念波を遮断するシールド。普段だったら、ソルジャー相手に効果は全く無いんですけど、今回は…。
「…静かになった?」
もう聞こえない、とジョミー君が耳を澄ませて、シロエ君が。
「どうせ何日か経ったら来ますよ、恨み言を言いに」
「だろうね、助けてくれなかったと文句を言うんだろうけど、自業自得と言うものだし…」
それまで平和を楽しんでおこう、と会長さんが紅茶をコクリと。ソルジャーが持って帰った赤い靴下、エライ結末になったようですけど、赤い靴の話は本来、そういう話。壊れるのが嫌なら足を切り落とせばいいんですから、放っておくのが一番ですよね~!




           赤い靴の呪い・了


※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 赤い靴のお話からソルジャーが思い付いたのが、赤い靴下。履いている間は、ノンストップ。
 教頭先生で実験も済ませて自信満々、けれど、ぶるぅの悪戯で赤い靴のお話そのもの…。
 次回は 「第3月曜」 10月18日の更新となります、よろしくです~!

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 こちらでの場外編、9月は秋のお彼岸なシーズン。今年はサボるという方向で…。
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