シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
閉まらない扉
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
今年も夏休みがやって来ました。毎年恒例、柔道部の合宿とサム君とジョミー君が行かされる璃慕恩院での修行体験ツアーも無事に終わって、マツカ君の山の別荘へ。乗馬や湖でのボート遊びや、ちょっとした登山もしてみたりして満足して帰って来たのですけど。
「くっそぉ…。あの親父め…!」
まただ、とキース君が歯ぎしりしている会長さんの家のリビング。「また」で「親父」とくればアレですかね、お馴染みのアドス和尚ですかねえ?
「親父さんかよ…。卒塔婆のノルマか?」
増えたのかよ、とサム君が訊くと。
「お前は遊んで来たんだろう、と五十本も増えていやがった! 俺が書く分が!」
「…五十本とは厳しいねえ…。此処でサボッていないで早く帰りたまえ」
そして卒塔婆を書いてきたまえ、と会長さんが促したのですけれど。
「やってられるか、ストレスが溜まる! 発散しないとミス連発だ!」
そっちの方がよっぽど悲劇で効率が悪い、とキース君。
「俺の家は卒塔婆削り器は原則的に使用禁止なんだ! 失敗したら手で削らないと…」
削ってからまた書き直しで、と嘆き節。
「時間はかかるし、イライラしたら次のミスへと繋がるし…。ストレスは敵だ!」
だからこうして息抜きした方がマシなんだ、と言ってますけど。卒塔婆が必要なお盆の方だって刻一刻と近付いて来ていませんか?
「だからこそ、サボッて英気を養い、一気に書く!」
それが俺の流儀なんだ、とキース君がブチ上げた所で部屋の空気がフワリと揺れて。
「うん、分かるよ! 君の気持ちはとっても分かる」
「「「???」」」
誰だ、と振り向いてみれば紫のマント。例によってソルジャー登場です。合宿行きと山の別荘の間は来ませんでしたし、ストレスが溜まっているんでしょうか?
降ってわいたソルジャーは当然のように「ぼくにもおやつ!」と要求しました。
「かみお~ん♪ 今日はライチとマンゴーのパフェなの! スパイスたっぷり!」
カルダモンとかシナモン入りのパンを千切って入れてあるから、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ソルジャー好みのアイスティーも一緒に出て来て、ソルジャーは嬉しそうにスプーンを入れながら。
「此処はやっぱり落ち着くねえ…。なによりドアが閉まっているのがいいよ」
「「「ドア?」」」
誰もが眺めたドアの方向。廊下に繋がるリビングのドアはキッチリ閉まっています。でないとクーラーの効きが悪くなりますから、開けたら閉めるのがお約束で。
「…普通は閉まっていると思うけど?」
今の季節は、と会長さん。
「開けっ放しにしたら文句が出るしね、出入りする時はきちんと閉める!」
「…俺の家だと逆だがな…」
卒塔婆書き中の部屋の障子や襖が閉まったら地獄、とキース君。
「親父が言うんだ、クーラーを入れて卒塔婆書きとは何事か、とな。心頭滅却すれば火もまた涼しで、お盆の卒塔婆はクーラー無しで書くものだ、と…」
「「「あー…」」」
そうだったっけ、と同情しきりなキース君の卒塔婆書き事情。セミがうるさいと嘆くことも多いですけど、障子が全開になっているならセミも半端じゃないですよね?
「そうか、キースの家では逆なんだ? でもねえ…。ドアはやっぱり閉めてこそだよ」
開けっ放しなんて論外だから、とパフェを口へと運ぶソルジャー。
「もうストレスが溜まって溜まって…。ぼくは本当に限界なんだよ」
「「「へ?」」」
ドアが開けっ放しでストレスって…。なに?
「そのまんまだよ、開けっ放しなんだよ!」
「…ドアが?」
会長さんの問いに、ソルジャーは「うん」と。いったい何処のドアが開けっ放しだと?
ドアが開けっ放しだとストレスが溜まるとぼやくソルジャー。ドアの話なんかは日頃、聞いた覚えがありません。会長さんも首を捻って。
「…それはアレかい、君のシャングリラの?」
「そうなんだよ! もう本当に悲劇だとしか!」
「…うーん…。それは確かに大変そうだね、何処かのハッチか格納庫とか?」
会長さんの言葉にアッと息を飲んだ私たち。ソルジャーが暮らしているシャングリラは宇宙船ですから、今は宇宙を飛んでなくても大気圏内を航行中。そんな所でハッチや格納庫のドアと呼ぶのか、そういったものが開けっ放しだと大変なことになりそうです。
「お、おい…。誰か其処から落ちたのか?」
キース君の声が震えて、シロエ君が。
「落ちてなくても、シールドする必要が出て来ますよね…。事故防止に」
「そういうことだね、君はその作業でストレスが溜まっているのかい?」
本来は君の仕事じゃないし、と会長さん。
「ドアの修理は修理班だろうけど、故障中の部分をフォローするには君のサイオンしか無かったというオチなのかな?」
「そっちだったら、立ち入り禁止で対処するよ!」
隔壁で遮断しておけば何とかなるから、とソルジャーの返事。
「多少あちこち回り道とか、格納庫に行くのに命綱とか、そういう必要は出て来るけれど…。ぼくがサイオンで落下防止のシールドを張る必要は…」
「それじゃ、どうしてストレスなわけ?」
「開けっ放しになってるからだよ!」
あれが困る、と言ってますけど、対処方法はちゃんとあるんじゃあ…?
「ハッチとか格納庫の方だったらね!」
そうじゃないから困っているのだ、とソルジャー、ブツブツ。
「…ぼく一人しか困らないんでは、修理も急いで貰えないし…」
「何処のドアだい?」
ぼくにはサッパリ見当が…、と会長さんが尋ねると。
「青の間のドアに決まってるだろう!」
他に何があると! と苛立った声が。…青の間のドアが壊れたんですか?
開けっ放しになっているらしい、ソルジャーの世界の青の間のドア。それでストレスが溜まると嘆くソルジャーですけど、優先的に修理をして貰えそうな気もします。会長さんも同じことを考えたらしく…。
「君のストレスが溜まるんだったら、修理を急いでくれそうだけどね?」
「俺もそう思う。…俺のように「修行だ」と切って捨てられる世界じゃないしな」
あんたが一番偉いんだろうが、とキース君も。
「それにシャングリラを守っているのもあんただよな? ストレスで使い物にならなくなったら困るだろうし、その辺の所はきちんと気を付けてくれそうなんだが…」
「逆なんだってば、そっちの件に関しては!」
ぼくは機嫌が悪ければ悪いほど無敵なタイプ、と愚痴るソルジャー。
「ぼくしか出来ない役目と言ったら人類軍との戦闘なんだよ、戦って壊してなんぼなんだよ!」
手加減無用で問答無用、と怖い台詞が。
「だから怒っていればいるほど強いわけ! 鬱憤晴らしに壊しまくるから!」
「「「あー…」」」
だったら放っておかれるだろうな、と素直に納得出来ました。たとえストレスが溜まっていたってソルジャーの務めは果たすわけですし、おまけに無敵と来た日には…。
「そういうことだよ。それにシャングリラの連中にすれば、壊れている方が嬉しいわけで!」
「…君が無敵になるからかい?」
それで喜ばれるのだろうか、と会長さんが問いを投げると。
「違うね、日常生活の方! 青の間に入り放題だから!」
「…見学希望者多数だとか?」
「その方がよっぽど平和だよ!」
見学だったら時間を決めて定員も決めて仕切れるから、とソルジャー、溜息。
「…ぼくが困るのは、プライバシーが皆無だってこと! 落ち着かないんだよ、毎日が!」
「見学希望者は仕切れると言っていなかったかい?」
「物見遊山のお客じゃなくって、来るのはお掃除部隊なんだよ!」
開いているからやって来るのだ、とソルジャーが不満たらたらのお掃除部隊。それって青の間を清掃するために結成されると噂のお掃除隊でしたっけか…?
掃除が嫌いと聞くソルジャー。お掃除大好き「そるじゃぁ・ぶるぅ」とは正反対なタイプのソルジャー、青の間は足の踏み場も無いとの話です。ベッドに行くための通路さえあれば他はどうでもいいという人、キャプテンが掃除をしている筈で。
「お掃除部隊の出番は滅多に無いんじゃあ…?」
そう聞いてるよ、と会長さん。
「もう限界だ、という頃に突入するって君が自分で何度も言ったし」
ニューイヤーのパーティーの後で散らかり放題になった時とか…、という指摘にソルジャーは。
「それが大原則だけど…。普段は存在しないんだけど…」
ぼくが好きなように散らかすだけ、と再び溜息。
「片付いた部屋は落ち着かないから、お掃除部隊が来ちゃった後には、ぼくの部屋とも思えなくてねえ…。リラックス出来る部屋になるまでに暫くかかるよ」
いい感じに散らかってくるまでには、と零すソルジャー。
「ぼくはああいう部屋が好きなのに、ドアが開けっ放しになってから後はそうもいかなくて…」
まずは初日に突入された、とソルジャーのぼやき。ドアが壊れて閉まらないから、と思念を飛ばしたら、修理班の代わりにやって来たのがお掃除部隊。
「今の間に掃除をさせて頂きます、と踏み込まれちゃって…。「邪魔になりますから、ソルジャーは外に出ていて下さい」と大掃除が始まってしまったんだよ!」
ソルジャーは驚いたらしいですけど、掃除さえ済めば修理班が来るのだと大人しく待っていたそうです。ところがお掃除部隊が引き揚げた後も修理班は来てくれなくて。
「どうなったんだろう、と訊きに出掛けたら、ゼルたちが会議の真っ最中で!」
議題は壊れたドアのことだった、という話。ソルジャーの世界で長老と呼ばれる人たちが会議、いい機会だから当分は修理しないでおこうと決まったとかで。
「…青の間のドアさえ壊れていればね、毎日掃除に入れるわけだし…」
「いいことじゃないか。綺麗に掃除をして貰いたまえ」
会長さんが言うと、「そるじゃぁ・ぶるぅ」も。
「かみお~ん♪ ピカピカのお部屋は気持ちがいいよ!」
サッパリしていて気分も最高! と跳ねてますけど、ソルジャーはそういう部屋だと落ち着かないんですよね…?
青の間のドアが壊れたばかりに、毎日お掃除部隊に入られているらしい今のソルジャー。憩いの場の筈の部屋を自分の好みには出来ず、ピカピカにされているわけで…。
「…ぼくはホントに限界なんだよ、あれのストレスは凄いんだから!」
ぼくの部屋とも思えない部屋はもう嫌だ、と本当に困っている模様。
「それにね、ハーレイも来てくれないんだよ、今の青の間には!」
「「「へ?」」」
ハーレイと言えばキャプテンのこと。ソルジャーへの報告なんかも多そうですから、青の間に出入りしないとなったら全く話にならないんじゃあ…?
「もちろん、仕事のことでは毎日来てるんだけど…。ちゃんと報告に来るんだけれども、それが終わったら、「では、本日はこれで」と帰っちゃうんだよ!」
ぼくのベッドに来てくれない、とブツブツブツ。
「いつも言ってるけど、ぼくのハーレイは見られていると意気消沈なヘタレだからねえ…。ドアが開けっ放しになった部屋だと、その気になれないらしいんだよ!」
「ヘタレでなくても、普通はそうだと思うけど?」
ぼくだって開けっ放しの部屋は御免だ、と会長さん。
「なんのためにラブホテルとかが存在するのかという問題だよ、そこの所は! ああいったことは閉鎖空間でするべきことでね、開けっ放しなんて、とんでもないから!」
それじゃ変態か、エロい動画の撮影とかだ、と会長さんはビシバシと。
「君のハーレイの行動はごくごく自然なことだと思うけどねえ?」
「そうなのかい? …仕方ないから、ぼくの方から出掛けて行こうとしたんだけれど…」
そっちの方も断られた、と肩を落としているソルジャー。
「夜の間に青の間にいないとバレてしまったらどうするんです、と言うんだよ! きっと探しに行くだろうから、ぼくたちの仲もバレそうだ、と!」
とっくの昔にバレバレなのに、と大きな溜息、もう幾つ目だか数えていません。
「そんなわけでね、部屋にいたって落ち着かない上に、夫婦の時間も御無沙汰なんだよ。これがストレスでなければ何だと…!」
もう限界だ、と頭を抱えているソルジャー。…青の間のドアは今も壊れて開けっ放しのままなんでしょうが、その状態でどうやって此処へ来られたと?
いい機会だからと修理されずに放置されている青の間のドア。お掃除部隊が掃除しに来たり、キャプテンが夫婦の時間を避けたりと何かと問題があるようです。ただし、ソルジャー限定で。ソルジャーの世界の人にとっては壊れている方が嬉しいドア。
「…えーっと…。君の青の間、ドアは今でも開けっ放しの筈だよね?」
だから愚痴りに来てるんだよね、と会長さん。
「君の不在がバレそうだけど? お掃除部隊は掃除を済ませて帰ったのかもしれないけれども、ドアが開いてるなら誰でもヒョイと入れそうだし」
バレないように早く帰って部屋にいたまえ、と会長さんが注意をすると。
「その点だったら大丈夫! ちゃんとぶるぅに頼んで来たから!」
「「「ぶるぅ?」」」
大食漢の悪戯小僧か、と目を剥いてしまった私たち。あんなのが役に立つんでしょうか?
「ぶるぅは充分、役立つけどねえ? 出すものを出せば」
御礼は山ほどのスナック菓子とコンビニデザート! とソルジャーは威張り返りました。
「ぼくの代わりに留守番をすれば買ってあげると言ってあるから、今も青の間で頑張ってるよ。ぼくのふりをして座るくらいは、サイオンも大して必要ないし…」
エネルギー切れにはならないのだ、という自慢。そういえば「ぶるぅ」はサイオン全開だと三分間しか持たないというカップ麺みたいなヤツでしたっけ…。
「だからね、今の内なんだよ! こっちの世界でストレス解消!」
せめてパフェくらいは食べさせてくれ、とソルジャーはペロリと平らげた上に、今日は一日居座るつもりみたいです。いえ、今日だけで済めばいいですけれど…。
「あんた、ドアが直るまでは毎日、こっちに来る気じゃないだろうな?」
まさかな、とキース君が言うなり、ソルジャーは。
「君だって言えた義理じゃないよね、ストレス解消に関しては!」
卒塔婆書きをサボッて来てるんだろう、と切り返し。キース君はグッと詰まってしまって。
「そ、それは…。それは確かにそうなんだが…」
「ほらね、立派にお仲間だよ! 今日からよろしく!」
ぼくは開けっ放しのドアの不満を愚痴りに来るから、君は卒塔婆書きを愚痴りたまえ、と何故だかソルジャーの御同輩にされてしまったキース君。ひょっとしたら明日から来なかったりして、余計にストレスが溜まりそうだと逃げちゃって…。
今日はともかく、明日以降もストレス解消にやって来る気のソルジャー。青の間のドアが直らない限りは本気で毎日来そうです。キース君どころか、私たちの平和も脅かされてしまいそうで…。
「あのう…。そのドア、キャプテンの権限でなんとかならないんですか?」
シロエ君が声を上げました。
「確かキャプテン、長老よりも上だったんじゃあ…。詳しいことは知りませんけど、シャングリラでの実権ってヤツは大きそうですよ」
特に修理に関しては、とシロエ君。
「トイレの修理もキャプテンの指示を仰がなきゃ駄目だと聞いた気がしますし、ドアの修理はキャプテン次第でどういう風にも出来そうですけど」
「そうだよなあ? 急がせろ、って言いさえすればよ、すげえ短時間で済みそうだぜ」
モノがソルジャーの部屋のドアなんだからよ、とサム君も。
「会議で決まったことでも何でも、船のことならキャプテンが最高責任者なんじゃねえのかよ?」
「それっぽいよね、いちいち会議を開いていたら間に合わないよね…」
緊急事態って時もあるし、とジョミー君。
「即断即決で修理班を出せなきゃ、キャプテンの意味が無さそうだよ?」
「…うん。そこはジョミーの言う通りでさ…」
普段だったらそうなんだけど、と頷くソルジャー。
「隔壁閉鎖とか、もう文字通りに一人でバンバン決めていけるのがキャプテンだけどさ…。今回の件は例外なんだよ、実害を全く伴わないから」
むしろ有難がられる故障だから、とソルジャーの嘆き。
「そりゃね、ハーレイだって会議で反対はしたよ? 開けっ放しにされてしまったら自分も困ってしまうわけだし…。ぼくの所に来られないから」
夫婦の時間がお預けというのはハーレイだって辛いんだから、と言うソルジャー。
「日頃ヘタレだと詰られていたって、、海の別荘行きの特別休暇の獲得のために仕事三昧で疲れていたって、やっぱりたまにはリフレッシュだよ!」
ぼくと一発、愛の時間でエネルギー充填したくもなるよ、と話すソルジャー。
「その辺もあって、「直ぐに修理をさせましょう」と言ったんだけれど、一人だけがそれを言ってもねえ…。他の四人が「現状維持で」と主張しちゃえば勝てない仕組み」
ゆえに敗北、とフウと溜息。キャプテン権限も通らなかったと言うんだったら、ドアは当分、開けっ放しになりそうですねえ…。
明日から毎日ソルジャーが来るのか、と泣きたい気持ちの私たち。楽しかった筈の夏休みが此処で一気に暗転、キース君の卒塔婆書きだって思い切り滞ってしまいそうです。青の間のドアさえ直ってくれればいいんですけど、直る見込みは無さそうですし…。
「…そのドア、どうにもならんのか?」
あんたが自分で修理するとか、とキース君が訊くと。
「見た目だけなら、サイオニック・ドリームでどうとでも…。でもねえ、根本的な修理になってはいないわけだし、やるだけ無駄だね」
お掃除部隊は幻のドアを突破して入って来るんだろうし、ハーレイはやっぱり夫婦の時間を避けるだろうし…、という答え。
「だって、所詮は幻だしね? ドアは閉まっていないわけでさ、何のはずみで幻のドアが消滅するかもしれないわけで…。それじゃハーレイも来てくれないよ」
ぼくが訪ねて行く方も駄目、と続いてゆく愚痴。
「修理したくても、ぼくはそっちの方面は駄目で…。工具を持ったら余計に壊してしまう方でさ」
「「「あー…」」」
そうだろうな、という気がしました。歩くトラブルメーカーなソルジャー、お裁縫もロクに出来ないレベルの不器用さだと判明しています。下手に修理に挑もうものなら、今なら数時間で直せそうな故障が一日がかりになってしまうとか、ドアも部品も総入れ替えとか…。
「ホントに色々とハードルだらけで、あのドアは直せないんだよ。…ハーレイが会議で頑張ってくれたお蔭で、海の別荘に行くまでには直る予定だけれど…」
別荘に行ってる間はぶるぅの留守番作戦も使えないものだから、と言うソルジャー。
「それまでには直すっていうことになっているけど、まだまだ先だし…」
「海の別荘は、お盆が終わってからだしねえ…」
でないとキースが暇にならないし、ジョミーもサムも忙しくなるし、と会長さん。
「仕方ないねえ、諦めて君も棚経修行をしてみるかい?」
お経の練習、と会長さんが持ちかけましたが、ソルジャーは。
「そういうのは求めていないんだよ! とにかくストレス解消だってば!」
美味しいおやつと食事があれば、とソルジャーはこっちに逃げ込む気。青の間のドアが直らないからには仕方ないですが、そのドア、なんとか直せないかな…?
お経の練習をする気も無ければ、私たちに迷惑をかけそうなことさえ全く考えていないのがソルジャー。今日の所はドアが壊れた愚痴だけで済んでいますけれども、日数が経てば夫婦の時間が取れない愚痴とか怪しい方へと向かいそうです。会長さんも当然、それに気付くわけで。
「あのね…。お経の練習をしないと言うなら、せめて別の方面で修行をね」
「修行って? ぼくはそういうのは好きじゃないけど」
楽なのが好き、とソルジャー、ケロリと。
「普段からSD体制で苦労しているわけだし、こっちの世界では羽を伸ばしたいねえ…!」
「それは自由にしてくれていいけど、言葉の方で修行をお願い」
「言葉?」
「そう、言葉! ぼくがイエローカードやレッドカードを出さずに済むよう、口を慎む!」
この夏はそういう修行をしてくれ、と会長さん。
「ドアが壊れて逃げて来るなら、ぼくたちのストレスも考慮して欲しいと思うわけだよ。怪しい発言さえしないでくれたら、相当マシになるんだから」
「でも…。ぼくも努力はしてみるけれども、セックスは心のオアシスなわけで…」
「どうして其処でもう言うかな!」
その一言が我慢出来ないのか、と会長さんが怒鳴り付けると。
「え、だって。…ハーレイとの時間は癒しの時間で、それがあるから頑張れるわけで…。そのオアシスが今は無い状態でさ、もう本当に限界なんだよ!」
癒しの一発も夫婦の時間も当分お預け、とソルジャーの方も負けてはいなくて。
「君はともかく、他の子たちは万年十八歳未満お断りだし、ぼくの話は意味が殆ど分かっていないよ、話をしたって無問題!」
「それが困るんだよ、喋らないでいるっていう選択肢は君には無いわけ?」
「努力はすると言ってるじゃないか! だけど自然に口からポロリと出ちゃうんだよ!」
日々の暮らしに欠かせないものがセックスだから、と余計な一言、会長さんが「また言うし!」と吊り上げる柳眉。
「本当に迷惑しているってことが分からないかな、君という人は! …ん?」
ちょっと待てよ、と顎に手を当てる会長さん。何か名案でも思い付きましたか、ソルジャーの怪しい喋りを封じる方法だとか…?
ナチュラルに怪しい発言を連発するのがソルジャー、会長さんが出すイエローカードもレッドカードも効果ゼロ。毎日来るならそれをやめろと言われた端から喋ってしまって、迷惑をかけている自覚も全く無さそうですけど。
「…そうか、迷惑…。その手があったか、君の青の間」
もしかしたらドアの修理をして貰えるかも、という会長さんの台詞にソルジャーが。
「なんだい、何かいい方法が見付かったのかい?」
「…方法の方はまだ何も…。ただ、アイデアの種と言うべきか…」
この種が芽を出してくれたら方法になる、と謎かけのようなアイデアの種。私たちは互いに顔を見合わせ、キース君が。
「なんだ、アイデアの種というのは? 禅問答でもするのか、あんた」
「そっちの宗派は修行していないよ、恵須出井寺でも座禅はするけど禅問答までは…」
範疇外で、と会長さん。
「でもね、このアイデアの種は使えると思う。芽を出しさえすれば」
「そのアイデアの種が分からんのだが…」
俺には謎だ、とキース君が言い、私たちも揃って頷きましたが。
「え、アイデアの種は何なのかって? 本当に種という意味なんだよ、アイデアの素」
育ってくれないと使えないから種なのだ、という説明。
「いいかい、ブルーの世界の青の間のドアは壊れっ放しで、修理はまだまだ先になりそう。…そこまでは分かるね、誰だって?」
「それはまあ…」
そのせいで明日から迷惑なんだ、とキース君が応えて、私たちも「うん」と。
「じゃあ、次に行くよ? ドアの修理が先送りにされた理由というヤツ、それは修理をしない方が喜ばしいからで…。いつも散らかってる青の間が綺麗に片付くからで」
「ぼくは困っているんだけどね!」
ストレスも溜まるし、とソルジャーが嘆くと、会長さんは。
「そこなんだよ。…君は困るし、ぼくたちは迷惑。ドアが直ってくれないと困る。…それをさ、君のシャングリラの人たちも感じてくれたらドアは直るかと」
「「「は?」」」
ソルジャーのストレスや、別の世界に住む私たちが感じている迷惑。そんな代物をソルジャーの世界のシャングリラの人たちにどうやって分かって貰えますか…?
ソルジャーが長をやっているのがシャングリラ。その長の意向をキッパリ無視して青の間のドアの故障を修理せずに放置、それがソルジャーの世界のシャングリラ。おまけに私たちの世界の存在なんかは知られてもおらず、迷惑したって苦情も届けられない現状。
「おい。…あんた、凄い無茶を言っていないか?」
こいつの意見も通らないのが向こうの世界のシャングリラだが、とキース君。
「ソルジャーが修理してくれと言っても直さずに放置しているドアをだ、俺たちが迷惑しているからと直してくれるわけが無いと思うが」
第一、どうやって苦情を届けに行くと言うんだ、と正論が。
「あんたも自力では飛べない筈だぞ、向こうまでは」
「誰も陳情に行くとは言っていないよ、要は迷惑という種なんだよ。…アイデアのさ」
ぼくの頭にあるのは其処まで、と会長さん。
「青の間のドアが壊れたままだと有難いから修理しないで放っているなら、その逆になれば修理するかと思ってさ…。つまりは迷惑」
「「「迷惑?」」」
「そう! ドアが壊れて開けっ放しだと誰もが迷惑することになれば、大急ぎで修理しそうだよ」
それこそ、船を挙げてでも! と会長さんは指を一本立てました。
「修理班の手が塞がってるなら、もう文字通りに猫の手だね! ちょっとでも使えそうな人を総動員して必死で修理するんじゃないかと」
早く直さないと船中が迷惑するんだから…、と会長さん。
「開けっ放しよりも閉まってる方が有難い、と気付けば修理をすると踏んだね」
「なるほどねえ…。でもさ、今はとっても有難がられて放置されてるわけなんだけど…」
誰も直してくれないんだけど、とソルジャーは溜息。
「実際、その方がお得らしくて、直そうっていう声も出ないし…。君のその案、どう使えと?」
「それがぼくにも分からないから、アイデアの種だと言ったんだよ」
どうすれば開けっ放しのドアが迷惑になるのか思い付かない、と会長さんにも無いらしい案。
「誰かこの種、育てられる人がいればいいんだけどねえ…」
「「「うーん…」」」
アイデアの種とはそういう意味か、と考え込んでしまった私たち。開けっ放しのドアが迷惑をかけると言ったら、このリビングだとクーラーの風が逃げてしまって効きが悪くなるとかですけれど。青の間のドアが開けっ放しだと、果たして迷惑かかるのでしょうか…?
壊れてしまった青の間のドア。けれど開けっ放しの状態が歓迎されているとかで、修理はされずに先延ばし。そのせいでストレスが溜まったソルジャー、こちらの世界を避難所にするつもりです。ソルジャーが来るのを防ぎたかったら、ドアを直すしかないわけで。
「ドアが開けっ放しの方が迷惑ですか…」
普通は冷暖房の効率が一番の問題ですが、とシロエ君。
「でも、それを考えても開けっ放しで問題無し、と結論が出てるわけですね?」
「そうなんだよねえ…。あのデカイ部屋の空調よりもさ、掃除が先に立つらしいんだよ」
ぼくはそんなに片付けられない人間だろうか、と頭を振っているソルジャー。
「お掃除部隊なんていうのは、たまに入れば充分だろうと…」
「そう思ってるのは君だけだよ、多分。だから壊れたドアを放っておかれるんだよ!」
日頃のツケが回って来たのだ、と会長さんが唱える因果応報。けれどもドアが直らない限り、そのソルジャーの巻き添えを食らって迷惑を蒙るのが私たちなわけで…。
「…困りましたね…」
何かいい案は無いでしょうか、とシロエ君が呟き、キース君が。
「俺の家だと、開けっ放しにしてある場所から蚊が入って苦労するんだが…。蚊取り線香が必須なわけだが、シャングリラに蚊はいないだろうしな…」
「あー…。キースの家だと藪蚊も山ほどいそうだよな」
裏山は木が茂ってるしよ、とサム君。
「ついでにアレかよ、庭池とかが天国になっていそうだよな、ボウフラの」
「いや、そこは…。そうならないように定期的に掃除をしてるが、何処からかな…」
ヤツらは湧いて来るんだよな、とキース君が零せば、ジョミー君が。
「人魂と同じで湧きそうだよねえ、お寺だと」
「失礼な! 元老寺の墓地に人魂が出たという話など無い!」
皆さん、立派に成仏しておられる、と合掌しているキース君。お参りする人が無くなってしまった無縁仏さんも毎年キッチリ供養だとかで、人魂も幽霊も目撃例は無いのだそうで。
「えーっ? それはある意味、間違ってない?」
墓地があるなら幽霊と人魂はセットもの、と言い出すジョミー君は心霊スポット大好き少年。また始まった、と思った私たちですが、そのジョミー君が「あっ!」と。
「使えるんじゃないかな、アイデアの種!」
これで芽が出る気がするんだけど、と言われましても。これって何のことですか?
墓地と人魂はセットものだと主張しかけたジョミー君。其処でアイデアの種がどうこう、青の間のドアが壊れている件と、元老寺の墓地がどう繋がるというのでしょう。会長さんまで怪訝そうな顔になってますけど、ジョミー君は。
「青の間のドアだよ、開けっ放しだと困るってヤツ!」
人魂と幽霊でどうだろうか、とジョミー君の口から出て来た怪談もどき。
「ほら、ブルーの世界と繋がった切っ掛け、キースが持って来た掛軸じゃない! 妖怪とかがゾロゾロ出るから、ってブルーが供養を頼まれてさ…」
「あったな、そういう事件もな。ぶるぅが飛び出して来やがったが」
あの掛軸は今も元老寺にあるんだが、とキース君。
「檀家さんに引き取る気が無いからなあ、月下仙境の軸」
「あれと同じだってことにするんだよ、青の間のドア! 閉まっていれば封印出来ても、開けっ放しだと色々ゾロゾロ出て来るってことで!」
大勢のミュウが死んでるんでしょ、とジョミー君はソルジャーの方に視線を向けて。
「その人たちもさ、シャングリラに乗ってるんだっていうことにしてさ…。普段は青の間の中で暮らしているけど、ドアが開いてるから外に出ようという気になったっていう方向でさ…」
サイオニック・ドリームで出来ないかな、と訊かれたソルジャーは。
「ああ、なるほど! 人魂と幽霊で迷惑をかければいいわけなんだね?」
ぼくのシャングリラに、とニッコリと。
「その手は大いに使えそうだよ、青の間の奥には亡くなった仲間の遺品が置いてあるわけで…。残留思念があまりに強くて、ハーレイくらいしか触れない話は有名なわけで…」
それでいこう、とポンと手を打つソルジャー。
「仲間たちの顔も姿もバッチリ覚えているからねえ…。もう今夜からやらせて貰うよ、人魂と幽霊のセットもの! これで青の間のドアの修理も急いでやって貰えそうだよ!」
「えーっと…。ジョミーのアイデアは良さそうだけれど、今日まで幽霊が出なかった理由はなんと説明するんだい?」
ドアはずうっと開けっ放しだったわけなんだけど、と会長さんが尋ねると。
「そんなの、至って簡単だってね! 幽霊っていうのは少しずつ近付くと言うじゃないか!」
こっちの世界の怪談の王道、と言われてみればそうでした。幽霊との距離が日毎に縮まり、連れて行かれる怪談の世界。青の間のドアから外に出るまでに日数がかかったという言い訳をすればバッチリですよね、今夜から幽霊が出没しても…?
ひょんな切っ掛けで芽吹いてしまった会長さんのアイデアの種。ソルジャーが暮らす青の間のドアは開けっ放しの方がいい、と修理されずに放置されているなら、修理したくなるよう迷惑をかければいいというヤツ。
ジョミー君のアイデアを使うと決めたソルジャーはウキウキと幽霊や人魂に関する怪談を夜までやらかした挙句に、「ありがとう!」と帰って行ってしまって…。
「…これで明日から来なくなるかな?」
ぼくはアイデアを出したんだけど、とジョミー君が首を傾げて、キース君が。
「さあな? どうなったのかの報告ってヤツに来そうな気もするがな…」
ともあれ俺には卒塔婆のノルマ、とブツブツと。今日は丸一日サボりましたし、明日から再び大車輪でしょう。早朝から書いて昼前までには抜けて来るとか言ってますけど…。
そして翌日、私たちはまた会長さんの家に集まって朝からダラダラと。この暑いのにプールへ行くのも面倒ですから、涼しいお部屋が一番です。リビングのドアをピッタリと閉めて午前中からブルーベリーのフラッペを美味しく食べていたら…。
「こんにちはーっ!」
ぼくにもフラッペ、と現れたソルジャー。空いていたソファにストンと腰掛け、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がサッと用意したフラッペをシャクシャクとスプーンで掬って。
「青の間のドアね、大急ぎで直してくれるそうだよ。今日の夜には間に合うように!」
「本当かい?」
そんなに早く、と会長さん。
「昨日の今日だよ、例の作戦、もう効いたのかい?」
「それはもう! こっちで夜まで怪談三昧やって帰った甲斐があったね、サイオニック・ドリーム全開でシャングリラ中に大迷惑をね!」
ジョミーの案をちょっとアレンジさせて貰った、と満面の笑顔。
「ぼくが頑張って封印していた霊がとうとう外に出てしまった、という話にしたよ。日頃の苦労をみんなに言うのはソルジャーとしてどうかと思って黙っていた、とね!」
こういう事態になるまで必死に引き留めていた霊がとうとう外に…、とソルジャーは朝からお詫び行脚をして来たそうです。サイオニック・ドリームの幽霊や人魂で怖い思いをしたシャングリラ中の人たちに。
「ぼくの力が足りなくてごめん、と謝ったら誰もが怒るどころか労ってくれてねえ…。ゼルなんかは号泣していたよ。懐かしい仲間に会えたというのに、怖がってしまって済まなかった、と」
「「「………」」」
そんな大嘘をついたのかい! と呆れましたが、嘘だと知っている人はキャプテンだけしかいないのだそうで。
「ハーレイには言っておかなきゃねえ…。青の間のドアを修理するための嘘とお芝居だということをね! でないとドアの修理が終わった後の夫婦の時間が素晴らしいものにならないし!」
あの幽霊だの人魂だのが本物なんだと思われたんでは…、とソルジャー、パチンとウインク。
「何度も言うけど、ハーレイは見られていると意気消沈で…。それが幽霊でも駄目だしね!」
「もういいから!」
ドアの修理が済んだら帰ってくれたまえ! と会長さん。青の間には今も「ぶるぅ」がソルジャーのふりをして真面目に座っているそうです。「ドアの修理はまだなのかい?」と。
こんな具合で、開けっ放しで放置されていた青の間のドアは凄いスピードで修理完了、次の日からソルジャーはもう来ませんでした。昨日までの間に溜まったストレス発散とばかりに散らかしまくって、キャプテンと夫婦の時間を満喫しているのでしょう。
「…ジョミーのお蔭で助かった。まさか怪談が役に立つとはな」
平和な日常が戻って来た分、俺も卒塔婆書きを頑張らないと…、とキース君が誓うと、そのジョミー君が。
「それだけど…。助かったと思ってくれるんだったら、今年の棚経、ぼくは休みで」
サムだけで行ってくれないかな、というお願いが。今回の功労者ですから、それもいいかな、と私たちは思ったんですけれど。
「俺はやぶさかではないが…。間違えるなよ、棚経のトップは親父なんだ」
そしてお前は今年は親父と回る予定になっている、と可哀相すぎる宣告が。
「ちょ、ちょっと…! だったら、ぼくはアイデアの出し損だったわけ?」
「悪く思うな、俺にもどうにもならんのだ」
礼が欲しいなら他のヤツらに頼んでくれ、とキース君が言った所でクーラーの効いたリビングの空気がユラリと揺れて。
「この間はどうもありがとう! 御礼だったら、このぼくが!」
みんなに御礼、とソルジャーが姿を現しました。御礼って何かくれるんでしょうか、何も持ってはいないみたいに見えるんですけど…?
「凄い御礼をするからさ! 海の別荘、ぼくたちの夜を完全公開!」
「「「は?」」」
「公開だってば、ドアの故障から始まった事件の御礼だからね! ぼくのハーレイには内緒だけれども、寝室のドアを完全開放、いつでも覗きがオッケーなんだよ!」
ぼくとハーレイの夫婦の時間をお楽しみに、とソルジャー、ニコニコ。
「あっ、写真撮影とかは駄目だよ、見るだけだからね!」
「「「要らないから!!!」」」
会長さん以下、綺麗にハモッた叫びですけど、ソルジャーはと言えば。
「えーっ? こっちのハーレイにも見せてあげたいし、出血大サービスなんだけど…!」
是非見に来てよ、と今度はドアを自分で開けっ放しにするつもり。こんな結果になるんだったら、青の間のドア、開けっ放しで壊れたままの方が良かったでしょうか、迷惑でも。恩を仇で返している気は無さそうですよね、そんなサービス、誰も頼んでいないんです~!
閉まらない扉・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
壊れてしまった、ソルジャーの世界の青の間の扉。その上、自業自得で先延ばしな修理。
こちらの世界が迷惑なわけで、ジョミー君が出したアイデア。怪談好きが役に立ちましたね。
次回は 「第3月曜」 4月18日の更新となります、よろしくです~!
※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
こちらでの場外編、3月といえば春のお彼岸。毎年恒例なんですけれど…。
←シャングリラ学園生徒会室は、こちらからv
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
今年も夏休みがやって来ました。毎年恒例、柔道部の合宿とサム君とジョミー君が行かされる璃慕恩院での修行体験ツアーも無事に終わって、マツカ君の山の別荘へ。乗馬や湖でのボート遊びや、ちょっとした登山もしてみたりして満足して帰って来たのですけど。
「くっそぉ…。あの親父め…!」
まただ、とキース君が歯ぎしりしている会長さんの家のリビング。「また」で「親父」とくればアレですかね、お馴染みのアドス和尚ですかねえ?
「親父さんかよ…。卒塔婆のノルマか?」
増えたのかよ、とサム君が訊くと。
「お前は遊んで来たんだろう、と五十本も増えていやがった! 俺が書く分が!」
「…五十本とは厳しいねえ…。此処でサボッていないで早く帰りたまえ」
そして卒塔婆を書いてきたまえ、と会長さんが促したのですけれど。
「やってられるか、ストレスが溜まる! 発散しないとミス連発だ!」
そっちの方がよっぽど悲劇で効率が悪い、とキース君。
「俺の家は卒塔婆削り器は原則的に使用禁止なんだ! 失敗したら手で削らないと…」
削ってからまた書き直しで、と嘆き節。
「時間はかかるし、イライラしたら次のミスへと繋がるし…。ストレスは敵だ!」
だからこうして息抜きした方がマシなんだ、と言ってますけど。卒塔婆が必要なお盆の方だって刻一刻と近付いて来ていませんか?
「だからこそ、サボッて英気を養い、一気に書く!」
それが俺の流儀なんだ、とキース君がブチ上げた所で部屋の空気がフワリと揺れて。
「うん、分かるよ! 君の気持ちはとっても分かる」
「「「???」」」
誰だ、と振り向いてみれば紫のマント。例によってソルジャー登場です。合宿行きと山の別荘の間は来ませんでしたし、ストレスが溜まっているんでしょうか?
降ってわいたソルジャーは当然のように「ぼくにもおやつ!」と要求しました。
「かみお~ん♪ 今日はライチとマンゴーのパフェなの! スパイスたっぷり!」
カルダモンとかシナモン入りのパンを千切って入れてあるから、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ソルジャー好みのアイスティーも一緒に出て来て、ソルジャーは嬉しそうにスプーンを入れながら。
「此処はやっぱり落ち着くねえ…。なによりドアが閉まっているのがいいよ」
「「「ドア?」」」
誰もが眺めたドアの方向。廊下に繋がるリビングのドアはキッチリ閉まっています。でないとクーラーの効きが悪くなりますから、開けたら閉めるのがお約束で。
「…普通は閉まっていると思うけど?」
今の季節は、と会長さん。
「開けっ放しにしたら文句が出るしね、出入りする時はきちんと閉める!」
「…俺の家だと逆だがな…」
卒塔婆書き中の部屋の障子や襖が閉まったら地獄、とキース君。
「親父が言うんだ、クーラーを入れて卒塔婆書きとは何事か、とな。心頭滅却すれば火もまた涼しで、お盆の卒塔婆はクーラー無しで書くものだ、と…」
「「「あー…」」」
そうだったっけ、と同情しきりなキース君の卒塔婆書き事情。セミがうるさいと嘆くことも多いですけど、障子が全開になっているならセミも半端じゃないですよね?
「そうか、キースの家では逆なんだ? でもねえ…。ドアはやっぱり閉めてこそだよ」
開けっ放しなんて論外だから、とパフェを口へと運ぶソルジャー。
「もうストレスが溜まって溜まって…。ぼくは本当に限界なんだよ」
「「「へ?」」」
ドアが開けっ放しでストレスって…。なに?
「そのまんまだよ、開けっ放しなんだよ!」
「…ドアが?」
会長さんの問いに、ソルジャーは「うん」と。いったい何処のドアが開けっ放しだと?
ドアが開けっ放しだとストレスが溜まるとぼやくソルジャー。ドアの話なんかは日頃、聞いた覚えがありません。会長さんも首を捻って。
「…それはアレかい、君のシャングリラの?」
「そうなんだよ! もう本当に悲劇だとしか!」
「…うーん…。それは確かに大変そうだね、何処かのハッチか格納庫とか?」
会長さんの言葉にアッと息を飲んだ私たち。ソルジャーが暮らしているシャングリラは宇宙船ですから、今は宇宙を飛んでなくても大気圏内を航行中。そんな所でハッチや格納庫のドアと呼ぶのか、そういったものが開けっ放しだと大変なことになりそうです。
「お、おい…。誰か其処から落ちたのか?」
キース君の声が震えて、シロエ君が。
「落ちてなくても、シールドする必要が出て来ますよね…。事故防止に」
「そういうことだね、君はその作業でストレスが溜まっているのかい?」
本来は君の仕事じゃないし、と会長さん。
「ドアの修理は修理班だろうけど、故障中の部分をフォローするには君のサイオンしか無かったというオチなのかな?」
「そっちだったら、立ち入り禁止で対処するよ!」
隔壁で遮断しておけば何とかなるから、とソルジャーの返事。
「多少あちこち回り道とか、格納庫に行くのに命綱とか、そういう必要は出て来るけれど…。ぼくがサイオンで落下防止のシールドを張る必要は…」
「それじゃ、どうしてストレスなわけ?」
「開けっ放しになってるからだよ!」
あれが困る、と言ってますけど、対処方法はちゃんとあるんじゃあ…?
「ハッチとか格納庫の方だったらね!」
そうじゃないから困っているのだ、とソルジャー、ブツブツ。
「…ぼく一人しか困らないんでは、修理も急いで貰えないし…」
「何処のドアだい?」
ぼくにはサッパリ見当が…、と会長さんが尋ねると。
「青の間のドアに決まってるだろう!」
他に何があると! と苛立った声が。…青の間のドアが壊れたんですか?
開けっ放しになっているらしい、ソルジャーの世界の青の間のドア。それでストレスが溜まると嘆くソルジャーですけど、優先的に修理をして貰えそうな気もします。会長さんも同じことを考えたらしく…。
「君のストレスが溜まるんだったら、修理を急いでくれそうだけどね?」
「俺もそう思う。…俺のように「修行だ」と切って捨てられる世界じゃないしな」
あんたが一番偉いんだろうが、とキース君も。
「それにシャングリラを守っているのもあんただよな? ストレスで使い物にならなくなったら困るだろうし、その辺の所はきちんと気を付けてくれそうなんだが…」
「逆なんだってば、そっちの件に関しては!」
ぼくは機嫌が悪ければ悪いほど無敵なタイプ、と愚痴るソルジャー。
「ぼくしか出来ない役目と言ったら人類軍との戦闘なんだよ、戦って壊してなんぼなんだよ!」
手加減無用で問答無用、と怖い台詞が。
「だから怒っていればいるほど強いわけ! 鬱憤晴らしに壊しまくるから!」
「「「あー…」」」
だったら放っておかれるだろうな、と素直に納得出来ました。たとえストレスが溜まっていたってソルジャーの務めは果たすわけですし、おまけに無敵と来た日には…。
「そういうことだよ。それにシャングリラの連中にすれば、壊れている方が嬉しいわけで!」
「…君が無敵になるからかい?」
それで喜ばれるのだろうか、と会長さんが問いを投げると。
「違うね、日常生活の方! 青の間に入り放題だから!」
「…見学希望者多数だとか?」
「その方がよっぽど平和だよ!」
見学だったら時間を決めて定員も決めて仕切れるから、とソルジャー、溜息。
「…ぼくが困るのは、プライバシーが皆無だってこと! 落ち着かないんだよ、毎日が!」
「見学希望者は仕切れると言っていなかったかい?」
「物見遊山のお客じゃなくって、来るのはお掃除部隊なんだよ!」
開いているからやって来るのだ、とソルジャーが不満たらたらのお掃除部隊。それって青の間を清掃するために結成されると噂のお掃除隊でしたっけか…?
掃除が嫌いと聞くソルジャー。お掃除大好き「そるじゃぁ・ぶるぅ」とは正反対なタイプのソルジャー、青の間は足の踏み場も無いとの話です。ベッドに行くための通路さえあれば他はどうでもいいという人、キャプテンが掃除をしている筈で。
「お掃除部隊の出番は滅多に無いんじゃあ…?」
そう聞いてるよ、と会長さん。
「もう限界だ、という頃に突入するって君が自分で何度も言ったし」
ニューイヤーのパーティーの後で散らかり放題になった時とか…、という指摘にソルジャーは。
「それが大原則だけど…。普段は存在しないんだけど…」
ぼくが好きなように散らかすだけ、と再び溜息。
「片付いた部屋は落ち着かないから、お掃除部隊が来ちゃった後には、ぼくの部屋とも思えなくてねえ…。リラックス出来る部屋になるまでに暫くかかるよ」
いい感じに散らかってくるまでには、と零すソルジャー。
「ぼくはああいう部屋が好きなのに、ドアが開けっ放しになってから後はそうもいかなくて…」
まずは初日に突入された、とソルジャーのぼやき。ドアが壊れて閉まらないから、と思念を飛ばしたら、修理班の代わりにやって来たのがお掃除部隊。
「今の間に掃除をさせて頂きます、と踏み込まれちゃって…。「邪魔になりますから、ソルジャーは外に出ていて下さい」と大掃除が始まってしまったんだよ!」
ソルジャーは驚いたらしいですけど、掃除さえ済めば修理班が来るのだと大人しく待っていたそうです。ところがお掃除部隊が引き揚げた後も修理班は来てくれなくて。
「どうなったんだろう、と訊きに出掛けたら、ゼルたちが会議の真っ最中で!」
議題は壊れたドアのことだった、という話。ソルジャーの世界で長老と呼ばれる人たちが会議、いい機会だから当分は修理しないでおこうと決まったとかで。
「…青の間のドアさえ壊れていればね、毎日掃除に入れるわけだし…」
「いいことじゃないか。綺麗に掃除をして貰いたまえ」
会長さんが言うと、「そるじゃぁ・ぶるぅ」も。
「かみお~ん♪ ピカピカのお部屋は気持ちがいいよ!」
サッパリしていて気分も最高! と跳ねてますけど、ソルジャーはそういう部屋だと落ち着かないんですよね…?
青の間のドアが壊れたばかりに、毎日お掃除部隊に入られているらしい今のソルジャー。憩いの場の筈の部屋を自分の好みには出来ず、ピカピカにされているわけで…。
「…ぼくはホントに限界なんだよ、あれのストレスは凄いんだから!」
ぼくの部屋とも思えない部屋はもう嫌だ、と本当に困っている模様。
「それにね、ハーレイも来てくれないんだよ、今の青の間には!」
「「「へ?」」」
ハーレイと言えばキャプテンのこと。ソルジャーへの報告なんかも多そうですから、青の間に出入りしないとなったら全く話にならないんじゃあ…?
「もちろん、仕事のことでは毎日来てるんだけど…。ちゃんと報告に来るんだけれども、それが終わったら、「では、本日はこれで」と帰っちゃうんだよ!」
ぼくのベッドに来てくれない、とブツブツブツ。
「いつも言ってるけど、ぼくのハーレイは見られていると意気消沈なヘタレだからねえ…。ドアが開けっ放しになった部屋だと、その気になれないらしいんだよ!」
「ヘタレでなくても、普通はそうだと思うけど?」
ぼくだって開けっ放しの部屋は御免だ、と会長さん。
「なんのためにラブホテルとかが存在するのかという問題だよ、そこの所は! ああいったことは閉鎖空間でするべきことでね、開けっ放しなんて、とんでもないから!」
それじゃ変態か、エロい動画の撮影とかだ、と会長さんはビシバシと。
「君のハーレイの行動はごくごく自然なことだと思うけどねえ?」
「そうなのかい? …仕方ないから、ぼくの方から出掛けて行こうとしたんだけれど…」
そっちの方も断られた、と肩を落としているソルジャー。
「夜の間に青の間にいないとバレてしまったらどうするんです、と言うんだよ! きっと探しに行くだろうから、ぼくたちの仲もバレそうだ、と!」
とっくの昔にバレバレなのに、と大きな溜息、もう幾つ目だか数えていません。
「そんなわけでね、部屋にいたって落ち着かない上に、夫婦の時間も御無沙汰なんだよ。これがストレスでなければ何だと…!」
もう限界だ、と頭を抱えているソルジャー。…青の間のドアは今も壊れて開けっ放しのままなんでしょうが、その状態でどうやって此処へ来られたと?
いい機会だからと修理されずに放置されている青の間のドア。お掃除部隊が掃除しに来たり、キャプテンが夫婦の時間を避けたりと何かと問題があるようです。ただし、ソルジャー限定で。ソルジャーの世界の人にとっては壊れている方が嬉しいドア。
「…えーっと…。君の青の間、ドアは今でも開けっ放しの筈だよね?」
だから愚痴りに来てるんだよね、と会長さん。
「君の不在がバレそうだけど? お掃除部隊は掃除を済ませて帰ったのかもしれないけれども、ドアが開いてるなら誰でもヒョイと入れそうだし」
バレないように早く帰って部屋にいたまえ、と会長さんが注意をすると。
「その点だったら大丈夫! ちゃんとぶるぅに頼んで来たから!」
「「「ぶるぅ?」」」
大食漢の悪戯小僧か、と目を剥いてしまった私たち。あんなのが役に立つんでしょうか?
「ぶるぅは充分、役立つけどねえ? 出すものを出せば」
御礼は山ほどのスナック菓子とコンビニデザート! とソルジャーは威張り返りました。
「ぼくの代わりに留守番をすれば買ってあげると言ってあるから、今も青の間で頑張ってるよ。ぼくのふりをして座るくらいは、サイオンも大して必要ないし…」
エネルギー切れにはならないのだ、という自慢。そういえば「ぶるぅ」はサイオン全開だと三分間しか持たないというカップ麺みたいなヤツでしたっけ…。
「だからね、今の内なんだよ! こっちの世界でストレス解消!」
せめてパフェくらいは食べさせてくれ、とソルジャーはペロリと平らげた上に、今日は一日居座るつもりみたいです。いえ、今日だけで済めばいいですけれど…。
「あんた、ドアが直るまでは毎日、こっちに来る気じゃないだろうな?」
まさかな、とキース君が言うなり、ソルジャーは。
「君だって言えた義理じゃないよね、ストレス解消に関しては!」
卒塔婆書きをサボッて来てるんだろう、と切り返し。キース君はグッと詰まってしまって。
「そ、それは…。それは確かにそうなんだが…」
「ほらね、立派にお仲間だよ! 今日からよろしく!」
ぼくは開けっ放しのドアの不満を愚痴りに来るから、君は卒塔婆書きを愚痴りたまえ、と何故だかソルジャーの御同輩にされてしまったキース君。ひょっとしたら明日から来なかったりして、余計にストレスが溜まりそうだと逃げちゃって…。
今日はともかく、明日以降もストレス解消にやって来る気のソルジャー。青の間のドアが直らない限りは本気で毎日来そうです。キース君どころか、私たちの平和も脅かされてしまいそうで…。
「あのう…。そのドア、キャプテンの権限でなんとかならないんですか?」
シロエ君が声を上げました。
「確かキャプテン、長老よりも上だったんじゃあ…。詳しいことは知りませんけど、シャングリラでの実権ってヤツは大きそうですよ」
特に修理に関しては、とシロエ君。
「トイレの修理もキャプテンの指示を仰がなきゃ駄目だと聞いた気がしますし、ドアの修理はキャプテン次第でどういう風にも出来そうですけど」
「そうだよなあ? 急がせろ、って言いさえすればよ、すげえ短時間で済みそうだぜ」
モノがソルジャーの部屋のドアなんだからよ、とサム君も。
「会議で決まったことでも何でも、船のことならキャプテンが最高責任者なんじゃねえのかよ?」
「それっぽいよね、いちいち会議を開いていたら間に合わないよね…」
緊急事態って時もあるし、とジョミー君。
「即断即決で修理班を出せなきゃ、キャプテンの意味が無さそうだよ?」
「…うん。そこはジョミーの言う通りでさ…」
普段だったらそうなんだけど、と頷くソルジャー。
「隔壁閉鎖とか、もう文字通りに一人でバンバン決めていけるのがキャプテンだけどさ…。今回の件は例外なんだよ、実害を全く伴わないから」
むしろ有難がられる故障だから、とソルジャーの嘆き。
「そりゃね、ハーレイだって会議で反対はしたよ? 開けっ放しにされてしまったら自分も困ってしまうわけだし…。ぼくの所に来られないから」
夫婦の時間がお預けというのはハーレイだって辛いんだから、と言うソルジャー。
「日頃ヘタレだと詰られていたって、、海の別荘行きの特別休暇の獲得のために仕事三昧で疲れていたって、やっぱりたまにはリフレッシュだよ!」
ぼくと一発、愛の時間でエネルギー充填したくもなるよ、と話すソルジャー。
「その辺もあって、「直ぐに修理をさせましょう」と言ったんだけれど、一人だけがそれを言ってもねえ…。他の四人が「現状維持で」と主張しちゃえば勝てない仕組み」
ゆえに敗北、とフウと溜息。キャプテン権限も通らなかったと言うんだったら、ドアは当分、開けっ放しになりそうですねえ…。
明日から毎日ソルジャーが来るのか、と泣きたい気持ちの私たち。楽しかった筈の夏休みが此処で一気に暗転、キース君の卒塔婆書きだって思い切り滞ってしまいそうです。青の間のドアさえ直ってくれればいいんですけど、直る見込みは無さそうですし…。
「…そのドア、どうにもならんのか?」
あんたが自分で修理するとか、とキース君が訊くと。
「見た目だけなら、サイオニック・ドリームでどうとでも…。でもねえ、根本的な修理になってはいないわけだし、やるだけ無駄だね」
お掃除部隊は幻のドアを突破して入って来るんだろうし、ハーレイはやっぱり夫婦の時間を避けるだろうし…、という答え。
「だって、所詮は幻だしね? ドアは閉まっていないわけでさ、何のはずみで幻のドアが消滅するかもしれないわけで…。それじゃハーレイも来てくれないよ」
ぼくが訪ねて行く方も駄目、と続いてゆく愚痴。
「修理したくても、ぼくはそっちの方面は駄目で…。工具を持ったら余計に壊してしまう方でさ」
「「「あー…」」」
そうだろうな、という気がしました。歩くトラブルメーカーなソルジャー、お裁縫もロクに出来ないレベルの不器用さだと判明しています。下手に修理に挑もうものなら、今なら数時間で直せそうな故障が一日がかりになってしまうとか、ドアも部品も総入れ替えとか…。
「ホントに色々とハードルだらけで、あのドアは直せないんだよ。…ハーレイが会議で頑張ってくれたお蔭で、海の別荘に行くまでには直る予定だけれど…」
別荘に行ってる間はぶるぅの留守番作戦も使えないものだから、と言うソルジャー。
「それまでには直すっていうことになっているけど、まだまだ先だし…」
「海の別荘は、お盆が終わってからだしねえ…」
でないとキースが暇にならないし、ジョミーもサムも忙しくなるし、と会長さん。
「仕方ないねえ、諦めて君も棚経修行をしてみるかい?」
お経の練習、と会長さんが持ちかけましたが、ソルジャーは。
「そういうのは求めていないんだよ! とにかくストレス解消だってば!」
美味しいおやつと食事があれば、とソルジャーはこっちに逃げ込む気。青の間のドアが直らないからには仕方ないですが、そのドア、なんとか直せないかな…?
お経の練習をする気も無ければ、私たちに迷惑をかけそうなことさえ全く考えていないのがソルジャー。今日の所はドアが壊れた愚痴だけで済んでいますけれども、日数が経てば夫婦の時間が取れない愚痴とか怪しい方へと向かいそうです。会長さんも当然、それに気付くわけで。
「あのね…。お経の練習をしないと言うなら、せめて別の方面で修行をね」
「修行って? ぼくはそういうのは好きじゃないけど」
楽なのが好き、とソルジャー、ケロリと。
「普段からSD体制で苦労しているわけだし、こっちの世界では羽を伸ばしたいねえ…!」
「それは自由にしてくれていいけど、言葉の方で修行をお願い」
「言葉?」
「そう、言葉! ぼくがイエローカードやレッドカードを出さずに済むよう、口を慎む!」
この夏はそういう修行をしてくれ、と会長さん。
「ドアが壊れて逃げて来るなら、ぼくたちのストレスも考慮して欲しいと思うわけだよ。怪しい発言さえしないでくれたら、相当マシになるんだから」
「でも…。ぼくも努力はしてみるけれども、セックスは心のオアシスなわけで…」
「どうして其処でもう言うかな!」
その一言が我慢出来ないのか、と会長さんが怒鳴り付けると。
「え、だって。…ハーレイとの時間は癒しの時間で、それがあるから頑張れるわけで…。そのオアシスが今は無い状態でさ、もう本当に限界なんだよ!」
癒しの一発も夫婦の時間も当分お預け、とソルジャーの方も負けてはいなくて。
「君はともかく、他の子たちは万年十八歳未満お断りだし、ぼくの話は意味が殆ど分かっていないよ、話をしたって無問題!」
「それが困るんだよ、喋らないでいるっていう選択肢は君には無いわけ?」
「努力はすると言ってるじゃないか! だけど自然に口からポロリと出ちゃうんだよ!」
日々の暮らしに欠かせないものがセックスだから、と余計な一言、会長さんが「また言うし!」と吊り上げる柳眉。
「本当に迷惑しているってことが分からないかな、君という人は! …ん?」
ちょっと待てよ、と顎に手を当てる会長さん。何か名案でも思い付きましたか、ソルジャーの怪しい喋りを封じる方法だとか…?
ナチュラルに怪しい発言を連発するのがソルジャー、会長さんが出すイエローカードもレッドカードも効果ゼロ。毎日来るならそれをやめろと言われた端から喋ってしまって、迷惑をかけている自覚も全く無さそうですけど。
「…そうか、迷惑…。その手があったか、君の青の間」
もしかしたらドアの修理をして貰えるかも、という会長さんの台詞にソルジャーが。
「なんだい、何かいい方法が見付かったのかい?」
「…方法の方はまだ何も…。ただ、アイデアの種と言うべきか…」
この種が芽を出してくれたら方法になる、と謎かけのようなアイデアの種。私たちは互いに顔を見合わせ、キース君が。
「なんだ、アイデアの種というのは? 禅問答でもするのか、あんた」
「そっちの宗派は修行していないよ、恵須出井寺でも座禅はするけど禅問答までは…」
範疇外で、と会長さん。
「でもね、このアイデアの種は使えると思う。芽を出しさえすれば」
「そのアイデアの種が分からんのだが…」
俺には謎だ、とキース君が言い、私たちも揃って頷きましたが。
「え、アイデアの種は何なのかって? 本当に種という意味なんだよ、アイデアの素」
育ってくれないと使えないから種なのだ、という説明。
「いいかい、ブルーの世界の青の間のドアは壊れっ放しで、修理はまだまだ先になりそう。…そこまでは分かるね、誰だって?」
「それはまあ…」
そのせいで明日から迷惑なんだ、とキース君が応えて、私たちも「うん」と。
「じゃあ、次に行くよ? ドアの修理が先送りにされた理由というヤツ、それは修理をしない方が喜ばしいからで…。いつも散らかってる青の間が綺麗に片付くからで」
「ぼくは困っているんだけどね!」
ストレスも溜まるし、とソルジャーが嘆くと、会長さんは。
「そこなんだよ。…君は困るし、ぼくたちは迷惑。ドアが直ってくれないと困る。…それをさ、君のシャングリラの人たちも感じてくれたらドアは直るかと」
「「「は?」」」
ソルジャーのストレスや、別の世界に住む私たちが感じている迷惑。そんな代物をソルジャーの世界のシャングリラの人たちにどうやって分かって貰えますか…?
ソルジャーが長をやっているのがシャングリラ。その長の意向をキッパリ無視して青の間のドアの故障を修理せずに放置、それがソルジャーの世界のシャングリラ。おまけに私たちの世界の存在なんかは知られてもおらず、迷惑したって苦情も届けられない現状。
「おい。…あんた、凄い無茶を言っていないか?」
こいつの意見も通らないのが向こうの世界のシャングリラだが、とキース君。
「ソルジャーが修理してくれと言っても直さずに放置しているドアをだ、俺たちが迷惑しているからと直してくれるわけが無いと思うが」
第一、どうやって苦情を届けに行くと言うんだ、と正論が。
「あんたも自力では飛べない筈だぞ、向こうまでは」
「誰も陳情に行くとは言っていないよ、要は迷惑という種なんだよ。…アイデアのさ」
ぼくの頭にあるのは其処まで、と会長さん。
「青の間のドアが壊れたままだと有難いから修理しないで放っているなら、その逆になれば修理するかと思ってさ…。つまりは迷惑」
「「「迷惑?」」」
「そう! ドアが壊れて開けっ放しだと誰もが迷惑することになれば、大急ぎで修理しそうだよ」
それこそ、船を挙げてでも! と会長さんは指を一本立てました。
「修理班の手が塞がってるなら、もう文字通りに猫の手だね! ちょっとでも使えそうな人を総動員して必死で修理するんじゃないかと」
早く直さないと船中が迷惑するんだから…、と会長さん。
「開けっ放しよりも閉まってる方が有難い、と気付けば修理をすると踏んだね」
「なるほどねえ…。でもさ、今はとっても有難がられて放置されてるわけなんだけど…」
誰も直してくれないんだけど、とソルジャーは溜息。
「実際、その方がお得らしくて、直そうっていう声も出ないし…。君のその案、どう使えと?」
「それがぼくにも分からないから、アイデアの種だと言ったんだよ」
どうすれば開けっ放しのドアが迷惑になるのか思い付かない、と会長さんにも無いらしい案。
「誰かこの種、育てられる人がいればいいんだけどねえ…」
「「「うーん…」」」
アイデアの種とはそういう意味か、と考え込んでしまった私たち。開けっ放しのドアが迷惑をかけると言ったら、このリビングだとクーラーの風が逃げてしまって効きが悪くなるとかですけれど。青の間のドアが開けっ放しだと、果たして迷惑かかるのでしょうか…?
壊れてしまった青の間のドア。けれど開けっ放しの状態が歓迎されているとかで、修理はされずに先延ばし。そのせいでストレスが溜まったソルジャー、こちらの世界を避難所にするつもりです。ソルジャーが来るのを防ぎたかったら、ドアを直すしかないわけで。
「ドアが開けっ放しの方が迷惑ですか…」
普通は冷暖房の効率が一番の問題ですが、とシロエ君。
「でも、それを考えても開けっ放しで問題無し、と結論が出てるわけですね?」
「そうなんだよねえ…。あのデカイ部屋の空調よりもさ、掃除が先に立つらしいんだよ」
ぼくはそんなに片付けられない人間だろうか、と頭を振っているソルジャー。
「お掃除部隊なんていうのは、たまに入れば充分だろうと…」
「そう思ってるのは君だけだよ、多分。だから壊れたドアを放っておかれるんだよ!」
日頃のツケが回って来たのだ、と会長さんが唱える因果応報。けれどもドアが直らない限り、そのソルジャーの巻き添えを食らって迷惑を蒙るのが私たちなわけで…。
「…困りましたね…」
何かいい案は無いでしょうか、とシロエ君が呟き、キース君が。
「俺の家だと、開けっ放しにしてある場所から蚊が入って苦労するんだが…。蚊取り線香が必須なわけだが、シャングリラに蚊はいないだろうしな…」
「あー…。キースの家だと藪蚊も山ほどいそうだよな」
裏山は木が茂ってるしよ、とサム君。
「ついでにアレかよ、庭池とかが天国になっていそうだよな、ボウフラの」
「いや、そこは…。そうならないように定期的に掃除をしてるが、何処からかな…」
ヤツらは湧いて来るんだよな、とキース君が零せば、ジョミー君が。
「人魂と同じで湧きそうだよねえ、お寺だと」
「失礼な! 元老寺の墓地に人魂が出たという話など無い!」
皆さん、立派に成仏しておられる、と合掌しているキース君。お参りする人が無くなってしまった無縁仏さんも毎年キッチリ供養だとかで、人魂も幽霊も目撃例は無いのだそうで。
「えーっ? それはある意味、間違ってない?」
墓地があるなら幽霊と人魂はセットもの、と言い出すジョミー君は心霊スポット大好き少年。また始まった、と思った私たちですが、そのジョミー君が「あっ!」と。
「使えるんじゃないかな、アイデアの種!」
これで芽が出る気がするんだけど、と言われましても。これって何のことですか?
墓地と人魂はセットものだと主張しかけたジョミー君。其処でアイデアの種がどうこう、青の間のドアが壊れている件と、元老寺の墓地がどう繋がるというのでしょう。会長さんまで怪訝そうな顔になってますけど、ジョミー君は。
「青の間のドアだよ、開けっ放しだと困るってヤツ!」
人魂と幽霊でどうだろうか、とジョミー君の口から出て来た怪談もどき。
「ほら、ブルーの世界と繋がった切っ掛け、キースが持って来た掛軸じゃない! 妖怪とかがゾロゾロ出るから、ってブルーが供養を頼まれてさ…」
「あったな、そういう事件もな。ぶるぅが飛び出して来やがったが」
あの掛軸は今も元老寺にあるんだが、とキース君。
「檀家さんに引き取る気が無いからなあ、月下仙境の軸」
「あれと同じだってことにするんだよ、青の間のドア! 閉まっていれば封印出来ても、開けっ放しだと色々ゾロゾロ出て来るってことで!」
大勢のミュウが死んでるんでしょ、とジョミー君はソルジャーの方に視線を向けて。
「その人たちもさ、シャングリラに乗ってるんだっていうことにしてさ…。普段は青の間の中で暮らしているけど、ドアが開いてるから外に出ようという気になったっていう方向でさ…」
サイオニック・ドリームで出来ないかな、と訊かれたソルジャーは。
「ああ、なるほど! 人魂と幽霊で迷惑をかければいいわけなんだね?」
ぼくのシャングリラに、とニッコリと。
「その手は大いに使えそうだよ、青の間の奥には亡くなった仲間の遺品が置いてあるわけで…。残留思念があまりに強くて、ハーレイくらいしか触れない話は有名なわけで…」
それでいこう、とポンと手を打つソルジャー。
「仲間たちの顔も姿もバッチリ覚えているからねえ…。もう今夜からやらせて貰うよ、人魂と幽霊のセットもの! これで青の間のドアの修理も急いでやって貰えそうだよ!」
「えーっと…。ジョミーのアイデアは良さそうだけれど、今日まで幽霊が出なかった理由はなんと説明するんだい?」
ドアはずうっと開けっ放しだったわけなんだけど、と会長さんが尋ねると。
「そんなの、至って簡単だってね! 幽霊っていうのは少しずつ近付くと言うじゃないか!」
こっちの世界の怪談の王道、と言われてみればそうでした。幽霊との距離が日毎に縮まり、連れて行かれる怪談の世界。青の間のドアから外に出るまでに日数がかかったという言い訳をすればバッチリですよね、今夜から幽霊が出没しても…?
ひょんな切っ掛けで芽吹いてしまった会長さんのアイデアの種。ソルジャーが暮らす青の間のドアは開けっ放しの方がいい、と修理されずに放置されているなら、修理したくなるよう迷惑をかければいいというヤツ。
ジョミー君のアイデアを使うと決めたソルジャーはウキウキと幽霊や人魂に関する怪談を夜までやらかした挙句に、「ありがとう!」と帰って行ってしまって…。
「…これで明日から来なくなるかな?」
ぼくはアイデアを出したんだけど、とジョミー君が首を傾げて、キース君が。
「さあな? どうなったのかの報告ってヤツに来そうな気もするがな…」
ともあれ俺には卒塔婆のノルマ、とブツブツと。今日は丸一日サボりましたし、明日から再び大車輪でしょう。早朝から書いて昼前までには抜けて来るとか言ってますけど…。
そして翌日、私たちはまた会長さんの家に集まって朝からダラダラと。この暑いのにプールへ行くのも面倒ですから、涼しいお部屋が一番です。リビングのドアをピッタリと閉めて午前中からブルーベリーのフラッペを美味しく食べていたら…。
「こんにちはーっ!」
ぼくにもフラッペ、と現れたソルジャー。空いていたソファにストンと腰掛け、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がサッと用意したフラッペをシャクシャクとスプーンで掬って。
「青の間のドアね、大急ぎで直してくれるそうだよ。今日の夜には間に合うように!」
「本当かい?」
そんなに早く、と会長さん。
「昨日の今日だよ、例の作戦、もう効いたのかい?」
「それはもう! こっちで夜まで怪談三昧やって帰った甲斐があったね、サイオニック・ドリーム全開でシャングリラ中に大迷惑をね!」
ジョミーの案をちょっとアレンジさせて貰った、と満面の笑顔。
「ぼくが頑張って封印していた霊がとうとう外に出てしまった、という話にしたよ。日頃の苦労をみんなに言うのはソルジャーとしてどうかと思って黙っていた、とね!」
こういう事態になるまで必死に引き留めていた霊がとうとう外に…、とソルジャーは朝からお詫び行脚をして来たそうです。サイオニック・ドリームの幽霊や人魂で怖い思いをしたシャングリラ中の人たちに。
「ぼくの力が足りなくてごめん、と謝ったら誰もが怒るどころか労ってくれてねえ…。ゼルなんかは号泣していたよ。懐かしい仲間に会えたというのに、怖がってしまって済まなかった、と」
「「「………」」」
そんな大嘘をついたのかい! と呆れましたが、嘘だと知っている人はキャプテンだけしかいないのだそうで。
「ハーレイには言っておかなきゃねえ…。青の間のドアを修理するための嘘とお芝居だということをね! でないとドアの修理が終わった後の夫婦の時間が素晴らしいものにならないし!」
あの幽霊だの人魂だのが本物なんだと思われたんでは…、とソルジャー、パチンとウインク。
「何度も言うけど、ハーレイは見られていると意気消沈で…。それが幽霊でも駄目だしね!」
「もういいから!」
ドアの修理が済んだら帰ってくれたまえ! と会長さん。青の間には今も「ぶるぅ」がソルジャーのふりをして真面目に座っているそうです。「ドアの修理はまだなのかい?」と。
こんな具合で、開けっ放しで放置されていた青の間のドアは凄いスピードで修理完了、次の日からソルジャーはもう来ませんでした。昨日までの間に溜まったストレス発散とばかりに散らかしまくって、キャプテンと夫婦の時間を満喫しているのでしょう。
「…ジョミーのお蔭で助かった。まさか怪談が役に立つとはな」
平和な日常が戻って来た分、俺も卒塔婆書きを頑張らないと…、とキース君が誓うと、そのジョミー君が。
「それだけど…。助かったと思ってくれるんだったら、今年の棚経、ぼくは休みで」
サムだけで行ってくれないかな、というお願いが。今回の功労者ですから、それもいいかな、と私たちは思ったんですけれど。
「俺はやぶさかではないが…。間違えるなよ、棚経のトップは親父なんだ」
そしてお前は今年は親父と回る予定になっている、と可哀相すぎる宣告が。
「ちょ、ちょっと…! だったら、ぼくはアイデアの出し損だったわけ?」
「悪く思うな、俺にもどうにもならんのだ」
礼が欲しいなら他のヤツらに頼んでくれ、とキース君が言った所でクーラーの効いたリビングの空気がユラリと揺れて。
「この間はどうもありがとう! 御礼だったら、このぼくが!」
みんなに御礼、とソルジャーが姿を現しました。御礼って何かくれるんでしょうか、何も持ってはいないみたいに見えるんですけど…?
「凄い御礼をするからさ! 海の別荘、ぼくたちの夜を完全公開!」
「「「は?」」」
「公開だってば、ドアの故障から始まった事件の御礼だからね! ぼくのハーレイには内緒だけれども、寝室のドアを完全開放、いつでも覗きがオッケーなんだよ!」
ぼくとハーレイの夫婦の時間をお楽しみに、とソルジャー、ニコニコ。
「あっ、写真撮影とかは駄目だよ、見るだけだからね!」
「「「要らないから!!!」」」
会長さん以下、綺麗にハモッた叫びですけど、ソルジャーはと言えば。
「えーっ? こっちのハーレイにも見せてあげたいし、出血大サービスなんだけど…!」
是非見に来てよ、と今度はドアを自分で開けっ放しにするつもり。こんな結果になるんだったら、青の間のドア、開けっ放しで壊れたままの方が良かったでしょうか、迷惑でも。恩を仇で返している気は無さそうですよね、そんなサービス、誰も頼んでいないんです~!
閉まらない扉・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
壊れてしまった、ソルジャーの世界の青の間の扉。その上、自業自得で先延ばしな修理。
こちらの世界が迷惑なわけで、ジョミー君が出したアイデア。怪談好きが役に立ちましたね。
次回は 「第3月曜」 4月18日の更新となります、よろしくです~!
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こちらでの場外編、3月といえば春のお彼岸。毎年恒例なんですけれど…。
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