シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
補欠合格 ・第1話
「捨てる神あれば拾う神あり
受験生も歩けばぶるぅにあたる」
校長先生、お言葉ありがとうございます!
パンドラの箱のおかげで補欠合格できました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」にあたったおかげですね。校内でチョコのやりとりをしない者は礼法室にてバレンタインのお説教ですか。でもって積極的に参加すべし、と。チョコのやりとりも温室のチョコレートの噴水もすっごく興味がありますけども、まずはパンドラの箱で補欠合格させてくれた「そるじゃぁ・ぶるぅ」にお礼を言わなくちゃ、です。
えっと…パンドラの箱は今も大切に持っていますが、補欠合格の知らせを貰った時、お礼状と一緒に何か入れようと思ったのに…私、お小遣いをパンドラの箱の要求で使い果たしてしまっていて。ママに前借を頼んでみたら「無駄遣いしちゃったんでしょう」とすげなく断られてしまいました。
仕方ないから台所にあったカップ麺を入れてみたんですけど、気に入られなかったのか「お湯を注いででろでろになった状態」で返品されてきたんです。どうしましょう、何か…気に入ってもらえそうなもの…。そういえばお風呂が好きでしたっけ。
なのでスーパー銭湯の回数券を1枚入れておいたら「いいお湯だったv」って書いたメモが入っていましたけれど、やっぱり何かが足りませんよね。そっか、チョコレートの噴水か!
私はチョコレートの型になりそうな器をみつくろって紙袋に入れ、シャングリラ学園の温室に向かいました。わぁ、本当にチョコレートの噴水がありますよ!生徒さんがミカンをコーティングしたりして盛り上がっている横からお弁当箱の蓋(これが一番、チョコレートの型に向いていそうだったんです)を差し出し、チョコレートで一杯にして…固めるために一旦、外へ。
折からの寒さでチョコはすぐに固まってきます。ちょうど氷の張った池があったので浮かべてみたら見る見るうちに綺麗なチョコが出来ました。よいしょ、と型から抜いてチョコレートが1個出来上がり。温室に取って返してまたチョコレートを流し込んで…。
その繰り返しでチョコレートを10個作った私は家に帰って、可愛い空き箱に1枚ずつ紙に包んだチョコレートを詰め、ラッピングしてリボンをかけて。…「そるじゃぁ・ぶるぅ」、気に入ってくれるでしょうか?
とりあえず「シャングリラ学園で一番チョコレートをあげたい気分」なのは今は「そるじゃぁ・ぶるぅ」です。美形の生徒会長さんも気になりますが…パンドラの箱を売って下さったのはあの人ですが、補欠合格させてくれた恩人にお礼を言わなくちゃなりません。
私はお気に入りの便箋にこう書きました。
「ありがとう、そるじゃぁ・ぶるぅ。大好き!」
そしてチョコレート入りの箱と一緒にパンドラの箱に入れ、パタンと蓋を閉めたのです。…しばらくして蓋を開けてみるとチョコレートと便箋は消えていて、代わりにメモが入っていました。
「照れちゃうよv」。
校長先生、もしかして…「そるじゃぁ・ぶるぅ」に告白したことになっちゃったのではないでしょうね?なんだかちょっと心配に…。
補欠合格 ・第2話
校長先生、もうすぐバレンタインデーですね!美形の生徒会長さんにどうしても「まともなチョコ」を差し上げたいと思い、バイト禁止の校則を破って中華料理店で皿洗いのバイトをしてきました。なんとかバレずに済みましたです。生活指導の先生がラーメンを食べに入って来られたのを厨房から見かけた時は心臓が凍りましたが。…シャングリラ学園はバイトはOKなんでしょうか?
ともあれ懐が暖かくなりましたので、チョコレートを買いに行けますよ。でも生徒会長さんは「300年も在籍している」なんておっしゃってましたし、どんなチョコレートをお渡しすればいいのか全く見当がつきません。凡人の考えなど及ばない方かも…。思えばチョコレート発祥の地では「酒は口からではなくお尻から」飲むものだったとか。酒宴では奴隷が王様や貴族のお尻に恭しくお酒を注入していたと聞き及びます。そんな時代もあったんですから、300年もの年季の入った生徒会長さんのお好みのチョコは常識では考えられないようなモノかもしれません。どうしましょう…。
考え込んでいた時、目に入ったのは部屋に置きっぱなしにしていたパンドラの箱でした。シャングリラ学園のマスコットにして「生徒や先生でも滅多に出会うことができない」座敷ワラシみたいな存在だという「そるじゃぁ・ぶるぅ」なら生徒会長さんのお好みのチョコを知っているかも!?うん、ダメ元で聞いてみるのがいいかも、です。私は早速、自分のオヤツに買ってきたチョコレート・ポッキーをパンドラの箱に入れ、「生徒会長さんのチョコの好みを教えて下さい」と書いた便箋を添えて蓋を閉めました。
待つこと30分。…そろそろいいかな、と箱を開けてみるとポッキーは無くなっていて、代わりにメモが入っています。
「ブルーはバレンタインデーのチョコならなんでもオッケー。もらうチョコの数は学園でダントツの1位だよ。…好みがうるさいのはぼくの方。君のチョコには愛がこもっていて感激しちゃったv」
校長先生、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何か勘違いをしてないでしょうね?心配ですけど、生徒会長さんのチョコの好みが特にないらしいことは分かりましたので、ちょっとデパートまで走ってきます!
補欠合格 ・第3話
今日はいよいよバレンタインデー!
美形の生徒会長さんに渡すチョコレートを抱えて学園にやって来ましたが…まずは温室のチョコレートの滝に詣でて必勝祈願。ちゃんと手渡せますように&熱い想いが通じますように、と心をこめて拝んでおきました。バナナやミカンをコーティングしている生徒さんたちに変な顔をされましたけど、縁起かつぎは重要です。
えっと…生徒会長さんは…。捜していると生徒会室を見つけました。ちょうど扉が開いて会長さんが出てらっしゃいます。
「あのっ、これ!…受け取って下さい!!」
バイト代を張り込んで買った舶来モノのチョコレートの箱を差し出しながら、私は真っ赤になっていました。だって…人生初の本命チョコってヤツなんですもの。
「ぼくに?…嬉しいな。…そういえば、君は…」
生徒会長さんはニッコリ笑って受け取って下さり、お茶を飲んでいかないかい、と誘って下さったではありませんか。夢みたい…。生徒会室に入ってみると、机の上にチョコレートが山積みでした。「そるじゃぁ・ぶるぅ」のメモにあった「ブルーがもらうチョコの数は学園でダントツの1位」というのは本当のようです。私のチョコはどうなるのでしょう。こんなに沢山あったのでは…。でも私が渡したチョコレートの箱は机の上ではなく、生徒会長さんのものらしい鞄の中に入れてもらえたんです。もしかして想いが通じましたか?どきどき…。
「ぶるぅと文通してるんだってね」
生徒会長さんがティーカップを差し出しながらおっしゃいました。
「は?」
「パンドラの箱、使ってくれているだろう?…今年箱を買った人の中で注文を全部こなした人は君だけなんだ。他の人は3つ目くらいでリタイヤしちゃったみたいだね。リタイヤは当然、返金の対象外なんだけど」
「私だけ…だったんですか…?」
「うん。補欠合格できただろう?…それだけじゃない。ぶるぅも凄く喜んでたよ。「身体を張って男湯に連れてってくれたんだ」と感激していた。「愛がないとできないよね」って」
う。…なんだか不吉な予感が…。
「おまけに手作りチョコレートが愛のメッセージと一緒に届いた、と大喜びで見せに来たよ。ぶるぅは…まだまだ子供だし、ああ見えてシャイだから、文通が精一杯だろうけれど…仲良くしてやってくれると嬉しいな」
ひゃああ!…やっぱり「そるじゃぁ・ぶるぅ」は勘違いを…!!
生徒会長さんはニコニコ笑ってらっしゃいます。
「ぼくにくれたチョコレートだけど、ぶるぅが楽しみに待ってたんだよ。「半分はぼくにくれるよね」って。なにしろ君は…ぶるぅの大切なペンフレンドだし。後で届けに行かなくちゃ」
「じゃあ、鞄に入れてらしたのは…」
「他のに混じって分からなくなると困るだろう?大切なチョコレートが」
「あのぅ…。私は生徒会長さんに…そのチョコレートを…」
私は必死に言ったのですが。
「おや、不満かい?…ぶるぅと仲良くしておいて損はないよ。ぶるぅを大事にしてくれる人は…ぼくにとっても特別だ」
えぇっ!?…それなら話は別かも!…その他大勢に数えられるより、少々ズレていても特別な方がお得です。ええ、きっと!
私のチョコレートは生徒会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が半分ずつ食べて下さったようです。なぜ分かるかって?…夜にパンドラの箱を開いてみたら、メモが入ってましたから。
「チョコレート、ありがとう。美味しかったよv」って。
生徒会長さんがおっしゃったとおり「そるじゃぁ・ぶるぅ」と文通するのも…有意義なことかもしれません。生徒会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は親しいようですし、「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」と言います。
校長先生、とりあえず「そるじゃぁ・ぶるぅ」と文通しながら学園生活を始めてみようと思いますけど、300年も在籍してらっしゃるという生徒会長さんのハートを射抜くのは難しいですか?
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