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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

迷惑なバナナ

シャングリラ学園、本日も平和に事も無し。今日から衣替えで制服と共に心も軽快、いつものように授業を済ませた私たちは御機嫌でした。放課後の溜まり場「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋でバナナシフォンケーキを頬張り、楽しくお喋りしていたのです。そう、余計なお客様が来るまでは…。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
「こんにちは。ぼくの分のケーキもあるよね?」
紫のマントを翻して現れたソルジャーにガックリと肩を落とす私たち。また来たんですか、この人は!
「…何の用だい?」
会長さんが仏頂面で訊けば、ソルジャーは。
「そりゃもう、楽しいティータイム…ってね。あ、ありがとう」
「お代わりもあるから、ゆっくりしていってね」
ニコニコ笑顔の「そるじゃぁ・ぶるぅ」がケーキと紅茶を出しています。食べ終わったら帰ってくれ、という私たちの気持ちはサックリ無視され、ソルジャーは悠然と食べてお代わりを。
「うん、いつ来ても美味しいや。ぼくのシャングリラのデザートもけっこういけるんだけど、やっぱり素材の違いかなぁ…。同じバナナでも生で食べると断然こっちのが甘いしね」
「分かってるんなら環境の調整を頑張りたまえ。こっちのシャングリラ号ではそういう努力は怠っていない」
士気を高めるには美味しい食事、と会長さんがブチ上げましたが、ソルジャーは。
「その辺の優先順位がちょっと異なるものだから…。まずはクルーの安全だよ」
「「「………」」」
出ました、ソルジャーお得意のSD体制攻撃が! コレが出ると反論はまず不可能です。そしてついでに地雷でもあり、迂闊に踏むとロクでもない結果が待っていることもしばしばで…。
「バナナを見事に育て上げるのも大事だけどさ、それよりも先にみんなの命を守らないとね。SD体制はミュウの存在を認めていないし…。ところで、バナナって何かに似てると思わないかい?」
「「「???」」」
なんのこっちゃ、と首を傾げた私たちですが、ソルジャーの方は嬉々として。
「んーと…。ぶるぅ、生のバナナはまだ残ってる?」
「まだあるよ! すぐ取ってくるね」
はいどうぞ、とキッチンから取って来たバナナを差し出す「そるじゃぁ・ぶるぅ」。バナナジャムも作ろうと思ったのだそうで、何本ものバナナが房になっています。
「房だったんだ…。1本もいでも構わないかな?」
「うん、いいよ。食べるんだったらナイフとかも要る?」
「このままがいいんだ。…よいしょっ、と」
ソルジャーはバナナを1本ポキリと折り取り、私たちの前に翳して見せて。
「反りも形もちょうどいいかな? 残念ながら太さと長さが足りないけれど…。このサイズだと、ぼくの方が近い」
「「「は?」」」
ますます謎だ、と思った私たちを他所に爆発したのは会長さんで。
「やめたまえ!!!」
即刻退場、とレッドカードを突き付けています。あぁぁ、やっぱり地雷を踏んでたみたいですけど、今日はこれからどうなるのやら…。

バナナが何に似てると言うのか、そして何ゆえのレッドカードか。怪しくなってきた雲行きを他所に、ソルジャーはしっかり居座ったまま。バナナの皮を剥き、ペロリと舐めて。
「皮を剥くと細くなっちゃうからねえ、ハーレイのサイズとは程遠いかな。…バナナもハーレイも美味しいんだけど」
「退場!!」
今すぐ出て行け、と怒り心頭の会長さんにソルジャーはいけしゃあしゃあと。
「君も頬張ってみれば分かるよ、ハーレイの味! ホントのホントに美味しいんだ。…あ、君たちには意味が分からないかな? ハーレイの分身だとか息子って言えば分かるかなぁ…」
「「「!!!」」」
ソルジャーがやりたかったものは猥談でした。コレが地雷というヤツです。当分の間、バナナが食べられなくなりそうな気分の私たちにはお構いなしに、ソルジャーの語りは続いています。
「これをさ、頬張るのもいいけど入れて貰うのが最高だよね。ブルーも一度は体験すればいいんだよ。そしたら絶対、天国気分を味わえるから」
「お断りだってば! でもって、退場!」
万年十八歳未満お断りの連中の前でそれ以上を言うな、と会長さんは眉を吊り上げていますが、その言葉が御利益を失ったのは私たちが二十歳を越えた年。実際の年は十八歳どころか二十歳じゃないか、とソルジャーが主張したのです。私たちの世界で二十歳と言えば立派に成人年齢で…。
「万年十八歳未満お断り? 今更そんなの言われてもねえ…。二十歳をとっくに越えてるんだよ、大人だろ? ぼくの世界じゃ十四歳で成人なんだし、十六歳からは結婚も出来る。ガタガタ言わずに黙って聴く!」
意味が全く分からないのは御愛嬌、と笑うソルジャーの真のターゲットは私たちではありません。ソルジャーとは違うベクトルで大人の時間を満喫している会長さんが狙いなのです。
「考えてもごらんよ、ぼくの方のぶるぅは大人の時間もバッチリ見学しているんだよ? それに比べたら話くらいは…。見聞を広めておいて損は無いってば」
それが何の役に立つと言うんだ、というキース君の叫びは今日も届かず、ソルジャーはバナナをこれ見よがしに舌でペロペロ舐めながら。
「…こういうハーレイをさ、待ったなしに味わえるのって最高の気分だと思わないかい? キャプテンの制服のファスナーを下げたら、即、食べられるって素敵なんだよ」
「「「…は?」」」
「だからさ、ズボンのファスナーを下ろせば臨戦態勢! 頬張っても良し、突っ込まれて良し…。そんなヤツが制服のすぐ下に…、って思っただけでドキドキするよね、ブリッジでもさ」
「…き、君は……」
いったい何をやらかしたんだ、と会長さんが掠れた声で質問すれば、返った答えは。
「ん? 決まってるだろう、下着無しだよ! ぼくたちの仲は円満だけど、たまに刺激も欲しくなる。そしたらカップル向けの情報誌にさ、そういうネタが載っててさ…。これいいね、って話になって」
実はぼくも下着無しなんだけど、とウインクしたソルジャーの顔面にレッドカードがピシャリとヒット。会長さんの堪忍袋の緒がとうとう切れたみたいです。
「ぶるぅ、シフォンケーキの残りと此処のバナナを持ち帰り用に詰めてあげて。当分バナナは食べたくないから」
「え? バナナジャム、ブルーも楽しみにしてたのに?」
「そういう気分じゃなくなったんだ。バナナは暫く見るのも嫌だよ!」
こんなモノ、と怒り狂う会長さんをソルジャーが気にする筈も無く。
「ふうん? 食わず嫌いは良くないよ。君も是非、ハーレイの特大の美味しいバナナを…」
「退場!!!」
二度と来るな、と喚き散らしている会長さんの前でソルジャーはお土産を詰めて貰った紙袋を受け取り、笑顔で手を振って消えてしまいました。今日の地雷も凄かったです。…私もバナナは暫く遠慮したいかなぁ…。

「…なんだったんだ、あれは…」
疲れたぞ、とキース君が呻けば、会長さんが深い溜息をついて。
「要はアレだよ、いつもの幸せ自慢だよ…。それにしたってノーパンだなんて悪趣味だとしか言いようが…。世間には好きな人もいるけど、ぼくにそっちの趣味は無いんだ。一種の変態プレイだろ?」
「俺に訊かれて分かると思うか?」
「ああ、そっか…。昔は色々あったんだよねえ、ノーパン喫茶とか…って、ダメだ、これじゃブルーと変わらないや」
今の発言は忘れてくれ、と会長さんは言ってますけど、要するに下着を着けていないっていうのがミソなんですね?
「まあね。…あーあ、ブルーもホントにロクでもないことばかり喋るんだから…。どんなに幸せ自慢をしたって、ぼくがその気になるわけがない。あのハーレイが下着無しだなんて考えただけでも寒気がするよ。ズボンの下には紅白縞! それが王道! …あれ?」
「おい、どうした?」
キース君の問いに、会長さんは。
「うん、ちょっと…。ほら、ハーレイが下着無しどころかストリーキングって、何度もやらせているだろう? ひょっとしたらノーパンの方も使えるんじゃないかと思ってさ」
「「「えっ?」」」
「そうだ、ノーパンで遊んでしまえばいいんだよ! そうすればブルーの嫌な話を綺麗に忘れて気分スッキリ、バナナも美味しく食べられる。本家本元を拝んでなんぼだ」
それに限る、と会長さんはソファから腰を上げました。
「ハーレイのアレがいくらバナナに似てると言っても、臨戦態勢でなくちゃ似ても似つかぬ代物だしねえ…。そっちの方を目にしてしまえばバナナへの恨みも消えるってものさ。じゃあ、行こうか」
「あ、あんた、俺たちも巻き添えにするつもりなのか!?」
「死なばもろとも、毒を食らわば皿まで…だろう? 大丈夫、女子にはモザイクのサービスつきだ」
行くよ、と生徒会室の方へと向かう会長さんが目指す先には教頭室があるようです。同行するのをお断りしたい所ですけど、その辺は会長さんもソルジャーと大差ありません。思い立ったが吉日とくれば私たち全員を巻き添えにするのは毎度のことで。
「……なんで俺たちまでこうなるんだ……」
「諦めようよ、ソルジャーが来たら大抵こうなるパターンなんだし…」
運命だ、とジョミー君が嘆けば誰もがソルジャーが使ったお皿を睨み付けていたり…。そうする間にも壁際まで行った会長さんが。
「ほら、早く! グズグズしない!」
「「「はーい…」」」
思いっ切り不平不満のオーラを撒き散らしつつ、私たちは壁をすり抜けて生徒会室へ。そこから更に廊下へと出て、中庭を抜けて本館の奥へ。弾んだ足取りの会長さんの後ろを「そるじゃぁ・ぶるぅ」が跳ねてゆきます。何も分からない子供っていいな、と思っちゃうのも無理ないですよねえ…?

辿り着いた教頭室の重厚な扉を会長さんが軽くノックして。
「…失礼します」
「ブルーか。なんだ、どうした?」
お小遣いでも欲しいのか、と教頭先生は嬉しそう。例え財布が空になろうとも会長さんに貢ぐのが生甲斐、会長さんの顔を見られればラッキーデーなのが教頭先生。思わぬ訪問に心ときめいていらっしゃるのが分かります。でも…。
「ハーレイ、立ってくれるかな?」
「は?」
会長さんの唐突な指示に教頭先生は怪訝そうな顔。
「立って、と言っているんだよ。そうそう、そんな感じでOK」
さてと、と会長さんが跪いたのは机の横に立った教頭先生のすぐ前です。
「お、おい、ブルー? 何を…」
「シッ、これからがいい所なんだ。まずはベルトを外して、と…。あ、変な期待はしないでよ? 御奉仕ってヤツが好みだったら、ぼくじゃなくってブルーに頼んで」
あっちはその道の達人だから、と言われた教頭先生は既に耳まで真っ赤。なのに会長さんは容赦なくズボンのファスナーを下ろし、紅白縞ごと一気に引き摺り下ろした模様。スウェナちゃんと私の視界には既にモザイクがかかっています。
「ふうん…。コレが特大のバナナにねえ…。もうちょっと待てば変化するのかもしれないけれど、そっちを見たらオエッとなるし、バナナも嫌いになっちゃうし…。うん、これだけで充分だ。…ハーレイ、仕舞ってくれるかな? みっともないモノは片付けないと」
「す、すまん…」
気の毒な教頭先生は一方的に下ろされたズボンと紅白縞を引き上げ、ベルトを締めておられますが。
「あのさ、ハーレイ? ノーパンってヤツをどう思う?」
「……ノーパン……?」
「そう、ノーパン。さっきブルーが遊びに来てねえ、あっちのハーレイは最近ノーパンらしいんだ。いつでも何処でもズボンのファスナーを下ろしたら即、コトに及べるのが魅力的だと言ってたよ。流石にブリッジで実行したりはしないだろうけど、倉庫とかならアリかもね」
でなきゃ無人の格納庫とか、と会長さんの瞳がキラキラと。
「…君も負けてはいられないだろ? ぼくが贈った紅白縞っていうのもいいけど、いつでも何処でも…ってパターンも素敵だと思わないかい?」
「い、いつでも……」
ツツーッと教頭先生の鼻から垂れる赤い筋。もう血管が切れたようです。慌てて鼻にティッシュを詰め込む教頭先生に向かって、会長さんは。
「ブルーはぼくに君との時間の素晴らしさを説いて帰ったわけ。食わず嫌いは良くない、ともね。…だから君にもチャンスを進呈しようかと…。明日から一ヶ月間、ノーパンで過ごしてみないかい? ぼくが毎日チェックするから」
「…お、お前が…?」
「うん。専用のスタンプカードを作ってくるよ。一ヶ月分のスタンプが埋まれば素敵なことがある…かもしれない」
「……素敵なこと……」
オウム返しに呟く教頭先生の鼻血レベルはMAXでした。会長さんはフフンと鼻で笑い、教頭先生のズボンのファスナーの辺りを指差して。
「いいかい、明日から一ヶ月! スタンプ集めに挑戦するなら、はいと答える!」
「…わ、分かった…。頑張ってみよう」
「そうじゃなくって、はい、だってば!」
「は、はいっ!」
ビシッと背筋を伸ばした教頭先生に会長さんが満足そうに微笑んでいます。明日からノーパン、一ヶ月。しかも毎日チェックだなんて、私たちの運命の方もロクなことにはならないのでは…?

「ノーパンの上にスタンプだと? あんた、正気か?」
キース君がようやく突っ込んだのは「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋に戻ってから。会長さんは鼻歌まじりに定規で線を引いています。
「正気だってば、スタンプカードも作ってるだろ? スタンプはアレだね、『よくできました』ってヤツがいいよね、桜マークの」
「スタンプの柄はどうでもいい! 本気なのかと訊いているんだ!」
「本気だよ。ハーレイの方も本気で挑むつもりのようだし、ノーパンチェックは不意打ちでやるのがいいのかな? 毎日決まった場所と時間じゃ、その時間だけノーパンで過ごしそうだし」
「…教頭先生はそんな御方ではないと思うが…」
とても真面目でいらっしゃる、というキース君の言葉は会長さんに無視されて。
「いつでも何処でも、いきなりチェック! それでこそブルーが言ってた意味にもピタリと添うっていうものだよ。さて、ハーレイは頑張れるかな? 一ヶ月って短いようでも長いからねえ」
「……そうだろうな……」
始まる前から俺は疲れた、とキース君がテーブルに突っ伏し、私たちは天井を仰ぎました。明日から一ヶ月間も教頭先生のノーパンをチェック。こんな目に遭うくらいだったら一生バナナを食べられない方がマシだった、と思わないでもありませんけど、もう手遅れというもので。
「よし、スタンプカードはこんなものかな? 後でスタンプを買いに行って…、と。そうそう、問題のバナナだけどさ。ぼくはすっかり食べられる気分に戻っちゃったし、君たちにもお裾分けしてあげるよ」
意識の下でチョチョイと操作、と青いサイオンがキラッと光り…。
「どう? 今でもバナナは食べたくない?」
「い、いや…。まあ、食えるという気はしてきたな…」
キース君に続いてジョミー君も。
「あっ、ぼくも! 今日さ、晩御飯はフライだってママが言っていたから、バナナもお願い、って頼んで家を出て来たんだよ。だからヤバイと思ってたけど、これならオッケー!」
「ぼくも大丈夫みたいです。最近、母がバナナジュースにハマッてて…」
毎朝バナナジュースなんですよ、とシロエ君。ヨーグルトとバナナを混ぜてミキサーにかけて作るジュースで、シロエ君も気に入っていたらしく…。
「なんだ、けっこうバナナと縁があるヤツが多いじゃねえかよ。…俺もだけどさ」
サム君のママはバナナチーズケーキを焼くと話していたそうです。スウェナちゃんのママも昨日バナナを沢山買ったということですし、私も家に帰ればバナナがあるかも。だとすれば…。
「ね、バナナを食べられて損をすることは無いだろう? ブルーのお蔭で酷い目に遭ったけど、見事に克服しました…ってね」
そして明日からはスタンプの日々、と会長さんは楽しそうでした。教頭先生がババをお引きになったのでは、とも思いますけど、やっぱり我が身が大切です。バナナは美味しく食べたいですから、教頭先生のノーパンチェックにもお付き合いするとしましょうか…。

翌日の放課後、私たちは再び教頭室へと。スタンプカードとスタンプ、スタンプ台が入った箱を「そるじゃぁ・ぶるぅ」が頭の上に掲げています。
「ねえねえ、ハーレイ、頑張ってるかなぁ?」
「それはもちろん」
無邪気な声に会長さんは即答で。
「ぶるぅも見ただろ、いつもより念入りに朝のシャワーを浴びているのを。下着無しでズボンとなれば清潔にしておかないとね」
「そっか、そうだよね! 下着ってお洋服が汚れないように着るものだしね」
頑張ってるんだね、と感心している「そるじゃぁ・ぶるぅ」はソルジャーに踏まされた地雷の意味など最初から全く分かっていません。教頭先生のノーパンにしても単なるチャレンジ精神としか思っておらず、バナナなんかは果物としか…。本物の子供と万年十八歳未満お断りとの違いは非常に大きいのです。
「ハーレイ、入るよ?」
会長さんが教頭室の扉をノックして開き、私たちもゾロゾロと。それを迎えた教頭先生は少し緊張した面持ちで。
「…そ、そのぅ…。なんだ、やっぱり落ち着かないな…」
「そう? 嫌ならやめていいんだよ?」
スタンプが貰えなくなるだけだから、とカードを箱から取り出す会長さんに、教頭先生は慌てた顔で。
「い、いや、それは…! 一ヶ月だったな、それでお前と素敵なことが…」
「その前に努力ありきだね。さて、一日目はちゃんと出来たかな?」
よいしょ、と床に跪く会長さん。昨日と同じく教頭先生のベルトを外し、ズボンのファスナーをツツーッと下ろして…。
「はい、合格。よく出来ました」
ポンッ! と押された赤いスタンプを感無量で眺める教頭先生。けれど会長さんは冷たい口調で。
「さっさとソレを仕舞って欲しいんだけれど…。まだ一ヶ月は経っていないよ?」
「あ、ああ…。そ、そうだったな」
大急ぎでファスナーを上げる教頭先生は微塵も疑っていないようです。一ヶ月間ノーパンで通せば、会長さんと素敵なことが…。でも、本当に? 教頭先生が思う通りのことが待っているなら、会長さんの態度はもっとマシなんじゃないですかねえ?

教頭先生のノーパンライフは順調に続いていきました。一週間分のスタンプが揃う間には土日も挟まり、そこは会長さんが私たちを引き連れて教頭先生の自宅でチェック。二週間目も順調です。そんなある日のこと、1年A組の教室の一番後ろに会長さんの机が増えており…。
「諸君、おはよう」
グレイブ先生が朝のホームルームに現れるなり、目を剥いて。
「なんだ、どうしてブルーの机があるのだ? 今日は何の予定も発表も無いが…。おい、そこの特別生七人組! 何か聞いているか?」
「…たまには授業に出てみたい、と言っていましたが」
代表で答えたのはキース君でした。
「今月は古典だけ受けるつもりでいるようです。…教頭先生の授業ですから」
「ほほう…。まあ、そういうこともあるかもしれんな。まあいい、それなら私には関係が無い」
教頭先生にはとんだ災難かもしれないが、とグレイブ先生はアッサリ納得。クラスメイトたちは不思議そうでしたが、実際に古典の授業が始まってみれば答えは一目瞭然で。
「…すげえ…。生徒会長、堂々と早弁食ってるぜ…」
「早弁の上に御給仕付きかよ…」
授業に合わせて現れたのは会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ピクニックバスケット持参で机の上にサンドイッチなどを並べて食べ始め、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が熱々の紅茶を注いでいます。教室は既に授業などという雰囲気ではなく、教頭先生は誰にも注目して貰えません。そんな中で…。
『さあ、今日のチェックを始めようか』
「「「えぇっ!?」」」
会長さんの思念に思わず声を上げた私たちは思念で叱られ、続きは思念で。
『今からハーレイのズボンの下をチェックする。ぼくが早弁を食べてる姿は、ぶるぅがサイオニック・ドリームでキープし続けてくれるんだ。…いいね、ハーレイも?』
『こ、ここでか? 教室で…か?』
『それでこその抜き打ち検査だろ? いいから君は授業を続けて。…怪しまれないように』
シールドで姿を消した会長さんが教壇まで行き、同じくシールドで誤魔化しながら教頭先生のベルトを外してファスナーを…。教頭先生の口調と板書は挙動不審の域に入るほどまで乱れましたが、クラスメイトは「そるじゃぁ・ぶるぅ」が流す早弁サイオニック・ドリームに注目中で。
『はい、おしまい。よく出来ました』
じゃあね、と席に戻った会長さんは早弁の続きをパクパクと。まさか教頭先生が授業中に下半身を露出していたなんて、誰も気付きはしないでしょうねえ…。

抜き打ちチェックは授業中だけではなく、柔道部の部活にも及びました。見学と称して訪れた会長さんが休憩中の教頭先生の道着を下ろしてノーパンをチェック。もちろんキース君たち柔道部三人組を除く部員は気付いていません。しかし…。
「あーあ、教頭先生、技にキレが無いよ…」
門外漢のジョミー君ですら分かるレベルで教頭先生の集中力と技とはガタガタに。休憩前と後では別人のような変わりっぷりに心配した部員たちが休むように進言したほどです。全てを見ていたキース君が部活終了後に「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋で猛然と抗議しましたが。
「えっ、あれはハーレイの責任だろう? 柔道は心技体を鍛える武道だと随分前から聞いてるよ? ぼくが見学に行ったくらいで乱れるようでは話にならない」
「見学だけではなかっただろうが!」
「ノーパンチェックにも慣れた頃だよ、毎日やっているんだからさ」
馬耳東風な会長さんには言うだけ無駄というものです。こんな調子で授業中やら部活中やら、はたまた朝イチ、放課後遅く…、と一日一度のノーパンチェック。土日も欠かさず続いていって、とうとう迎えた一ヶ月後のその日、会長さんが最後のチェックに出発したのは下校時刻をとっくに過ぎてから。

「…ふふ、もう特別生くらいしか残っていない時間だからねえ…。ハーレイも期待してそうだ」
「どうするんだ、あんた…。スタンプは今日で揃うんだぞ?」
心配そうなキース君。それは私たちも同じでした。会長さんが予告していた素敵なことが本当に起こるとは思えませんけど、あれだけ毎日拝んでいれば万に一つの可能性とやらもあるのかも…? ハラハラしながら中庭を過ぎ、本館に入って教頭室の扉をノックして…。
「失礼します」
「おお、来たか。今日で一ヶ月目になるのだが…。見てくれ、ブルー。この通りだ」
教頭先生は自信満々、言われる前にベルトを外してファスナーを下ろし、御開帳。えっと、スウェナちゃんと私もいるんですけど……モザイクは会長さんがすかさず入れてくれましたけれど、あんまりなんじゃあ…?
「…やれやれ、デリカシーに欠けるね、ハーレイ? 女の子が二人もいるんだけれど?」
「す、すまん…。つい、嬉しさのあまり…」
「へえ…。君の嬉しさってその程度なんだねえ、これじゃ普通に露出狂だよ」
「は?」
キョトンとしている教頭先生の前に会長さんが跪き、ポケットから出したのは分度器で。
「…変化なし」
「な、なんだ?」
「変化ゼロって言ったんだけど? たまに角度を測っていたんだ、コッソリと…ね」
これじゃ全く平常値、と会長さんは大袈裟な溜息を。
「ノーパンなハーレイを満喫しているブルーの方はさ、コレをバナナに譬えていたわけ。でもさ、君のはバナナみたいに反り返ってたコトは一度も無いんだ、普通にブラブラ垂れているだけで。…最終日くらいは本気を出すかと思ったんだけどな」
「ほ、本気…?」
「そう、本気。ぼくと素敵な時間を過ごすぞ、っていう心意気と熱意を態度で示して欲しかった。これじゃバナナとは呼べやしないよ。バナナなんだって主張するなら腐ったバナナって所かな」
触っただけでグズグズに崩れてしまうヤツ、と会長さんが詰り倒しているモノが何かは私たちでも分かりました。大事な部分を腐ったバナナと形容された教頭先生は肩を落として項垂れています。
「君の程度はよく分かった。腐ったバナナで素敵な時間を過ごせる筈もないからねえ…。はい、今日のスタンプ。一ヶ月間、よく出来ました」
ポンッ! とスタンプを押した会長さんはそのままクルリと踵を返すと。
「君がノーパンでも大丈夫だってことが判明したのが、収穫と言えば収穫かな? 紅白縞はもう要らないよね、二学期からは中止にしよう」
「ま、待ってくれ! あれが無いと困る! あれは私の…」
「大事なバナナの梱包材だ、って? そこまで言うなら贈るけど…。腐ったバナナに梱包材って勿体無いなぁ、特製の桐箱が必要なほどに立派なバナナなら分かるんだけどさ」
ああ、勿体無い、勿体無い…、とクスクス笑いながら会長さんは出てゆきました。私たちと「そるじゃぁ・ぶるぅ」も続き、残されたのは腐ったバナナな教頭先生。その後、教頭先生の家にお中元として会長さんから立派な桐箱入りの見事なバナナがドカンと届けられたとか…。

「ふふふ、ジャストサイズのを選んだんだけど、腐ってしまう前に食べ切れるかなぁ?」
共食いだよね、と笑いまくっている会長さんが贈ったバナナは教頭先生の大事なバナナと瓜二つなサイズらしいです。えっ、なんで会長さんがサイズを知っているのかって? なんと言ってもタイプ・ブルーだけに教頭先生の夜のお楽しみを覗き放題、見放題。妄想まみれで出現するバナナをしっかり計測。
そうとも知らない教頭先生、少しは脈があるのかも…と希望を胸に今日もバナナをあんぐりと。そこは会長さんサイズのバナナを食べるべきでは…、と思ってしまった私たち七人組の頭にはソルジャーの毒がかなり回っているようでした。こんなことでは困るんですけど、またソルジャーは来るんでしょうねえ…。



                迷惑なバナナ・了

※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 月イチ更新になりましてから初の更新となりました。
 シリアスに締めた完結編とのギャップの激しさに驚かれたかと思います。
 いやあ、反動って恐ろしいものなんですねえ!
 ここまでのトンデモ話になろうとは夢にも思っておりませんでした、スミマセン。
 場外編は 「毎日更新」 で営業中です。お気軽にお越し下さいませv
 ←場外編「シャングリラ学園生徒会室」は、こちらからv






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