シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
今日はハーレイが来てくれる日。
朝食を終えたブルーはいつものように部屋を掃除してテーブルを拭いて、椅子もきちんと向かい合わせになるように据えて。抜かりはないかとグルッと見回し、勉強用の机の上を視線でチェックしていて「あっ…!」と小さく声を上げた。
どうして今日まで全く気付かなかったのだろう。自分の机には無くて当然のものだから?
(でも……)
あんなに何度も目にしていたのに、と自分の記憶力に少し自信が無くなる。とはいえ、せっかく思い出したからには今度は覚えておかなければ。ハーレイが来たら訊いてみようと思うけれども、会った途端に忘れる方には自信があった。
(ハーレイの顔を見ていられるだけで幸せだものね)
そのハーレイが部屋を訪ねて来てくれる。テーブルを挟んで向かい合って座って、母が用意してくれるお茶とお菓子が揃ったらお喋りをして。食べる暇も無くハーレイの膝に座って甘えてしまう日もあれば、向かい合わせのままの日もあって…。
(いけない、もう違うことを考えちゃってる!)
これでは絶対に忘れてしまう。二人きりの時に尋ねたいから、父や母も交えての夕食の席で思い出しても、もう遅い。
(…んーと……)
忘れないようにするためには…、と考え込んだ末に、ブルーは机の上にペンをコロンと転がしておくことにした。いつもならペンも鉛筆もペン立てにきちんと立ててある。それを片付けずに放置してあれば、いくら自分がウッカリ者でも見た時に思い出すだろう。
何のためにペンを放ってあるのか、ハーレイに何を訊きたいのかを。
案の定、ブルーはハーレイの顔を見るなり質問をすっかり忘れてしまった。大好きな声を聞いて膝の上で甘えて、ようやっと自分の椅子に戻った所で勉強机が目に入って。
「あっ、いけない!」
忘れてた、と叫んだブルーをハーレイが「どうした?」と鳶色の瞳で見詰める。
「お母さんならまだ来ないだろう。それとも、お前がお茶のおかわりを淹れに行くのか?」
母の来訪を減らしたいブルーは自分でお茶を取りに行こうと考えるのだが、これまた毎回忘れてしまう。だからこそのハーレイの発言であって、それもいいなと思ったものの。
「んーと…。そうじゃなくって…」
紅茶のポットはまだ温かいし、取り替えに行くには些か早い。何事かと母が訝りそうだ。それに自分が忘れ去っていたのはまるで別のことで、思い出させるための仕掛けは一度きりしか効果無しかもしれないのだし…。
(…忘れちゃったら大変だものね)
お茶の取り替えなら、この先もチャンスは何度でもある。今日でなくてもかまわない。今は質問を優先しよう、とブルーは向かい側に座るハーレイに赤い瞳を向けた。
「…お茶とは全然関係なくって、訊きたいことがあったんだけど…」
「俺にか? それを訊き忘れたら一大事なのか?」
怪訝そうなハーレイに「…そうでもないけど…」と曖昧に返し、立ち上がって机の上に転がったペンをペン立てに戻す。それから椅子に座り直して、やおら質問を口にした。
「ねえ、ハーレイ。…今も羽根ペン、使ってる?」
「羽根ペン?」
ハーレイの目が丸くなった。それは前世のハーレイが愛用していた白い鳥の羽根で出来たペン。あの時代ですらレトロなペンで、ハーレイの他には誰も使っていなかった。もちろんブルーも例外ではなく、ハーレイの部屋でしか羽根ペンを見た覚えは無い。
羽根ペン自体は人類側から失敬した物資に混じっていたもので、ドカンと一箱はあったと思う。ハーレイ以外に使う者が無いから、とても全部を使い切れはしないと皆で笑い合ったものだ。あのペンたちもシャングリラと一緒に時の彼方に消えたのだろう。
ハーレイが好きだったレトロな羽根ペン。一度だけ遊びに出掛けたハーレイの家の書斎でそれを目にしたかどうか、覚えが無かった。だからこそ訊いてみたのだけれど。
「使ってるわけがないだろう。持ってもいないな」
ハーレイの答えは当然と言えば当然すぎるものだった。今のハーレイは柔道と水泳が好きな古典の教師で、キャプテンだったハーレイではない。あの頃よりも更にレトロなアイテムになった羽根ペンなんかを持っている筈もないではないか…。
やっぱり前世と今の生は違う。
ブルーが十四歳の子供になってしまっているのと同じで、ハーレイにはハーレイの人生がある。羽根ペンを愛用していた頃のハーレイと今のハーレイとは違うのだ、と悲しい気持ちになるよりも先に。
「使ったことなんか無かったんだがな」
ハーレイが指先でテーブルをトン、トン、と軽く叩いて言った。
「…最近、欲しいような気もしてきたんだ。おかしなもんだな、俺の趣味ではない筈なんだが」
その言葉に胸が暖かくなる。ハーレイの中にはやっぱり前世のハーレイがちゃんと居るんだ、と嬉しさと喜びとがこみ上げて来る。ブルーはクスッと笑って答えた。
「おかしくなんかないよ、ハーレイ。…だって、ハーレイの大好きなペンだったもの」
「それはそうだが…。買っちまったとしても使いこなせる自信は無いな」
「平気だってば、すぐ思い出すよ。何回か書けば」
「…そうだといいがな」
羽根ペンにも申し訳ないし、と指をペンを持つ形にして動かすハーレイを眺めていたら、またも疑問が浮かんで来た。それをそのままぶつけてみる。
「じゃあ、日記は?」
「……日記?」
「ハーレイ、いつも航宙日誌をつけてたよ。今は日記はつけていないの?」
「…ああ、あれな…。確かにあったな、そういうヤツも」
日記については触れないハーレイに、ブルーは更に言い募った。
「航宙日誌じゃなくって日記だってば! 羽根ペンと同じで日記も無し?」
「……いや、今も書いてはいるんだが…」
どうにもハーレイは歯切れが悪い。これは絶対に秘密の日記に違いない、という確信がブルーの中に生まれてくる。大きな声では言えない日記。前の生での航宙日誌も「俺の日記だ」と読ませてくれずに隠していたけれど、あれは一応、日誌ではあった。
日誌はシャングリラの日々の出来事を記すものだし、如何に閲覧不可といえどもハーレイ個人の日記ではない。だが、今のハーレイはキャプテンという公人ではなく、普通の教師。日記に色々なことを綴って仕舞いこんでいるかもしれないわけで…。
(ふふっ)
訊いてみちゃおう! と、ブルーは赤い瞳を煌めかせた。
「ねえ、ハーレイ。その日記って、ぼくと会った日のことも書いてある?」
学校じゃなくてぼくの家で、と身を乗り出す。学校で会うのは当たり前だけれど、ブルーの家で会う日は特別。キスさえ許して貰えなくても恋人同士で過ごす時間だ。ハーレイは何処まで書いているのだろう? まさか話の中身まで?
嬉しいような恥ずかしいような、そんな気持ちで待っていたのに答えはいとも素っ気なかった。
「なんで一々、日記に書くんだ。休日は大抵、会ってるだろう」
「えーっ!?」
ガッカリしたものの、思い直して尋ねてみた。
「それじゃ、初めて会った日のことは?」
「生徒の付き添いで病院に行った、とは書いておいたが」
「…たったそれだけ?」
あんまりだ、とブルーは唇を尖らせたのだが、ハーレイは涼しい顔で続ける。
「生憎と、俺の日記は覚え書きでな。毎日の出来事とその日の天気くらいで充分だ」
「ひどい!」
劇的な再会を遂げた日ですら、日々の出来事と同じ扱い。生徒の付き添いで病院に行った事実に違いはなくても、其処は「前世で恋人だった生徒」と何文字か足して欲しかった。実はそう書いてあったのかも、と確かめてみたら「いや」と一言で片付けられて。
「ホントのホントに何にも無し? ぼくは血だらけだったのに!」
「大怪我だったらそのように書くが、異常なしじゃな」
どうやらハーレイは本当に何も書かなかったらしい。ブルーの心が不平不満で一杯になる。
「少しくらい書いておいてくれたって…。もしかして、航宙日誌にも何も書かなかったわけ?」
「何って、何をだ?」
「ぼくのこと! ソルジャー・ブルーのことじゃなくって、ぼくのことだよ」
流石にそれは書いていた筈、とブルーは思った。そうでなければ閲覧不可とは言わないだろう。なんと言ってもブルーはキャプテンよりも上のソルジャーで長だったのだから。しかし…。
「書かなかったな、ソルジャーではないプライベートなお前については」
「あれにも書いていなかったわけ!?」
今度こそブルーは泣きそうになった。今はともかく、前世での自分はハーレイと身体も心も固く結ばれた恋人同士。それなのに何ひとつ日記に記されていなかったなんて、悲しいどころか虚しい気分になってくる。いったい自分はハーレイにとって何だったのか。
前の生ですらその扱いなら、キスさえ出来ない今の生では本当に毎日の天気並みだとか…。
あまりのことに瞳から涙がポロリと零れそうになり、慌てて拳でグイと拭った。そのまま俯いてテーブルをぼうっと眺めていたら、大きな手が頭をクシャリと撫でて穏やかな声が降って来る。
「お前な…。そういうのを書いておいた場合に、後で困るとは思わないのか?」
好きでたまらないハーレイの声。悔しいけれども心がふわりとほぐれてしまう。でも…。
「なんで?」
どうして困るの、と顔を上げたブルーの瞳に苦笑しているハーレイが映った。
「いいか、よくよく考えてみろよ? 俺の日誌は超一級の歴史資料で、そっくりそのまま出版されちまっているんだが?」
「あっ…!」
言われてみればその通りだった。手軽に読める文庫本サイズから原寸大まで。歴史書コーナーの定番品で、図書館はもちろん、大きな書店なら揃えているのが当たり前。紙の本からデータベースと至れり尽くせり、いろんな言語でズラリ出揃い、それこそ宇宙の至る所に…。
ブルーはたったの十四歳の子供だったから、航宙日誌に用は無かった。手に取ったことすら一度も無いが、もしもあの中に自分とハーレイとのプライベートな出来事が書かれていたのなら…。
(ど、どうしよう…。ハーレイは書いていないって言っているけど、もしかしたら…!)
ハーレイだって人間なのだし、万が一ということもある。
(…ぼ、ぼ、ぼくとキスをしたとか、ぼくの部屋に泊まっていったとか…!)
恥ずかしすぎる、と真っ赤になったブルーの頭をハーレイがポンポンと優しく叩いた。
「安心しろ。お前とのことは本当に何も書いてはいない。現に誰も気付いていないだろうが」
「…えっ?」
「ソルジャー・ブルーとキャプテン・ハーレイが本当は恋人同士だったってことさ」
誰も知らん、とハーレイが微笑む。
「どんなに細かく読み込んだって、何処にも書いてはいないんだからな」
「…そっか…」
前の生での自分とハーレイの仲は誰も知らない。だから今の両親も当然、知らない。ハーレイと一緒に過ごすためには有難い事実だったけれども、ちょっと寂しい気持ちもした。
シャングリラの中だけが世界の全てだった遙かな昔。其処でハーレイと育んだ恋はブルーの殆ど唯一と呼べる幸せな記憶で、どんなに未来が見えない時でもハーレイが居たから生きていられた。
もしもハーレイが居なかったならば、ソルジャーとして毅然と立っていられたかどうか。脆くも心を病んでしまって、道半ばにして倒れ、朽ち果てていたかもしれない。
その日々が何処にも記されないまま、シャングリラと共に消えてしまっただなんて…。
残っていないことに安堵する半面、悲しくも思う遠い日々のこと。
白いシャングリラをブルーが守って、ハーレイが舵を握っていた日々。他の誰にも悟られぬよう隠し通した仲だったけれど、二人抱き合ってキスを交わして、それから、それから…。
しょんぼりとするブルーの肩にハーレイがそっと手を置いた。
「…どうした。残っていたら困りはするが、無いのも寂しい。…そんな所か?」
「……うん……」
言い当てられて、ブルーは頷く。その瞳に宿る悲しそうな光にハーレイが「そうか」と柔らかな視線を返して、その目をすうっと細めて言った。
「確かに何も残ってはいない。…しかしな、ブルー。俺にだけはちゃんと分かるんだ」
「……何が?」
不思議そうな表情を浮かべたブルーに、ハーレイはパチンと片目を瞑った。
「俺の日誌に書いてあることさ。どの日に何があったのか、とかな」
ハーレイがそれに気が付いたのは、小さなブルーと再会してから間もない頃。
転任教師としての多忙な日々が一段落して、休日はブルーの家を訪ねて束の間の逢瀬。前の生の記憶を取り戻すまでは思いもよらなかった幸せな日々だが、平日の自分はあくまで教師。ブルーと恋を語れはしないし、頻繁に訪ねるわけにもゆかず…。
そんな平日のとある夜のこと、ふと思い付いてデータベースにアクセスしてみた。前世の自分が毎日欠かさず記録していた航宙日誌。それを見ればきっとブルーのことも、と考えたのに…。
(…おいおいおい…)
なんてつまらない日誌なのだ、と我がことながら愕然とした。淡々と日々の出来事を綴った遊び心すらも無い文章。心から愛したブルーのことさえ『ソルジャー』と尊称で記してあるだけ。
(……いくら航宙日誌でもなあ……)
後々、次の世代の標になれば、と思って綴ったものではあったが、それが彼らの目に触れる時は自分は鬼籍に入っている。恥など関係ない身なのだし、戯れに書いた悪戯書きの一つや二つくらいあっても良かった。ブルーとのことも深い友情と受け止めて貰えそうな範囲で記しておけば…。
(…まったく色気のない日誌だな…)
スクロールする内に指が滑って、原文をそのまま記録してあるデータベースに入り込んだ。前の生での自分が綴った文字をそっくり写し取ったもの。それを見た瞬間、思わず息を飲んでいた。
羽根ペンで書かれた文字の微かな滲みに、ペンの運びに、鮮やかに蘇ってくるそれを記していた時の記憶。その時の自分の息遣いまでが聞こえてきそうな、その確かさ。
夢中になって時の記録を遡った。
今やソルジャーとなったブルーに募る想いを打ち明けようか、どうしようかと迷っていた頃。
迷っているのが自分一人ではなかったことに気付いて、秘かに心躍った日のこと。
そして…。
初めてのキスも、初めてベッドを共にした時のことも、何もかもが其処に残っていた。
(……ブルー……)
彼を喪った日に深い悲しみの中で記した日誌を読んでから、ハーレイはデータベースを閉じた。
何もかもが色を失くしたあの日。自分の生すら呪わしく思い、生きる意味すら失ったあの日。
逝ってしまったブルーの許へと旅立つ日だけを、それからの自分は待ち続けていた。そうやって前の生は終わって、気付けば自分は地球の上に居て。そしてブルーも、また地球に居た。
今度の生では、いつが始まりになるのだろう。
ブルーとの日々はとうに始まっているが、まだ十四歳にしかならないブルーはハーレイの想いを全て受け止めるには幼くて無垢で、小さくて。
そう、今、目の前で聞き入っている小さなブルーがあの頃のように大きくなったなら……。
ハーレイの航宙日誌に纏わる話を目を輝かせて聞いたブルーは、もう嬉しくてたまらなかった。他の人間の目には歴史資料としか思えないそれに、前の生での自分とハーレイとの懐かしい日々が全て記してあるという。
「ねえ、ハーレイ。ぼくもハーレイの日誌、読んでみたいな」
「何も書いてないぞ、つまらんことしか」
強請ってみたら、ハーレイの返事は予想通りで。ブルーはもっと我儘を言ってみたくなる。
「だから、ハーレイの解説付きで! データベースなら、ぼくの端末でも読めるから!」
「…………」
ハーレイの眉間にグッと皺が寄り、それは珍しい仏頂面。ブルーはいそいそと勉強机に置かれた端末を起動し、「ほら」とハーレイに画面を示した。
「えーっと…。初めてキスをしたのって、この頃かな? そして初めてベッドに誘われた日は…」
「そういう話をするんじゃないっ! お前、幾つだ!」
「十四歳だよ。だけど年齢制限は無いよ、航宙日誌」
「揚げ足を取るな!」
この馬鹿者、と褐色の手が横から伸びて端末を操作し、消してしまった。素知らぬ顔でテーブルに戻ったハーレイと再び向かい合って座り、ブルーは「うーん…」と小首を傾げる。
「データベースがダメなんだったら、パパに頼んで買って貰おうかな? 本になったヤツを」
「こら! 超一級の歴史資料をオモチャにするな!」
高いんだぞ、と頭をコツンと小突かれた。
「俺の文字をそのまま写したヤツはな、研究者向けの専門書だから普通の本とは違うんだ。買って貰うなら文庫版の航宙日誌にしておけ、全部揃えても専門書よりはうんと安いぞ」
研究者向けの航宙日誌は一巻だけでもブルーが普段に読んでいる本の何十倍もするらしい。遠い昔にそれを綴ったハーレイ自身ですら、購入を躊躇するような高価な本で。
(でも、欲しいなあ…)
読んでみたいな、とブルーは思う。
父とそう変わらない年のハーレイにだって、そう簡単には買えない値段の航宙日誌。全部の巻を買うとなったら大散財だ、とハーレイは言っているけれど…。
(でもいつか、買って読ませてほしいな)
大好きな声の解説つきで、ハーレイの褐色の指でページをなぞって。
そう、ぼくたちが一緒に暮らせるようになったら、あの頃と今とを重ねてみたい。
ハーレイのことを好きになった頃も、キスをした日も、其処には全部あるというから。
(そんな宝物を一人占めするなんてずるいよ、ハーレイ)
きっとブルーには内緒なだけで、ハーレイは今も度々データベースにアクセスしては、遠く昔に過ぎ去った日々の思い出を読んでいるのだろう。自分だけが持っている秘密の鍵を使って、誰にも読めない懐かしく暖かい日々の記録を宝箱からそっと取り出して。
(…ぼくだって読んでみたいよ、ハーレイ。君の声でちゃんと聞かせて欲しいよ、君の記憶を)
シャングリラに居た頃は「俺の日記だ」と読ませて貰えなかった航宙日誌。
こっそり読もうとは思わなかったし、それは失礼だと思っていた。
でも今は違う。航宙日誌は超一級の歴史資料で、図書館にもデータベースにも在って…。
(誰だって自由に読んでいいんだし、読めるんだしね)
いつか絶対、ハーレイが羽根ペンで書いていた文字をそのまま写した航宙日誌を読んでみたい。自分で読んでも日々の出来事しか読み取れないから、もちろんハーレイの解説つきで。
ソルジャー・ブルーが生きていた頃の日誌はもちろん全部欲しいし、いなくなった後に書かれた日誌も。…其処に自分は居ないけれども、ハーレイの想いはきっと残っている筈だから。
(…うん、やっぱり全巻揃えたいよね、キャプテン・ハーレイの航宙日誌!)
いつかハーレイと結婚する時には家に揃えておきたいな、とブルーは大きく夢を膨らませた。
今の生と前の生とを重ねて、比べ合わせて過ごせば幸せはきっと何倍にもなるに違いない。
欲しくてたまらなくなった航宙日誌は、ハーレイに揃えて欲しいのだけれど。
(…ハーレイが嫌がって買わなかったら、パパとママにお願いすればいいよね)
結婚のお祝いに欲しいと頼めば、高価な本でも喜んで買ってくれるだろう。そうしよう、と思うブルーは全く気付いていなかった。
航宙日誌を結婚祝いに買って貰うのなら、ハーレイとの結婚が大前提。
まずはハーレイと結婚したい、と告げる所から始めなくてはいけない現実に気付かないのが子供たる所以。そんなブルーとハーレイの新居が何処になるのか、其処にキャプテン・ハーレイの手になる超一級の歴史資料な航宙日誌がズラリと全巻並ぶのか否か、それはまだ誰も知らない未来…。
遠い愛の記録・了
※いつもハレブル別館にお越し下さってありがとうございます。
こちらは只今、第1&第3月曜更新となっておりますが…。
第5月曜のある月は第5月曜にも更新して月3にしようかな、と考え中です。
しかし本来、ハレブルは 「別館」 、メインは 「シャングリラ学園番外編」。
更新回数は増やさない方がいいのだろうか、とアンケートを実施しております。
拍手部屋にて9月21日までです、ご協力よろしくお願いします。
第5月曜の更新希望が多かった時は、9月29日から第5月曜更新が始まります。
9月29日に更新する場合は、予告を出します。
更新の有無は毎日更新の 『シャングリラ学園生徒会室』 にて御確認下さいv
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