シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
ある日、ぼくの家を訪ねて来たハーレイは、ママがお茶とお菓子をテーブルに置いて部屋を出てゆくなり、持っていた紙袋をテーブルの空いたスペースに乗っけた。ぼくも知っている食料品店の紙袋。地球の他の地域からの輸入品を色々と扱ってる店。
ハーレイは紙袋を開けて手を突っ込むと、「ほら」と幾つかの小さな包みをテーブルに置いた。
「ブルー。こんなのを店で見付けたぞ」
「なに、これ?」
お菓子っぽく見える色と形の包装だけど…。首を傾げると、褐色の指が包みを一つ指差して。
「チョコレートバーだが、よく見てみろ。見た目じゃなくって、パッケージの方だ」
「……代用品?」
表側に商品名と並んで「チョコレートの代用品!」という文字が躍っている。代用品だと銘打つからには合成だろうか、と裏を返して驚いた。成分表の他に大きく「キャロブ」の文字。
なんて懐かしい名前だろう。何年ぶりに見る名前なんだろう…。
「驚いたか? ちゃんと地球にもあったぞ、キャロブ」
「ビックリした…。チョコレートは地球で手に入るのに…」
青く蘇った今の地球では、チョコレートの原料になるカカオも栽培されていた。ぼくたちの住む地域はカカオ栽培に向いた気候じゃないから、カカオの木は植物園にしか無いんだけれど。それと実験農場くらい。
とはいえ、カカオはごく当たり前に手に入るもので、代用品を作る必要は無い。
キャロブなんかが地球に在るなんて、ううん、在っても不思議じゃないんだけれども、代用品にする必要なんかは全く何処にも無さそうなのに…。
ココアにコーヒー、チョコレート。
遠い遠い昔に、ぼくとハーレイが暮らしていた船で口にしていた嗜好品。
シャングリラで飲んだり、食べたりしていたココアやコーヒー、チョコレートなど。
ハーレイが大好きだったお酒なんかは合成品だったシャングリラ。本物のお酒は仕込めなかったシャングリラ。限られた食料しか生産出来なかったし、お酒どころじゃなかったから。
そんなシャングリラのチョコレートだとか、ココアだとか。
誰が聞いても「合成品だ」と思うだろう。でも、合成品ではなかったんだ。
最初の間は、もちろん合成品のチョコレートやココアだったんだけど。
アルタミラを脱出して間もない頃にはそれで充分、特に不自由はしなかった。
合成品でもチョコレートはちゃんと甘かったのだし、コーヒーだって独特の苦み。たまに味わうココアも心がホッとする優しさだったし、どれも誰もが楽しみにしていた嗜好品。
シャングリラの中だけが世界の全てだった、ぼくたちのささやかな幸せの味。
最初の間は合成品のチョコレートなどで全然問題無かったのに。
誰からも文句は出て来なかったのに、時が流れてシャングリラの人口が増えて来た頃。
「身体に悪い」とゼルが言い出した。
大人はともかく、保護して育てるようになっていた子供たち。
その子たちには合成品をあまり食べさせたくない、と。
ゼルはああ見えて子供好きだった。
アルタミラで弟を亡くしてしまったからかもしれない。
脱出するために船に乗り込み、飛び立った直後に見舞われた悲劇的な事故。
まだ開いていた乗降口から、ゼルの弟だったハンスの身体は燃え盛る地上へと落下していった。ゼルが必死に差し伸べた手は弟の手を二度と掴むことが出来ず、ぼくにも救えはしなかった。
少しでも多くの仲間を助け出そうと直前まで奔走していたぼくには、力が残っていなかった。
落ちてゆくハンスを船に戻すだけのサイオンが残っていなかった…。
ぼくは今でも覚えている。「兄さん!」と叫んだハンスの声と、血の滲むようなゼルの叫びと。
ゼルは生涯、弟を忘れはしなかった。
弟思いだったゼル。
アルタミラの悲劇は遠く過ぎ去り、長老と呼ばれるようになったゼルはすっかり禿げ頭。
頑固で怖そうに見えるゼルなんだけれど、公園を歩けば子供たちが一斉に駆け寄って行く。
子供たちのお目当ては、ポケットの中身。
ゼルは「ポケットの中にはビスケットが一つ…」なんていうSD体制よりもずっと昔の古い歌を子供たちと一緒に歌いながらポケットをポンと叩いてお菓子を出すんだ。
ビスケットだとか、キャンディーだとか。歌詞のお菓子はポケットの中身に応じて変わる。
どれも食堂で当たり前に作られているものばかりで、子供たちのおやつにも出るんだけれど。
魔法のポケットから次々に増えて出て来るお菓子は特別らしい。
ゼルはごくごく短い距離なら、お菓子程度の小さなものなら瞬間移動をさせることが出来た。
魔法の種はマントの陰に隠したお菓子の袋。其処からポケットにポンと移して増やすんだ。
それでも瞬間移動なんか出来ない子供たちにとっては魔法のポケット。
いつだって人気者だったゼル。
そんなゼルだから、子供たちの身体を心配するのは良く分かる。ゼルが言い出したから分かったけれども、子供たちを教育しているヒルマンも気にしていたらしい。
子供たちが好む嗜好品が合成品なのは如何なものかと、出来れば自然の食品がいいと。
だけどチョコレートの元になるカカオを栽培することは難しそうだ。サクランボとか栗は普通に気温などを調整しておけば育つけれども、カカオは違う。蒸し暑い気候が適した植物。
必需品の野菜なら温室栽培もやっていたものの、嗜好品に過ぎないカカオはどうか。そのための温室を設置してまで育てるとなれば、反対する者も多いだろう。
とはいえ、ミュウの未来を担うことになる子供たちには自然の産物を食べさせたい。
なんとか方法は無いのだろうか、とヒルマンに一任することにした。
カカオが無理なら他の植物でもかまわない。チョコレートを作れるものは無いか、と。
教授と称され、博識なヒルマンはあれこれと頑張って調べてくれて…。
「ソルジャー、やっと見付かりましたよ」
青の間にヒルマンが訪ねて来た。柔和な笑顔で、とびきりの情報を携えて。
何処かに無いかと探し求めていた、カカオ以外のチョコレートを作れる植物の名前。
「キャロブというのを御存知でしょうか?」
「…いや」
聞いたこともないキャロブなるもの。
「では、イナゴ豆は?」
「そっちもぼくは知らないよ」
イナゴなら知っているけれど。
遠い遠い昔に地球で農作物を根こそぎ食い荒らしてしまって飢饉を起こしていた害虫。聖書にも色々と書かれていたよね、世界の終わりが来る黙示録にも。
「その通りですが、そのイナゴとは無関係でして…」
名前はイナゴに由来するのかも知れませんが、とヒルマンは困り顔をしつつも笑った。
流石にソルジャーは色々な本を読んでいらっしゃると、聖書もお読みになったのですか、と。
昆虫のイナゴとは無関係らしいイナゴ豆。
どんな植物かと先を促したら、また質問が降って来た。
「カラットという単位は御存知ですか?」
「なんだい、それは?」
宝石の重さの単位だなどと説明されても、とんと縁の無いカラットという単位。
ぼくたちの世界に宝石は要らない。
贅沢に着飾ることも無ければ、煌びやかな宝石を見せびらかすような場所も無い。人類の世界に住んでいたならそういったこともあるのだろうけど、ミュウの世界には不要のもの。
宝石なんかは必要も無いし、誰も持っていないシャングリラ。
白いシャングリラには赤い石だけが、誰もが身につける赤い石だけがあればいい。
その赤い石が出来た由来は、ちょっと考えたくないんだけれど。
SD体制よりも遙かな昔の地球の一部の地域に在った魔除けのお守り、メデューサの目。
青い目玉を象ったというそれの代わりに、ぼくの赤い瞳。
ミュウたちを守るお守りに相応しいから、と選ばれてしまった赤い石。ぼくの瞳の色の石。
それだけがぼくたちの大切な石で、宝石なんかは何処にも無い。
だからカラットなんかは知らない。
ヒルマンが調べた情報によると、カラットという単位の起源はイナゴ豆の実だった。イナゴ豆の種子の大きさや重さがほぼ均一だから、重量を量るのに丁度良かったらしいという。
「それでカラットがどうしたんだい?」
「イナゴ豆です。キャロブですから、キャラットですよ。キャラット、すなわちカラットです」
カラットの由来になったキャロブの実ですよ。
その実がチョコレートの代用品になるんです。それにコーヒーとココアも出来ます。
「そして、ソルジャー。キャロブは特に環境を調整しなくとも栽培出来そうな植物です」
「素晴らしいじゃないか!」
実に素敵だ、と思わず叫んでしまったけれど。
イナゴ豆なんていう名前からして、それは畑に植えるんだろうか?
ぼくの経験からすると、豆の類は手間暇がかかる。蔓を絡ませたり、支えをしたり。そういった手間を嗜好品のためにかけるのはどうか、と考えた。
ところが、キャロブは木なのだという。それも高さが十メートルにもなったりする木。
木ならば剪定するだけで済むし、毎年種を撒かなくても収穫することが出来る。
手間要らずな上に、チョコレートどころかコーヒーとココアまで作れるキャロブ。
ぼくは早速、アルテメシアの農業関係の情報を操作し、何本もの苗を手に入れて来た。
シャングリラに植えたキャロブの木。農場にも、大きく育つというから公園にも。
キャロブの木はやがて育って実をつけ、その実は本当に豆だった。沢山の豆のさやがドッサリと枝に出来たけれども、熟すまでには一年ほどかかる。
でも、そんなことは些細なこと。ほんの一年、熟すのを待てばいいだけのこと。
キャロブの種子はゆっくりと熟し、ついに収穫の時が来た。緑から黒い色に変わった豆のさや。それを採って、さやの中身の種を取り出して、乾燥させて。
煎って粉末にすればキャロブパウダー。この粉末を原料にしてチョコレートやココアが出来る。
見事に実ったキャロブの実。
チョコレートもココアも、コーヒーまでもが合成品ではなくなった。
代用品でも、まるで本物のチョコレートやココアのようだと評判のキャロブ。なにより合成品と違って農場や公園のキャロブの木から採れた食べ物。
自然な味わいが美味しかったし、嬉しかった。
ゼルのポケットからはチョコレート菓子も出るようになった。
公園で子供たちと歌を歌いながら、楽しげにポケットを叩きながら。
「ポケットの中にはチョコレートが一つ、ポケットを叩くとチョコレートは二つ」と。
叩いてみる度、チョコレートは増える。
ゼルを取り囲む子供たち全員に行き渡る分だけ、幾つも、幾つもチョコレートは増える…。
今の今まで思い出しもしなかった、シャングリラのチョコレートの代用品。
コーヒーもココアも同じものから代用品を作り出していた、手間要らずだったキャロブの木。
ぼくはチョコレートとココアがお気に入りだったけど、ハーレイはコーヒーも好きだった。合成だった頃よりもいいと、風味豊かだと喜んでいた。
ぼくには苦すぎて好きではなかったコーヒーという名の嗜好品。
どうしても飲みたくなった時にはいつもミルクとホイップクリームたっぷり、砂糖もたっぷり。うっかり夜に飲んでしまって眠れなくなったことも何度もあって…。
けれどハーレイが好きな飲み物だからと、挑戦していた。連戦連敗だったけれども。
今では遠くて懐かしい日々となってしまった、苦労も多かったシャングリラでの日々。代用品のキャロブさえもが愛おしくなるほど、ぼくとハーレイは遠くへ来た。
あの頃は死に絶えた星だったらしい地球が蘇り、その地球の上に二人で生まれて来た。
まさかキャロブから出来た代用品のチョコレートバーを、懐かしく思う日が来るなんて…。
「ねえ、ハーレイ。なんでキャロブなんかのお菓子があるわけ?」
本物のチョコレートがちゃんとあるのに。
どうしてキャロブでわざわざ作って、代用品だなんて書いてあるわけ?
ぼくは不思議でたまらなかった。本物のチョコレートで作った方が良さそうなのに…。
そう尋ねたら、意外な答えが返って来た。
「そのキャロブが、だ。今やヘルシー食品らしいぞ」
「ヘルシー食品!?」
「ああ。俺もこの前、店で見かけて、不思議に思って調べてみたんだ」
今の地球でキャロブなんぞを使う理由が無いからな?
なのにどうやら代用品にするだけの価値がありそうな謳い文句だし…。
そしたらヘルシー食品と来た。
売れ筋の商品になってるらしいぞ、キャロブで作ったチョコレート菓子は。
ぼくは目を丸くしてハーレイの解説を聞いていた。
チョコレートよりも栄養価が高くて、カロリー低めのヘルシー食品。
健康志向の人たちの間で人気の、キャロブを使ったチョコレート菓子。
キャロブはカフェインを含まないから、ぼくたちはキャロブから作ったコーヒーにカフェインを加えていたというのに、そのカフェインが含まれない点もキャロブが好まれる所以だという。
「…なんだかビックリなんだけど…。代用品の方が人気だなんて」
「俺も驚いたんだがな…。前の俺たちは本物のチョコレートとかに憧れていたのにな?」
実に変われば変わるもんだな、とハーレイは頭を振っている。
本物のチョコレートを作り出せなかった、前のぼくたち。
カカオを栽培するだけの余裕が無いからと、代用品のキャロブを植えたぼくたち。
あれから長い長い時が流れたけれども、まさかキャロブが人気商品になっちゃったなんて。
代用品です、って偉そうな顔をして、青い地球の食料品店の棚に並んでいるなんて…。
人生、本当に分からない。
ぼくもハーレイも、今が二度目の人生だけれど。
こんな形でキャロブと再会を果たすことになるとは夢にも思っていなかった。
前のぼくが知ったら、きっと仰天するだろう。
あんなに色々と考えた末に作り出した代用品のキャロブが、青い地球の上で人気だなんて。
ハーレイが買って来てくれたチョコレートバー。
本物のチョコレートの代わりにキャロブを使ったチョコレートバー。
パッケージに「チョコレートの代用品!」の文字が得意げに躍ったチョコレートバーを、二人で一個ずつ開けて齧ってみた。
オレンジとかマカダミアナッツ入りとかもあったんだけれど、ごく普通のを一本ずつ。
(どんな味かな?)
いつも食べてるチョコレートの味と違うかな、と頬張ったのに味はチョコレートと変わらない。食感も口の中で溶けた感じもチョコレートそのもの、何処が違うのか分からない。
(…あれれ?)
チョコレートだよ、と首を捻りながら齧っていたら、ハーレイが自分のを指差して。
「おい、ブルー。お前、違いが分かるか、こいつの」
「ううん、全然」
ぼくにはチョコレートにしか思えないけど。
ハーレイはどう?
「俺にも分からん。普通のでこれなら、ナッツ入りとかだともう絶対に分からんな」
「ナッツなんかが入ってなくても分からないってば!」
味の違いを見付けてみせる、と頑張ってみてもチョコレートの味。
いつも食べてるチョコレートの味。
本物のカカオ豆から作ったチョコレートと全く同じ味…。
シャングリラで作っていた合成品のチョコレートと、キャロブで作ったチョコレートとの違いは食べたら直ぐに分かったのに。
ゼルが「子供たちに合成品は食べさせたくない」と言い出したことは正しかった、と納得出来る味の違いがあったのに。
合成品は何処か人工的な味。薬品の味がしていたわけではなくても、キャロブのチョコレートと食べ比べてみたら全く違った。キャロブのチョコレートを食べてしまったら、合成品なんか二度と食べたいとは思わなかった。
それほどにキャロブのチョコレートが美味しかったから。
代用品でこんなに美味しいのならば、本物のチョコレートはどれほど美味しいだろうと夢見た。
アルタミラからの脱出直後は人類から食料を奪っていたから、本物のチョコレートを食べられる機会もあったけれども、そうした時代は過ぎてしまって自給自足のシャングリラ。
遙か昔に栄養源として食べていた本物のチョコレートを思い出しては、もう一度食べてみたいと思った。キャロブのチョコレートよりも美味しい本物。カカオ豆で出来たチョコレートを。
そういった夢を描いていたのに、なんという夢の結末だろう。
ハーレイと二人、味覚を研ぎ澄ませて注意深く味わいながら食べ終えたのに。
キャロブで出来たチョコレートバーと、本物のチョコレートの味の違いは分からなかった。
味も食感も口どけさえも、キャロブのチョコレートバーはチョコレートとまるで変わらない。
美味しいだろうと夢に見ていたカカオ豆のチョコレートと変わりはしない。
(…もしかして、これも地球のせいかな?)
ぼくが寝込んでしまった時にハーレイが作ってくれる「野菜スープのシャングリラ風」。
何種類もの野菜を細かく刻んで、基本の調味料だけでコトコト煮込んで作ったスープ。
その味が前の生で食べた時よりも、ぐんと美味しくなっていたから。
ハーレイがレシピを変えたのだろうか、と尋ねてみたら「違う」と言われた。
美味しく感じるのは地球で育った野菜のせいだと、地球の光と土と水との恵みなのだと。
キャロブのチョコレートバーの味が本物のチョコレートと変わらないのも、やっぱり地球のせいなのだろうか…?
そうかもしれない、という気がしたから、ハーレイにそれを言ってみた。
「地球で育つと何でも美味しくなるのかな? キャロブがチョコレートそっくりになるくらいに」
「そうかもなあ…。シャングリラのキャロブなら、本物との違いが出ていたかもな」
地球の食べ物は実に美味い、とハーレイは嬉しそうに笑った。
「野菜も美味いし、肉だって美味い。前の俺たちが食ってたものとは、同じものでも別物だ」
「うん。シャングリラで食べてたものと比べたら、地球の食べ物は何でも美味しすぎだね」
そもそも水の味からしたって違う。
シャングリラの中だけで循環させては濾過して使った水と違って、いくらでも地球から湧き出す地下水。それに空から降り注ぐ雨。
青く澄み切った水の星から生まれて来る水は、何もしなくてもそれだけで甘い。
(…本当に甘いわけじゃないけど…。お砂糖の味はしないんだけれど、やっぱり甘いよ)
シャングリラで飲んでいた水とは違う。
ソルジャーだったぼくの枕元には、特に念入りに仕上げた水を満たした水差しがいつも在ったのだけれど。喉を潤す度に心が満たされたものだけれども、地球の水には敵わなかった。
だけど懐かしいシャングリラ。
地球のように何もかもが美味しいという世界でなくても、ぼくたちの楽園だった船。
ぼくが守った白い船。ハーレイが舵を握っていた船。
そのシャングリラで食べていたのと同じ味がするキャロブのチョコレートバーだ、と遠い日々に思いを馳せたかったのだけれど。
ハーレイと昔を懐かしみたかったのだけれど…。
何でも美味しくしてしまう地球の魔法のせいなのかどうか、ただの美味しいチョコレートバー。
代用品どころかチョコレートそのもの、違いさえ見付けられないキャロブ。
地球という星はやっぱり凄い。
代用品だった筈のキャロブも美味しく変えてしまうだなんて…。
(…ホントに凄い星だよね、地球は)
前のぼくが焦がれた青い地球。
ハーレイたちが辿り着いた時には死に絶えた星だったのに、蘇った地球。
その地球にハーレイと来られて良かった。
ハーレイと一緒に青い地球の上に生まれて来られてホントに良かった。
(…ハーレイ、ちゃんとキャロブも覚えていてくれたしね?)
キャロブのチョコレートバーを買って来てくれたハーレイと一緒だから、ぼくは幸せ。
本物のチョコレートとの違いはどうか、と食べ比べてくれるハーレイと二人で居るから幸せ。
前のぼくまで覚えててくれる、ハーレイと二人いつまでも一緒だから…。
チョコレート・了
※シャングリラでは代用品だった、キャロブで出来たチョコレート。合成品よりは、と。
それが今ではヘルシー食品、本当に幸せな時代に生まれた二人です。
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