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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

秋にはペット

※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。




人恋しくなる秋がやって来ました。私たちには無関係ですが、会長さんには迷惑な季節。片想い歴三百年以上の教頭先生が何かと言えば熱い視線を送ってくるのだとか。
「昨日もなんだよ、たまたま中庭ですれ違ったっていうだけなのに!」
「あんたが中庭にいること自体が珍しいだろうが」
キース君の台詞は至極ごもっとも。会長さんは平日は登校していますけれど、大抵は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋でサボリです。私たちが放課後に出掛けて行くまで、そこでのんびり。
「そりゃそうだけどさ…。たまには散歩もしたくなるってね」
秋の高い空は気分がいいものなのだ、と会長さん。
「だからぶるぅと散歩してたら、「いい天気だな」って」
「その挨拶も普通だろうが!」
「だけど視線が熱いんだよ!」
熱いどころか下心が…、と会長さんはブツブツと。
「駄目で元々、あわよくば…、って心が見え見え! ちょっとお茶でも飲まないかと!」
「食堂でか?」
「そんなトコだね、でなきゃ教職員用のラウンジかもね」
とにかく迷惑な季節なのだ、と言いつつも。
「まあ、今日は土曜日だから出くわす心配も皆無だし…。ぼくにとっては吉日なんだよ」
「かみお~ん♪ ゆっくりしていってね!」
お昼はピザにしようと思うの、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。もちろん宅配ピザなどではなく、生地から作った御自慢のピザ。みんな揃って大歓声までは良かったのですが。
「ピザだって?」
それはいいねえ、と聞こえて来た声。
「「「!!?」」」
「こんにちは。でもって、今はおやつなのかな?」
ぼくの分も残っているのかい? と出ました、紫のマントを纏ったソルジャー。
「梨のコンポートのタルトだってね?」
「うんっ! それと紅茶だね、ちょっと待ってねー!」
空いた所に座っててね、とキッチンに駆けてゆく「そるじゃぁ・ぶるぅ」。会長さんのマンションで過ごす土曜日、荒れ模様にならなきゃいいんですけど…。



おやつをゲットしたソルジャーは早速、タルトにフォークを入れながら。
「こっちのハーレイも報われないねえ、毎度のことではあるけどさ…」
「報われるわけがないだろう!」
ぼくにその手の趣味なんか無い、と会長さんが突っぱねています。
「なのに諦めが悪いったら…。振っても振っても追いかけて来るし、どうにもこうにも」
「ホントにつくづく深い溝だね、君とハーレイとの間にあるヤツ」
「溝どころか海溝レベルだから!」
底なんか見えやしないんだから、と強烈な例え。
「なのに脈アリかと思ってるんだよ、人恋しくなる季節ってだけで!」
「君は恋しくならない、と」
「ぼくにはフィシスがいるからね」
恋人だったら間に合っている、と会長さんが返し、ソルジャーは「うーん…」と。
「やっぱりハーレイだけが恋人のいない秋を今年も過ごす、と」
「来年も再来年も、この先もずっと!」
「気の毒だねえ…。せめて孤独を癒す方法でも、と思うんだけど」
「ぼくは協力しないから!」
勝手に孤独に過ごしていろ、と会長さんはけんもほろろに。
「家族用だか何か知らないけど、大きな家まで用意したのはハーレイの自業自得だから!」
人の気配の無い家で孤独を噛み締めるがいい、とまで言っていますが。
「あの家、けっこう大きいしねえ…。庭も広いし」
「ぼくとの結婚を勝手に夢見て、ああいう家にしたわけだしね!」
「遊ばせておくのはもったいないよ。ついでに孤独な秋を過ごすのもよろしくないかと」
「ぼくは絶対、行かないから!」
オモチャにするために出掛けてゆくならともかく…、と会長さんは不機嫌な顔。
「あの家の住人になるなんてことは願い下げだよ、一人で住んでりゃいいだろう!」
「まあ、人間は一人でいいけど…」
「「「は?」」」
人間は一人だけで良くって、けれど孤独はよろしくなくて。広い家を遊ばせておくのももったいないとは、ソルジャー、何が言いたいんですか?



「…ペットはどうかと思うんだよ」
一人暮らしの孤独を癒すには、とソルジャーの口から出て来た言葉は斜め上でした。
「「「ペット?」」」
「そう、ペット! あれは癒されるよ」
ぼくもナキネズミを飼っていてね、とソルジャーが始めたペットの自慢。思念波で会話が出来る動物、ナキネズミ。それを使って厨房からおやつを失敬させたり、色々と仲良くしているそうで。
「だからハーレイにも、ペットをね!」
「ハーレイが飼うとは思えないけど?」
そういう性格じゃないんだから、と会長さんのすげない一言。
「あの年まで生きて来てるんだ。寂しかったら、とっくに飼ってる!」
猫とか犬とかお好みで…、という説は説得力がありまくりです。三百年以上も飼わずに来たなら、今更飼うとは思えません。会長さん以外はお呼びじゃなくって、ペットなんかは不要なわけで。
「そうだろうけど、ペットの名前がブルーだったら?」
「「「ブルー?」」」
「そう! 恋人の名前をつけたペットなら、気分も変わってくるってね!」
ペットはキスしても嫌がらないし、とソルジャーは笑顔。
「抱き締めたって、ベッドに一緒に入れて寝たって、ペットは文句を言わないから!」
「それは余計に迷惑だから!」
妄想が広がるに決まっている、と会長さんは叫んだのですが。
「…どうだろう? ペットにもよると思うけどねえ?」
「どういう意味さ?」
「ただ可愛いというだけだったら、妄想だって広がるだろう。…だけど可愛いだけじゃなくって、扱いが難しいペットだったら?」
「…どんなペットさ?」
暴れるのかい、と会長さん。
「機嫌を損ねたら噛み付くだとか、引っ掻くだとか。そういうのをハーレイに飼わせろと?」
「それに近いね」
ちょっといいのを見付けたんだよ、とソルジャーは紅茶のカップを傾けています。ソルジャーが見付けたと言い出すからには、もしやソルジャーの世界の生き物だとか…?



私たちとは違う世界に住むソルジャー。ナキネズミなんていう未知の生物までがいる世界の住人。そこからペットを連れて来る気か、と私たちは思わず身構えました。会長さんだって。
「君の世界の動物ってヤツは問題だから!」
検疫とかもさることながら…、と会長さんはソルジャーの肩書きを持つ身ならではの真面目な顔で指摘しました。
「こっちの世界じゃ有り得ない動物を飼うとなったら、問題、山積み!」
他人に見られたら大騒ぎだし、という声にソルジャーは。
「平気だってば、ぼくの世界の動物じゃないから」
「「「えっ?」」」
「ぼくの世界で少し改良を加えようとは思っているけど、こっちの世界に影響は出ない」
避妊手術と変わらないレベルの細工だから、とソルジャーの笑みは余裕です。
「出来るかどうかは、もう確認済み! ぼくの世界にはその技術がある!」
シャングリラでやったことはないけどデータがあるから充分出来る、と自信たっぷり。
「ハーレイにペットを飼わせるんなら、そういう風に改良するけど?」
「どういうペットさ、改良だなんて」
「量に限りがあるらしくってねえ…」
打ち止めになってしまうのだ、とソルジャー、溜息。
「効果絶大な技を持ってるんだけど、五、六発で終わりらしくって…。打ち止めになったら充填するまでにかなりの時間が」
「ちょっと待った!」
それは本当にペットだろうね、と会長さんが険しい顔に。
「ペットと言う名で実は人間だったんです、ってオチじゃないだろうね、六発だなんて!」
「シーッ!」
抜かず六発は言わない約束だろう、とソルジャーは唇に人差し指を。
「ヌカロクとはまるで違うんだけど…。参考にはなっているんだけれど」
「「「ヌカロク?」」」
「ああ、君たちには分からないからね!」
ブルーだけに通じればそれでいいのだ、とサラッと流された謎のヌカロク。それはともかく、ソルジャーが言ってるペットとやらは何なのでしょう?
絶大な技を誇る割には五、六発で打ち止め、再充填にうんと時間がかかるって、なに…?



「ちゃんと純粋に動物なんだよ、人間じゃなくて」
大きさはこんなものだろうか、とソルジャーが両手で示したサイズはビッグサイズの猫くらい。確かに人間ではなさそうです。
「最近、ペットとして人気が出て来たらしいけど…。ペットショップのヤツだとダメだね」
「「「は?」」」
「売ってるヤツは手術済みでさ、技を繰り出せない仕組み」
「「「???」」」
ますますもって訳が分かりません。どんなペットだ、と顔を見合わせた私たちですが。
「ズバリ、スカンク!」
「「「スカンク!?」」」
スカンクって言ったら、アレですか? オナラが臭いと評判の…。
「そう、そのスカンク! ペットショップで売ってるヤツはさ、オナラをしないように分泌腺を取ってあるわけ」
オナラは実はオナラではない、とソルジャーは説明してくれました。スカンクの肛門の両脇にあるという肛門傍洞腺とやら。其処に溜めておいた分泌液をブシューッとかますのが、いわゆるオナラ。ペットショップで売られるスカンクはそれを手術で除去済みだそうで。
「もしも手術をしていなかったら、攻撃されたらブシューッとオナラ! でもね、オナラには回数制限があって…。分泌液を溜めた袋が空になったら打ち止めってね」
その限界が五、六発なのだ、との話です。ついでに再充填して発射可能になるまでの期間は一ヶ月くらいかかるのだとか。
「普通は五発も六発も撃たないからねえ、それで充分なんだろうけど…」
こっちのハーレイに飼わせるんなら足りないだろう、とソルジャーは会長さんに視線を向けて。
「どうかな、スカンク? 名前はブルーで」
「…ぼくの名前でオナラをすると?」
「そういうわけだね、御希望とあらばガンガンと!」
ぼくの世界にはその技術がある、とソルジャーは胸を張りました。
「再充填までに一ヶ月どころか、半日も必要ないってね!」
「誰がそういうつまらない技術を開発したのさ!」
「さあ…? 学者ってヤツは研究バカだし…」
誰かが趣味でやったんだろう、と言われて納得。確かに世の中、妙な研究に燃えてる学者っているんですよね…。



「オナラ無制限のスカンクねえ…」
それで名前がブルーとはね、と会長さんは複雑な顔。
「ハーレイがオナラを食らいまくる図には興味があるけど、なんだかねえ…」
ぼくの名前、と言いたい気持ちは分かります。よりにもよって教頭先生がペットにスカンク、しかもブルーと名付けるだなんて。
「でもねえ、コレはお勧めなんだよ!」
いろんな意味で、とソルジャーは膝を乗り出しました。
「こっちのハーレイは世話に燃えるし、君は笑いが止まらない。…そういうのはどう?」
「でも、オナラだよ?」
ぼくにとっては不名誉なのだ、と会長さんは不服そうですけれど。
「オナラがポイント高いんだってば!」
そこが売りだ、とソルジャー、強調。
「ついでにハーレイは君との結婚に向けて頑張る! 努力が報われるかどうかはともかく!」
「…なんでスカンクで結婚なわけ?」
可愛がっていたって評価はしないよ、と会長さん。
「ぼくはそこまで甘くない。いくら甲斐甲斐しく世話をしてても、それと結婚とは別次元!」
「だけど、ハーレイにとってはそうじゃないんだな」
趣味と実益を兼ねた充実の日々が待っているのだ、とソルジャーはグッと拳を握って。
「いつか迎えたい、君との夢の結婚生活! それに向かって修行の毎日!」
「「「修行?」」」
何故にスカンクで修行になるのか、サッパリ分かりませんでした。ペットを飼って可愛がることは結婚に向けての心の準備になるのでしょうか?
「修行と言ったら修行なんだよ、結婚生活で大切なものは大人の時間!」
それに備えて修行を積むのだ、と話は一層、謎な方へと。
「…スカンクで大人の時間って…」
どういう意味さ、と会長さんが訊くと、ソルジャーは。
「だから細工をすると言ったろ、オナラの回数無制限に!」
「「「オナラ?」」」
大人の時間とやらは理解出来ない、万年十八歳未満の私たちですが。それでも少しは掴めていますし、大人の時間にオナラなんかしたらブチ壊しなんじゃあ、と思うんですけど…?



ソルジャー曰く、スカンクをペットに大人の時間のために修行を。しかし、そのためにスカンクのオナラの回数制限を解いてしまったら、ベッドの中で何発オナラをかますやら…。ただでもオナラは恥ずかしいもので、大人の時間にやってしまったら赤っ恥ではないのでしょうか?
「うん、本物の大人の時間にやったとしたなら最低だよね」
ぼくのハーレイなら殴り飛ばすね、とソルジャーは過激な発言を。
「でもって当分、ぼくのベッドに出入り禁止だ」
「だったら、どうしてスカンクのオナラに細工なんかを…」
会長さんの問いに、ソルジャーは。
「オナラのための分泌液を溜めておく場所、肛門の両脇だと言ったけどねえ?」
「うん、聞いたけど」
「そこがポイント! こっちのハーレイの修行のための場!」
男同士でヤるためには必要不可欠な場所、とソルジャーはニヤリ。
「こっちのハーレイは童貞だしねえ、経験ってヤツがまるで無い。その上、初めての相手は君しかいないと決めているだろ?」
「…そうだけど…」
正直、有難くないんだけれど、と顔を顰めた会長さんですが。
「それはそうだろうね、初心者なんかに下手にヤられたら大惨事! そうならないよう、修行を積んで貰うわけ! スカンクで!」
「「「えっ?」」」
「突っ込む前には、きちんとほぐす! これが基本で!」
「その先、禁止!」
会長さんが止めたのですけど、ソルジャーは「別にいいだろ、スカンクなんだし」と。
「要はスカンク相手にほぐす練習、気持ち良くなって貰おうってね!」
「ま、まさか…」
「そうだよ、スカンクの肛門で来る日も来る日も、未来に向かって猛特訓!」
指を突っ込んでほぐすだけなのだ、と恐ろしい台詞。
「ちゃんと上手にほぐしてやればね、スカンクはオナラしないから!」
オナラをブシューッと食らわないよう、特訓あるのみ! と力説しているソルジャーですけど。スカンクの肛門だかオナラだかの仕組み、本当にそれで合っていますか…?



教頭先生にスカンクを飼わせ、会長さんとの結婚生活に向けて特訓させようだなどと言うソルジャー。それもオナラの回数が無制限になるよう、細工を施したスカンクで。
「君は簡単に言ってくれるけど、そんなことをしたら…」
ハーレイが自信をつけるじゃないか、と会長さんは青い顔。
「上手くなったと、これで自分もプロフェッショナルだと妙な自信を!」
「努力が報われるかどうかはともかく、と言った筈だよ」
無制限なスカンクを舐めるんじゃない、とソルジャーは不敵な笑みを浮かべました。
「今日こそは、と挑んでもオナラ、何度挑んでも何発もオナラ!」
「…修行するだけ無駄なわけ?」
「スカンクだしねえ?」
ほぐして気持ち良くなる筈が無い、と言い放つソルジャー。
「でも、ハーレイには内緒にしとけば真面目に励んでくれるよ、うん」
「珍しい発想もあったものだねえ、君にしてはね?」
ぼくとハーレイとの結婚を目指しているんじゃなかったのかい、と会長さんが尋ねると。
「まるで無駄ってわけでもないしね、指の使い方が多少は上達するかと!」
「ただ、それだけ?」
「たったそれだけ!」
それ以上のことは期待していない、と何も企んでいないらしいソルジャー。何処からスカンクになったのだろう、と思いましたが、どうやら元ネタはエロドクター。
「こないだランチを食べた時にね、スカンクって動物を御存知ですか、って話題になってさ」
色っぽい話題ばかりをしているわけではないんだから、とソルジャーは威張り返りました。
「それでね、スカンクの匂いってヤツは、タンパク質とガッチリ結び付いちゃうらしいんだ。人間の身体は隅から隅までタンパク質だろ?」
つまり匂いが消えないのだ、と聞いてビックリ。
「じゃ、じゃあ、教頭先生がオナラを食らったら…?」
ジョミー君の問いに、ソルジャーが。
「もちろん、オナラの匂いは消えない!」
「「「うわー…」」」
「もっとも、ぼくの世界には強力な消臭剤もあるしね? 仕事に行く前にプシューッとしとけば、そこはバッチリ解決ってね!」
スカンクにしようよ、と推すソルジャー。教頭先生に飼わせるべきだ、と。



「その話、乗った!」
ブルーの名前も必要とあらばくれてやろう、と会長さんが食い付きました。
「ハーレイにスカンク、大いに結構。そしてオナラは無制限なんだね?」
「もちろんだよ!」
そうと決まればスカンクの調達、とソルジャーは笑顔全開です。
「手術してない野生のスカンクでも、ぼくにかかれば人を怖がらないようにチョチョイとね!」
サイオンで干渉してやれば可能なのだ、と誇らしげ。
「昼御飯を御馳走になったら、早速、捕まえに出掛けて来るよ」
「君ならオナラも見事にかわして捕獲だろうねえ?」
「それどころじゃないよ、スカンクの方からすり寄って来るさ」
そこを捕まえてぼくのシャングリラに御招待、とスカンクの未来が決まった模様。捕獲に出掛けたソルジャーと最初に出会ってしまったスカンク、手術をされてしまうのです。五、六発やったら打ち止めになると噂のオナラを無制限に発射可能な身体に。
「捕まえるんなら雄でないとねえ…、ブルーと名前をつけるんだしね?」
「その辺は君に任せておくよ」
「ノルディが言うにはスカンクの飼育は簡単らしいよ、雑食だから」
生息地ではゴミを漁るほどに何でも食べるというスカンク。しかも食欲は底なしだとかで。
「ぼくの世界のぶるぅに似てるね、とにかく食べて食べ続けたいという精神!」
二十四時間、食べ続けていれば幸せらしい動物、それがスカンク。飼い主の食事もつぶらな瞳でおねだり攻撃、特別な餌は要らない動物。
「ついでに、ケージじゃ飼えない動物! 家の中が全てテリトリー!」
庭に出られるなら庭もテリトリー、と知識を披露するソルジャー。エロドクターとの会話でスカンクに目をつけて以来、あれこれ調べていたようです。
「そうか、ケージじゃ無理なんだ?」
「広い所が好きらしいんだよ、こっちのハーレイの家ならピッタリ!」
だけど庭には出せないねえ…、とソルジャーは顎に手を当てて。
「何のはずみでオナラをしちゃうか分からないから、家の中だけにしておかないと」
「スカンクは強烈に匂うんだっけね」
「一発やったら一キロ四方に匂いが漂うってコトだしね」
「「「一キロ四方…」」」
そこまで凄いオナラだったとは知りませんでした。教頭先生、どうぞご無事で…。



手作りピザが山ほど出て来た昼食が済むと、ソルジャーは「行ってくるね」と瞬間移動でスカンク狩りに。明日までは来ないと思っていたのに、なんと夕方、ヒョッコリ出て来て。
「出来たよ、特別製のスカンク!」
「「「ええっ!?」」」
もう出来たんですか、オナラが無制限だというスカンク。仕事が早い、と驚きましたが、手術跡の治療に一週間ほどかかるらしくて。
「その間に名前を覚えさせておこうと思ってね。お前はブルーだ、と」
「…ぼくには迷惑な名前だけどねえ…」
会長さんが零すと、ソルジャーは。
「だけど、ハーレイに一からつけさせるよりもいいと思うよ。ブルーと呼んだら飛んで来るんだし、いくらスカンクでも断れないよね、ペットにする話」
それに実地で役に立つし…、と微笑むソルジャー。
「スカンクの手術は情報操作をしておいたけどさ、暫く青の間で飼うしかないから、ハーレイに話しておいたんだ。こういう事情で飼うことにした、と」
「それで?」
「そしたらハーレイも面白がってさ。私がレクチャーしましょうか、って」
「「「レクチャー?」」」
なんのこっちゃ、と揃って首を傾げれば。
「そのまんまの意味だよ、ホントにレクチャー! スカンクのアソコのほぐし方!」
「「「ほぐし方!?」
「そう! 男同士の大人の時間に大切なものはお尻だってね!」
その点、ハーレイは慣れたものだ、とソルジャー、ニコニコ。
「ぼくのアソコをほぐし続けて何年だっけか…。その技をこっちのハーレイに!」
「要らないから!」
そんなプロの技をレクチャーするな、と会長さんが止めたのですけど。
「誰が本物を伝授すると言った?」
「「「は?」」」
「嘘だよ、大嘘! それっぽい嘘!」
まあ聞いてくれ、とソルジャーの赤い瞳が輝いています。もしやキャプテンまで巻き込みましたか、スカンクのペット計画に…?



「本当はさ…。ぼくから頼もうと思っていたんだ、ハーレイに」
手間が省けて助かった、とソルジャーは嬉しそうな顔。
「流石は夫婦だ、以心伝心って言うのかな? ぼくの考えがピタリと伝わる」
「それはいいけど、嘘って何さ?」
会長さんが投げた疑問に、ソルジャーが返して寄越した答えは。
「ぼくのハーレイならではの嘘で、こっちのハーレイが見事にコロリと騙されるヤツ!」
「…どんな?」
「それは現場に立ち会ってこそ! まずはハーレイにスカンクを!」
飼うとオッケーしてくれた時に披露するのだ、と言われた謎のレクチャー。どんなものだか気になりますけど、教頭先生がスカンクを飼ってくれないとレクチャーの出番も無いわけで。
「…教頭先生、スカンク、飼うかな?」
ジョミー君が首を捻って、サム君が。
「飼うんじゃねえのか、ブルーって呼んだら走って来るなら」
「だろうな、飼いたい気持ちになられるだろう」
スカンクでも…、とキース君。
「でも、一キロ四方に匂うんですよね、スカンクのオナラ…」
シロエ君が「ご近所に迷惑をかけないでしょうか」と心配する様子に、ソルジャーは。
「そこはしっかりシールドだよ! ぼくに任せてくれれば完璧!」
オナラが何発炸裂しようが家の中だけで封じ込め、と聞いて安心、スカンクのペット。教頭先生についた匂いもソルジャーの世界の消臭剤で消せるそうですし…。
「いい計画だと思うんだよ。ブルーも乗り気になってくれたし、次の土曜日に!」
スカンクをこっちのハーレイの家にお届けしよう、と言うソルジャー。
「ぼくのハーレイも、その時に一緒に連れて来る。休暇届は出しておいたから」
こっちのハーレイがスカンクを飼うと言ってくれたらレクチャー開始、と聞いてドキドキ、次の土曜日。教頭先生、スカンクを飼ってくれるでしょうか。レクチャーが何か知りたいですから、此処は是非とも、教頭先生にスカンクを~!



ソルジャーが「ブルー」と名付けたスカンクは青の間で順調に暮らしたようです。無制限だと聞くオナラもしないで、モリモリと餌を食べ、人懐っこくなって、手術の傷もすっかり治って…。
「はい、こんなに可愛くなりました~!」
見てよ、とソルジャーが一週間後に持って来たケージ。会長さんの家のリビングで覗き込んだケージの中には、ふさふさとした大きな尻尾が印象的な可愛い動物。
「かみお~ん♪ スカンク、可愛いね!」
触ってみたいな、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。危ないのでは、と思いましたが、ソルジャーはケージを開けてしまって。
「はい、どうぞ」
「わぁーい!」
とっても可愛い! と撫でられてもオナラは出ませんでした。ソルジャー曰く、スカンクは攻撃されると思わない限り、オナラ攻撃をしないのだとか。
「私も半信半疑でしたが、実際、なんともなかったですから」
ソルジャーと一緒に来ていたキャプテンがそう証言しました。悪戯小僧の「ぶるぅ」もスカンクを可愛がっていたそうです。もっとも、「ぶるぅ」の場合は「悪戯したらオナラされるよ」とソルジャーに脅された分が相当に効いていたのでしょうが…。
ともあれ、スカンクは見た目は可愛く、「ブルー」と呼ばれれば大喜びで甘える仕様。この出来だったら教頭先生だってイチコロでしょう。私たちはソルジャーがケージに戻したスカンクを連れて、教頭先生の家まで瞬間移動でパッとお出掛け。お行儀よく玄関でチャイムを鳴らして。



「はい?」
チャイムの向こうで答えた教頭先生、来客が誰かを知って大急ぎで玄関を開けに来ました。リビングに案内されたのですけど、其処でようやくソルジャーが抱えたケージに気付いたようで。
「なんですか、それは?」
「ブルーだけど?」
「は?」
「だから、ブルーだって!」
そういう名前がついているのだ、とソルジャーはケージを床へと下ろすと。
「秋は人恋しい季節だからねえ、ペットなんかはどうかと思って…。ブルーって呼んだら甘えるんだよ、試してごらんよ」
ケージが開けられ、スカンクは外へ。教頭先生はそれをまじまじと見て。
「…スカンクのように見えますが?」
「そうだけど? でも、スカンクを選んだのには理由がね…。ねえ、ブルー?」
ソルジャーが呼んだ「ブルー」は会長さんのことでしたけれど、スカンクのブルーも即座に反応。ソルジャーの足元にタタッと駆け寄り、すりすりと身体を擦り付けています。
「…ほ、本当にブルーだったのか…」
ポカンとしている教頭先生に、会長さんが。
「君のために、とブルーが選んだペットなんだよ。ぼくとの結婚生活に向けて、大いに役立つらしいんだけどね?」
「結婚生活?」
「うん。君がブルーを飼ってくれるなら、そこのハーレイがレクチャーをするっていう予定。でも、要らないなら連れて帰るよ」
元は野生のスカンクだから…、と会長さん。
「ブルーが捕まえて、名前を教えて、スカンクのブルーに仕上げたんだけど…。飼う気が無いなら、自然の中に戻してやるのが一番だってね」
「ま、待ってくれ! こいつがブルーか…。おい、ブルー?」
教頭先生に呼ばれたスカンクはパッと駆けてゆくと、差し出された手に頭をすりすり。
「ほほう、本当にブルーなのだな。うん、なかなかに可愛いものだ。しかし…」
私はスカンクの飼育方法を知らないのだが、と悩ましげな教頭先生に、ソルジャーと会長さんが「餌は何でも食べるから」だの「家の中に放しておけばいいから」だのと。トイレはケージの中でするよう躾済みと聞いた教頭先生、「よし」と決心しましたですよ~!



こうして決まった、スカンクの飼育。教頭先生は私たちに飲み物を用意してくれ、スカンクのブルーはお皿に入れて貰ったミルクをペロリと。そして…。
「ブルー、さっきの話なのだが…」
教頭先生の声に、会長さんとスカンクがそちらに視線を。教頭先生はスカンクを呼び寄せ、「よしよし」と頭を撫でてやりながら。
「こいつがお前との結婚生活に役立つというのはどういう意味だ?」
「ああ、レクチャーね! それなら、其処のハーレイの役目」
会長さんが「よろしく」と頭を下げて、ソルジャーが「出番だよ」とキャプテンの背中をバンッ! と叩きました。キャプテンは「はい」と頷くと。
「…ブルーからの許可も得ていますので、精神年齢が十八歳未満の皆さん方がいらっしゃっても問題無いかと思われます」
大人の時間に欠かせない大切な知識でして、と続けるキャプテン。
「相手の身体を傷つけないよう、ほぐさなくてはいけないことは御存知かと…」
「ええ、心得てはいるのですが…」
生憎とチャンスがありませんで、と頬を赤らめる教頭先生。キャプテンは「そこでですね」と身を乗り出すと。
「このスカンクが役立つわけです、ほぐすための練習が出来るのです」
「は?」
「御承知かと思いますが、スカンクはオナラが有名でして…。そのオナラを出すための器官が、ほぐすべき場所の両側についているのです」
肛門の両側というわけですね、と解説が。
「スカンクは攻撃されるとオナラをしますが、それよりも前に。肛門の中のイイ場所を押してやったらオナラを出す代わりに喜ぶのですよ」
「そうなのですか?」
「はい。私のブルーが調べましたし、それで間違いありません」
イイ所です、とキャプテンは其処を強調しました。
「そのイイ所が、いわゆる人間…。私のブルーなどのイイ所と似たような感じだそうで、其処を一発で探り当てて刺激出来るようになったら一人前だということですよ」
初めての時でも大丈夫です、と太鼓判。会長さんを相手に初めての大人の時間を過ごす時にもイイ所さえ探り出せれば完璧、痛いと言われずにスムーズにコトが進むであろう、と。



「なんと…。スカンクで練習出来るのですか!」
驚きの表情の教頭先生に、キャプテンは「そうらしいです」と大真面目。
「ただし、スカンクのイイ所はですね…。オナラを出すための器官を取り除いてしまうと無くなるそうで、ペットショップの手術済みのスカンクでは役に立たないのですよ」
「ああ、それで野生のスカンクだと…」
「そういうことです。私のブルーが捕獲して来て、私の世界で手術しました」
「手術?」
それでは役に立たないのでは…、と怪訝そうな教頭先生に、キャプテンが。
「手術の目的が違うのですよ。普通のスカンクは五、六回オナラをするとオナラの素が入った器官が空っぽになってしまって、一ヶ月はオナラが出来なくなります」
「…はあ…」
「そんなスカンクでは一ヶ月に六回だけしか練習が出来ませんからねえ…。いえ、もちろん最初からイイ所を狙えれば普通のスカンクでもいいわけですが」
「なるほど、素人はオナラを何発も食らわないとイイ所を探し出せない、と…」
そうでしょうねえ、と頭を振っている教頭先生。ド素人に最初から出来るわけがないと、練習を重ねなければイイ所は探り出せそうもないと。キャプテンは「お分かり頂けましたでしょうか」と笑みを湛えて。
「ですから、このスカンクはオナラをしても直ぐに充填されるように手術をしてあります。存分に練習なさって下さい、イイ所を探り出すために」
「お心遣い、痛み入ります。…それで、イイ所とやらを探り出すコツは…?」
「コツと言うより、慣れですね」
慣れて下さい、とキャプテンはスカンクを指差しました。
「ほぐすべき場所は人間と全く同じです。サイズは多少、違いますがね」
「そうですねえ…」
小さいですしね、と教頭先生。けれどキャプテンは「問題は無いと思いますよ」と。
「指を一本くらいでしたら、スカンクでも充分いけますから。それに本当に同じでしたよ、イイ所に当たった時の感じは」
「お試しになっておられたのですか!?」
「レクチャーする以上、やはり試しておきませんとね」
しっかり確かめておきました、と語るキャプテンが大嘘をついていることを私たちは承知していましたけど、コロリと騙された教頭先生、感激の面持ちでらっしゃいますよ~!



スカンクのお尻に指を突っ込み、オナラを封じられるという「イイ所」。人間の「イイ所」とやらと共通である、とキャプテンに嘘を教えられてしまった教頭先生、やる気満々。
「ブルーのためにも、しっかり練習しておきませんと…。大切なのは慣れなのですね?」
「そうなりますねえ、此処だ、と直ぐに分かるようになるには回数をこなす必要が」
人間だと分かりやすいのですが…、と真顔のキャプテン。
「声や反応で分かりますしね、此処なのだ、と。しかし、スカンクではそうもいきませんし…」
そのためにオナラで見分けて下さい、というレクチャー。
「明らかに感触が違う場所ではあるのです。其処を押してみて、オナラが出ないようならば」
「その場所がそうだというわけですか…!」
イイ所を押せばオナラ無しだと、と教頭先生は頭から信じて疑いもせずに。
「つまりは、オナラをされる間はイイ所を探り出せていないと…。私が下手だというわけですね」
「スカンク相手に上手も下手も無いのでしょうが、人間相手なら下手ですね」
「分かりました、今日から精進あるのみです!」
ブルーと一緒に頑張ってみます、とスカンクのブルーを熱く見詰める教頭先生。
「とにかくお尻に指を突っ込み、イイ所を探ってやればいい、と!」
「そうです、そうです。オナラが出なければ成功ですよ」
大いに精進なさって下さい、と教頭先生を激励するキャプテンの横からソルジャーが「はい」とスプレー缶を差し出しました。
「なんですか、これは?」
「ぼくの世界の消臭剤だよ、スカンクのオナラの匂いは半端じゃないって言うからねえ…。服なんかはもう捨てるしかないって話なんだし、それじゃ君だって困るだろ?」
このスプレーがあればどんな悪臭も瞬時に分解! とソルジャーは缶を教頭先生に。
「それから、スカンクがオナラしちゃうと一キロ四方が臭いと聞いたし、君の家にはシールドをサービスしておくよ。消臭剤とシールドで完璧、安心して練習に励んでみてよね」
「はい、ありがとうございます!」
ブルーとの結婚に備えて腕を磨きます、と教頭先生は感無量でした。イイ所を探す練習が出来る素敵なスカンク、しかも名前は会長さんと同じでブルー。いいものを貰ったと、可愛がらねばとスカンクを撫でておられますけど、キャプテンの説明、大嘘ですから~!



お茶を御馳走になった後、私たちは瞬間移動で会長さんの家へと帰って、ソルジャーがリビングの壁に映し出す中継画面をウキウキと。教頭先生は私たちが使ったカップを洗って片付け、それからスカンクにビスケットなどを食べさせてから。
「さて、ブルー…。ちょっと練習してみるか」
褐色の手にすりすりと頭を擦り付けているスカンクのブルー。教頭先生はふさふさの尻尾を左手で持ち上げ、右手の人差し指を構えて。
「すまんな、私も初めてだからな…。驚かせてしまったら申し訳ないが」
今日からお前と二人三脚で頑張ろう、と笑顔でブスリと突っ込んだ指。突っ込んだ先はスカンクのお尻、これでスカンクが驚かない筈がないわけで…。
「「「ひいぃっ!!!」」」
やった、と目を覆う私たち。スカンクのブルーは狙い違わず、お尻を覗き込んでいた教頭先生の顔に向かって発射しました、いわゆるオナラと呼ばれるヤツを。
「うーん、スカンクは顔を狙って攻撃するって本当だったか…」
のんびりと呟くソルジャーに向かって、キース君が。
「あの体勢だと、どう考えても顔だろうが!」
「いや、それが…。顔を狙うって書いてあったよ、ぼくが読んだ資料」
ついでに目潰しを兼ねていてね、とソルジャーが見物しているとも知らずに、教頭先生、不撓不屈の精神で。
「…く、臭い…。しかし、これは私が下手くそだからで…」
今度は上手くやってみせるからな、と再び構える人差し指。スカンクのブルーはソルジャーに人懐っこく育てられたせいか、教頭先生にお尻を向けてお皿のビスケットを齧っています。
「…これはもう一発ですね…」
既に相当臭いんでしょうが、とシロエ君が呻いて、会長さんが。
「一発どころか、続けて二発、三発といくね。ハーレイだからね」
そんな冷たい会長さんに、ソルジャーが。
「ね、お勧めした甲斐があったろ、ハーレイにペット」
「うん。当分の間はスカンクの方のブルーに夢中で、ぼくどころではないってね」
君のハーレイにもうんと御礼を言わなくちゃ、と大満足の会長さん。スカンクのブルーは、教頭先生が騙されたことに気付くまで飼われることでしょう。教頭先生、いつ気付くんだか…。人恋しい秋に癒しのペット。あれでも多分、癒しでしょうねえ…?




           秋にはペット・了

※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 教頭先生が飼うことに決めた、スカンクのブルー。真実に気付くのは、いつのことやら。
 スカンクのオナラに回数制限があるとか、顔を狙うとかは嘘ついてません、本当です。
 次回は 「第3月曜」 9月17日の更新となります、よろしくです~! 

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 こちらでの場外編、8月は、もちろん、お盆の棚経。今年はどうなりますのやら…。
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