シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
新しい年がやって来ました。除夜の鐘から初詣までズラリとイベント、冬休みの後もシャングリラ学園ならではのお雑煮大食い大会やら、水中かるた大会やら。それが終わればお正月モードも去り、日常が戻って来るわけですが。いきなり週末、会長さんの家でまたダラダラと…。
「なんだかさあ…。スリルってヤツが欲しいよね」
ジョミー君が唐突に言い出し、「はあ?」と首を傾げた私たち。
「おい、スリルというのは絶叫マシンか?」
冬場は御免蒙りたいが、とキース君。
「若くないなと言われそうだが、俺は余計な寒風は避けたい。特に絶叫マシンはな」
どう考えても喉に悪い、と顰めっ面で。
「風邪もヤバイが、風邪がヤバイ理由は喉だからな。熱くらいは気合でなんとかなっても、喉はそういうわけにはいかん。坊主にとっては喉は命だ」
お経が読めてなんぼの坊主だ、と言われてみればその通り。法事をしようとお坊さんを呼んでも声が出ないとか、酷い声だと有難味はゼロ、御布施の割引をして貰いたくなりそうです。
「キース先輩、お坊さんの世界で声がアウトだとどうなるんです?」
先輩の家なら代打もいますが、とシロエ君が。元老寺はアドス和尚と副住職のキース君との二段構えで、片方が声が出なくなっても代理を出せば済むことです。月参りだったらまるで無問題、法事だと若いキース君が出たら「代理じゃないか」と値切られそうな気もしますけど…。
「声がアウトになった場合か? そういう時に備えて法類というのがあるわけだが…」
住職に何かあった時には代理を務めてくれるのが法類、いわばお寺の世界の親戚。どうしても声が駄目だとなったら代わりにお願い出来るそうですが、費用は頼んだお寺の自腹。
「なにしろ代わりに出て貰うんだし、御布施はそっちに行くことになるな。全部持って行かれるわけではないがだ、それ相応の費用と交通費とかの実費は確実に持って行かれる」
「…シビアですね…」
「他の仕事でも同じだろうが。だが、風邪くらいで代理を頼むと肩身が狭い」
体調管理がなっていないと思われるのがオチだ、と肩を竦めるキース君。
「坊主の世界はお経が読めてこそだからなあ、日頃から喉が第一なんだ。まして俺には怖い親父がいるわけで…」
喉に直接寒風を浴びる絶叫マシンで喉を潰すリスクは避けたい、とキッパリと。絶叫マシンに乗りに行くなら乗らずに見物、待ち時間くらいは付き合ってくれるそうですけれど。キース君を置き去りにしてまで乗らなくってもいいんじゃないかな、絶叫マシン…。
誰からともなく「やめておこう」という結論になった絶叫マシン。ジョミー君の夢は砕けたかと思いましたが、さに非ずで。
「ぼくが言ったの、そういうスリルじゃないんだよ。面白いから黙って聞いてたけどさ…」
坊主ネタでも自分に無関係なら高みの見物、とジョミー君。
「ちょっとスリリングな毎日っていうのもいいよね、と思っただけでさ」
「…どんなスリルだ?」
何処かの馬鹿のお蔭で間に合っているような気もするが、とキース君が言った馬鹿が誰なのか分からない人はいませんでした。噂をすれば影とか言霊だとか、そういう理由で誰も口にはしませんけれど、何処かのソルジャー。
「えーっと…。そっちじゃ多分、無理じゃないかな…。恐怖新聞ってヤツだから」
「「「恐怖新聞?」」」
オウム返しに訊いちゃいましたが、それって昔の漫画でしょうか。ずうっと昔に流行ったとかで、たまに学校でも一時的にブームになったりするヤツ…。
「そう、あの漫画の恐怖新聞。昨日、夜中に思い出しちゃって…」
アレの配達は夜中だよね、とジョミー君。
「夜の夜中に放り込まれて、読む度に百日寿命が縮むって…」
「そういうヤツだな、あの新聞はな」
あいつには確かに無理そうなネタだ、とキース君が深く頷きました。
「寿命を縮める方もアレだが、新聞の紙面が組めないだろう。あれは未来を予知するんだしな」
「でしょ? フィシスさんでもいない限りは作れそうにないよ、恐怖新聞」
だけどそういうスリルもいいな、と言われましても。読んだら寿命が縮むんですが…?
「そこだよ、ぼくたちには最強のブルーがついてるし!」
ジョミー君は会長さんにチラリと視線を。
「恐怖新聞、届いたとしたら配達を断るための御祈祷、存在するよね?」
「…まるで無いこともないけどねえ…」
ついでに寿命を取り戻す方も、と会長さん。
「だからと言ってね、面白半分で恐怖新聞なんかを読まれても困るんだけど…」
「えっ、本当に存在するわけ? 恐怖新聞」
それなら見たい、とジョミー君には会長さんの考えが全く通じていません。野次馬根性で手を出すんじゃない、と暗に言われていたわけですけど、そこで読みたいとは情けないかも…。
読む度に百日寿命が縮むのが恐怖新聞、あれは漫画だと思っていました。いわゆるフィクション。会長さんの言い方だと、実在するようにも聞こえますが…?
「まさか。あるわけないだろ、あんな新聞」
本当にあったらフィシスの立場はどうなるんだ、と会長さんの答えもズレたもの。曰く、未来を予知する力は会長さんの女神のフィシスさんがいれば充分なわけで、恐怖新聞の出番は無いとか。
「寿命を縮めてまで読まなくっても、フィシスに頼めば楽勝だしねえ?」
「…だったら無いわけ、恐怖新聞」
ちょっとスリルを味わいたかった、と惜しそうにしているジョミー君。本当に配達されて来たならパニックは確実、もう一日目で会長さんに泣き付きそうなのに…。
「そりゃそうだけどさ…。でもさ、ちょっぴり見たいわけでさ…」
まだ言い続けているジョミー君に向かってサム君が。
「そうかあ? あれは読んでるヤツの姿を見物する方が楽しそうだと俺は思うぜ」
あの漫画だって傍観者だから楽しめるんだ、と真っ当な意見。
「自分の所には届きやしねえ、って安全地帯に立っているから面白いわけでよ…」
「サム先輩の言う通りですね、自分にも届くリスクがあったら、読むのはあまり…」
それこそ言霊と同じで避けたいです、とシロエ君。
「存在しないからこそ漫画が流行って、たまに学校でも流行り直したりするんでしょうねえ…」
「うーん…。そうかも…」
自分に来るより誰かの家に届いた方が面白いかも、とジョミー君も方向転換を。
「それじゃさ、恐怖新聞を作って届けるとかさ…」
「誰にだ?」
キース君の問いに、ジョミー君は。
「…誰だろう? 教頭先生だと失礼かなあ?」
「失礼にもほどがあるだろう!」
先生を何だと思っているんだ、とキース君が怒鳴った所へ。
「こんにちはーっ!」
遊びに来たよ、とフワリと翻った紫のマント。考えないようにしていたソルジャー登場、いつもだったら大騒ぎですが、恐怖新聞はソルジャーには作れないと結論が出ていただけに。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
ゆっくりしていってね! とケーキと紅茶の用意に走った「そるじゃぁ・ぶるぅ」はもちろん、他のみんなも今日はのんびりムードですねえ…。
本日のおやつ、リンゴのクラフティ。それと紅茶を前にしたソルジャー、早速クラフティにフォークを入れて頬張りながら。
「…恐怖新聞を作るんだって?」
しかもターゲットはこっちのハーレイだってね、とこれまた話を半分しか聞いていない様子で。
「誰も作るとは言ってないから! それにハーレイの名前は出たトコだから!」
勝手に話を作るんじゃない、と会長さんがツンケンと。
「どの辺りから覗き見してたか知らないけどねえ、恐怖新聞は作れないんだよ!」
もどきは作れても本物は無理、と会長さん。
「ハーレイにだってそのくらいは分かるし、届けても鼻で笑われるだけ! 作る手間が無駄!」
「…そうなるのかなあ?」
「当たり前だよ、未来を予知する新聞が来たら誰が作ったかもモロバレで!」
フィシスの力を借りたぼくだと即座にバレる、ともっともな仰せ。
「たとえジョミーたちが作るとしてもね、ぼくが一枚噛んでいるのは確実だから! 寿命が縮むと書いておいても、そこはフフンと笑って終了、逆に喜ばれるだけだから!」
ぼくの悪戯だと大喜びだ、とブツブツと。
「それじゃちっとも面白くないし、それくらいなら赤の他人に届けた方がマシ!」
届けられる人が気の毒だからやらないけれど、と会長さんは結論付けました。恐怖新聞は作りもしないし、教頭先生に届けもしないと。
「うーん…。面白そうだと思ったんだけどねえ、寿命が縮むと焦るハーレイ」
「その寿命だって山ほどあるのがハーレイだってば!」
ぼくと同じでまだまだ死にそうな予定も無いし、と会長さん。
「それにジョミーと同じ理屈で、いざとなったらぼくに泣き付く! 助けてくれと!」
そして泣き付きつつも心でウットリ夢を見るのだ、という解釈。
「ぼくに命を助けて貰えるわけなんだしねえ、御祈祷料を毟り取られても本望なんだよ、絶対に! ぼくが時間を割いてくれたと、自分のために祈ってくれたと!」
「なるほどねえ…。恐怖新聞、こっちのハーレイは貰っても嬉しいだけなんだ…」
「そういうことだね、困るどころか大感激だね!」
いいものが来たと毎日大事に保存するんだ、と会長さんは迷惑そうに。
「ぼくはハーレイを喜ばせるつもりは全く無いから、恐怖新聞は大却下だよ!」
面白くないものは作らないから、と繰り返している会長さん。恐怖新聞は怖がられてなんぼの新聞ですから、喜ばれたら意味が無いですよね、うん…。
ジョミー君の心を掴んだ恐怖新聞、家に届くのも、自分たちで作って届けに行くのも無理な代物だと分かりましたが。ソルジャーの方はまだまだ未練がたっぷりで…。
「面白そうなアイテムだけどねえ、恐怖新聞…」
情報は君たちの心を読ませて貰った、と事後承諾でよろしくとのこと。
「要はアレだね、寿命がどんどん縮んでいくのが怖いポイントというわけだね?」
「そうだけど…。さっきも言ったと思うけれども、ハーレイにはそこは関係なくて!」
誰の仕業かバレているだけに鼻で笑っておしまいなのだ、と会長さん。
「本当に本物の恐怖新聞でも、ぼくに助けを求めるための小道具にしかならないし!」
「じゃあ、こっちのハーレイが心底怖がりそうな恐怖新聞ってヤツは…」
「どう転んだって存在しないね、あらゆる意味でね!」
作ったヤツだろうが本物だろうが…、と会長さんは言ったのですけど。
「…それじゃ、怖がるポイントが変わればどうだろう?」
「「「は?」」」
なんのこっちゃ、と顔を見合わせる私たち。恐怖新聞は寿命が縮むのが怖いポイント、それを変えたら存在意義など無さそうですが…?
「その寿命だけど…。残り少なくなっていくのが怖いわけでさ、いつか終わると」
「まあねえ、読む度に百日縮むんだしね」
四日読んだら一年以上、と会長さん。
「だけどハーレイには怖がって貰えそうもないけれど? そっちの方もいろんな意味で」
「それは寿命の問題だからだよ、こっちのハーレイが失くして困るものは何だと思う?」
寿命よりも大事にしそうなモノ、と質問されても分かりません。会長さんも同様ですけど、ソルジャーは指を一本立てて。
「ズバリ、童貞! 初めてはブルーと決めているよね、こっちのハーレイ!」
「…帰ってくれる?」
その手の話はお断りだ、と会長さんが眉を顰めれば。
「まあ、聞いてよ! ぼくが考えたハーレイ用の恐怖新聞!」
こっちのハーレイ専用なのだ、とソルジャーに帰る気はさらさら無くて。
「読む度に百日縮むんだよ! 童貞卒業までの日が!」
「それ、喜ばれるだけだから!」
寿命が縮むよりも喜ばれて終わり、と会長さん。それはそうでしょう、会長さんをモノに出来る日までの日数が劇的に短縮、そんなアイテム、教頭先生は大いに歓迎ですってば…。
寿命が百日縮む代わりに、童貞卒業への日が百日ずつ縮む恐怖新聞。何かが絶対間違っている、と私たちは思いましたが…。
「そこが恐怖のポイントなんだよ、途中から恐怖に変わるんだよ!」
そのタイミングは君に任せる、とソルジャーが会長さんにウインクを。
「童貞卒業、こっちのハーレイの頭の中では君とのゴールになるんだろうけど…。実はこのぼくに奪われると知ったら、どうなるだろうね?」
「「「え?」」」
「だから、このぼく! ハーレイの手持ちの時間がゼロになったら、ぼくが登場!」
そして教頭先生の童貞を頂いてしまうというわけで…、とニンマリと。
「ぼくに無理やり奪われちゃったら、もう取り返しがつかないわけで…。君一筋だと守り続けた童貞がパアで、君にも激しく詰られるわけで!」
「…詰るのはいいけど、迷惑だから!」
ハーレイが童貞卒業だなんて、と会長さんは怒り心頭。
「最初の内こそズシーンと激しく落ち込むだろうけど、立ち直ったら開き直るから! 君とはよろしくヤッたんだから、と自信をつけて挑んで来るから!」
このぼくに、と怒鳴った会長さんですが、ソルジャーはケロリとした顔で。
「…誰が本当に奪うと言った?」
そこは大嘘、と舌をペロリと。
「これでもぼくは結婚してるし、ぼくのハーレイ一筋なんだよ! たまにはアヤシイ気分にもなるし、浮気もいいなと思いもするけど、今回は別!」
本気で奪うつもりは無い、とソルジャーはキッパリ言い切りました。
「こっちのハーレイがブルブル震えて待っていようが、開き直って童貞卒業を目指していようが、最終的には肩透かし! でも、そこまでは震えて貰う!」
自分の良心との戦いの日々、というのがソルジャーの指摘。たとえ開き直ってしまったとしても、会長さんに詰られることは間違いないのがソルジャーを相手にしての童貞卒業。これでいいのかと、このままでいいのかと何度も悩むに違いないと。
「だからね、真実を知った日から始まる恐怖! ぼくに童貞を奪われると!」
「…その日までのカウントダウンってわけかい?」
ハーレイに届く恐怖新聞、と会長さんも興味を抱いたようです。自分に実害が及ばないなら、ヤバイ橋でも渡りたがるのが会長さん。もしかしなくても、教頭先生に恐怖新聞、届き始めたりするんでしょうか…?
寿命が縮んでしまう代わりに童貞卒業への日が縮まる新聞。会長さん一筋の教頭先生にとっては不本意極まりない形で奪われる童貞、これは面白いと会長さんは考えたらしく、ソルジャーの方も俄然、乗り気で。
「もちろん、ぼくに童貞を奪われる日までのカウントダウン! 怖そうだろう?」
「…恐怖だろうねえ、ハーレイにはね」
ぼくが怒るに決まっているし、と会長さん。
「ぼくでも君でもかまわないのかと、その程度の愛かと蹴り飛ばされるのは間違いないしね!」
「ほらね、最高に怖いんだよ。…いくら後から開き直ろうと心に決めても、果たして君が許すかどうかは謎だしねえ…」
この新聞はお勧めだよ、とソルジャーは膝を乗り出しました。
「今夜から早速届けないかい、ハーレイの家に! 恐怖新聞!」
「いいねえ、でもって何日かしたら真実をぼくが知らせに行く、と…」
童貞卒業の実態は何か教えてやったら恐怖の始まり、と会長さんもニヤニヤと。
「三日くらいはぬか喜びをさせておくのがいいだろうねえ、童貞卒業」
「うん、泳がせておいたら恐怖もドカンとインパクトがね!」
勘違いさせて気分は天国、そこから一転して地獄、と楽しげなソルジャー。
「それでこそ恐怖新聞の値打ちも上がるわけだし、真実を明かす日は君にお任せ!」
「了解、それじゃ今夜から…。って、駄目だ、フィシスは旅行だっけ…」
昨日の夜から出掛けたっけ、と会長さん。
「エラとブラウに誘われちゃってさ、二泊三日で温泉とカニの旅なんだよ。明日の夜まで帰って来ないし、恐怖新聞は作れないよ」
未来を読めるフィシスがいないと…、と言われてみればその通り。恐怖新聞の売りは未来の出来事、占いが出来るフィシスさんの協力が無ければ作れません。旅行中でも頼めば占って貰えるでしょうが、会長さんはフィシスさんには甘いですから…。
「ごめん、フィシスが温泉とカニを楽しんでるのに、こっちの用事は頼めないよ」
しかも遊びの用事だなんて…、と会長さんが謝りましたが、ソルジャーは。
「え、フィシスの協力は要らないよ? 本物の恐怖新聞じゃないし」
「「「へ?」」」
本物じゃないことは百も承知ですが、記事はやっぱり本物っぽく作らないと駄目だと思います。読みたくなくても読んでしまうのが恐怖新聞、それは未来の出来事が書かれているからで…。そこは外せないと思うんですけど、ソルジャー、ちゃんと分かってますか?
恐怖新聞の怖いポイント、読まずにいられない新聞の記事。だからこそ読んでしまって寿命が百日縮む仕様で、読まずにゴミ箱にポイと捨てたら寿命は縮まないわけで…。
たとえ偽物の恐怖新聞でも、教頭先生が読まずに捨ててしまえば全く意味がありません。きちんと未来を書いてこそだ、と思った私たちですが…。
「別に未来の記事じゃなくてもいいんだよ! こっちのハーレイが読みさえすれば!」
危険と分かっていてもフラフラと釣られて読んでくれれば、とソルジャーは勝算があるようで。
「新聞の売りは特ダネとかだろ、でなきゃお得な情報だとか!」
「…身も蓋もないが、そんな所か…」
新聞を取る理由の多くはそれだな、とキース君。
「細かく挙げれば山ほど理由も生まれてはくるが、新聞を広げて一番に見るのは大見出しがついた最新のニュースで、特ダネともなれば読まずにいられないしな」
「そこなんだよ! こっちのハーレイの心を掴む特ダネ、それさえ書いたらハーレイは読むね!」
未来の出来事なんかは要らない、とソルジャーは自信満々で。
「目指す所は童貞卒業、それに相応しくエロイ記事! いつか役立ちそうな情報!」
「「「ええっ!?」」」
それは確かに教頭先生のハートを鷲掴みにしそうですけど、その記事、いったい誰が書くと?
「決まってるだろう、ぼくが書くんだよ! 豊富な知識と経験を生かして!」
現場からのニュースも必要だよね、とニコニコと。
「昨夜の青の間のニュースをお届け、もうこれだけで食らい付くよ! たとえ、ぶるぅが覗きをしていてハーレイがズッコケたって内容でもね!」
人は他人のそういう事情を知りたいものだ、とグッと拳を握るソルジャー。
「記事の一つはコレに決まりで、現場にいた記者ならぬぼくが迫真の状況を書く、と!」
他にもエロイ記事が満載、とソルジャーはアイデアを挙げ始めました。意味はサッパリ分かりませんけど、大人の時間に纏わる情報らしいです。
「ハーレイが鼻血で失神しない程度に、なおかつ食らい付くように! それが大切!」
「…君が書くんなら、ぼくはどうでもいいけどねえ…」
どうせハーレイは普段から何かと良からぬ写真なんかで楽しんでるし、と会長さん。
「それで、その新聞を読んでしまえば、童貞卒業までの日が縮まるわけだね?」
「そう、読む度に百日ずつね!」
今夜は楽しく読んで貰おう、とソルジャーは悪意の塊でした。教頭先生に届く新聞、今夜の所は真相は何も知らされないまま、童貞卒業までの日数が百日短縮されるだけ、と…。
かくして決まった恐怖新聞。ソルジャーは会長さんの家の一室を借りてウキウキ新聞作りで、出来上がったものを「ジャジャーン!」と見せに来てくれましたが、私たちが読んでも意味は不明だと分かってますから、「恐怖新聞」のロゴや日付を確認しただけ。
会長さんの方は端から端まで目を通してから、「よし!」と親指を立ててゴーサイン。
「これならいけるね、ハーレイは確実に食い付くよ。…恐怖新聞だと分かっていてもね」
暫くは狂喜新聞だけど、とダジャレもどきが。
「読む度に童貞卒業までの日数が百日縮んでしまいます、っていうのがねえ…。今夜はこれで大喜びだよ、百日縮んだと祝杯だろうね」
「多分ね。その状態が暫く続いて、実態を知れば恐怖の日々だよ」
ぼくに童貞を奪われる日がヒタヒタと近付いてくるわけで…、とソルジャーがクスッと。
「しかも恐怖新聞だと知らせに行くのは君だからねえ、もう間違いなくその日はドン底! そこを乗り越えても、開き直っても、やっぱり良心が痛んで恐怖な新聞なんだよ」
それでも読まずにいられないのが恐怖新聞、と本日の新聞を配達仕様に畳んでいるソルジャー。ポストに投げ込むような形に、恐怖新聞のロゴが見えるようにと。
「今夜はこれを放り込んで、と…。明日からの分はぼくのシャングリラで作ろうかな」
どうせ昼間は暇なんだから、とソルジャーならではの発言が。
「ソルジャーはけっこう暇なものだし、君たちも授業に出ている間はぼくと遊んでくれないし…。あ、でも明日は日曜だっけね、週末はこっちで作るのもいいね」
ともあれ今夜はこれをお届け、と恐怖新聞の第一号が折り畳まれて、後は配達を待つばかり。私たちも野次馬根性丸出し、お届け見たさに今夜は会長さんの家にお泊まり決定です。豪華な寄せ鍋の夕食の後はワイワイ騒いで、夜食も食べつつ深夜になって。
「そろそろかなあ? 丑三つ時って今頃だよね」
「午前二時だしね、届けに行くにはいい時間だと思うけど…」
出掛けるのかい、と会長さんがソルジャーに訊くと。
「まさか! 単に新聞を放り込むだけだよ、瞬間移動で!」
ついでに掛け声は音声を少々変えてお届け、とソルジャーがパチンと指を鳴らせば壁に中継画面が出現。教頭先生の家の寝室が映し出されて、ベッドで爆睡中の教頭先生も。
「さてと…。ここへ一発、恐怖新聞!」
ソルジャーが言うなり、中継画面の向こうで「新聞でーす!」と響いたソルジャーとは全く違う人の声、ベッドの上にバサリと新聞。教頭先生がゴソッと動きましたが、さて、この後は…?
「…新聞だと?」
うーん、と教頭先生が目覚めて手探り、部屋に明かりがパチリと点いて。
「はて…?」
本当に新聞が…、と掛布団の上の新聞を手にした教頭先生、たちまち瞳が真ん丸に。
「…恐怖新聞!?」
誰の悪戯だ、と言ってますから、恐怖新聞という存在は御存知なのでしょう。やっぱり普通に作っていたって会長さん絡みの悪戯扱い、喜ばれて終わるオチだったか、と見詰めていれば。
「…悪戯ではなくて本気なのか、これは? …ブルーからの愛の告白だろうか…」
読む度に百日も縮むとはな、と教頭先生の頬がうっすらと赤く。
「しかも記事がいい、あちらのブルーが作っているというわけか…。青の間の記事はブルーでなければ書けないからな」
ふむふむ…、と昨夜の青の間の状況を熱心に読んで、他の記事にも興味津々。これは知らなかったとか、勉強になるとか連発しながら読み進んで…。
「うむ、実に素晴らしい新聞だ! 恐怖新聞と書かれてはいるが、狂喜新聞と呼びたいくらいだ」
何処かで聞いたようなダジャレに、会長さんがチッと舌打ち。ハーレイとネタが被るなんて、と不快そうですが、そうとも知らない教頭先生は満面の笑みで。
「これから毎晩これが届くのだな、そして読む度にブルーとの初めての夜がグッと近付く、と」
読めば百日縮むのだしな、と教頭先生はソルジャーと会長さんの計算通りに勘違い。今夜だけでもう百日縮んだと歓喜の面持ち、恐怖新聞の第一号を丁寧に畳んで…。
「これは記念に取っておかねば…。そうでなくても勉強になるし、明日以降のも古紙回収に出すなどは考えられんな」
恐怖新聞は永久保存版だ、とベッドサイドの棚の上へと。
「明日もこの時間に届くのか…。届く所を起きて見てみたいが、サンタクロースのようなものかもしれないしな…」
起きて待っていたら来ないかもしれん、と明日以降は寝て待つつもりのようです。それから明かりがパチンと消されて、ソルジャーが中継画面を消して。
「この先は見なくていいと思うよ、感極まったハーレイがベッドで良からぬことをね」
「…あの内容だし、燃え上がるのも仕方ないねえ…」
真相を知るまではどうぞご自由に、と会長さん。恐怖新聞の第一号は狂喜新聞になっちゃいましたが、お届けは無事に完了です。明日からも午前二時のお届け、丑三つ時には恐怖新聞ですね?
教頭先生が大喜びした恐怖新聞第一号。日曜日は朝から何度も読み返し、ソルジャーは会長さんの家で新聞作りを。昨夜は自分の世界に帰っていないくせに青の間情報を書いたのだそうで…。
「このくらいの捏造、新聞記事にはありがちなんだろ?」
無問題! とソルジャーが言ってのけた偽の青の間情報、その夜に新聞を配達された教頭先生は嘘とも知らずに熱心に読んだと月曜日の放課後に聞かされました。会長さんとソルジャーから。
そんな調子で配達が続き、会長さんは三日どころか一週間も教頭先生を泳がせておいて、金曜日の夜に私たちにお泊まりの招集が。お泊まり用の荷物は持たずに登校してたんですけど、急なお泊まりはありがちですから慣れたもので…。
「かみお~ん♪ 今夜はハーレイの家にお出掛けなんだよ!」
みんなはシールドに入っていてね! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。会長さんとソルジャーだけが姿を現しての訪問だそうで、「そるじゃぁ・ぶるぅ」も私たちと一緒にシールドで姿を隠すとか。会長さんの家でソルジャーも交えて特製ちゃんこ鍋の夕食、後片付けが済んだら出発で。
「さて、行こうかな?」
ソルジャーが腰を上げ、会長さんも。
「ハーレイの顔が楽しみだねえ…。狂喜新聞が恐怖新聞に変わる瞬間がね!」
今も楽しく読み返しているし、という声と同時に青いサイオンがパアアッと溢れて、私たちは教頭先生の家のリビングへと瞬間移動。会長さんとソルジャーがスッと進み出て…。
「「こんばんは」」
「あ、うむ…。いや、こんばんは…!」
教頭先生がソファの後ろに慌てて隠した恐怖新聞。会長さんが「隠さなくてもいいのにねえ?」とソルジャーの方を向き、ソルジャーも。
「隠すことはないと思うんだけどねえ、恐怖新聞。もう相当に縮まったかな?」
六百日ほど縮んだものね、とニコニコと。
「君の童貞卒業までの日、一年半ほど縮まったわけで…。感想は?」
「そ、それは…。嬉しいです…」
いつも素晴らしい記事をありがとうございます、と教頭先生は素直に頭を下げました。ソルジャーは「どういたしまして」と笑顔を返して。
「これからも順調に縮めるといいよ、童貞卒業までの日数! ぼくも大いに応援するから!」
「は、はいっ!」
その日を目指して精進します、と決意も新たな教頭先生だったのですが…。
「ハーレイ、精進するのはいいんだけどねえ…。その新聞、恐怖新聞だよ?」
普通は寿命が縮むんだけど、と会長さんが口を挟みました。
「ところが君の寿命は縮みそうもない。…今から縮むかもしれないけどさ」
「は?」
怪訝そうな顔の教頭先生。会長さんはフンと鼻を鳴らすと。
「そこに書いてある童貞卒業、ぼくが相手だとは何処にも書かれてないんだけどねえ?」
「…それがどうかしたか?」
わざわざ書くほどのことでもないし…、と教頭先生はまるで疑ってもいないようです。ソファの後ろに隠してあった恐怖新聞を引っ張り出して改めて確認、一人で納得してらっしゃいますが。
「分かってないねえ、恐怖新聞だと言った筈だよ、寿命が縮むと。…君の童貞卒業の日には、ぼくじゃなくってブルーが相手をするんだけれど?」
そこのブルーが、と会長さんが指差し、ソルジャーが。
「その通り! ぼくが君の童貞を奪いに来るっていうのが恐怖新聞のコンセプト!」
「あ、あなたが!?」
「そう、ぼくが! 君がブルーだけだと守り抜いて来た、筋金入りの童貞をね!」
美味しく楽しく奪わせて貰う、とソルジャーが宣言、教頭先生は顔面蒼白。
「…そ、そんな…! 私は初めての相手はブルーだと決めておりまして…!」
「知っているから奪いに来るんだよ、そのための予告が恐怖新聞!」
奪いに来る日が近付いて来たら残り日数の表示に変わるから、とソルジャーが笑みの形に唇を吊り上げ、会長さんが。
「そういう仕様になってるんだよ、恐怖新聞。…君はブルーとヤるってわけだね、ぼく一筋だと散々言ってたくせにブルーと!」
「い、いや、私にはそういうつもりは…!」
「つもりが無くても、これが真実! ブルーとヤろうと六百日も期間短縮したわけで!」
もう最低な男だよね、と会長さんは激しく詰って、スケベだの何だのと罵詈雑言で。
「ぼくにこうして怒鳴り込まれて、寿命が縮んだかもだけど…。それでも君は読み続けるんだ、ブルーが届ける恐怖新聞を毎晩ね!」
「よ、読まなければ縮まないのだろう…! これ以上は…!」
そしてブルーも来ない筈だが、と教頭先生は真っ青ですけど、会長さんが返した答えは。
「よく考えたら? 恐怖新聞だよ、読んじゃ駄目だと分かっていても読むのが恐怖新聞!」
君だってきっと読み続けるさ、と冷たい微笑み。恐怖新聞、それでこそですもんねえ…。
もう読まない、と泣きの涙の教頭先生を放って会長さんは帰ってしまいました。シールドの中にいた私たちを引き連れて瞬間移動で。ソルジャーも一緒に戻って、深夜になって。
「さてと、ハーレイの決心はどんなものかな?」
読まないと言っていたけどねえ…、とソルジャーが出現させた中継画面。教頭先生は明かりを消した寝室でベッドにもぐってらっしゃいますけど…。
「新聞でーす!」
例によって声色が変えてある音声、ベッドの上にバサリと新聞。教頭先生がゴソリと身じろぎ、やがて明かりがパッと灯って…。
「よ、読んではいかん…!」
捨てるだけだ、と恐怖新聞を掴んだ教頭先生、けれど視線は紙面に釘付け。
「…青の間スクープ…」
何があったのだ、と食い入るように読んでらっしゃる本日の特ダネ、青の間スクープ。つまりは童貞卒業までの日数、また百日ほど縮んだわけで。
「…し、しまった…!」
読んでしまった、と愕然としてらっしゃいますけど、時すでに遅し。ソルジャーは中継画面を消すなりガッツポーズで、勝利の笑みで。
「そう簡単には逃がさないってね! 明日からもガンガン、ハーレイの心を掴む記事!」
「スクープを乱発するのかい?」
今日みたいな感じで、と会長さんが訊くと。
「ダメダメ、それじゃ慣れてしまって食い付かなくなるし! ぼくも色々、知恵を絞って!」
愛読者様の心に訴える記事を書かなければ、とソルジャーも楽しんでいるようです。聞けばキャプテンも紙面作りにアイデアを出しているとかで。
「同じハーレイ同士だからねえ、似ている所は似てるしね? レイアウトとかにはハーレイの案を積極的に取り入れてるよ」
目に付きやすい記事の配置なんかもあるし…、と恐怖新聞作りはソルジャー夫妻の日々の楽しみにもなりつつあって。
「青の間情報もね、ハーレイもまんざらじゃないんだよ。覗きはダメでも、文章の形で披露するのは悪い気分じゃないらしくって…」
だから現場のナマの情報をガンガンお届け、ハーレイ視点の記事なんかもね、と笑顔のソルジャー。教頭先生に届く恐怖新聞、日に日にグレードアップしそうな感じです。それを読まずに逃げ切るだなんて、ほぼ不可能かと思いますけどね…?
恐怖新聞作りに燃えるソルジャー、読むまいと頑張っては誘惑に負ける教頭先生。両者のバトルは入試期間だのバレンタインデーだのも乗り越えて続き、二月の末が近付いた頃。
「いよいよカウントダウンなんだよ!」
エックスデーは雛祭りに決めた、とソルジャーが本日の恐怖新聞を抱えてやって来ました。
「雛祭りってアレだろ、お雛様の結婚式なんだろう?」
「んーと…。まるで間違ってはいないかな、うん」
会長さんが返すと、ソルジャーは。
「結婚式の日なら吉日、そこでハーレイが童貞卒業! 今日から秒読み!」
ほらね、と示された恐怖新聞のロゴの下には「読むと百日縮みます」と書かれていたお馴染みの警告文の代わりに、残り日数が書き込まれていて。
「…ハーレイの震え上がる顔が目に見えるようだねえ、ここまで縮んでしまったってね」
自業自得だけど、と会長さん。
「でもねえ、恐怖新聞だしね? 残り日数も順調に縮むんだろうねえ…」
「それはもう! 腕によりをかけて紙面作りをするからね!」
逃がすものか、と闘志に溢れるソルジャー、会長さんはクスクスと。
「…そして雛祭りの日がやって来る、と…。どんなにハーレイが震えていてもね」
「そうだよ、その日に恐怖新聞を読んだらおしまいなんだよ」
このぼくが出て行って童貞を奪う、とソルジャーは拳を突き上げてますが、それって冗談でしたよねえ? 本気で奪うつもりは無くって、あくまで脅しているだけで…。
「そうだけど? 今回のコンセプトは恐怖新聞、最後まで読んだらどうなるか、っていうだけのスリルに満ちたイベントなんだから!」
誘惑に負けて読んでしまったハーレイが悪い、と言うソルジャー。
「今日まで守って来た童貞を失くしてブルーに顔向け出来なくなるのも、恐怖新聞を読み続けたからで! しかも読んだら永久保存で残しているっていうのがねえ…」
「あれも一種の開き直りだよね、一度読んだら二度、三度とね。そしてキッチリ保存なんだよ」
それだけでも相当に罪が重い、と会長さんはバッサリと。
「普通の新聞だったらともかく、エロイ記事しか無いんだよ? そんなのを残して何度も読み返すなんて、スケベ以外の何なんだと!」
童貞を奪われてしまうがいい、と助ける気は微塵も無いのだそうで。教頭先生のお宅に放り込まれる恐怖新聞、今日からカウントダウンです。雛祭りの日の夜に残り日数がゼロの新聞が届き、ソルジャーが教頭先生の童貞を奪うという勘定。教頭先生、どうなるんでしょう…?
カウントダウンな恐怖新聞、教頭先生はヤバイと大慌てなさったらしいですけど、なにしろ相手は恐怖新聞。読まずにいられない新聞なだけに、毎晩、ウッカリ読んでしまって、開き直って保存の日々。とうとう雛祭りの日が来たわけで…。
「いよいよ今夜でおしまいってね!」
昨日ので残りが百日だったからね、とソルジャーが手にする恐怖新聞は残り日数がゼロで特別構成らしいです。これでフィナーレ、読者サービスてんこ盛り。
「青の間特集は特に力を入れてあるんだよ、ぼくのハーレイも色々と考えてくれて…」
目を離せない素晴らしい特集になった、と得意満面で語るソルジャー。会長さんも新聞を横から覗き込んでみて「いいね」と絶賛、相当にエロイ出来らしくって。
「もう間違いなくハーレイは読むね、これで終わりだと分かっていてもね」
「君も見物に来るんだろう? 最後の恐怖新聞配達」
今日はぼくから手渡しだしね、とソルジャーが言えば、会長さんは「うん」と。
「手渡されたら直ぐにゴミ箱に放り込んだらいいのにねえ…。そうせずに読んでしまうのが恐怖新聞の怖い所だね、ぼくと君とが見ているのにねえ?」
「ぼくたちの前で読み耽った挙句にドツボだってね、今夜のハーレイ!」
君には詰られ、ぼくにはアッサリ見捨てられ…、とソルジャーは方針を変えていませんでした。今日で終わりだ、と教頭先生をベッドに押し倒し、一瞬だけ期待を持たせておいて…。
「「「回収する!?」」」
何を、と声を上げた私たちですが。
「恐怖新聞に決まっているだろう! 新聞の末路は古紙回収だよ、ハーレイの手元には何一つ残らないってね!」
「らしいよ、ブルーの渾身の作の恐怖新聞、読者様の残り日数が尽きたら用済みだってさ」
もちろん今日の特別構成の新聞だって…、と会長さん。ということは、教頭先生、会長さんに罵倒されまくって、ソルジャーには童貞を奪われるどころか大事に保管して来た恐怖新聞を奪い去られて、美味しい所は何も残らないと…?
「そういうものだろ、恐怖新聞! 命を失くしておしまいになるか、自分の評価やコレクションとかがパアになるかの違いだけだから!」
ねえ? とソルジャーが会長さんに同意を求めて、会長さんも。
「毎日あれだけ読み込んだんだし、ハーレイもきっと本望だよ。恐怖新聞!」
最後の配達がもう楽しみで…、と浮かれまくっている鬼が二人ほど。私たちはシールドの中から高みの見物の予定ですけど、教頭先生、最後の恐怖新聞を読んだら会長さんからは酷い評価で、ソルジャーが予告していた童貞を奪われるというイベントも無しで…。
「教頭先生、一巻の終わりというわけでしょうか?」
それっぽいですが、とシロエ君が溜息をついて、ジョミー君が。
「恐怖新聞、元々そういうヤツだしね…。寿命が無くなったら終わりなんだし」
「今夜で最後になる勘定か…」
何もかもがパアか、とキース君。教頭先生が今日まで築いて来られた会長さん一筋とやらが崩壊する上、崩壊しても報われるわけではないというのが空しいです。それでもソルジャーの力作の恐怖新聞の最後の号を教頭先生は読むに決まっているという所が…。
「…怖いですねえ…」
恐怖新聞、とマツカ君が呟き、スウェナちゃんも。
「読まずにいられないっていうのがねえ…」
なんて恐ろしい新聞だろう、と震えるしかない恐怖新聞。最後の配達、もうすぐ出発らしいです。教頭先生、恐怖新聞の怖さを思い知っても懲りないでしょうが、暫くの間は多分、ドン底。せめて最後の特別構成の恐怖新聞でお楽しみ下さい、きっと素敵な記事ばかりですよ~!
読みたい新聞・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
ジョミー君が読みたくなった恐怖新聞、とんでもない方向へ行ってしまったわけですけど。
ある意味、寿命が縮む仕様で、教頭先生にピッタリな品。ソルジャー、流石な腕前です。
去年はコロナで大変でしたけど、今年はどうだか。いい年になるといいですねえ…。
次回は 「第3月曜」 2月15日の更新となります、よろしくです~!
※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
こちらでの場外編、1月は元老寺での元日から。新年早々、災難な目に遭う人が…。
←シャングリラ学園生徒会室は、こちらからv