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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

産地と証明
今年も、シャングリラに、クリスマスシーズンがやって来た。
 ブリッジが見える公園には、とても大きなツリーが飾られ、小さなツリーも置かれている。
「うーん…。今年は、何を頼もうかな…」
 サンタさんに、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、小さなツリーの側で考え込んでいた。
 頼みたいプレゼントを書いたカードを、小さなツリーに吊るしておけば、クリスマスの夜、届く仕組みになっているらしい。
(サンタさんは、世界中の子供に、プレゼントを…)
 届けることが仕事なのだし、ミュウの船にいる子供達でも、引き受けてくれる。
 いつもプレゼントを貰っているから、今年も、いい子でいないといけないだろう。
(ツリーの季節に、悪戯してたら、プレゼントの代わりに鞭だもんね…)
 我慢しなくちゃ、と生き甲斐の悪戯は、当分の間、封印しようと、心に誓う。
 毎年恒例、この季節だけは、悪戯小僧が「いい子」に大変身だし、船の仲間たちも、ホッとしていることだろう。


(でもでも、悪戯…)
 したらいけない船なんて、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、気分転換をしに、アタラクシアの街に出掛けることにした。
 船からヒョイと瞬間移動で、クリスマスの飾りで華やいだ街に降り立つ。
(……んーと……)
 美味しそうなもの、何かあるかな、と足の向くままに歩いていたら、甘い香りが漂って来る。
(焼き立ての、お菓子…)
 そんな匂いだよね、と立ち止まる間に、小さな看板を抱えた人が出て来た。真っ白な服と、白い帽子は、きっとパティシエに違いない。
(お菓子屋さんかな?)
 喫茶店かも、と眺めていると、その男性は、看板、いや、小さな黒板に似ているボードに、こういう文字をサラサラと書いた。
『アップルパイ、じきに焼き上がります』。
(大当たり!)
 焼き立てだって、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、その店に決めた。
 季節は冬だし、焼き立てのアップルパイとなったら、絶品なのに決まっている。
「えっと…。アップルパイ、お店で食べてもいいの?」
 それともテイクアウトだけ、と初老のパティシエに尋ねたら、「いらっしゃいませ!」と、店の中へと案内された。
 「お好きな席へどうぞ」と、言ってくれるし、遠慮なく、カウンター席を選んだ。
 調理場が見える特等席だけに、食いしん坊には似合いのチョイスと言えるだろう。



 アップルパイが焼けるまでには、まだ五分ほどあるらしい。
 他のケーキも見せて貰って、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、素晴らしい店に入った幸運を知った。
(凄いや、リンゴで薔薇の花びら!)
 本物みたい、と感動したケーキは、薄く切ったリンゴを、薔薇の花びらのように纏っている。
(こっちのケーキは、リンゴの形で…)
 リンゴだらけ、と喜んでいたら、アップルパイが焼き上がった。
「お待たせしました。アイスを添えて、お召し上がり下さい」
 熱いですから気を付けて、と出されたアップルパイは、まさに絶品。パイ皮はサクサク、中身のリンゴは、ジューシーで、火傷するほど熱くて、ほくほく。
(うわあ、最高!)
 凄く美味しい、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」はペロリと平らげ、二切れ、三切れ、と次のを注文、とうとうホールで平らげてしまった。
「坊や、お腹は大丈夫かい?」
 店主は苦笑しているけれども、嬉しそうでもある。
「全然、平気! 薔薇の花みたいなケーキも、食べてみたいな!」
「いいとも。お腹を壊さないように、ほどほどにね」
 こっちのケーキもお勧めだよ、と勧められるままに、いったい何個食べたことやら。

「美味しかったあ!」
 ホットココアも美味しいよ、と締めのココアを口にしていて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、店の雰囲気にそぐわないものに気が付いた。
(あれっ?)
 レトロな店の端っこの方に、白いプレートが置かれている。其処に描かれた黒い模様は、まるで機械が書き付けたよう。
(黒い線が何本も並んでるとか、暗号みたいな模様の四角とか…)
 何なのかな、と首を傾げていたら、どうやら店主も気付いたらしくて、「ああ、これかい?」と白いプレートを持って来た。
「そう、それ! おじさん、その模様、暗号なの?」
「暗号ねえ…。考えようによっては、そうなるのかな?」
 ずっと昔の産地証明だよ、と店主は模様を指して教えてくれた。
 人間が地球しか知らなかった時代に、そういう模様を使ったことがあるらしい。バーコードとかQRコードと呼ばれた模様で、情報がドッサリ詰まっていたようだ。
「ふうん…? 今の時代は、そういうのは無いの?」
「代わりのがあるよ。果物とかでも、此処のシールに書いてあるんだ」
 専用の機械で読み取る仕組みさ、と店主は、真っ赤なリンゴの実に貼られたシールを見せる。
「お菓子とかでも、作られた場所を書くのが決まり事さ」
 でないと、宇宙船での輸送は許可が出ないんだよ、とも店主は話した。同じ星の上なら、産地は書かないままでも大丈夫だけれど、他所の星へは運べないね、と。



(今日のお店は、当たりだったよ!)
 うんと美味しくて、お勉強も出来ちゃった、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は大満足で船に帰った。
 お菓子や果物に、産地証明がついているなど、初めて耳にした話なのだし、とても嬉しい。
(宇宙船での、輸送許可が出ないんだ、って言っていたから…)
 もしも、地球で作ったお菓子や、地球産の果物などが、手に入ったら、地球の座標が産地証明に含まれている可能性がある。
(座標そのものは、入ってなくても、何か、手がかり…)
 今日の店の店主が見せてくれたプレートは、昔の地球の「青森県」で採れたリンゴや、リンゴのお菓子についていた模様の複製だった。
 冬はリンゴのシーズンだから、リンゴのプレートを飾っているらしい。桃の季節は「岡山県」や「山梨県」のプレートで、どちらも昔の桃の名産地だった。
 今の時代に、「青森県」や「岡山県」とかが、あるかどうかは謎だけれども、あるとしたなら、「青森産」だの「山梨産」だのと謳う「何か」が、きっとシールにくっついている。
(よし、コレだ!)
 今年のクリスマスプレゼント、と「サンタクロースに頼みたいもの」は決まった。
 リンゴでも、お菓子でも、青森産でなくてもいいから、「地球で作られた、お菓子か果物」。
 それにしよう、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、早速、小さなツリーの所へ走って、頼みたい品を書いたカードを枝に吊るした。
「これでよし、っと…」
 後はクリスマスを待つだけだよね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、御機嫌で部屋に帰った。
 上手くいったら、大好きなブルーを、憧れの地球まで、連れて行くことが出来るだろう。



 そういうわけで、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、夕食とデザートを詰め込んだ後は、土鍋に入って眠ったけれども、気の毒な人が、重い足取りで、シャングリラの通路を歩いていた。
(…今年も、厄介なリクエストが…)
 来てしまったか、と溜息を零すのは、キャプテン・ハーレイだった。
 プレゼントに欲しいものを吊るすツリーを担当するクルーが、先ほど、カードを調べたところ、増えていたのが「そるじゃぁ・ぶるぅ」のカードで、大慌てで報告しに走って来た。
(…地球で作られた、菓子か果物…)
 どうやって手に入れるんだ、とハーレイは胃がキリキリと痛み出しそう。
 まずは、ソルジャー・ブルーに話して、対策を考えるしかないだろう。



「…ソルジャー、夜に申し訳ありません…」
 ハーレイは、青の間に足を踏み入れ、深々と頭を下げて、炬燵のソルジャー・ブルーに詫びた。
「どうしたんだい? 何か深刻なトラブルでも?」
「いえ…。時期が時期だけに、お分かりだろうと思うのですが…」
 今日の夕方、コレがツリーに吊るされました、と例のカードを、ハーレイは炬燵の上のミカンの隣に、そっと並べた。
「ぶるぅが書いた、今年のクリスマスに欲しいものです」
「ふうん…? ああ、これはなかなか…」
「難しいかと思われますが、どう対処すればよろしいでしょう?」
 別の何かで誤魔化しますか、とハーレイの考えは、現実的なものだった。ほんの子供なのだし、他所で作った菓子を渡しても、まず気付かないだろう、というのは正しい。
「そうだろうけど…。ぶるぅがコレを思い付いた理由を、ぼくは聞いてみたいね」
 考えるのは、それからでいいと思う、とブルーは、早速、思念波で、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に呼び掛けた。
『ぶるぅ、起きてる? もう寝てるかな?』
 土鍋で寝ていた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、ピョンと跳ね起き、瞬間移動で、青の間に真っ直ぐ飛び込んで来た。
「ブルー、何なの? おやつくれるの!?」
 起きて来ちゃった、と弾ける笑顔で、炬燵の上を見回している。
「そうじゃないけど…。ちょっと話を聞きたくってね」
 これは何だい、とソルジャー・ブルーは、カードを手にして、首を傾げた。
「どうして、地球で作られた、お菓子か果物が欲しくなったのかな?」
 アルテメシアのには飽きちゃったかい、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」に問い掛ける。地球以外にも星は沢山あるから、そういう所のでは駄目なのかな、とも。



(…流石は、ソルジャー…)
 誤魔化すよりも上手い策だ、とハーレイは、心の中で大きく頷く。これで注文の品が変われば、万事解決。少々値の張る果物だろうが、お菓子だろうが、手に入れることは可能だろう。
(盗み出して来るか、潜入班に買って貰うか、いずれにしても…)
 プレゼントの品は調達出来る、と大喜びしたハーレイだけれど、直ぐに奈落に突き落とされた。
「えっと、えっとね…。地球で作ったお菓子や、採れた果物…」
 輸送するには、シールを貼らなきゃ駄目なんでしょ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は問い掛けた。何処で作ったり、育てたりしたか、「産地証明」が要るんだよね、と真剣な顔で。
「えっ? そんな決まりを、誰に教えて貰ったんだい?」
 ヒルマンの授業で出るのは、上級生クラスの筈だけど、とソルジャー・ブルーも驚いている。
「アップルパイとかが、とても美味しかった、お店のおじさん!」
 昔の産地証明を書いたプレート、飾ってたよ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、得意顔で語った。今の時代も必要なもので、シールに書いて貼っていないと、宇宙船には乗せられない、と。
「だから、地球の果物とかには、くっついていて…。それをサンタさんから貰えたら…」
 地球の座標か、何か手がかり、入ってるよね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は胸を張る。そういう理由で頼みたいから、カードに書いて吊るしたのだ、と。



「なるほどねえ…。いい考えだ、と思わないでもないけれど…」
 よく考えてみたのかい、とソルジャー・ブルーは、炬燵の上のカードを手に取った。
「欲しいプレゼントは、このカードを読んだサンタクロースが、ちゃんと届けてくれるけど…」
 サンタクロースは、何に乗って此処へ来るのかな、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」の顔を見詰める。
「もちろん、トナカイが曳いてる橇!」
「うん、そうだね。ところで、トナカイの橇は、宇宙船とは、違いすぎると思わないかい?」
 宙港を使って行き来しないし、宙港を通って来ない橇なら、産地証明は要らないよ、とシールが貼られる理屈を、ソルジャー・ブルーは、分かりやすく話した。
 「サンタクロースからの贈り物には、シールは、きっと、ついていないね」とも。
「そうだったの!?」
「ぼくは、そういう気がするんだけど…。頼んでみないと、其処は、なんとも…」
 一度、頼んでみることにするかい、とソルジャー・ブルーは、苦笑しながら畳み掛けた。今年のクリスマスプレゼントに賭けて、お菓子か果物を貰いたいかな、と。
「うーん…。シール、くっついていなかった時は、ただの果物か、お菓子だけ…」
 そんなの悲しすぎるもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、注文の品を、こう書き換えた。
 「歌いながら踊りまくっても、音割れのしない、うんと頑丈なカラオケマイクを下さい」。



 そんなこんなで、やがて迎えたクリスマスの夜、ハーレイは、サンタクロースの衣装を纏って、白い袋に「カラオケマイク」だの、長老たちからの贈り物だのと、詰め込んで通路を歩いて行った。
(まったく、皆が甘いモンだから…)
 悪戯小僧がのさばるんだ、と舌打ちしつつも、ハーレイからのプレゼントの箱も、白い袋の中に収まっている。それにソルジャー・ブルーが自ら買いに出掛けた、特注品のプレゼントなども。
(メリークリスマス!)
 今年もサンタクロースの到着です、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋に入ったハーレイは、床にプレゼントの箱を、そっと幾つも並べていった。
 土鍋で眠る「そるじゃぁ・ぶるぅ」を起こさないよう、物音一つ立てないように注意して。



 翌朝、クリスマスを迎えたシャングリラの中で、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、飛び起きた。
「クリスマスだあ! えっと、プレゼント…!」
 届いてるかな、と床を見るなり、躍り上がって大歓声。
「わぁーい! ぼくが頼んだカラオケマイク! それに、こっちは、凄い鍋敷き!」
 土鍋の下に置くのに、ちょうどいいよね、と特注品の「大きな鍋敷き」を眺め回して、大感動。こんなに立派で頑丈な品は、お店ではお目にかかれない。
「サンタさん、最高!」
 お菓子とか、果物にしなくて良かった、と喜んでいたら、大好きなブルーから、思念波が飛んで来た。
『メリークリスマス、ぶるぅ! それに、誕生日おめでとう!』
 みんなが公園で待っているよ、と呼び掛けられて、「そうだっけ!」と、瞬間移動で、公園までパッと飛んだら、皆に拍手で迎えられた。
「「「ハッピーバースデー、そるじゃぁ・ぶるぅ!」」」
 メリークリスマス、と大きなケーキが運び込まれて、賑やかなパーティーが始まった。
 悪戯小僧には違いなくても、船の仲間たちも、この日ばかりは、心の底から祝ってくれる。
 ハッピーバースデー、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。今年もお誕生日、おめでとう!



             産地と証明・了


※「そるじゃぁ・ぶるぅ」お誕生日記念創作、読んで下さってありがとうございます。
 管理人の創作の原点だった「ぶるぅ」、いなくなってから、もう8年が経ちました。
 出会いは2007年の11月21日でしたが、一目惚れして、二次創作スタート。
 毎日シャン学では良い子の「ぶるぅ」ですけど、原点だった悪戯小僧も大好きです。
 お誕生日のクリスマスには記念創作で、暮れの風物詩になっております。
 「そるじゃぁ・ぶるぅ」、19歳のお誕生日、おめでとう!
 2007年のクリスマスに、満1歳を迎えましたから、18年目の今年で19歳です。
 アニテラの教育ステーションだと、18歳で卒業なだけに、どうするんでしょう。
 シャングリラで一緒に育った子たちが、立派なクルーになっているかも…。

※過去のお誕生日創作は、下のバナーからどうぞです。
 お誕生日とは無関係ですけど、ブルー生存EDなんかもあるようです(笑)








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