忍者ブログ

シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

赤い瞳 青い星

『私を目覚めさせる者。お前は…誰だ』

あの日、長い眠りから目覚めた時。ブルーには全てが分かっていた。自分の行く手に何があるのか。どんな運命が待ち受け、何が起ころうとしているのか。けれど後継者たるジョミーにすら告げることなく、ただ…思った。
(地球を…見たかった)
天体の間でフィシスと語らった後、一人、向かった場所は。
「…ぶるぅ?」
シャングリラの一角にひっそりとある部屋。アルテメシアにいた頃は騒ぎの絶えなかった場所であったが、今は住人と共に忘れられたように静まり返っているらしい。そしてブルーが聞かされたとおり。
「ぶるぅ。ぼくだよ。…起きてくれないのかい?」
部屋の主の「そるじゃぁ・ぶるぅ」は大好きだった土鍋の中で丸くなって眠っていた。ブルーが眠りにつくのと時を同じくして眠りにつき、一度も目覚めていないという。最初の頃はソルジャー補佐だった女性がたまに来ていたらしいが、ブルーも「そるじゃぁ・ぶるぅ」も共に眠ったままだったので彼女は何処かへ転属になった。それ以来、ここに来る者は世話係と清掃係くらいなもので、ナスカ到着後は更に忘れ去られていたようだ。
「…ぶるぅ…」
ブルーは「もう一人の自分」とも思っていた者を優しく撫でた。地球を見ることが叶わないように…この愛すべき存在とも近い未来に離れ、二度と会うことはかなわない。だから、もう一度、話したかった。別れだと悟られないように…他愛ないことでも悪戯でもいい、二人で時を過ごしたかった。
「でも…起きてくれないんだね、ぶるぅ。それとも…」
土鍋の中で眠る者を愛しげに撫でながら、赤い瞳が揺れた。
「お前が行ってくれるのかな?…ぼくの代わりに…地球へ。あの青い星に着くまでの眠りなら…邪魔はしないよ」
もしも、そうであれば…自分も地球を見られるだろうか?
「…ぶるぅ、お前が地球に着いたら。ぼくにも見せてくれないか?…ああ、でも…その時には、ぼくはもう…」
夢物語だ、と頭を振ってブルーは静かに立ち上がった。

その後、時はめまぐるしく過ぎていって。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋を再び訪れることもないまま、変動の予兆は現実となる。フィシスに補聴器を託した直後にナスカを襲ったメギドの劫火。抑えきれないと思ったそれをジョミー、そしてナスカで生まれた子供達の力を借りて防いだブルーは、皆を守るべく…ただ一人、彼方へと飛んだ。
「眠れる獅子たちよ。…百億の光越え、生きろ、仲間たち」
ナスカから、シャングリラから遙か離れた惑星の裏側。そこにメギドは在った。敵艦の砲火を避け、蒼い光を引いて…圧倒的な質量を誇る惑星破壊兵器の上に降り立ち、サイオンで破壊しながら制御室を目指す。第二弾が発射体制に入ったことを告げる音声が繰り返される中、ただひたすらに。背後から銃撃され、倒れ伏してもなお…ブルーは立ち上がり、その先へと歩いた。もう足取りすらおぼつかないものになっていたが、止まることはしない。
「やはりお前か、ソルジャー・ブルー!」
聞き覚えのある声。振り返ると、あのメンバーズの男がいた。銃を向け、化け物となじりながら。
「残念だが、メギドはもう止められない!!」
右肩に弾が撃ち込まれ、左脇腹、そして左肩。凄まじい痛みを受け、膝を突き、シールドを張ったけれども。
「反撃してみせろ!…亀のようにうずくまっているだけではメギドは止められんぞ!」
男の言うとおりメギドは発射まで1分を切っていた。どうせなら。あの男を道連れに。…ギリギリまで引き付けて。
「少佐、ここは危険です!」
人類側の誰かが駆け込んで来たようだったが、それも。…巻き添えにするまでのこと。
「…これで終わりだ!!」
撃ち込まれた銃弾がシールドを貫くのが見え、右目に激痛が走った瞬間、ブルーは渾身の力を込めてサイオンを床に叩き付けた。蒼い閃光が周囲を包み、全てが光の中に飲まれてゆく。
「キース!!」
さっき飛び込んできた誰かが、メンバーズの男を抱えてテレポートして消えた。ミュウだったのか、と一瞬思いはしたが。ブルーにとって今、ミュウといえばシャングリラの仲間たちのこと。
『ジョミー…みんなを、頼む…!』
遠いナスカにいるジョミーに最後の力を振り絞るように思念を送った。多分、届かないであろう言葉を。…メギドの中枢が爆発する光と衝撃がブルーに迫り、膨れ上がる。その時。

「ブルー!!!」
自分を呼ぶ声を聞いた。そして背後から抱え込むように引っ張られ、空間が歪む。
(ああ…)
幻だ、と思った。さっき見た、メンバーズの男を連れてテレポートしたミュウ。その姿にあまりにも驚いたから…最期の瞬間までこんな幻覚を見ているのだ、と。自分が誰かに抱えられ、何処かへ救い出される夢。
(…ぼくは…そんなにも生きたかったのかな…)
未練など無いはずなのに、と自嘲の笑みが浮かぶ。何もかも、覚悟の上だったのに。
「ブルー!!」
また誰かが呼んだ。いや、耳元で叫んでいた。
「ブルー!…行かないで、ブルー!!!」
(……?……)
右の目が痛い。肩も、脇腹も。皆を救いたいという思いの前に忘れかけていた傷の痛みがはっきりと分かる。何故。…死んだ後までも痛みは残るというのだろうか。全て無に帰るのではなく、永遠に…?
「ブルー!!!」
叫び声と共に暖かいものが身体をふわりと包み、覆うのを感じた。サイオンに…似ている…?
(…なんて…都合のいい夢なんだろう…)
死ぬ瞬間というのは思い通りの夢が見られるらしい。救い出されてみたり、痛いと訴えれば痛みが少しずつ癒えていったり。…左右の肩も、脇腹も…もうあまり痛まない。そして焼けるようだった右の瞳さえ、徐々に痛みが薄らいでゆく。もしかしたら…瞼だって開くのかもしれない。失くした視力を取り戻すことさえ。
「ブルー!」
もう一度、あの声が聞こえた。誰かが叫ぶようにブルーの名を呼んでる。いや…泣いて…いる…?
「ブルー、目を開けて!…お願いだよ、ブルー!!」
泣きじゃくる声と共に誰かに抱きしめられた。その感覚は夢というにはあまりにも確かすぎて。
(……?)
ふっ、と瞼を上げてみた。失った筈の右の瞳が自然に開き、両の瞳で捉えたものは…サイオンの青い光に包まれ、ブルーの身体を抱きかかえている「そるじゃぁ・ぶるぅ」の姿だった。

「……ぶるぅ……?」
「…ブルー…。よかった、ブルー…死んじゃうかと思った…」
ぽろぽろと涙を零しながら「そるじゃぁ・ぶるぅ」はブルーの顔を見つめた。サイオンの光は消え、青い空が見える。ブルーは地面に横たえられ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が寄り添うように座っていた。身体に受けた銃弾の傷はもう痛まない。右の瞳にも痛みは無く、なにより自分が生きているらしいのが不思議だった。
「ぶるぅ…。ぼくは、いったい…。メギドは…どうなった…?」
「メギド、壊れたよ。…シャングリラは…どこかへワープしてった」
そう言って「そるじゃぁ・ぶるぅ」はブルーの右目をそっと瞼の上から撫でた。その手に乾いた血が付く。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は自分のマントの端を宙に取り出した水の塊で湿らせ、ブルーの顔の汚れを拭いた。
「ブルー。…みんな元通りだね。…あんな無茶をするから。…全部は治せないかと思った…」
「まさか、ぶるぅ…。お前が、ぼくを?」
「うん。ブルーが一人で行っちゃったのが分かったから、目を覚ましたんだ。すぐ追っかけたけど…間に合わなかった。間に合ってたら、あいつに噛み付いてやったのに」
「あいつって…」
「キース・アニアン。噛み付いてやりたかったけど、ブルーを助けなきゃいけなかったから。いつか絶対、噛み付いてやる。ブルーを殺そうとしたんだもの。ぼくの力、ほとんど全部使って…それでも助けるのがやっとだったんだもの。ブルーのためにだけ…ずっと眠って守ってきた力、もうあんまり残ってないみたい」
まだ涙を浮かべたまま、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は二人の周囲を見回した。
「ここが何処かも分からないし、シャングリラに戻る力もないよ。でも、見て。…あんなのがあるんだ」

「そるじゃぁ・ぶるぅ」が指差した先には、緑の山並みの向こうに墓標のように聳え立つメギドが…白く風化したメギドがあった。辺りは緑の木々に覆われ、鳥のさえずりが聞こえる。ブルーが横たわっているすぐそばでは、かつてシャングリラでも栽培していた桃色の花が風に揺れていた。
「…メギド…なのか?…ずいぶん古いもののようだが」
「ブルーが壊したのとは別のヤツみたいだね。でも、ここ…すごく綺麗だ。あっちの方に海も見えるよ」
「そうか」
ブルーはゆっくりと起き上がり、自分がいる場所を両の瞳で…「そるじゃぁ・ぶるぅ」が治した赤い瞳で眺めた。さっき顔の血を拭き取られたし、服にも血の痕が残っているから夢でないことは間違いない。自分は生きていて…どこか分からないが、とても美しい星に落ちてきたらしい。アルテメシアでもナスカでもなく、もちろんアルタミラでもなく…見たこともない星。似ているものがあるとしたら、フィシスに見せてもらった地球だろうか。
「…地球に…似ているな…」
「そうだね」
フィシスの地球は「そるじゃぁ・ぶるぅ」も知っている。ただ、フィシスの映像では地上までは降りることが出来ないから…本物の地球の大地がこんなものかどうかは、あまり自信が無いのだけれども。

それから二人で海辺まで行ってみた。ブルーの体調はナスカで目覚めた時よりも良く、撃たれた傷も全て完全に塞がっていた。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は長い眠りの間にかなりの力を蓄えていたのだろう。
「ブルー、これからどうする?…ぼく、シャングリラにはもう飛べないよ」
「ぶるぅに出来ないことは…今のぼくにも出来ないさ」
「…ここ、アイスなんかは無いだろうね。お店も無さそうだし、人も住んでないような気がする」
「それは…ぶるぅにはとても困った状況かな?」
海でパシャン、と魚が跳ねた。多分、なんとか食べていくことは出来るだろうが、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の大好きなアイスやグルメとは無縁の生活を強いられそうだ。
「…うん…。……ううん、ブルーが一緒だから我慢する。アイスは一生、食べなくていいよ」
「ラーメンも中華饅頭も無いと思うが」
「毎日、魚と果物でいいよ」
「…すまない、ぶるぅ…。ぼくを助けようとしなければ…」
「ブルーがいなくなったら、ぼく、生きてても仕方ない。ほんとにアイスなんか要らないんだから!」
プイッ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」がそっぽを向きつつ、野生の生活に適応すべく胃袋の説得にかかった時。

「あ!…ブルー、あそこ!何か来る」
青い空の彼方にキラリと光るものが現れた。最初は小さな点だったそれは次第に白くなり、更に大きくなって。
「…シャングリラだ…」
ブルーと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は信じられないものを見るような目でその船を見上げた。ナスカから何処かへワープしていったシャングリラが其処にある。だが、しかし。ブルーは首を傾げた。何か受ける感じが違うような…。そう思う間もなく「そるじゃぁ・ぶるぅ」がシャングリラに思念を飛ばしたようだ。
「ブルー、フィシスに届いたよ!」
『…ぶるぅと……ブルー!?…本当に…あなたたちなのですか!?』
フィシスの思念がシャングリラから送られてきた。
『フィシス…。ぼくだ。心配をかけてすまなかった。ぶるぅが…助けてくれたんだ』
『…まさか…そんなことが…。すぐに行きます。待っていて下さい、ブルー』
それから間もなく、シャングリラからシャトルが降りてきた。乗っていたのはフィシスと、ブルーの物だった補聴器を着けたオレンジの髪の青年。ソルジャーの衣装と緑のマントの彼がトォニィと名乗ったことでブルーは仰天したが、彼を知らない「そるじゃぁ・ぶるぅ」はキョトンとしていた。しかしトォニィからこの星が地球だと聞かされ、二人はただ呆然とするばかり。自分たちが時空を越えてしまったらしいことはともかく、人類の聖地である筈の地球にミュウの船…シャングリラが来ているとは、いったいどうなっているのだろう?

二人はシャトルに乗り、シャングリラに収容されて地球を巡る衛星軌道上に運ばれた。眼下には…青い星。
「ブルー、ぼく、本当にブルーを地球に連れて来ちゃったんだね。…そうしたいとは思ってたけど」
「ああ。でも…ジョミーも、ハーレイも…みんな……」
ブルーは昔のままに残されていた青の間に戻った。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋は倉庫代わりになってしまっていたが、土鍋は残っていたので青の間のベッドのそばにある。ナスカが燃えた日は遠い昔になり、荒廃した星だったという地球は青い星に再生した。だが、ブルーが全てを託したジョミーはもういない。ハーレイや長老たちも。
「ブルー…。ぼく、悪いことをしてしまった?…ブルー、泣いてる…」
「…ぶるぅ…。ぶるぅは悪くないよ。ぼくのために…頑張ってくれたんだろう?」
そっと「そるじゃぁ・ぶるぅ」の頭を撫でて、ブルーは優しく微笑んだ。
「今はまだ、とても悲しくて寂しいけれど。…でもフィシスもトォニィも…ミュウのみんなもいる。ぼくは大丈夫だ。それに、誰よりも。…ぼくを助けて地球に連れて来てくれた、お前がいるしね」
「そっか。…ぼく、ブルーが一緒だし、部屋なくなっちゃったけど土鍋があるし。それにアイスも食べられるから帰ってこられて嬉しいよ。フィシス、覚えててくれたんだ…ぼくがアイスが好きだってこと」
シャングリラに戻って最初の「そるじゃぁ・ぶるぅ」のおやつは大好きなアイスキャンデーだった。再びアイス三昧の日々が始まりそうだが、悪戯の方は分からない。青の間が悪戯の拠点になるのか、伝説の初代ソルジャーの私室として以前にも増して神秘性を増した部屋になるのか、それもまた…分からない。
「ねえ、ぶるぅ。…ぼくたち、浦島太郎のようだね」
「なにそれ?ぼく、知らないよ」
「…地球の…遠い遠い昔のお伽話さ」
ふぅん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が呟いて土鍋の中に入っていった。ごそごそ、と丸くなるのを見ながらブルーもベッドに横になる。メギドに向かって飛んでから、ブルーの感覚ではまだ1日も経っていなかった。色々なことがありすぎて、今は頭が一杯だけれど。目が覚めれば、明日も…すぐそこに青い地球がある。

「…いつか、ジョミーやハーレイたちに会ったら…きっととても驚くだろうね。ぼくが生きて…時を越えて、みんなが見られなかった青い地球を見てきただなんて」
ブルーはベッドのそばの土鍋で寝ようとしている「そるじゃぁ・ぶるぅ」に語りかけた。
「その日まで、ぼくと一緒にいてくれるんだろう?…ずっと、ぼくのそばに」
「うん…」
土鍋の中から照れたように小さな声が返ってきた。
「ブルーを助けた時、ぼくの命の半分をブルーにあげちゃったから。…だから、同じ間だけ…生きられるよ」
「ぶるぅ…。すまない。お前の命を縮めてしまって」
「ブルーが謝ることなんてない」
プイッ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は丸まったまま、そっぽを向いた。
「ブルーは、ずっと誰かのために生きてきたけど。…もうブルーの命はぼくのだから。これからはブルーの好きなことして、自分のために生きて。でなきゃ生きてる意味がないよ」
「……そうなのか……」
自分のためだけに、好きなように生きる。それは…遠い昔にブルーがたった一度だけ願ったこと。そして願いが叶う代わりに「そるじゃぁ・ぶるぅ」がブルーのもとにやって来た。その「そるじゃぁ・ぶるぅ」が言うのなら…そんな生き方もいいのかもしれない。だが、具体的な望みも何も…全く思い浮かばなかった。

「自分のため、か…。考えたこともなかったな…」
青の間の静けさの中、ブルーは小さな溜息をついた。ブルーと、ぶるぅ。二人で分けてしまった命がどのくらいあるのか分からないけれど、生きていれば答えは見つかるのだろうか?…ふと、思い付いたのは小さな願い。
「ぶるぅ。…土鍋でないと眠れないかい?」
「…ここしかないよ、ぼくの寝床」
「昔は違ったろう?お前が生まれてすぐ…まだここで一緒に暮らしていた頃」
ブルーはベッドの上に半身を起こし、赤い瞳を土鍋へ向けた。
「お前が構わないのなら、あの頃みたいにここへおいで。…ぼくの今の望みはそれかな。ずっと一人で眠ってきたけど、今夜はお前が隣にいてくれると嬉しい。生きてるんだ、と思えるから」
「いいの、ブルー?…ぼく、土鍋がないと寝相悪いよ」
「かまわないさ。好きなことをしていいのなら…ぼくはお前と一緒に寝たいな」
そして差し出した両手の中に「そるじゃぁ・ぶるぅ」が嬉しそうな顔で飛び込んできた。
「ブルーと寝るの、大好きだった。でも蹴飛ばしちゃったらごめんね、ブルー」
それから少しの間、話をして。ブルーと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は寄り添いながら瞳を閉じた。
「…ありがとう、ぶるぅ…。お前がいてくれて本当によかった…」
「ぼくもブルーを助けられてよかった。明日はみんなで地球に行こうね。…お弁当持って…」
青い地球が見える白い船で、二人は眠りに落ちていった。

ジョミーたちが命を落とした後、長い歳月をかけて蘇った地球。人の手をほとんど加えることなく自然にまかせてある青い星…かつてミュウたちが目指した星をシャングリラはたまに訪れる。「そるじゃぁ・ぶるぅ」がブルーを連れて地球に着いた日は、ちょうどその時に当たっていた。二人にフィシスが告げた言葉は…。
「明日、皆で地球に降りることになっていました。ジョミーたちに花を持って行くのですけど、子供たちはいつも遠足のように楽しみにしています。…ぶるぅにはちょうど良さそうですね」
お弁当がありますよ、と言われて「そるじゃぁ・ぶるぅ」の顔が輝いた。ジョミーやハーレイ、長老達が地球で亡くなり、その墓参だと分かってはいるのだが…基本はまだまだ子供なのだ。いや、永遠に子供なのかもしれない。ブルーは隣で眠る「そるじゃぁ・ぶるぅ」を夢の中でも抱きしめていた。
(ぶるぅ…。お前がいてくれるから、寂しくないよ。…いつか一緒にジョミーやハーレイたちの所に行こう)
その日まで、ぶるぅに貰った命を…大切に生きる。明日、みんなに花を渡す時に言ってこなければ。
『そっちに行く時まで、自分のために生きてみるよ。ぼくに命をくれた、ぶるぅと一緒にね』
いったい何をやらかす気です、と騒ぐハーレイたちの夢を見ながら、ブルーは幸せそうな笑みを浮かべた。




PR
Copyright ©  -- シャン学アーカイブ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]