忍者ブログ

シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

副船長  第3話

マザー、副船長はとんでもなく恐ろしい職でした。今まで経験してきた中で最悪の目に遭ったかもしれません。シャングリラに救出されて日の浅い私が副船長に就任したのがそもそも間違いだったのかも?

その日、私はいつものように部屋を出てブリッジに向かっていました。キャプテンは長老方と同じエリアに立派なお部屋をお持ちですけど、私は副船長に任命された後も住み慣れた個室を使っています。ですからブリッジに行き着くまでには大多数のミュウたちが住む居住区を抜けて行くのですけど…。
「ちょっと、あなた」
いきなり後ろから呼びかけられて振り向いてみると、先輩格の女性が7人、立っていました。
「副船長になったっていうのはホント?…通達は来たけど、なんだか信じられないわ」
「…すみません。私にも事情が分からないんです」
「っていうことは…本当に副船長なわけ?」
「…はい…」
私の声は消え入りそうです。新参者の私が副船長という掟破りの人事が皆さんのお気に障ったのでしょうか?袋叩きにされるのかも、と怖い考えになってきました。

「ホントのホントに副船長ね?…もしかしてソルジャーにもお会いした?」
「…は、はい…就任挨拶の時に…」
「ラッキー!!!」
先輩たちは歓声を上げて飛び跳ねました。袋叩きではないみたいです。
「ね、ソルジャーにお会いした時の記憶を見せて?…名誉会員にしてあげるから!」
名誉会員?…ということは、この方たちは…「シャングリラで一年以上生活しないと入会資格が無い」と噂に高い『ソルジャー・ブルー様ファンクラブ』の会員さん?
「そうよ、私が会長、こっちが副会長。他の5人も会員ナンバー1桁なのよ」
会長と名乗った先輩は握手するように右手を差し出し、ニッコリ笑って言いました。
「ソルジャーにお会いした時の記憶を見せてほしいの。ね、差し支えのない部分だけでも」
他の先輩たちも先を争って手を出しました。接触テレパシーをお望みのようです。
「お願い、ソルジャーのお姿を見せてちょうだい!滅多にお姿を見られないの。じかにソルジャーにお会いしてお話できる立場の人って、こんなこと頼めない方ばかりなの~!!」
ファンクラブ会員さんたちは大騒ぎ。確かに長老方やリオさんがソルジャーと会った時の記憶を一般のミュウに見せるなんてことは無いでしょう。…じゃあ、私は?…副船長ですし、やっぱりダメかも?
「あっ、ダメかもって考えてる!」
「なんですって!?…だったら遮蔽されちゃう前に読んじゃいましょうよ」
次の瞬間、私はファンクラブ会員さんたちに取り囲まれて腕を掴まれ、動けなくなってしまいました。
「さぁ、ソルジャーの記憶を見せて!!!」
大変!私、遮蔽は下手なんです。もっと訓練しておけば…。すみません、ソルジャー…ああ、意識が…。

「なんなのよ、これは!」
ぼんやり意識が戻ってくると目の前に床がありました。廊下に倒れてしまったらしく、その原因の先輩たちは…。
「コタツにミカンに羊羹ですって!?…ソルジャーの記憶なんかじゃないわ!!」
「そうよ、こんなの「そるじゃぁ・ぶるぅ」よ!ソルジャーはコタツなんかお使いにならないわ!…この子、遮蔽が上手いのよ。ソルジャーの記憶の代わりにニセの情報を流したのよ!!」
全部本当なんですけれど…と思いましたが、流出させていい記憶ではなさそうですし、この勘違いは好都合かも。しかし先輩たちは「憧れのソルジャー」に泥を塗るような映像(?)を見せられたせいで怒り狂ってしまいました。
「とんでもないものを見せたわね。よくも私たちのソルジャーを!!!」
ヒステリーで増幅された怒りのサイオン、7人前。袋叩きより、ある意味、効くかも…。そういえば『ソルジャー・ブルー様ファンクラブ』の会員さんは過激だという噂がありましたっけ。…なんだか頭がクラクラします。先輩たちは立ち去りましたし、早くブリッジに行かなければ。でも目の前がチカチカして…。
「…大丈夫?」
不意に声がして顔を上げると、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が覗き込んでいました。
「これ、あげる」
食べかけのアイスキャンデーを差し出し、「そるじゃぁ・ぶるぅ」はまた何処かへ。貰ったアイスはとても美味しく、おかげで無事にブリッジへ行くことが出来ました。あれはソルジャーのお使いだったのか、それとも単なる通りすがり?…仕事の後でお礼に手作りアイスを届け、どっちだったのか尋ねましたが答えは返ってきませんでした。

マザー、副船長は私には荷が重かったです。『ソルジャー・ブルー様ファンクラブ』の会員さんの怒りのサイオン放出でダウンし、ソルジャーから「よろしく頼む」とお願いされた「そるじゃぁ・ぶるぅ」に助けられたのは一生の不覚。いったいどうして副船長なんていう職が回ってきたのでしょうね…?




PR
Copyright ©  -- シャン学アーカイブ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]