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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

劇場支配人  第3話

マザー、恐れていた「キャプテンの貸切」が入りました。劇場ポスト最後の夜にまた入るなんてツイていません。ですが見習いの身でサボれませんし、覚悟を決めて支配人室で待っているとキャプテンがいらっしゃいました。
「先日は酷い目に遭ったそうだな。安心しろ、今夜は私も一緒だ」
えっ、キャプテンもご一緒ですか?とっても心強いです!
「その代わり、もっと華やかな服を。…花束を渡してもらいたいからな」
キャプテンが持ってらしたのは、見事なバラの花束でした。
「私では絵にならんのだ。それに贈り主は私ではない、ということになっている」
「はぁ…」
「いいから早く着替えなさい。衣装部屋に何かあるだろう。ベルばら風のドレスでもいいぞ?」
キャプテン、ベルばらをご存知ですか…。私は花束に負けないドレスに着替えてキャプテンと一緒に出かけました。

劇場に入るとやはりシールドが張られ、キャプテンと私はその中です。
「大丈夫だ、落ち着いて自分の周りにシールドを張れ。これで三半規管の乱れはかなり防げる」
「はい、キャプテン」
「1曲終わる度に拍手だ。全部終わったらアンコールするのを忘れるな」
「分かりました。…でも、どうして今夜はキャプテンもいらしたのですか?」
もしや私を助けに来て下さった?…だったらちょっと嬉しいかも。
「…今日は新曲発表会だ。ギャラリーがいないと不機嫌になる」
なんだ。…つまらない、という思念はきっと漏れていなかったと思います。
間もなく派手なカクテル光線が舞台に飛び交い、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が自信たっぷりに登場しました。
「♪ねぇ、答えはないお~ん!!!♪」

新曲もやっぱり「おーん」ですか…。歌は延々と続きましたが、乗り切れたのはシールドのおかげです。拍手も忘れませんでした。そしてアンコールで十八番の「かみおーん♪」が終わり、いよいよ花束贈呈です。
「メッセージカードはくっついてるな?…いいか、落ち着いて言うんだぞ」
「は、はい…。頑張ってきます」
私は花束を抱え、緊張して舞台に上りました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」に花束を渡し、笑ってしまいそうな棒読みで…
「紫のバラの人からです。伝言は…えっと…。いつもあなたを見守っています」。
大きな紫のバラの花束を抱え、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は満足そうに退場しました。

マザー、なんという奇妙な出来事でしょう。…キャプテンと一緒に『そるじゃぁ・ぶるぅ独演会』、花束のオマケつき。あの紫のバラの花束、50本はあったと思います。それに、それに…不可解な謎のメッセージ!
「キャプテン、『紫のバラの人』ってなんなのですか?」
支配人室まで送って下さったキャプテンに聞かずにはいられませんでした。
「ぶるぅを陰から見守る熱烈なファンだ。長老全員で演じる架空の人物。…詳しいことは図書館で分かる」
「図書館、ですか?」
「美内すずえ作、『ガラスの仮面』。20世紀後半から21世紀初頭に描かれた少女マンガの名作だ」
少女マンガ…。えっ、少女マンガ!!?…先刻の『ベルばら』発言といい、キャプテンは実は少女マンガがお好きなのでしょうか?マザー、シャングリラはますます奥が深いです…。




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