シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、庭師チームの見習い中に軍手を紛失してしまいました。その軍手がゼル様の芋焼酎の瓶に詰められていたそうで、先輩に「盗られたのは注意散漫だから」と叱られ、始末書を書く羽目に。提出先はシャングリラの艦長、キャプテン・ハーレイの執務室です。緊張しながら扉をノックし、深々と頭を下げました。
「キャプテン、お騒がせしてすみませんでした。…始末書を書いてきましたが、不注意、申し訳ありません」
「ああ、軍手の件か。…気にしなくても構わないのに。どうせ子供の悪戯だ」
キャプテンは優しく笑って下さり、ホッと安心した私の瞳に飛び込んできたのは実に奇妙なものでした。木目調の落ち着いた壁に場違いな張り紙がでかでかと貼られ、『カラオケ禁止』の文字が大書してあったのです。
『カラオケ禁止』?…禁酒とか禁煙ならともかく…カラオケ禁止?
キャプテンは意外にもカラオケ中毒で「カラオケ断ち」を決意されたというのでしょうか?失礼だとは分かっていますが張り紙から目を離せません。その間、5分?…それともほんの1分くらい?
「…やはり張り紙が気になる、か…」
溜息まじりのキャプテンの声で私は我に返りました。きっと頬が真っ赤に染まっていたことでしょう。
「カラオケ禁止は私ではない。…隣近所から苦情が出たのだ」
あのぅ…キャプテン?おっしゃる意味が分かりません…。
「分からないなら、忘れなさい。下がってよし」
私はしどろもどろに挨拶をして自分の部屋に戻りました。キャプテンは気を悪くされなかったでしょうか?
マザー、…部屋に戻ってしばらくしてから思い当たったことがあります。カラオケが好きで「眠る時もマイクを手放さない」と噂の「そるじゃぁ・ぶるぅ」。十八番は「かみおーん♪」だと聞いていますが、犬の遠吠えに聞こえないこともありません。「そるじゃぁ・ぶるぅ」に熱唱されたら、近隣の人は騒音に悩まされそうです。もしかしてキャプテンの部屋の『カラオケ禁止』
は「そるじゃぁ・ぶるぅ」対策用?…キャプテン、どこまで苦労なさるのでしょうか…。
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