シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、研修もさせて貰えない操舵士補佐です。「そるじゃぁ・ぶるぅ番」のお役目が無くなってからはブラウ航海長のご命令でキャプテンの胃痛解消に奔走する生活を送っています。
「舵が取れないんだし、せめてキャプテンのお役に立ちな」
主な役目は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお出かけ中に扉の前で待ってらっしゃるキャプテンに差し入れを運ぶことでした。なにしろ「そるじゃぁ・ぶるぅ」ときたら、キャプテンを留守番に指名したくせにお土産すら持って帰りません。…ソルジャー・ブルー様には何かと『贈り物』をしているようですが。
「ああ、お帰り。最近、痒い痒いと騒いでるねえ」
「は?…いつもどおりのご様子でしたが」
キャプテンに塩煎餅を届けて戻ってくると、ブラウ航海長が妙な質問をなさいました。
「ハーレイじゃなくて、ぶるぅだよ。いや、ハーレイもそろそろ危ないかも…」
「「そるじゃぁ・ぶるぅ」ですか?…そういえば、痒くてたまらないとか言っていますね」
「だろ?昨日あたしが行った時にも痒がってたんだ」
このあいだから「そるじゃぁ・ぶるぅ」がよく「痒い、痒い」と訴えています。十八番の「かみお~ん♪」の最中に「痒くてたまらないっ」と叫んだり。
「アタラクシアでタチの悪いシラミが発生したらしい。ネコから人に移るっていうし、貰ってきたんじゃあるまいね」
「ネコから人に移るんですか。どっちからでも貰えそうですね」
「アタマジラミの変種らしくて、着替えて身体を洗うだけじゃあ駆除できない。専用シャンプーが要るんだってさ」
「それは…貰ったが最後、とてもマズイような…」
「ハーレイにも伝えておいたんだけどね。…ああ、ハーレイ。ぶるぅの様子はどうだった?」
ブリッジに戻ってこられたキャプテンは深刻な顔をしておられました。
「…ブラウの意見が正しそうだ。シャングリラ中に広がる前に、なんとかしないといけないな」
あぁぁ。よりにもよってシラミのお持ち帰りとは…。悲しすぎます、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ショップ調査とグルメ三昧の間に何処かで貰ってしまったのでしょう。接触したのがネコか人かは謎ですが。
「とにかく風呂に入れねばなるまい。専用シャンプーは入手したのか」
「バッチリさ。人類側の情報をちょっと失敬して、ヒルマンに渡したら作ってくれたよ。あんたもヤバイかもしれないからね、ぶるぅを洗うついでに一緒にシャンプーしといておくれ」
「ちょっと待て、ブラウ!…私がぶるぅを洗うのか!?」
「当然じゃないか」
ブラウ様…もとい航海長はフフンと笑っておっしゃいました。
「ぶるぅが真面目に言われたとおり風呂に入ると思うかい?…このシャンプーは使い方が面倒なんだ。髪に塗りたくってから5分間、洗い落としちゃいけないんだよ。しかもそれを1日1回、1週間続ける必要がある。でないとシラミの卵が死に絶えなくて、ぶるぅみたく身体まで痒くなっちまうのさ」
「…塗りたくってから5分間…。1日1回、1週間も…」
「どう考えても誰かが洗ってやるしかない。…ぶるぅを風呂に入れられるヤツがあんたの他にいそうかい?」
キャプテンは眉間に皺を寄せ、じっと考えておいででしたが。
「分かった。…シャングリラをシラミから守るのも艦長の務めの内だろう。シャンプーをくれ」
今回、私に手伝えることは何ひとつありませんでした。キャプテンが「そるじゃぁ・ぶるぅ」をお風呂に入れてシャンプーを塗りたくり5分待つ間、カウントしたのはリオさんです。5分が我慢できない「そるじゃぁ・ぶるぅ」の気をそらす為にアヒルとラッコのお風呂オモチャを調達したのも、湯上りに念入りにドライヤー(これも必要だそうです)をかけたのもリオさん。もしも私が男だったら、お役に立てたと思うのですが。
マザー、「そるじゃぁ・ぶるぅ」のシラミは無事に駆除されました。ただ、1週間も「キャプテンと一緒にお風呂に入って洗ってもらう」経験をした「そるじゃぁ・ぶるぅ」は「一緒にお風呂」がとても気に入ったみたいです。もうシラミはついてない筈なのに「痒い」と騒ぐのをやめません。痒がっていればまたキャプテンが一緒にお風呂に入ってくれる、と思い込んでいる様子ですけど…水虫の薬でも飲ませましょうか?