シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、今日の任務は救助活動でした。ブリッジから緊急連絡があったのは昼過ぎのことです。
「調理器具保管庫で崩落!…負傷者が出た模様。救助班ならびに医療班、出動!」
負傷者が出るとは深刻な事態に違いありません。補佐といえども頑張らなければ、と先輩について走りました。保管庫に着くと、調理師の時にお世話になった皆さんが扉の前で呆然としています。
「ケガ人はどこだ!」
「あ、あの…まだ、中に取り残されてます」
「分かった。すぐに助け出す!」
救助班の皆さんは保管庫に飛び込んで行きました。私も続いて飛び込みましたが、いったいこれは…。床一面に飛び散っていたのは無数の食器の破片でした。それもかなり厚手のもので…土鍋が砕けたらこんな感じ?
「いたぞ、腰を抜かしているようだ」
「ケガは切り傷だけのようだな、背負うから手を貸してくれ」
先輩方がケガ人を助け出し、医療班に引き継ぎました。無事に任務完了です。…え?終わりじゃない?
「現場の復旧は災害救助の基本だ。別の任務が来ない限り、保管庫の片付けを優先する!」
そういうわけで、保管庫の片付けを手伝うことになりました。砕け散ったのはやはり土鍋で、私が『ぶるぅ鍋』やりたさに布教した「ちゃんこ鍋」用、そこから派生した「一人鍋用」などなど…知らない間に土鍋コレクションが出来ていたようです。それが全部壊れたのだ、と調理部の人たちは涙目でした。
「…何をしたかったのか分からない。が、棚の土鍋を片っ端からサイオンで引っ張り出していったんだ」
「そうなの。しかも出したら出しっぱなしで宙に浮かべておくんだもの…」
「最後は保管庫いっぱいに土鍋が浮いてて、それを放って出て行ったのよ!…全部落っこちて割れちゃった…」
「なるほど、状況はよく分かりました。…そんなことをするのはやっぱり…」
「「「「そるじゃぁ・ぶるぅ」です!!!」」」
事情聴取をしていた先輩の問いに、調理部の皆さんが声を揃えて叫びました。
その夜、キャプテンが救助班の部屋においでになりました。
「諸君、迷惑をかけてすまなかった。事故の責任は私にある。さっき調理部にも謝ってきた」
え?土鍋崩落事件の責任が何故キャプテンに…?
「ぶるぅに土鍋の寝心地の良さを教えてしまった。…『ぶるぅ鍋』に使った鍋はぶるぅに与えたが、もっと大きな土鍋が欲しくて保管庫中を漁ったらしい。昼間のことを叱りに行ったら特大の鍋があったのだ」
「はぁ…」
「覗き込んだら、ぶるぅが友達と一緒に眠っていたので叱りそびれた。…まるで寄せ鍋だ」
お友達と寄せ鍋…ですか。『女神ちゃん』のことですね。それはちょっと…いえ、かなり見てみたいかも。
「可愛かったので写真は撮った。しかし許せる事件ではないし、目を覚ましたら叱っておく」
キャプテンは何度も謝って帰っていかれました。胃を悪くなさらなければいいのですが。それにしても保管庫の土鍋を宙に浮かせられるなんて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」のサイオンは並みのミュウより強いのでは…。少なくとも私にはできません。
マザー、もしかして彼はタイプ・ブルーに限りなく近い「たいぷ・ぶるぅ」ですか?