シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、機関士補佐に着任と同時に出向になった役立たずです。胃薬を手放せないキャプテンのご負担を軽減するため、航海士補佐の時と同じく「そるじゃぁ・ぶるぅ」の外出中に扉の前に座っています。『おでかけ』の札を眺めて座っているのは忍の一字ですが、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が私を置物くらいにしか思ってないのが救いでしょうか。悪戯をされる心配もなく、「お見送り」と「お出迎え」だけすればいいのですから。
「キャプテン、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が戻りました」
「そうか。カップアイスを食べたがっていたが、持っていたのか?」
「はい、多分。コンビニの袋を提げていました。…サイズ的にカップアイス6個くらいだと思います」
ショップ調査と称して徘徊に出かけた「そるじゃぁ・ぶるぅ」帰還の報告をしていて、不意に疑問が浮かびました。
「…キャプテン。シャングリラにコンビニはあったでしょうか」
「あるわけがない。シャングリラの中で売買は無い」
「では、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が持っていたコンビニの袋はいったい…。それにショップ調査って言ってますけど、お店も一切なかったですよね?」
「もちろんだ。お遊びのフリーマーケットや露店くらいならイベントの時にやることもあるが」
「それじゃ「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何処で買い物してきたんですか?ショップ調査の行き先は…?」
「外だ」
キャプテンはキッパリおっしゃいました。
「ぶるぅはシャングリラの外へ行くことがある。『おでかけ』の札が出ていて船内に姿が見えない時は、アタラクシアかエネルゲイアに出かけているのだ」
ひゃあああ!…キャプテンが「そるじゃぁ・ぶるぅ」の外出を心配なさるのも納得です。いくら監視カメラに映らない能力の持ち主とはいえ、船にいないのでは気がかりでしょう。
「じゃ、じゃあ…外へ出かけてしまったが最後、どこにいるかも分からないんですね」
居場所を特定できる装置はつけていないという「そるじゃぁ・ぶるぅ」。キャプテンの心労は重そうです。
「いや、その点は心配ない。我々の力では無理だが、ぶるぅの居場所はソルジャーが常に把握しておられる」
えっ!?…ソルジャー・ブルー様が「そるじゃぁ・ぶるぅ」の居場所をいつも思念で追っておいでに???
「…意識しておられるわけではないのだがな」
キャプテンは眉間に指を当て、しわを伸ばしながらおっしゃいました。
「どういうわけか、お分かりになるらしい。ぶるぅがソルジャーを同類だと思っているせいかもしれん」
「同類…ですか?」
「そうだ。時々、ぶるぅからの『おすそわけ』が青の間に出現する。…最近は蕎麦が」
そこまで言ってキャプテンはハッと口をつぐんでしまわれました。「最近は蕎麦が」…その先は?…ものすごく…ものすご~く気になります。このまま教えてもらえなかったら眠ってる間に思念で寝言を叫ぶかも…。
「やむを得ん、ぶるぅ番の礼に教えよう。ぶるぅのマイブームは蕎麦グルメなのだ。だから…」
マザー、素敵な話を聞きました。最近、青の間に蕎麦が出現するそうです。昨日は「一日50食限定」で評判の店の天麩羅蕎麦が割り箸つきで届いたとか。ソルジャー・ブルー様が召し上がったのかどうかは教えてもらえませんでした。でも「器はソルジャーが店に戻しておかれた」と聞きましたから、もしかしたらお食べになったのかも…。そして今、気付いたのですが。「そるじゃぁ・ぶるぅ」はちゃんとお金を払っているのでしょうか?