シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、看護師最後の仕事はゼル様のお相手でした。怒りで血圧が上がってらっしゃったので「落ち着かせて差し上げるように」とのドクターの指示です。先輩と一緒に噛み傷の手当てもしましたが、頭を噛まれてしまわれたなんて、よほど怒らせたのでしょうか…「そるじゃぁ・ぶるぅ」を。
「あんたに言っても分からんじゃろうが、わしはちょっとよろけただけじゃぞ!」
「…ゼル様、お茶が入ってます」
「いらん!…確かに、よろけた拍子に『女神ちゃん』に軽くぶつかりはしたが、ほんのちょっとじゃ。『女神ちゃん』もニコニコしておったのに、ガブリとやられたんじゃぞ、後ろから!」
「…災難でしたね…」
「あやつ、なりきってしまっておるわ。なにが『キャロル~!!』じゃ。金髪というだけではないか!」
「あのぅ…『ナイルの姫』…ですか?」
「おお、分かるのか!ならば話は早いわい。…ハーレイめ、とんでもない本を与えおって!…当分、ごっこ遊びに振り回されるぞ。わしは噛まれた後、『おのれ、カプター大神官!』と言われたんじゃ!」
ぶっ。…『王家の紋章』を借りて読んだことを後悔しそうな瞬間でした。ゼル様がカプター大神官!ナイス・キャスティングです、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。…っていうか、ゼル様も読んでらしたのですね、『王家の紋章』。
「わしは…わし耐えられん。わしはカプター大神官なのに、ハーレイがイズミル王子と呼ばれたりしたら!!」
「は?!」
思いきり間抜けな声が出ました。いくらなんでもミスキャストでしょう…それは。
「いいや、十分あり得るぞ!…考えてみい、イズミル王子は…イズミル王子はメンフィスの天敵なんじゃぁああ!!」
…あ。ルックスばかり考えていて、肝心なことを忘れていました。『敵』というポジションならキャプテンがイズミル王子でもよさそうです。いえ、全然問題ありません。さすがゼル様…長老だけあって妙なところで冷静です。
「いやじゃ、わしは絶対にいやじゃ!…そうなる前に、ごっこ遊びを止めさせねば。…何か、何か妙案は…」
「…歌しかないんじゃないでしょうか」
あまり言いたくない考えでしたが、シャングリラ中が巻き込まれる前に「そるじゃぁ・ぶるぅ」を止めなければ。
「カラオケか!」
「はい。…もう、四六時中、歌わせておけば忘れるかと。うるさくても構わないのでしたら…」
「構わん!ハーレイがイズミル王子と呼ばれる前に、なんとしてでも止めてみせるわ!!」
ゼル様は凄い勢いで飛び出してゆかれました。シャングリラ中に「かみお~ん♪」が響き渡る日も近そうです。
マザー、懺悔します。実はわたくし、キャプテンがイズミル王子でも別に構わなかったのですが。ソルジャー・ブルー様に妙なポジションが振られたら困る、とただそれだけを考えてました。ネバメンとか、ネバメンとか、ネバメンとか…。
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