シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、能のない航海士補佐は今日も雑用係でした。外出中の「そるじゃぁ・ぶるぅ」が帰ってくるまでドアの前で待つのも仕事の内です。今日2回目の「そるじゃぁ・ぶるぅ番」を終えてお茶くみをしにブリッジに行くと、キャプテンが声をかけて下さいました。
「すまないな。おかげで最近、胃があまり痛まなくなってきたようだ」
「キャプテン、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「ん?…なんだ」
「前から気になっていたんですけど、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の外出中、ずっと帰りを待ってらっしゃるのは何故なんですか?私に代理がつとまるほどですし、あまり待つ意味がないような…」
本当に疑問だったのです。代理をするまではキャプテンの重要な仕事なのだと思ってましたが。
「確かにあんたの言うとおりさ」
ブラウ航海長がおっしゃいました。
「ハーレイでなきゃ待ちゃしないよ。あたしだったら、あんな性悪は放っておくね」
「ブラウ!」
「おや、本当のことだろう?ぶるぅがちゃんと戻ってくるまで心配しながら待ってるくせに」
なるほど、それで胃が痛みだすというわけですね。ブラウ航海長はしてやったりと楽しそうです。
「あのぅ。…そんなに「そるじゃぁ・ぶるぅ」がご心配なら、一緒にお出かけなさっては?」
「私がショップ探索にか?ついでに悪戯して回るのか?」
あ。なんだかそれも面白そうです。しかし…。
「ダメだ。私に合うとか合わない以前に、子供扱いはぶるぅが嫌がる」
「だったら位置が特定できる発信機とかを持たせるとか。監視カメラもありますし」
「発信機は前に持たせてみたが、悪戯現場を何度か押さえて叱ったせいか、ある日ゴミ箱に捨てられた。それで学習したのだろう。小さなものを服に仕込んでも2日以内にゴミ箱行きだ。そしてぶるぅは監視カメラに映らない」
え。監視カメラに映らない?どおりで皆さんが恐れるわけです。それにしても凄い能力ですが…。
「…キャプテン…。「そるじゃぁ・ぶるぅ」って、なんなのですか」
「知らなくても生活に問題はない。…それより、そろそろ退屈してくる頃だ」
マザー、今日は5回も『おでかけ』の札が下がった扉の前に座りました。これを毎日やっておられたキャプテンの辛抱強さには頭が下がる思いです。私がここから転職したら、キャプテンはまた扉の前で心配しながら待たれるのですね。そこまで大切にされる「そるじゃぁ・ぶるぅ」とは何者なのか、以前にも増して気になります、マザー…。