シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
「分かりやすく言うと、『数学嫌悪症』ってところかしら?」
黒革のミニからスラリと伸びた足を組んだまま、椅子を回転させて微笑する先生をまじまじと見つめる。
(この先生、本当に保健室の先生? 先生っていうより女優ってオーラが……)
コートのように白衣をひっかけ、シンプルだが大胆なカットの白いブラウスに視線を真っ直ぐ向けられない。
でも私を抱きかかえて連れてきてくれたボナール先輩の視線は先生に釘付けだ。
「精神的な問題だと思うけれど。過去によっぽど辛い事があったのね、子猫ちゃん」
頷こうとしたけれど、子猫ちゃんと呼ばれて動きが止まってしまった。
「まりぃ先生。では彼女は数式を見ると機能が停止してしまう、というわけですね」
「あら機能停止じゃ死んじゃうわよ」
パスカル先輩の言葉に、まりぃ先生は楽しげに笑ってる。
「貴方に残された道は二つよ。数学から一生逃げ続けるか、それとも数学同好会に入って克服するか」
その選択なら考える必要なんてない。
一生逃げ続ける!
「克服しよう」
え? 今の誰が言ったの?
「一緒に頑張りましょう。うっかり数式見て倒れちゃう人生なんて、悲しすぎるわ」
そうかもしれないけど……うっかりでも見ないように努力する方がマシ。
「でも……」
「あら」
机の無絵の書類を取り上げ目にしたまりぃ先生が、小さく意驚きの声をあげる。何だろう?と覗き込めば、保健室利用書で、私のクラスと名前が記入してあった。
「あなた、A組ね」
「は……はい…」
「あなたも?」
まりぃ先生がrちゃんに尋ね「はい」と答えると、
「あの子たちと同じクラスねv」
え? 誰?
微笑するまりぃ先生を尻目に、私たちは顔を見合わせて何のこと?と問い合う。
「みゆちゃんとか、キース君とか、ジョミー君とか。いるでしょう? クラスに」
「いたようないないような。だってまだ回りの人しか話してないし」
「みゆさんはいました」
「あぁやっぱりぃ~♪」
まりぃ先生はrちゃんと私の手を取ってキュッと握りしめ、
「あの子たちとお友達になって。そしてね生徒会長に会って頂戴」
「え?」
話の飛躍についていけません。
彼女たちとお友達になれば、生徒会長ともお友達になれるっていうこと?
「生徒会長の健康票には『虚弱体質』と書いてあるのに、一度も保健室に来たことないのよ。生徒会長用の特別室を作って準備万態だというのに」
と、特別室?
「お願い。連れてきて」
……それってお友達になって、怪我を負わせて強引に連れてこいってこと?
「そ、そんな…無理です、無理無理」
「面白そうじゃないか」
「そうだな」
そんなことを言うのはパスカル先輩とボナール先輩で。
「三百年以上生徒会長してるって噂の真偽を確かめたい」
えええっ! そんな噂が?
「校長も、ぶるぅもだ」
「秘密があると、暴きたくなるでしょう?」
まりぃ先生の囁きに、rちゃんと私は思わず頷いてしまった。
この瞬間、数学同好会入部が決定したと知ったのは少し後のことだけど……。
※まりぃ先生って?
連載当時、保健室の先生をしてみたい、と名乗り出られた
勇気ある方です。
アルト様が乱入ついでに人員公募をなさってました(笑)