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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

納涼お化け大会・第2話

夏休みも残り少なくなってきました。でも宿題免除の私たちは気にせず遊び三昧。今日も面白いことは無いかと「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋にやって来たんですけど…。
「かみお~ん♪ごめんね、今、ちょっと忙しくって。冷凍庫にアイスが入ってるから好きなの食べて」
奥から出てきた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何か用事があるようです。お菓子も勝手に食べていいから、と言うと再び奥の部屋へ入ってしまいました。覗かないでね、と念を押して。
「なんだ、なんだ?…ラブレターでも書いてるのか?」
「子供がそんなの書くわけないだろ」
サム君とジョミー君が扉の方へ近づいた途端、中から「ダメ~ッ!」と声がしました。私たちの行動は把握されているようです。それとも心を読んでるのかな?
「何をしてるのか分からないけど、とても大切な用事みたいね。今までこんなこと無かったもの」
スウェナちゃんの言うとおり、「そるじゃぁ・ぶるぅ」はおもてなしが大好きです。みんながワイワイ騒いでいる横でせっせとお菓子や食事を作って出してくれるのがいつものパターン。お客様を放っておくなんてことは今回が初めてのことでした。
「キースたちの部活はお昼までだっけ?その頃には顔を出すんじゃないかな」
「だよなぁ。昼飯も作るだろうし」
私たちはお菓子やアイスを食べておしゃべりしながら奥の部屋の方を見ていました。扉の向こうで時々、ダダダダ…と妙な音がしますが、何の音だか分かりません。その内にお昼になり、キース君たちがやって来たのと、朝から姿を見かけなかった会長さんが入ってきたのは同時でした。
「やあ。そこでキースたちに会ったんだ。えっと、今日のお昼ご飯は…」
会長さんが部屋を見回すと、奥の扉がガチャリと開いて「そるじゃぁ・ぶるぅ」が顔を覗かせました。
「ピザを作って冷蔵庫に入れてあるから、温めて食べて。…ブルー、ぼくにも5枚持ってきてね」
「了解」
扉はすぐに閉まってしまい、ダダダダ…という音が聞こえてきます。私たちは冷蔵庫から食べきれないほどの量のピザを取り出し、オーブンで軽く温めて食べ始めました。会長さんは「そるじゃぁ・ぶるぅ」に頼まれたピザをお皿に乗せて届けに行きましたけど、5枚だなんて凄いです。スウェナちゃんと私は1枚でお腹一杯になり、運動してきたキース君たちでも4枚が限界だったのに…。
「ぶるぅは労働中だからね」
ピザを食べ終えた会長さんが回収してきたお皿は見事に空になっていました。スウェナちゃんと私でお皿を洗い、棚に片付けて、それからみんなでおしゃべりをして。
「なあ。あんた、こないだ俺たちに約束したよな?瞬間移動させてやるって」
キース君が会長さんに向かって言い出したのは柔道部の逆肝試しイベントの後に出てきた話でした。イベント見物に出かけた私たちは瞬間移動を体験したんですけど、キース君たちは未経験。羨ましがったキース君たちに会長さんは「夏休みの内に必ず」と約束をして、果たさないまま今日に至るというわけで…。
「もちろん約束は守るよ、ぼくは。ぶるぅの準備が整い次第、今度は全員で移動するつもり」
「なるほど。…近日中、ということか」
「いや。あと1時間も待ってくれれば…」
会長さんがそう言った時、お籠もりしていた「そるじゃぁ・ぶるぅ」が出てきました。
「ブルー、できたよ!…もうバッチリだと思うんだけど、一応、確認してくれる?」
「ああ、ご苦労様。どんな感じかな」
会長さんが扉の奥に消え、しばらくすると…。
「みんな、お待たせ。約束の瞬間移動を体験させてあげられそうだ。ここに立って」
部屋の中央に集まった私たち7人を会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が両側から挟むようにして立ちます。えっと…何処へ行くんでしょうか?
「それは着いてのお楽しみだよ。おっと、その前に…誰か、荷物を持ってくれるかな?」
差し出されたのは「そるじゃぁ・ぶるぅ」が奥の部屋から抱えて出てきた紙袋でした。キース君がそれを受け取ると、会長さんは準備オッケーとばかりに頷いて…。
「じゃあ、行こう。あまりビックリしないようにね」
フッ、と身体が浮くような感覚がして、私たちは空間を飛び越えました。

「…あれ?…教頭先生の部屋だ!」
声を上げたのはジョミー君。そこは見覚えのある教頭室ですが、先生の姿はありません。初めての瞬間移動に驚いているキース君たちはキョロキョロ周りを見回しています。
「ハーレイは奥の仮眠室だよ。柔道部でかいた汗をシャワーで流して、一休みするのが習慣でね」
会長さんが教頭室の奥のドアノブに手をかけ、私たちを手招きしました。
「さぁ、全員でお邪魔しようか。ああ、キース…その荷物、ぶるぅに渡してくれるかな」
紙袋を抱えた「そるじゃぁ・ぶるぅ」はなんだかとても満足そう。中身はいったい何なんでしょう。教頭先生へのプレゼントとか?…会長さんは何も答えず、扉をガチャリと開けました。
「こんにちは。入るよ、ハーレイ」
「ブルー!?」
ソファに座っていた教頭先生が驚いた顔で振り返ります。バスローブ姿の教頭先生はゾロゾロと並ぶ私たちを見るなり、畳んでソファの端に置いてあった着替えの方に手を伸ばしましたが…。
「ハーレイ、着替えならここに持ってきたんだ」
会長さんがニッコリ笑って「そるじゃぁ・ぶるぅ」を見下ろしました。
「君の好みにピッタリなのを、ぶるぅが頑張って作ってくれた。きっと気に入ると思うんだけど」
ねえ?と「そるじゃぁ・ぶるぅ」と顔を見合わせ、会長さんは紙袋に手を突っ込みました。じゃあ、ダダダダ…という音がしてたのはミシンを使っていたんですね。アロハシャツかな?それとも粋に浴衣とか?
「遠慮しないで着てくれたまえ。ほら、君のサイズに合わせたんだよ」
会長さんが取り出したのは青い色をした薄物でした。やけにヒラヒラとしたデザインの長袖シャツですけれど…って、げげっ!あのリボンとフリルにはイヤというほど見覚えが…。
「ちょ…ちょっと、なんだよ、それ!」
ジョミー君が真っ赤になって叫びました。会長さんが見せびらかしているのはシャツなんかではなく、高原の別荘最後の夜にジョミー君が着たベビードール。教頭先生の匂いがする、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が言ったアレです。…サイズは全然違いますけど。
「そうだよ、ジョミー。…君が着たのと同じものだ。ハーレイのサイズでぶるぅが作った」
会長さんの説明にエヘン、と胸を張る「そるじゃぁ・ぶるぅ」。お裁縫も得意だったとは知りませんでした…って、そんなこと言ってる場合じゃないかも。会長さんはベビードールをしっかり握って教頭先生に近づくと。

「さあ、立って。…座ったままじゃ着替えられない」
「…う……。わ、私の着替えならここに…」
「いいから、立って」
有無を言わさぬ口調に気おされるように教頭先生が立ち上がりました。
「バスローブ、脱いで。これが大好きなんだろう?…ワイシャツとズボンなんかより、よっぽど…ね」
「……い、いや、私は……」
教頭先生の顔に脂汗が滲んでいます。
「嘘をつかない。…君の好みは知ってるんだ」
ツカツカと教頭先生に近づいた会長さんの手がサッと動くと、教頭先生のバスローブがバサリと床に落ちました。柔道で鍛えた逞しい身体に残ったものは赤と白の縞々トランクスだけ。とうの昔に目が点になっている私たちに構いもせずに、会長さんはビッグサイズのベビードールを教頭先生の手に押し付けました。
「…言っておくけど、この子たちは全員、知ってるからね。君がぼくに何を贈ったか…。さあ、着て。着ないんだったら…どうなると思う?」
会長さんの手の中に現れたのは、もう1枚の青いベビードール。ジョミー君が着たものに違いありません。
「君が着ないなら、ぼくが着る。そしてベッドに乗っかって……。ハーレイ、君はトランクスしか履いてないよね?その状態でぼくの上に倒れ込んだら…。そこでぼくが思い切り悲鳴を上げたらどうなると思う?」
人を呼ばなくても写真が撮れればいいんだけどね、と会長さん。
「ぼくに着せたくて買ったそうだし、着てみようかな。ふふ、見たくってたまらないだろう?」
シャツのボタンを外そうとしている会長さんは本気のようです。スケスケのベビードールに着替えて、教頭先生を陥れようと企んでいるに違いありません。教頭先生の拳がフルフルと震え、ベビードールをグッと握って…一息に頭からかぶりました。
「「「!!!!!」」」
その光景はまさに視覚の暴力。教頭先生の身体にはおよそ似合わない可憐な青いベビードールの短い裾と、赤と白の縞々トランクスの裾は殆ど重なり合っていて…。あぁぁ、こんな恐ろしいものを目にしようとは夢にも思いませんでした。私たち7人が石像と化す中、会長さんは楽しそうです。
「とても似合っているよ、ハーレイ。…クルッと回ってみてくれるかな?」
逆らえない教頭先生が大きな身体をクルッと回転させると、ヒラヒラの裾がフワッと広がり、紅白縞のトランクスが覗きます。頭痛がしそうな景色でしたが、会長さんは気にしていません。
「ぶるぅ、頑張った甲斐があったね。ぼくのイメージにピッタリだ。じゃあ、もう1枚も披露しようか」
もう1枚!?…まさか、と思った次の瞬間、青いベビードールがパッと消え失せ、代わりに出現したモノは…。
「「「~~~~~!!!」」」
私たちは今度こそ卒倒しそうになりました。教頭先生が纏っているのは、マツカ君が逆肝試しで着た深紅のセクシー・ベビードール。袖なんか無くて細いストラップだけで…申し訳程度に胸を隠す部分から垂れたヒラヒラの布は中央で大胆に開き、鍛え上げられた腹筋が…そして縞々トランクスがまるっと見えるではありませんか!…そういえばマツカ君は共布のパンツを履いてたかなぁ…なんていうのは置いといて…。
「クルッと回ってみるかい、ハーレイ?」
硬直している私たちを他所に、会長さんが言いました。
「…ああ、でも…そのトランクスだと、何もかもまるでブチ壊しだねぇ?…ほら、ちゃんとパンツもあるんだけども。これに履き替えてもらえるかな」
紙袋から取り出した深紅の下着を「そるじゃぁ・ぶるぅ」が差し出しています。会長さんの指がパチンと鳴って、縞々トランクスは深紅のパンツと入れ替えられてしまいました。もう似合わないなんてレベルではなく、見てはならないものを見た気分。でもでも…どうしたらいいんでしょう。あまりの怖さに目が離せません~!

とんでもない格好をさせられてしまった教頭先生。大きな身体を縮こまらせて汗びっしょりの先生の手に、会長さんがビッグサイズの青いベビードールを握らせました。
「これ、ぼくからのプレゼント。もちろん、その赤もプレゼントするから、疲れた時には着替えて鏡を見てごらん。きっと心が潤ってくるよ。ぜひ活用してくれたまえ」
「……………」
誰が活用するものか!と言いたそうな顔の教頭先生に、会長さんはクスッと笑って。
「大丈夫、すぐに使える時が来る。…この子たち、声も出ないだろう?肝をつぶしているんだよ。…もうじきだねえ、夏休みの納涼お化け大会。この格好の君がオバケでなけりゃあ、何がオバケだというんだい?それを着てオバケの役で参加したなら、きっと最高に怖がられるね」
た、確かに…笑いより恐怖が先に立つかもしれません。でも本当にこの服で出たら、教頭先生の威厳も面子も丸潰れだと思うのですが…。
「その辺はハーレイの自主性を尊重するよ。無理強いをするつもりはないし」
会長さんは深紅のベビードールを着た教頭先生を眺め、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の頭を撫でて。
「ぶるぅ、頑張って作ってくれてありがとう。これでハーレイも懲りるだろう。…趣味じゃないプレゼントほど始末に困るものはないしね」
じゃあ帰ろうか、と会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が顔を見合わせ、私たちは瞬間移動しました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋に戻るなり、ソファや床の上に倒れてしまった私たち。まだ目の前に深紅と青の幻覚が…。ああぁ、凄いもの見ちゃったなぁ。海の別荘で遠目に拝んでしまったナマお尻より何十倍も強烈でした。なんだか熱が出てきたような気もします。会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が冷たいおしぼりを配ってくれていましたけれど、そんなことより記憶を消すとか、そういう力はないんでしょうか…。 




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