シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
残酷に焼いて
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
夏、真っ盛り。楽しい夏休みも真っ盛りです。今年もマツカ君の山の別荘ライフを楽しみ、お次は海の別荘ですけど。それまでの間に挟まるお盆が問題、キース君にとっては地獄な季節。暑さの方もさることながら、お盆と言えば…。
「くっそお…。あの親父めが!」
まただ、とキース君が唸る会長さんの家のリビング。アドス和尚がどうかしたんですか?
「この時期に「またか」で親父だったら、およそ想像がつくだろうが!」
「あー…。また卒塔婆かよ?」
押し付けられてしまったのかよ、とサム君が訊くと。
「それ以外の何があると言うんだ! ドカンと束で来やがったんだ!」
山の別荘から帰って来たら、俺の部屋の前に積んであった、とキース君。卒塔婆が五十本入りだとかいう梱包された包み、それが部屋の表の廊下に三つ。
「「「三つ!?」」」
五十かける三で百五十になるのでは、と聞き間違いかと思いましたが、それで正解。
「親父め、今年はやたらとのんびりしていやがると思ったら…。俺にノルマを!」
遊んで来たんだから頑張るがいい、と積み上げてあったそうです、卒塔婆。
「…キース先輩、こんな所で遊んでいてもいいんですか?」
百五十本ですよ、とシロエ君。
「急いで帰って書いた方がいいと思いますが…」
「俺のやる気が家出したんだ、今日はサボリだ!」
「でもですね…。お盆が近付いて来てますよ?」
間に合わないんじゃあ、と正論が。
「あそこのカレンダーを見て下さい。今日のツケは確実に反映される筈です」
「…俺も分かってはいるんだが!」
あんな親父がいる家で努力したくはない、とブツブツと。そう言えば、クーラー禁止でしたか?
「そうなんだ! 暑いし、セミはうるさいし…!」
卒塔婆プリンターなら楽なのに、と手抜き用な機械の名前までが。いっそポケットマネーで買えばいいかと思いますけど、家に置いたらバレるのかな…?
「なんだと? 卒塔婆プリンター?」
バレるに決まっているだろうが、と顔を顰めるキース君。
「あれはけっこう場所を取るんだ、卒塔婆自体がデカイからな!」
だから無理だ、と悔しそう。
「いつかは買いたいと思っていてもだ、親父が健在な間は無理だな」
「それじゃ、一生、無理なんじゃない?」
アドス和尚も年を取らないし、とジョミー君。
「キースも年を取らないけどさ…。アドス和尚もあのままなんだし」
「…キツイ真実を言わないでくれ…」
そして俺には百五十本の余計な卒塔婆が、と項垂れるしかないようです。
「一日のノルマを計算しながら書いて来たのに、ここでいきなり計算が…。もうリーチなのに!」
お盆は其処だ、と嘆くキース君に、会長さんが。
「サボるよりかは、前向きの方が良くないかい? 此処で書くとか」
「…なんだって?」
「ぼくの家だよ、和室はクーラーが入るからね」
あそこで書いたらどうだろうか、という提案。
「アドス和尚は君が出掛けたと知ってるんだし、卒塔婆のチェックはしないと思うよ」
此処へ運んで書いて行けば、と会長さん。
「心配だったら、運んだ分の卒塔婆はサイオニック・ドリームでダミーをね…」
減っていないように見せるくらいは朝飯前で、という申し出にキース君は飛び付きました。早速、会長さんが瞬間移動で卒塔婆や書くための道具を運んで…。
「かみお~ん♪ キース、お部屋の用意が出来たよ!」
「…有難い。クーラーだけでも違うからな」
「お茶とお菓子も置いてあるから、休憩しながら頑張ってね!」
行ってらっしゃぁ~い! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」に送り出されて、キース君は和室に向かいました。愛用の硯箱とかも運んで貰って、環境はバッチリらしいです。きっと元老寺よりはかどりますよね、頑張って~!
キース君は卒塔婆書きに集中、私たちは邪魔をしないようリビングの方でワイワイと。防音はしっかりしてありますから、大笑いしたって大丈夫です。その内にお昼御飯の時間で…。
「今日のお昼は夏野菜カレー! スパイシーだよ!」
暑い季節はスパイシー! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が用意してくれ、冷たいラッシーも出て来ました。キース君は少し遅れてダイニングの方にやって来て…。
「美味そうだな。…いただきます」
合掌して食べ始めたキース君に、サム君が。
「どんな具合だよ、はかどってんのか?」
「ああ、家で書くより早く書けるな。やはり環境は大切だ」
涼しいだけでもかなり違う、と嬉しそう。
「ブルーのお蔭で助かった。夕方までやれば、家で書く分の三日分はクリア出来るだろう」
「キース先輩、良かったですね! いっそこのまま徹夜とか!」
「いや、徹夜はしないと決めている。…卒塔婆書きは集中力が命だからな」
よほどリーチにならない限りは徹夜はしない方が効率的だ、という話。書き損じた時の手間が余計にかかってしまう分、徹夜でボケた頭で書いたら駄目だとか。
「そうなんですか…。じゃあ、夕方までが勝負ですね」
「そうなるな。飯を食ったらまた籠らせて貰う」
急いで食って卒塔婆書きだ、と食べ終えたキース君は和室に戻って行きました。お茶やお菓子を差し入れて貰って、書いて書きまくって、夕方になって…。
「どうだった、キース? 卒塔婆のノルマ」
ジョミー君の問いに、ニッと笑ったキース君。
「家で書く分の四日分は書いた。…なんとか光が見えて来たぞ」
今日は此処まででやめておこう、と肩をコキコキ。やっぱり肩が凝りますか?
「当たり前だろう、書き仕事だぞ?」
それも一発勝負なんだ、というのが卒塔婆。キース君、お疲れ様でした~!
晩御飯はキース君のためにスタミナを、と焼肉パーティー。マザー農場の美味しいお肉や野菜がたっぷり、みんなでジュウジュウ焼き始めたら…。
「こんばんはーっ!」
遊びに来たよ、と飛び込んで来た私服のソルジャー。夜に私服って、今日はこれから花火大会にでもお出掛けですか?
「えっ、花火? それは別の日で、今はデートの帰りだけれど?」
「「「デート?」」」
「ノルディとドライブに行って来てねえ、海辺で美味しい食事をね!」
海の幸! と焼肉の席に混ざったソルジャー、自分の肉を焼き始めながら。
「焼肉もいいけど、今日の食事は素敵だったよ! 鮮度が一番!」
「…お刺身なわけ?」
会長さんが訊くと、ソルジャーは「焼いたんだけど?」という返事。
「海老もアワビも生きてるんだよ、それをジュウジュウ!」
海老は飛び跳ねないようにシェフが押さえて…、とニコニコと。
「ついさっきまで生きてました、っていうのを美味しく食べて来たんだよ!」
「「「あー…」」」
あるな、と思ったそういう料理。ちょっと可哀相な気もしますけれど、お味の方は絶品です。ソルジャーは海辺のレストランで食べた料理を絶賛しつつ…。
「残酷焼きって言うんだってね、ノルディの話じゃ」
メニューにはそうは書かれていなかったけど、という話。残酷焼きって、可哀相だから?
「…そうじゃないかな、ぼくだってアルタミラでは焼かれちゃったしね!」
実験の一環で丸焼きだって、と怖い話が。…焼かれたんですか?
「うん。どのくらいの火で火傷するのか、試したかったらしくてねえ…」
「「「うわー…」」」
それ、食欲が失せちゃいますから、続きは後にしてくれませんか?
「駄目かな、残酷焼きの話は?」
「君の体験が生々しすぎるんだよ!」
焼肉が終わるまで待ちたまえ、と会長さん。せっかくのお肉、美味しく食べたいですからね…。
ソルジャーも交えての焼肉パーティー、終わった後は食後の紅茶やコーヒーが。キース君もエネルギーをチャージ出来たそうで、明日も元気に卒塔婆を書くんだそうです。
「此処で書かせて貰えると有難いんだが…。追加で来た分が片付くまでは」
いいだろうか、という質問に、会長さんは「どうぞ」と快諾。
「君の苦労は分かっているしね、たまには力になってあげるよ」
「感謝する! そうだ、家でも幾らか書いておきたいし…。道具を運んで貰えるか?」
「それはもちろん。ぶるぅ、キースの部屋に和室の硯とかをね…」
「オッケー、運んでおくんだね!」
はい、出来たぁ! とリビングから一歩も動きもしないで、瞬間移動させたみたいです。流石、と驚くタイプ・ブルーのサイオンですけど…。
「えーっと…。さっきの続きを話していいかな?」
残酷焼き、とソルジャーが。
「あの美味しさが忘れられなくて…。此処でも御馳走になりたいなあ、って!」
生きた海老やらアワビをジュウジュウ、と唇をペロリ。
「ぶるぅだったら美味しく焼けるに決まってるんだし、明日のお昼とか!」
「あのねえ…。君が言ったんだよ、残酷だからメニューにそうは書かないのかも、って」
あれは残酷焼きなんだけど、と会長さん。
「それを此処でって、今をいつだと思ってるんだい?」
「夏だけど?」
「ただの夏っていうわけじゃなくて、今はお盆の直前なんだよ!」
だからキースも卒塔婆がリーチ、と会長さんが指差す和室の方向。
「明日もキースは卒塔婆書きだし、そんな時期に残酷焼きはお断りだね!」
何処から見たって殺生だから、と会長さんはキッパリと。
「お盆が済むまで待ちたまえ。海の別荘なら、元から似たようなことをやってるんだし」
「そうですね。サザエもアワビも獲れ立てですし…」
それをそのままバーベキューです、とシロエ君。そっか、考えてみれば、あれも残酷焼きでした。海老だって焼いてることもあります、立派に残酷焼きですねえ…。
残酷焼きは海の別荘までお預けだから、というのが会長さんの論。少なくとも、会長さんの家でやる気は無いようです。
「ぼくの家では絶対、禁止! 食べたいんだったら、自分で行く!」
本家本元の残酷焼きに行くのもいいし、と会長さん。
「…本家本元? それって、もっと凄いのかい?」
残酷の程度が違うんだろうか、とソルジャーが訊いて、私たちだって興味津々。物凄く残酷な焼き方をするのが本家でしょうか?
「…まさか。それこそお客さんの食欲が失せるよ、君の体験談を聞くのと同じで!」
「ふうん? 其処だと、もっと美味しいとか?」
「どうだろう? あれは登録商標だから…」
「「「はあ?」」」
何が登録商標なんだ、と首を傾げた私たちですが。
「残酷焼きだよ、その名前で登録したのが本家本元!」
それが売りの旅館なんだから、と会長さんが教えてくれた大人の事情。海の幸が自慢の温泉旅館が「残酷焼き」を登録商標にしているそうで、他の所では使えないとか。
「だからブルーが食べた店でも、その名前になっていなかったわけ!」
「なんだ、そういうオチだったんだ…。残酷焼きって書いたら可哀相っていうんじゃなくて」
商売絡みだったのか、と少し残念そうなソルジャー。
「名前くらい、どうでもいいのにねえ…。それにあの名前がピッタリなのに…」
生きたままで焼くから美味しいのに、と残酷焼きに魅せられた模様。
「でも、今の時期は駄目なんだよね? ぶるぅに焼いて貰うのは?」
「お盆の季節は、本来、殺生禁止なんだよ!」
坊主でなくても慎むものだ、と会長さん。
「昔だったら、お盆の間は漁だって禁止だったんだから!」
「「「え?」」」
「漁船だよ! お盆は海に出なかったんだよ、何処の海でも!」
そういう時期が控えているのに残酷焼きなど言語道断、と会長さんは断りました。そうでなくてもキース君が卒塔婆書きをしている真っ最中です、会長さんの家。…そんな所で残酷焼きって、いくらなんでもあんまりですよね?
こうして終わった、残酷焼きの話。ソルジャーは「分かった、残酷焼きは海の別荘まで待つよ」と帰って行って、次の日も会長さんの家でキース君が卒塔婆書き。
「…キース、頑張るよなあ…」
全く出ても来ねえんだから、とサム君が感心するほど、キース君は和室に籠っています。お昼御飯を食べに出て来た以外は、もう本当に籠りっ放し。夕方になって、ようやく出て来て。
「…やっと終わった。まさか二日で書き上がるとは…」
百五十本も、と感慨深げなキース君。
「あの部屋を貸して貰えて良かった。…家でやってたら、まだまだだったな」
「それは良かった。後は元からのノルマだけだね」
会長さんの言葉に、キース君は「ああ」と頷いて。
「此処へ来て遊んでいたって、充分書ける。…そうだ、ジョミーも練習しておけよ」
棚経の本番が迫っているぞ、とニヤニヤと。
「当日になってから「出来ません」では済まないんだしな?」
「分かってるってば、ぼくは今年も口パクだよ!」
どうせお経は忘れるんだし、と最初からやる気ゼロらしいです。これも毎年の風景だよな、と眺めていたら…。
「こんばんはーっ!」
またもソルジャーがやって来ました、今日は私服じゃないですけれど。
「…何しに来たわけ?」
会長さんの迷惑そうな視線に、ソルジャーは。
「食事とお喋り! こっちの世界の食事は何でも美味しいから!」
「かみお~ん♪ 今日はパエリアとタコのスープと…。スタミナたっぷり!」
キースに栄養つけて貰わなくっちゃ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ダイニングのテーブルに魚介類ドッサリのパエリアに、タコが入ったガーリックスープ。これは栄養がつきそうです。ソルジャーも早速、頬張りながら。
「残酷焼きでなくても美味しいねえ…。地球の海の幸!」
「ぶるぅの腕がいいからだよ!」
それに仕入れも自分で行くし、と会長さん。料理上手な「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、新鮮な食材をあれこれ買いに行くのも好きですもんね!
またしてもソルジャーが出て来てしまった夕食の席。お喋りとも言っていましたけれども、早い話が暇なのでしょう。なんでもいいから暇つぶしだな、と思っていたら…。
「そうそう、昨日の残酷焼きのことなんだけど…」
「海の別荘まで待てと言ったよ、君も納得していただろう?」
お盆の前には無益な殺生は慎むものだ、と会長さん。
「こんな風にパエリアとかなら、生きたまま料理をするわけじゃないし…。間違えないように!」
「分かってるってば、そのくらいはね!」
ぼくの話は別件なのだ、と妙な台詞が。
「「「別件?」」」
「そう、別件! 残酷焼きの楽しみ方の!」
「どっちにしたって、お盆前だから!」
慎みたまえ、と会長さんが眉を吊り上げました。
「何を焼きたいのか知らないけどねえ、お盆が終わってからにしたまえ!」
「…うーん…。半殺しなのを本殺しにしようってコトなんだけど?」
「それを殺生と言うんだよ!」
本殺しだなんて…、と会長さんはソルジャーをギロリと睨み付けて。
「半殺しっていうのも大概だけどさ、まだ殺してはいないしね? それで、君は…」
何を半殺しにしたと言うのさ、と尋問モード。
「まさか人間じゃないだろうね? 君の敵は人類らしいから」
「…まるでハズレってこともないかな、人間ってトコは」
「なんだって!?」
本当に人間を半殺しなのか、と会長さんが驚き、私たちだってビックリ仰天。ソルジャー、人類軍とかいうヤツの兵士を捕えてシャングリラで拷問してるとか…?
「失礼な…! そういうのは人類の得意技だよ、ぼくたちミュウは控えめだよ!」
捕まえたとしても心理探査くらいなものだろうか、という返事。それじゃ、半殺しは…?
「人類じゃないし、ミュウでもない…かな? ミュウは登録商標かもだし」
「「「はあ?」」」
「ミュウって言葉! こっちの世界には無いんだろう?」
人類が登録商標にしているのかも、という笑えないジョーク。そもそも、ソルジャーの世界に登録商標なんかがあるのか疑問ですってば…。
登録商標の有無はともかく、私たちの世界に「ミュウ」という言葉はありません。ソルジャーの世界だと、サイオンを持っている人間はミュウということになるらしいですけど。
「そうなんだよねえ、ぼくの世界だとミュウなんだけど…。こっちだとねえ…」
言葉自体が無いものだから、とソルジャーの視線が私たちに。
「君たちもミュウの筈なんだけどね、ミュウじゃないんだよね?」
「…その筈だが?」
ミュウと呼ばれたことは無いな、とキース君が返して、会長さんが。
「ぼくも使ったことが無いねえ、その言葉は。…単に「仲間」と呼んでいるだけで」
「やっぱりねえ…。だから、ミュウでもないのかな、って」
ぼくが言ってる半殺しの人、ということは…。それって、私たちの世界の誰かをソルジャーが半殺しにしてるって意味?
「今はやっていないよ、現在進行形っていう意味ではね!」
でも何回も半殺しにしたし、と不穏な言葉が。いったい誰を半殺しに…?
「君たちもよく知ってる人だよ、こっちの世界のハーレイだけど?」
「「「ええっ!?」」」
まさかソルジャー、教頭先生を拉致して苛めていましたか?
「違う、違う! 君たちも共犯と言えば共犯なんだよ、特にブルーは!」
「…ぼく?」
どうしてぼくが共犯なんかに…、と会長さんはキョトンとした顔、私たちだって同じです。教頭先生を半殺しになんか、したことは無いと思いますけど…?
「…ううん、何度もやってるね。半殺しにするのはぼくだけれどさ、その片棒を!」
「「「片棒?」」」
「そのままだってば、こっちのハーレイを陥れるってヤツ!」
そのネタは主に大人の時間で…、とソルジャーの唇に浮かんだ笑み。
「ぼくがハーレイに御奉仕するとか、覗きにお誘いするだとか…。鼻血体質のハーレイを!」
そして毎回、半殺し! と言われてみれば、そうなるのかもしれません。会長さんの悪戯心とソルジャーの思惑が一致する度、教頭先生、鼻血で失神ですものねえ…?
「分かってくれた? それが半殺しというヤツで!」
ぼくが目指すのは本殺し、とソルジャーはクスクス笑っています。
「失神しちゃうと半殺しで終わってしまうから…。失神させずに本殺しを目指したいんだよ!」
その過程で残酷焼きになるのだ、とソルジャーはニヤリ。
「失神したくても出来ないハーレイ! 本殺しになるまでジュウジュウと!」
生きたまま炙られて残酷焼きだ、と言ってますけど、それって、どんなの…?
「えっ、簡単なことなんだけど? 要は鼻血を止めさえすればね!」
失神出来なくなるであろう、というソルジャーの読み。
「ムラムラしたまま最後まで! どう頑張っても天国にだけは行けないままで!」
「「「へ?」」」
「混ざりたくても混ざれないんだよ! 羨ましくて涎を垂らすだけ!」
それが残酷! とソルジャーはグッと拳を握りました。
「本当だったら、鼻血さえ出なければ乱入出来るんだろうけど…。ハーレイだからね!」
そんな根性があるわけがない、と完全に馬鹿にしているソルジャー。
「羨ましくても、混ざりたくても、最後の一歩が踏み出せない! 見ているだけ!」
ムラムラしながら炙られ続けて、とうとう力尽きるのだ、ということは…。教頭先生が見せられるものって、もしかして…?
「そうだけど? ズバリ、ぼくとハーレイの大人の時間!」
是非ともじっくり見て貰いたい、と赤い瞳が爛々と。
「ぼくがサイオンで細工するから! 鼻血で失神出来ないように!」
「ちょ、ちょっと…!」
会長さんが滔々と続くソルジャーの喋りを遮って。
「君のハーレイ、今はそれどころじゃないだろう! 海の別荘行きを控えて!」
特別休暇を取るんだから、と会長さん。
「その前にやるべき仕事が山積み、キースの卒塔婆書きと同じでリーチなんだと思うけど!」
「…まあね、ご無沙汰気味ではあるよ」
だからノルディとデートに行った、と頷くソルジャー。
「でもね、その分、休暇に入れば凄いから! パワフルだから!」
海の別荘では毎年そうだ、と力説してます。それは間違いないですけどねえ、部屋に籠って食事までルームサービスだとか…。
毎年、毎年、ソルジャー夫妻に振り回されるのが海の別荘。実害が無い年も、日程だけはソルジャーが決めてしまいます。結婚した思い出の場所というわけで、日程はいつもソルジャー夫妻の結婚記念日に合わせられるオチ。
ご他聞に漏れず、今年もそう。…その別荘で教頭先生を残酷焼きにしたいんですか?
「…だって、ブルーも言ったじゃないか! 残酷焼きは海の別荘まで待てと!」
それで待とうと考えていたら残酷焼きを思い付いた、と言うソルジャー。
「普通の残酷焼きは元からやっているしね、もっと楽しく、残酷に!」
「ぼくは普通ので充分だから!」
サザエやアワビで間に合っている、と会長さん。
「伊勢海老を焼いてる年だってあるし、残酷焼きはそれで充分だよ!」
「でもねえ…。せっかく新しい言葉を覚えたんだし、焼く物の方も新鮮にしたい!」
ハーレイの残酷焼きがいい、とソルジャーの方も譲りません。
「あの大物をジュウジュウ焼きたい! ぼくとハーレイとの夫婦の時間を見せ付けて!」
お盆は終わっているんだから、とソルジャーは揚げ足を取りにかかりました。
「お盆がまだなら、無益な殺生と言われちゃうかもしれないけれど…。終わってるしね?」
海の別荘に行く頃には、と重箱の隅をつつくソルジャー。
「それに本殺しと言いはしてもね、本当に殺すわけでもないし…」
「迷惑だから!」
手伝わされるのは御免だから、と会長さんが叩いたテーブル。
「君は楽しいかもしれないけどねえ、ぼくたちは楽しいどころじゃないから!」
「そうですよ! いつも酷い目に遭うだけです!」
ぼくも反対です、とシロエ君。
「残酷焼きはバーベキューだけで充分ですよ!」
「まったくだ。…いくらお盆が終わっていてもだ、殺生は慎むのが筋だ」
それが坊主というもので…、とキース君が繰る左手首の数珠レット。
「ブルーはもちろん、サムもジョミーも僧籍なんだし…。あんたを手伝うことは出来んな」
「…手伝いは別に要らないんだけど?」
素人さんには難しいから、とソルジャーはフウと溜息を。えーっと、それって、ソルジャーが勝手に残酷焼きをやるんですかね、私たちとは無関係に?
巻き込まれるのがお約束のような、ソルジャーが立てる迷惑企画。教頭先生絡みの場合は、巻き込まれ率は百パーセントと言ってもいいと思います。
それだけに残酷焼きな企画も巻き添えを食らうと思ってましたが、「素人さんには難しい」上に、「手伝いは別に要らない」ってことは、ソルジャーの一人企画でしょうか?
「一人ってわけでもないけれど…。ぼくのハーレイは欠かせないしね」
夫婦の時間を披露するんだし、と言うソルジャー。
「それと、ぶるぅの協力が必須! ぼくの世界の方のぶるぅの!」
「「「ぶるぅ!?」」」
あの悪戯小僧の大食漢か、と思わず絶句。「ぶるぅ」の協力で何をすると?
「もちろん、覗きのお手伝いをして貰うんだよ! こっちのハーレイを御案内!」
最高のスポットで覗けるように、とニッコリと。
「鼻血を止める細工の方もさ、ぶるぅがいればより完璧に!」
ぼくがウッカリ忘れちゃってもフォローは完璧、と自信たっぷり。
「そんな感じで残酷焼きだし、君たちは何もしなくてもいいと思うんだけど?」
高みの見物コースでどうぞ、とパチンとウインクしたソルジャー。
「「「…高み?」」」
「そうだよ、被害の無い場所で! ゆっくり見物!」
中継の方も「ぶるぅ」にお任せ、と聞かされて震え上がった私たち。それってギャラリーをしろって意味になってませんか…?
「それで合ってるけど? 見なけりゃ損だと思わないかい?」
「「「思いません!!!」」」
見なくていいです、と絶叫したのに、ソルジャーは聞いていませんでした。
「うんうん、やっぱり見たいよねえ? こっちのハーレイの残酷焼き!」
海の別荘では絶対コレ! と決めてしまったらしいソルジャー。私たちの運命はどうなるんでしょうか、それに教頭先生は…?
海の別荘では教頭先生の残酷焼きだ、と決めたソルジャー。最初からそういう魂胆だったに決まっています。溜息をつこうが、文句を言おうが、まるで取り合う気配無し。夕食が済んだ後にも居座り、残酷焼きを喋り倒して帰って行って…。
「…おい、俺たちはどうなるんだ?」
このまま行ったら確実に後が無さそうだが、と途方に暮れているキース君。お盆が済んだら海の別荘、其処で待つのが教頭先生の残酷焼きで。
「…忘れるべきじゃないでしょうか?」
覚えていたって、いいことは何もありません、とシロエ君が真顔で言い切りました。
「どうなるんだろう、と心配し過ぎて心の病になるのがオチです!」
「確かにそうかもしれねえなあ…。人生、笑ってなんぼだしよ」
忘れた方が良さそうだぜ、とサム君も。
「俺やキースはお盆もあるしよ、そっちに集中した方がいいぜ」
「…ぼくも今年は真面目に棚経やろうかなあ…」
そしたら忘れられそうだし、とジョミー君もお盆に逃げるようです。
「お盆はいいかもしれないわねえ…。私も今年は何かしようかしら?」
お盆の行事、というスウェナちゃんの言葉に、会長さんが。
「やりたいんだったら、ぼくの家でやってもいいけれど? …それっぽいのを」
迎え火から始めてフルコースで、という案にスウェナちゃんが縋り付きました。シロエ君もマツカ君も食い付きましたし、私だって。
「会長、よろしくお願いします!」
今年のお盆は頑張ります! とシロエ君が決意表明、抹香臭い日々が始まるようです。でもでも、ソルジャーが立てた迷惑企画を忘れられるのなら、お盆の行事も大歓迎。
迎え火だろうが、棚経だろうが、会長さんの指導で頑張りますよ~!
そんなこんなで、迎えたお盆。遠い昔に火山の噴火で海に沈んだ会長さんの故郷、アルタミラを供養するというコンセプトで私たちは毎日法要三昧。
キース君はサム君とジョミー君もセットの棚経でハードな日々が始まり、フィナーレは無事に書き上げた卒塔婆を供養して檀家さんに渡すという法要。
それだけやったら頭の中はお盆一色、終わった後には誰もが完全燃焼で白く燃え尽きていたと思います。雑念なんかは入る余地も無くて、煩悩の方も消し飛んで…。
「かみお~ん♪ 今年も海が真っ青ーっ!」
「いっぱい泳がなくっちゃねーっ!」
海だあ! と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」と「ぶるぅ」のコンビ。海の別荘ライフの始まり、荷物を置いたら揃ってビーチへ。
「わぁーい、バーベキュー!」
ちゃんと用意が出来てるよ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は大喜びで、教頭先生がキース君たちに「行くか」と声を掛けました。
「食材も用意してあるようだが…。やはり獲れ立てが一番だからな」
「そうですね。俺たちも何か獲って来ましょう」
狙いはアワビにサザエですね、とキース君が大きく頷き、男の子たちは獲物を求めて素潜りに。漁が済んだら、ビーチで始まるバーベキュー。ジュウジュウと焼けるサザエやアワビは、生きているのを網に乗っけるわけですが…。
「あっ、始まったね、残酷焼き!」
待ってましたあ! と覗きに来たのがビーチでイチャついていたバカップル。ソルジャー夫妻とも言いますけれど。
「ええ、獲れ立てですから美味しいですよ。どうぞ幾つでも」
お好きなだけ取って食べて下さい、と教頭先生が気前良く。…ん? 残酷焼き…?
「ありがとう! 好きなだけ食べていいんだね、どれも?」
「もちろんです。サザエでもアワビでも、ご遠慮なく」
どんどん獲って来ますから、と教頭先生は笑顔ですけど。…何か引っ掛かる気がします。残酷焼きって、それに教頭先生って…?
綺麗サッパリ、残酷焼きを忘れ果てていた私たち。ビーチでは全く思い出せなくて、何か引っ掛かるという程度。教頭先生とか、ジュウジュウ焼かれるアワビやサザエが。
別荘ライフの初日の昼間はビーチで終わって、夕食も大満足の味。それぞれお風呂に入った後には、広間に集まって賑やかに騒いでいたんですけど。
「そうそう、ハーレイ。…君に話があるんだけどね?」
こっちのハーレイ、とソルジャーが指差した教頭先生。キャプテンと一緒に部屋に籠ったんじゃなかったでしょうか、夕食の後は?
「あっ、ぼくかい? …話があるから出て来ただけで、済んだら失礼する予定」
夫婦の時間を楽しまなくちゃ、と艶やかな笑みが。
「それでね…。ハーレイ、君さえ良かったら…。昼間の残酷焼きの御礼をしようと思って」
「はあ…」
残酷焼きですか、と教頭先生は怪訝そうな顔。その瞬間に私たちは思い出しました。ソルジャーが立てていた迷惑企画を。
(((き、来た…)))
忘れていたヤツがやって来た、と顔を見合わせても今更どうにもなりません。ソルジャーは教頭先生に愛想よく微笑み掛けながら。
「君の残酷焼きってヤツはどうかな、いつもは半殺しだからねえ…。鼻血が出ちゃって」
失神してそれでおしまいだよね、と教頭先生にズイと近付くソルジャー。
「その鼻血をぼくのサイオンで止める! 失神しないで覗きが出来るよ?」
ぼくたちの熱い夫婦の時間を…、というお誘いが。
「覗くって所までだけど…。混ざって貰うとぼくも困るけど、その心配は無さそうだしね?」
今までの例から考えてみると…、とソルジャーは笑顔。
「普段だったら混ざってくれてもいいんだけどねえ、結婚記念日の旅行だからさ」
「分かっております。…が、本当に覗いてもいいのですか?」
残酷焼きの御礼と仰いましたが、と鼻息も荒い教頭先生。
「もちろんだよ! 心ゆくまで覗いて欲しいね、ぼくからのサービスなんだから!」
ちょっぴり残酷なんだけどね、というソルジャーの誘いに、教頭先生はフラフラと。
「ざ、残酷でもかまいません! …残酷焼きは好物でして!」
私が焼かれる方になっても満足です、と釣られてしまった教頭先生。ソルジャーは「決まりだね」と教頭先生の手を引いて去ってゆきました。「こっちだから」と。
教頭先生とソルジャーが消え失せた後の大広間。呆然と残された私たちは…。
「…どうしよう…。もう完全に忘れてたよ、アレ…」
ぼくとしたことが、と会長さんが頭を抱えて、シロエ君も。
「言い出したぼくも忘れていました、「忘れましょう」と言ったことまで全部…」
ヤバイですよ、と呻いた所で後の祭りというヤツです。でも…。
「待って下さい、望みはあります」
ぼくたちだけしかいませんから、とマツカ君が広間を見回しました。
「この状態だと、何が起こっても分かりませんよ。…部屋の外のことは」
「そうでした! マツカ先輩、冷静ですね」
「いえ、何度も来ている別荘ですから…。此処から出なければ大丈夫だと思います」
朝まで息を潜めていれば…、とマツカ君。
「食べ物も飲み物もありますし…。トイレも其処にありますからね」
「よし! 俺たちは今夜は此処だな」
布団が無いのは我慢しよう、とキース君が言えば、サム君が。
「そこは徹夜でいいんでねえの? 寝なくてもよ」
「いや、それは駄目だ。寝ないで海に入るのはマズイ」
「「「あー…」」」
溺れるリスクが上がるんだっけ、と理解しました。適当な所で横になるしかないようです。安全地帯にいたければ…、って、あれ?
「なんだよ、コレ!?」
シャボン玉かよ、とサム君がつついた透明な玉。それは途端にポンと弾けて…。
「かみお~ん♪ ぶるぅだあ!」
ぶるぅのサイオン! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が跳ねて、出現したのがサイオン中継で使われる画面。これって、もしかしなくても…。
「ぶ、ぶるぅって言いましたか?」
シロエ君の声が震えて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が「うんっ!」と元気良く。
「ぶるぅが中継してくれるんだって、残酷焼き!」
「「「うわー…」」」
そんな、と叫んでも消えない画面。ついでに部屋から逃げ出そうにも、外から鍵がかかったようです。絶体絶命、見るしかないっていうわけなんですね、教頭先生の残酷焼きを…?
中継画面の向こう側では、教頭先生が食い入るように覗いておられました。ソルジャー夫妻の部屋に置かれたベッドの上を。
ベッドの方はソルジャーの配慮か、モザイクがかかって見えません。声も聞こえて来ないんですけど、教頭先生は大興奮で。
「おおっ…! こ、これは…!」
凄い、と歓声、けれど押さえていらっしゃる鼻。…鼻血が出そうなのでしょう。通常ならば。
「…鼻血、出ないね?」
いつもだったら、こういう時にはブワッと鼻血、とジョミー君。
「…そういうタイミングには間違いないな…。残酷焼きだと言ってやがったが…」
どうなるんだ、とキース君にも読めない展開、会長さんだって。
「ハーレイがスケベなことは分かるけど…。鼻血さえ出なけりゃ、覗いていられるらしいけど…」
なんだか苦しそうでもある、と顎に手を。
「眉間の皺が深くなって来てるよ、限界が来ない分、キツイのかも…」
「それは大いに有り得ますねえ…」
精神的にはギリギリだとか、とシロエ君。
「お身体の方も、キツイ状態かもしれません。…なにしろ残酷焼きですから」
最終的には命が無いのが残酷焼きです、と肩をブルッと。
「死ぬことは無いと思いますけど、普段の鼻血より酷い結果になるんじゃあ…?」
「本殺しだって言ってたぜ、あいつ…」
ヤバイんでねえの、とサム君も恐れた教頭先生の末路。私たちの末路も怖いんだけど、と消えてくれない中継画面を見守るしかないまま、どのくらい経った頃でしょうか。
「「「えっ!?」」」
画面がいきなりブラックアウトで、そのままパッと消えちゃいました。中継、終わったんですか?
「…消えましたね?」
終わりでしょうか、とシロエ君が言い終わらない内に、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の泣き声が。
「うわぁぁぁん、ぶるぅが気絶しちゃったぁー!」
「「「気絶!?」」」
「ハーレイ、酷いよ、ショートするなら一人でやってーっ!!!」
ぶるぅを巻き込まないで欲しかったよう、と泣き叫んでいる「そるじゃぁ・ぶるぅ」。残酷焼きにされた教頭先生、限界突破で頭が爆発したみたいですね…?
次の日の朝、教頭先生は食堂においでになりませんでした。それに「ぶるぅ」も。ソルジャー夫妻はルームサービスですから、現れるわけが無いんですけど…。あれっ、ソルジャー?
「…おはよう。…昨夜はとんでもない目に遭っちゃって…」
ソルジャーの目の下にはクマが出来ていました。何があったと言うんでしょう?
「…残酷焼きだよ、あのせいで巻き添え食らったんだよ!」
こっちのハーレイが派手に爆発、とソルジャーは椅子に座って朝食の注文。キャプテンは…?
「…ハーレイなら意識不明だよ。こっちのハーレイとセットでね」
まさか頭が爆発したらああなるとは、とブツクサ、ブツクサ。…どうなったと?
「サイオン・バーストとは違うんだけどね、凄い波動が出ちゃってさ…」
ぶるぅも、ぼくのハーレイも意識を手放す羽目に…、と嘆くソルジャー。
「でもって、ハーレイは真っ最中だったものだから…。抜けなくってさ!」
「その先、禁止!」
言わなくていい、と会長さんが怒鳴りましたが、ソルジャーは文句を言い続けました。貫かれるのは好きだけれども、入ったままで抜けないというのは最悪だとか、最低だとか。
お蔭で腰がとても辛いとか、トイレも行けない有様だとか。
「「「…???」」」
「いいんだよ、君たちが分かってくれるとも思ってないから!」
残酷焼きは二度と御免だ、とソルジャーは懲りているようです。海産物でしかやりたくないと。
「…いったい何があったんでしょう?」
「俺が知るか! 無益な殺生をしようとするからだ!」
二度とやらないなら、仏様も許して下さるであろう、とキース君。何が起こったか謎だとはいえ、もうやらないならいいでしょう。教頭先生、記憶もすっかり飛んでしまったそうですし…。
残酷焼きって怖いんですねえ、ソルジャーまでが残酷な目に遭ってしまったみたいです。海産物でやるに限りますよね、やっぱりアワビやサザエですよね…!
残酷に焼いて・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
ソルジャーが思い付いた、教頭先生の残酷焼き。海産物の残酷焼きと違って迷惑な企画。
途中までは楽しめたらしいですけど、とても悲惨な結末に。懲りてくれればいいんですが…。
さて、シャングリラ学園、11月8日で番外編の連載開始から、14周年を迎えました。
「目覚めの日」を迎える14歳と同じ年月、書き続けて来たという勘定です。
昨年に予告していた通りに、今年限りで連載終了。更新は来月が最後になります。
湿っぽいお別れはしたくないので、来月も笑って読んで頂けると嬉しいですね。
次回は 「第3月曜」 12月19日の更新となります、よろしくです~!
※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
こちらでの場外編、11月といえば紅葉の季節。豪華旅行の話も出たのに…。
←シャングリラ学園生徒会室は、こちらからv
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
夏、真っ盛り。楽しい夏休みも真っ盛りです。今年もマツカ君の山の別荘ライフを楽しみ、お次は海の別荘ですけど。それまでの間に挟まるお盆が問題、キース君にとっては地獄な季節。暑さの方もさることながら、お盆と言えば…。
「くっそお…。あの親父めが!」
まただ、とキース君が唸る会長さんの家のリビング。アドス和尚がどうかしたんですか?
「この時期に「またか」で親父だったら、およそ想像がつくだろうが!」
「あー…。また卒塔婆かよ?」
押し付けられてしまったのかよ、とサム君が訊くと。
「それ以外の何があると言うんだ! ドカンと束で来やがったんだ!」
山の別荘から帰って来たら、俺の部屋の前に積んであった、とキース君。卒塔婆が五十本入りだとかいう梱包された包み、それが部屋の表の廊下に三つ。
「「「三つ!?」」」
五十かける三で百五十になるのでは、と聞き間違いかと思いましたが、それで正解。
「親父め、今年はやたらとのんびりしていやがると思ったら…。俺にノルマを!」
遊んで来たんだから頑張るがいい、と積み上げてあったそうです、卒塔婆。
「…キース先輩、こんな所で遊んでいてもいいんですか?」
百五十本ですよ、とシロエ君。
「急いで帰って書いた方がいいと思いますが…」
「俺のやる気が家出したんだ、今日はサボリだ!」
「でもですね…。お盆が近付いて来てますよ?」
間に合わないんじゃあ、と正論が。
「あそこのカレンダーを見て下さい。今日のツケは確実に反映される筈です」
「…俺も分かってはいるんだが!」
あんな親父がいる家で努力したくはない、とブツブツと。そう言えば、クーラー禁止でしたか?
「そうなんだ! 暑いし、セミはうるさいし…!」
卒塔婆プリンターなら楽なのに、と手抜き用な機械の名前までが。いっそポケットマネーで買えばいいかと思いますけど、家に置いたらバレるのかな…?
「なんだと? 卒塔婆プリンター?」
バレるに決まっているだろうが、と顔を顰めるキース君。
「あれはけっこう場所を取るんだ、卒塔婆自体がデカイからな!」
だから無理だ、と悔しそう。
「いつかは買いたいと思っていてもだ、親父が健在な間は無理だな」
「それじゃ、一生、無理なんじゃない?」
アドス和尚も年を取らないし、とジョミー君。
「キースも年を取らないけどさ…。アドス和尚もあのままなんだし」
「…キツイ真実を言わないでくれ…」
そして俺には百五十本の余計な卒塔婆が、と項垂れるしかないようです。
「一日のノルマを計算しながら書いて来たのに、ここでいきなり計算が…。もうリーチなのに!」
お盆は其処だ、と嘆くキース君に、会長さんが。
「サボるよりかは、前向きの方が良くないかい? 此処で書くとか」
「…なんだって?」
「ぼくの家だよ、和室はクーラーが入るからね」
あそこで書いたらどうだろうか、という提案。
「アドス和尚は君が出掛けたと知ってるんだし、卒塔婆のチェックはしないと思うよ」
此処へ運んで書いて行けば、と会長さん。
「心配だったら、運んだ分の卒塔婆はサイオニック・ドリームでダミーをね…」
減っていないように見せるくらいは朝飯前で、という申し出にキース君は飛び付きました。早速、会長さんが瞬間移動で卒塔婆や書くための道具を運んで…。
「かみお~ん♪ キース、お部屋の用意が出来たよ!」
「…有難い。クーラーだけでも違うからな」
「お茶とお菓子も置いてあるから、休憩しながら頑張ってね!」
行ってらっしゃぁ~い! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」に送り出されて、キース君は和室に向かいました。愛用の硯箱とかも運んで貰って、環境はバッチリらしいです。きっと元老寺よりはかどりますよね、頑張って~!
キース君は卒塔婆書きに集中、私たちは邪魔をしないようリビングの方でワイワイと。防音はしっかりしてありますから、大笑いしたって大丈夫です。その内にお昼御飯の時間で…。
「今日のお昼は夏野菜カレー! スパイシーだよ!」
暑い季節はスパイシー! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が用意してくれ、冷たいラッシーも出て来ました。キース君は少し遅れてダイニングの方にやって来て…。
「美味そうだな。…いただきます」
合掌して食べ始めたキース君に、サム君が。
「どんな具合だよ、はかどってんのか?」
「ああ、家で書くより早く書けるな。やはり環境は大切だ」
涼しいだけでもかなり違う、と嬉しそう。
「ブルーのお蔭で助かった。夕方までやれば、家で書く分の三日分はクリア出来るだろう」
「キース先輩、良かったですね! いっそこのまま徹夜とか!」
「いや、徹夜はしないと決めている。…卒塔婆書きは集中力が命だからな」
よほどリーチにならない限りは徹夜はしない方が効率的だ、という話。書き損じた時の手間が余計にかかってしまう分、徹夜でボケた頭で書いたら駄目だとか。
「そうなんですか…。じゃあ、夕方までが勝負ですね」
「そうなるな。飯を食ったらまた籠らせて貰う」
急いで食って卒塔婆書きだ、と食べ終えたキース君は和室に戻って行きました。お茶やお菓子を差し入れて貰って、書いて書きまくって、夕方になって…。
「どうだった、キース? 卒塔婆のノルマ」
ジョミー君の問いに、ニッと笑ったキース君。
「家で書く分の四日分は書いた。…なんとか光が見えて来たぞ」
今日は此処まででやめておこう、と肩をコキコキ。やっぱり肩が凝りますか?
「当たり前だろう、書き仕事だぞ?」
それも一発勝負なんだ、というのが卒塔婆。キース君、お疲れ様でした~!
晩御飯はキース君のためにスタミナを、と焼肉パーティー。マザー農場の美味しいお肉や野菜がたっぷり、みんなでジュウジュウ焼き始めたら…。
「こんばんはーっ!」
遊びに来たよ、と飛び込んで来た私服のソルジャー。夜に私服って、今日はこれから花火大会にでもお出掛けですか?
「えっ、花火? それは別の日で、今はデートの帰りだけれど?」
「「「デート?」」」
「ノルディとドライブに行って来てねえ、海辺で美味しい食事をね!」
海の幸! と焼肉の席に混ざったソルジャー、自分の肉を焼き始めながら。
「焼肉もいいけど、今日の食事は素敵だったよ! 鮮度が一番!」
「…お刺身なわけ?」
会長さんが訊くと、ソルジャーは「焼いたんだけど?」という返事。
「海老もアワビも生きてるんだよ、それをジュウジュウ!」
海老は飛び跳ねないようにシェフが押さえて…、とニコニコと。
「ついさっきまで生きてました、っていうのを美味しく食べて来たんだよ!」
「「「あー…」」」
あるな、と思ったそういう料理。ちょっと可哀相な気もしますけれど、お味の方は絶品です。ソルジャーは海辺のレストランで食べた料理を絶賛しつつ…。
「残酷焼きって言うんだってね、ノルディの話じゃ」
メニューにはそうは書かれていなかったけど、という話。残酷焼きって、可哀相だから?
「…そうじゃないかな、ぼくだってアルタミラでは焼かれちゃったしね!」
実験の一環で丸焼きだって、と怖い話が。…焼かれたんですか?
「うん。どのくらいの火で火傷するのか、試したかったらしくてねえ…」
「「「うわー…」」」
それ、食欲が失せちゃいますから、続きは後にしてくれませんか?
「駄目かな、残酷焼きの話は?」
「君の体験が生々しすぎるんだよ!」
焼肉が終わるまで待ちたまえ、と会長さん。せっかくのお肉、美味しく食べたいですからね…。
ソルジャーも交えての焼肉パーティー、終わった後は食後の紅茶やコーヒーが。キース君もエネルギーをチャージ出来たそうで、明日も元気に卒塔婆を書くんだそうです。
「此処で書かせて貰えると有難いんだが…。追加で来た分が片付くまでは」
いいだろうか、という質問に、会長さんは「どうぞ」と快諾。
「君の苦労は分かっているしね、たまには力になってあげるよ」
「感謝する! そうだ、家でも幾らか書いておきたいし…。道具を運んで貰えるか?」
「それはもちろん。ぶるぅ、キースの部屋に和室の硯とかをね…」
「オッケー、運んでおくんだね!」
はい、出来たぁ! とリビングから一歩も動きもしないで、瞬間移動させたみたいです。流石、と驚くタイプ・ブルーのサイオンですけど…。
「えーっと…。さっきの続きを話していいかな?」
残酷焼き、とソルジャーが。
「あの美味しさが忘れられなくて…。此処でも御馳走になりたいなあ、って!」
生きた海老やらアワビをジュウジュウ、と唇をペロリ。
「ぶるぅだったら美味しく焼けるに決まってるんだし、明日のお昼とか!」
「あのねえ…。君が言ったんだよ、残酷だからメニューにそうは書かないのかも、って」
あれは残酷焼きなんだけど、と会長さん。
「それを此処でって、今をいつだと思ってるんだい?」
「夏だけど?」
「ただの夏っていうわけじゃなくて、今はお盆の直前なんだよ!」
だからキースも卒塔婆がリーチ、と会長さんが指差す和室の方向。
「明日もキースは卒塔婆書きだし、そんな時期に残酷焼きはお断りだね!」
何処から見たって殺生だから、と会長さんはキッパリと。
「お盆が済むまで待ちたまえ。海の別荘なら、元から似たようなことをやってるんだし」
「そうですね。サザエもアワビも獲れ立てですし…」
それをそのままバーベキューです、とシロエ君。そっか、考えてみれば、あれも残酷焼きでした。海老だって焼いてることもあります、立派に残酷焼きですねえ…。
残酷焼きは海の別荘までお預けだから、というのが会長さんの論。少なくとも、会長さんの家でやる気は無いようです。
「ぼくの家では絶対、禁止! 食べたいんだったら、自分で行く!」
本家本元の残酷焼きに行くのもいいし、と会長さん。
「…本家本元? それって、もっと凄いのかい?」
残酷の程度が違うんだろうか、とソルジャーが訊いて、私たちだって興味津々。物凄く残酷な焼き方をするのが本家でしょうか?
「…まさか。それこそお客さんの食欲が失せるよ、君の体験談を聞くのと同じで!」
「ふうん? 其処だと、もっと美味しいとか?」
「どうだろう? あれは登録商標だから…」
「「「はあ?」」」
何が登録商標なんだ、と首を傾げた私たちですが。
「残酷焼きだよ、その名前で登録したのが本家本元!」
それが売りの旅館なんだから、と会長さんが教えてくれた大人の事情。海の幸が自慢の温泉旅館が「残酷焼き」を登録商標にしているそうで、他の所では使えないとか。
「だからブルーが食べた店でも、その名前になっていなかったわけ!」
「なんだ、そういうオチだったんだ…。残酷焼きって書いたら可哀相っていうんじゃなくて」
商売絡みだったのか、と少し残念そうなソルジャー。
「名前くらい、どうでもいいのにねえ…。それにあの名前がピッタリなのに…」
生きたままで焼くから美味しいのに、と残酷焼きに魅せられた模様。
「でも、今の時期は駄目なんだよね? ぶるぅに焼いて貰うのは?」
「お盆の季節は、本来、殺生禁止なんだよ!」
坊主でなくても慎むものだ、と会長さん。
「昔だったら、お盆の間は漁だって禁止だったんだから!」
「「「え?」」」
「漁船だよ! お盆は海に出なかったんだよ、何処の海でも!」
そういう時期が控えているのに残酷焼きなど言語道断、と会長さんは断りました。そうでなくてもキース君が卒塔婆書きをしている真っ最中です、会長さんの家。…そんな所で残酷焼きって、いくらなんでもあんまりですよね?
こうして終わった、残酷焼きの話。ソルジャーは「分かった、残酷焼きは海の別荘まで待つよ」と帰って行って、次の日も会長さんの家でキース君が卒塔婆書き。
「…キース、頑張るよなあ…」
全く出ても来ねえんだから、とサム君が感心するほど、キース君は和室に籠っています。お昼御飯を食べに出て来た以外は、もう本当に籠りっ放し。夕方になって、ようやく出て来て。
「…やっと終わった。まさか二日で書き上がるとは…」
百五十本も、と感慨深げなキース君。
「あの部屋を貸して貰えて良かった。…家でやってたら、まだまだだったな」
「それは良かった。後は元からのノルマだけだね」
会長さんの言葉に、キース君は「ああ」と頷いて。
「此処へ来て遊んでいたって、充分書ける。…そうだ、ジョミーも練習しておけよ」
棚経の本番が迫っているぞ、とニヤニヤと。
「当日になってから「出来ません」では済まないんだしな?」
「分かってるってば、ぼくは今年も口パクだよ!」
どうせお経は忘れるんだし、と最初からやる気ゼロらしいです。これも毎年の風景だよな、と眺めていたら…。
「こんばんはーっ!」
またもソルジャーがやって来ました、今日は私服じゃないですけれど。
「…何しに来たわけ?」
会長さんの迷惑そうな視線に、ソルジャーは。
「食事とお喋り! こっちの世界の食事は何でも美味しいから!」
「かみお~ん♪ 今日はパエリアとタコのスープと…。スタミナたっぷり!」
キースに栄養つけて貰わなくっちゃ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ダイニングのテーブルに魚介類ドッサリのパエリアに、タコが入ったガーリックスープ。これは栄養がつきそうです。ソルジャーも早速、頬張りながら。
「残酷焼きでなくても美味しいねえ…。地球の海の幸!」
「ぶるぅの腕がいいからだよ!」
それに仕入れも自分で行くし、と会長さん。料理上手な「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、新鮮な食材をあれこれ買いに行くのも好きですもんね!
またしてもソルジャーが出て来てしまった夕食の席。お喋りとも言っていましたけれども、早い話が暇なのでしょう。なんでもいいから暇つぶしだな、と思っていたら…。
「そうそう、昨日の残酷焼きのことなんだけど…」
「海の別荘まで待てと言ったよ、君も納得していただろう?」
お盆の前には無益な殺生は慎むものだ、と会長さん。
「こんな風にパエリアとかなら、生きたまま料理をするわけじゃないし…。間違えないように!」
「分かってるってば、そのくらいはね!」
ぼくの話は別件なのだ、と妙な台詞が。
「「「別件?」」」
「そう、別件! 残酷焼きの楽しみ方の!」
「どっちにしたって、お盆前だから!」
慎みたまえ、と会長さんが眉を吊り上げました。
「何を焼きたいのか知らないけどねえ、お盆が終わってからにしたまえ!」
「…うーん…。半殺しなのを本殺しにしようってコトなんだけど?」
「それを殺生と言うんだよ!」
本殺しだなんて…、と会長さんはソルジャーをギロリと睨み付けて。
「半殺しっていうのも大概だけどさ、まだ殺してはいないしね? それで、君は…」
何を半殺しにしたと言うのさ、と尋問モード。
「まさか人間じゃないだろうね? 君の敵は人類らしいから」
「…まるでハズレってこともないかな、人間ってトコは」
「なんだって!?」
本当に人間を半殺しなのか、と会長さんが驚き、私たちだってビックリ仰天。ソルジャー、人類軍とかいうヤツの兵士を捕えてシャングリラで拷問してるとか…?
「失礼な…! そういうのは人類の得意技だよ、ぼくたちミュウは控えめだよ!」
捕まえたとしても心理探査くらいなものだろうか、という返事。それじゃ、半殺しは…?
「人類じゃないし、ミュウでもない…かな? ミュウは登録商標かもだし」
「「「はあ?」」」
「ミュウって言葉! こっちの世界には無いんだろう?」
人類が登録商標にしているのかも、という笑えないジョーク。そもそも、ソルジャーの世界に登録商標なんかがあるのか疑問ですってば…。
登録商標の有無はともかく、私たちの世界に「ミュウ」という言葉はありません。ソルジャーの世界だと、サイオンを持っている人間はミュウということになるらしいですけど。
「そうなんだよねえ、ぼくの世界だとミュウなんだけど…。こっちだとねえ…」
言葉自体が無いものだから、とソルジャーの視線が私たちに。
「君たちもミュウの筈なんだけどね、ミュウじゃないんだよね?」
「…その筈だが?」
ミュウと呼ばれたことは無いな、とキース君が返して、会長さんが。
「ぼくも使ったことが無いねえ、その言葉は。…単に「仲間」と呼んでいるだけで」
「やっぱりねえ…。だから、ミュウでもないのかな、って」
ぼくが言ってる半殺しの人、ということは…。それって、私たちの世界の誰かをソルジャーが半殺しにしてるって意味?
「今はやっていないよ、現在進行形っていう意味ではね!」
でも何回も半殺しにしたし、と不穏な言葉が。いったい誰を半殺しに…?
「君たちもよく知ってる人だよ、こっちの世界のハーレイだけど?」
「「「ええっ!?」」」
まさかソルジャー、教頭先生を拉致して苛めていましたか?
「違う、違う! 君たちも共犯と言えば共犯なんだよ、特にブルーは!」
「…ぼく?」
どうしてぼくが共犯なんかに…、と会長さんはキョトンとした顔、私たちだって同じです。教頭先生を半殺しになんか、したことは無いと思いますけど…?
「…ううん、何度もやってるね。半殺しにするのはぼくだけれどさ、その片棒を!」
「「「片棒?」」」
「そのままだってば、こっちのハーレイを陥れるってヤツ!」
そのネタは主に大人の時間で…、とソルジャーの唇に浮かんだ笑み。
「ぼくがハーレイに御奉仕するとか、覗きにお誘いするだとか…。鼻血体質のハーレイを!」
そして毎回、半殺し! と言われてみれば、そうなるのかもしれません。会長さんの悪戯心とソルジャーの思惑が一致する度、教頭先生、鼻血で失神ですものねえ…?
「分かってくれた? それが半殺しというヤツで!」
ぼくが目指すのは本殺し、とソルジャーはクスクス笑っています。
「失神しちゃうと半殺しで終わってしまうから…。失神させずに本殺しを目指したいんだよ!」
その過程で残酷焼きになるのだ、とソルジャーはニヤリ。
「失神したくても出来ないハーレイ! 本殺しになるまでジュウジュウと!」
生きたまま炙られて残酷焼きだ、と言ってますけど、それって、どんなの…?
「えっ、簡単なことなんだけど? 要は鼻血を止めさえすればね!」
失神出来なくなるであろう、というソルジャーの読み。
「ムラムラしたまま最後まで! どう頑張っても天国にだけは行けないままで!」
「「「へ?」」」
「混ざりたくても混ざれないんだよ! 羨ましくて涎を垂らすだけ!」
それが残酷! とソルジャーはグッと拳を握りました。
「本当だったら、鼻血さえ出なければ乱入出来るんだろうけど…。ハーレイだからね!」
そんな根性があるわけがない、と完全に馬鹿にしているソルジャー。
「羨ましくても、混ざりたくても、最後の一歩が踏み出せない! 見ているだけ!」
ムラムラしながら炙られ続けて、とうとう力尽きるのだ、ということは…。教頭先生が見せられるものって、もしかして…?
「そうだけど? ズバリ、ぼくとハーレイの大人の時間!」
是非ともじっくり見て貰いたい、と赤い瞳が爛々と。
「ぼくがサイオンで細工するから! 鼻血で失神出来ないように!」
「ちょ、ちょっと…!」
会長さんが滔々と続くソルジャーの喋りを遮って。
「君のハーレイ、今はそれどころじゃないだろう! 海の別荘行きを控えて!」
特別休暇を取るんだから、と会長さん。
「その前にやるべき仕事が山積み、キースの卒塔婆書きと同じでリーチなんだと思うけど!」
「…まあね、ご無沙汰気味ではあるよ」
だからノルディとデートに行った、と頷くソルジャー。
「でもね、その分、休暇に入れば凄いから! パワフルだから!」
海の別荘では毎年そうだ、と力説してます。それは間違いないですけどねえ、部屋に籠って食事までルームサービスだとか…。
毎年、毎年、ソルジャー夫妻に振り回されるのが海の別荘。実害が無い年も、日程だけはソルジャーが決めてしまいます。結婚した思い出の場所というわけで、日程はいつもソルジャー夫妻の結婚記念日に合わせられるオチ。
ご他聞に漏れず、今年もそう。…その別荘で教頭先生を残酷焼きにしたいんですか?
「…だって、ブルーも言ったじゃないか! 残酷焼きは海の別荘まで待てと!」
それで待とうと考えていたら残酷焼きを思い付いた、と言うソルジャー。
「普通の残酷焼きは元からやっているしね、もっと楽しく、残酷に!」
「ぼくは普通ので充分だから!」
サザエやアワビで間に合っている、と会長さん。
「伊勢海老を焼いてる年だってあるし、残酷焼きはそれで充分だよ!」
「でもねえ…。せっかく新しい言葉を覚えたんだし、焼く物の方も新鮮にしたい!」
ハーレイの残酷焼きがいい、とソルジャーの方も譲りません。
「あの大物をジュウジュウ焼きたい! ぼくとハーレイとの夫婦の時間を見せ付けて!」
お盆は終わっているんだから、とソルジャーは揚げ足を取りにかかりました。
「お盆がまだなら、無益な殺生と言われちゃうかもしれないけれど…。終わってるしね?」
海の別荘に行く頃には、と重箱の隅をつつくソルジャー。
「それに本殺しと言いはしてもね、本当に殺すわけでもないし…」
「迷惑だから!」
手伝わされるのは御免だから、と会長さんが叩いたテーブル。
「君は楽しいかもしれないけどねえ、ぼくたちは楽しいどころじゃないから!」
「そうですよ! いつも酷い目に遭うだけです!」
ぼくも反対です、とシロエ君。
「残酷焼きはバーベキューだけで充分ですよ!」
「まったくだ。…いくらお盆が終わっていてもだ、殺生は慎むのが筋だ」
それが坊主というもので…、とキース君が繰る左手首の数珠レット。
「ブルーはもちろん、サムもジョミーも僧籍なんだし…。あんたを手伝うことは出来んな」
「…手伝いは別に要らないんだけど?」
素人さんには難しいから、とソルジャーはフウと溜息を。えーっと、それって、ソルジャーが勝手に残酷焼きをやるんですかね、私たちとは無関係に?
巻き込まれるのがお約束のような、ソルジャーが立てる迷惑企画。教頭先生絡みの場合は、巻き込まれ率は百パーセントと言ってもいいと思います。
それだけに残酷焼きな企画も巻き添えを食らうと思ってましたが、「素人さんには難しい」上に、「手伝いは別に要らない」ってことは、ソルジャーの一人企画でしょうか?
「一人ってわけでもないけれど…。ぼくのハーレイは欠かせないしね」
夫婦の時間を披露するんだし、と言うソルジャー。
「それと、ぶるぅの協力が必須! ぼくの世界の方のぶるぅの!」
「「「ぶるぅ!?」」」
あの悪戯小僧の大食漢か、と思わず絶句。「ぶるぅ」の協力で何をすると?
「もちろん、覗きのお手伝いをして貰うんだよ! こっちのハーレイを御案内!」
最高のスポットで覗けるように、とニッコリと。
「鼻血を止める細工の方もさ、ぶるぅがいればより完璧に!」
ぼくがウッカリ忘れちゃってもフォローは完璧、と自信たっぷり。
「そんな感じで残酷焼きだし、君たちは何もしなくてもいいと思うんだけど?」
高みの見物コースでどうぞ、とパチンとウインクしたソルジャー。
「「「…高み?」」」
「そうだよ、被害の無い場所で! ゆっくり見物!」
中継の方も「ぶるぅ」にお任せ、と聞かされて震え上がった私たち。それってギャラリーをしろって意味になってませんか…?
「それで合ってるけど? 見なけりゃ損だと思わないかい?」
「「「思いません!!!」」」
見なくていいです、と絶叫したのに、ソルジャーは聞いていませんでした。
「うんうん、やっぱり見たいよねえ? こっちのハーレイの残酷焼き!」
海の別荘では絶対コレ! と決めてしまったらしいソルジャー。私たちの運命はどうなるんでしょうか、それに教頭先生は…?
海の別荘では教頭先生の残酷焼きだ、と決めたソルジャー。最初からそういう魂胆だったに決まっています。溜息をつこうが、文句を言おうが、まるで取り合う気配無し。夕食が済んだ後にも居座り、残酷焼きを喋り倒して帰って行って…。
「…おい、俺たちはどうなるんだ?」
このまま行ったら確実に後が無さそうだが、と途方に暮れているキース君。お盆が済んだら海の別荘、其処で待つのが教頭先生の残酷焼きで。
「…忘れるべきじゃないでしょうか?」
覚えていたって、いいことは何もありません、とシロエ君が真顔で言い切りました。
「どうなるんだろう、と心配し過ぎて心の病になるのがオチです!」
「確かにそうかもしれねえなあ…。人生、笑ってなんぼだしよ」
忘れた方が良さそうだぜ、とサム君も。
「俺やキースはお盆もあるしよ、そっちに集中した方がいいぜ」
「…ぼくも今年は真面目に棚経やろうかなあ…」
そしたら忘れられそうだし、とジョミー君もお盆に逃げるようです。
「お盆はいいかもしれないわねえ…。私も今年は何かしようかしら?」
お盆の行事、というスウェナちゃんの言葉に、会長さんが。
「やりたいんだったら、ぼくの家でやってもいいけれど? …それっぽいのを」
迎え火から始めてフルコースで、という案にスウェナちゃんが縋り付きました。シロエ君もマツカ君も食い付きましたし、私だって。
「会長、よろしくお願いします!」
今年のお盆は頑張ります! とシロエ君が決意表明、抹香臭い日々が始まるようです。でもでも、ソルジャーが立てた迷惑企画を忘れられるのなら、お盆の行事も大歓迎。
迎え火だろうが、棚経だろうが、会長さんの指導で頑張りますよ~!
そんなこんなで、迎えたお盆。遠い昔に火山の噴火で海に沈んだ会長さんの故郷、アルタミラを供養するというコンセプトで私たちは毎日法要三昧。
キース君はサム君とジョミー君もセットの棚経でハードな日々が始まり、フィナーレは無事に書き上げた卒塔婆を供養して檀家さんに渡すという法要。
それだけやったら頭の中はお盆一色、終わった後には誰もが完全燃焼で白く燃え尽きていたと思います。雑念なんかは入る余地も無くて、煩悩の方も消し飛んで…。
「かみお~ん♪ 今年も海が真っ青ーっ!」
「いっぱい泳がなくっちゃねーっ!」
海だあ! と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」と「ぶるぅ」のコンビ。海の別荘ライフの始まり、荷物を置いたら揃ってビーチへ。
「わぁーい、バーベキュー!」
ちゃんと用意が出来てるよ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は大喜びで、教頭先生がキース君たちに「行くか」と声を掛けました。
「食材も用意してあるようだが…。やはり獲れ立てが一番だからな」
「そうですね。俺たちも何か獲って来ましょう」
狙いはアワビにサザエですね、とキース君が大きく頷き、男の子たちは獲物を求めて素潜りに。漁が済んだら、ビーチで始まるバーベキュー。ジュウジュウと焼けるサザエやアワビは、生きているのを網に乗っけるわけですが…。
「あっ、始まったね、残酷焼き!」
待ってましたあ! と覗きに来たのがビーチでイチャついていたバカップル。ソルジャー夫妻とも言いますけれど。
「ええ、獲れ立てですから美味しいですよ。どうぞ幾つでも」
お好きなだけ取って食べて下さい、と教頭先生が気前良く。…ん? 残酷焼き…?
「ありがとう! 好きなだけ食べていいんだね、どれも?」
「もちろんです。サザエでもアワビでも、ご遠慮なく」
どんどん獲って来ますから、と教頭先生は笑顔ですけど。…何か引っ掛かる気がします。残酷焼きって、それに教頭先生って…?
綺麗サッパリ、残酷焼きを忘れ果てていた私たち。ビーチでは全く思い出せなくて、何か引っ掛かるという程度。教頭先生とか、ジュウジュウ焼かれるアワビやサザエが。
別荘ライフの初日の昼間はビーチで終わって、夕食も大満足の味。それぞれお風呂に入った後には、広間に集まって賑やかに騒いでいたんですけど。
「そうそう、ハーレイ。…君に話があるんだけどね?」
こっちのハーレイ、とソルジャーが指差した教頭先生。キャプテンと一緒に部屋に籠ったんじゃなかったでしょうか、夕食の後は?
「あっ、ぼくかい? …話があるから出て来ただけで、済んだら失礼する予定」
夫婦の時間を楽しまなくちゃ、と艶やかな笑みが。
「それでね…。ハーレイ、君さえ良かったら…。昼間の残酷焼きの御礼をしようと思って」
「はあ…」
残酷焼きですか、と教頭先生は怪訝そうな顔。その瞬間に私たちは思い出しました。ソルジャーが立てていた迷惑企画を。
(((き、来た…)))
忘れていたヤツがやって来た、と顔を見合わせても今更どうにもなりません。ソルジャーは教頭先生に愛想よく微笑み掛けながら。
「君の残酷焼きってヤツはどうかな、いつもは半殺しだからねえ…。鼻血が出ちゃって」
失神してそれでおしまいだよね、と教頭先生にズイと近付くソルジャー。
「その鼻血をぼくのサイオンで止める! 失神しないで覗きが出来るよ?」
ぼくたちの熱い夫婦の時間を…、というお誘いが。
「覗くって所までだけど…。混ざって貰うとぼくも困るけど、その心配は無さそうだしね?」
今までの例から考えてみると…、とソルジャーは笑顔。
「普段だったら混ざってくれてもいいんだけどねえ、結婚記念日の旅行だからさ」
「分かっております。…が、本当に覗いてもいいのですか?」
残酷焼きの御礼と仰いましたが、と鼻息も荒い教頭先生。
「もちろんだよ! 心ゆくまで覗いて欲しいね、ぼくからのサービスなんだから!」
ちょっぴり残酷なんだけどね、というソルジャーの誘いに、教頭先生はフラフラと。
「ざ、残酷でもかまいません! …残酷焼きは好物でして!」
私が焼かれる方になっても満足です、と釣られてしまった教頭先生。ソルジャーは「決まりだね」と教頭先生の手を引いて去ってゆきました。「こっちだから」と。
教頭先生とソルジャーが消え失せた後の大広間。呆然と残された私たちは…。
「…どうしよう…。もう完全に忘れてたよ、アレ…」
ぼくとしたことが、と会長さんが頭を抱えて、シロエ君も。
「言い出したぼくも忘れていました、「忘れましょう」と言ったことまで全部…」
ヤバイですよ、と呻いた所で後の祭りというヤツです。でも…。
「待って下さい、望みはあります」
ぼくたちだけしかいませんから、とマツカ君が広間を見回しました。
「この状態だと、何が起こっても分かりませんよ。…部屋の外のことは」
「そうでした! マツカ先輩、冷静ですね」
「いえ、何度も来ている別荘ですから…。此処から出なければ大丈夫だと思います」
朝まで息を潜めていれば…、とマツカ君。
「食べ物も飲み物もありますし…。トイレも其処にありますからね」
「よし! 俺たちは今夜は此処だな」
布団が無いのは我慢しよう、とキース君が言えば、サム君が。
「そこは徹夜でいいんでねえの? 寝なくてもよ」
「いや、それは駄目だ。寝ないで海に入るのはマズイ」
「「「あー…」」」
溺れるリスクが上がるんだっけ、と理解しました。適当な所で横になるしかないようです。安全地帯にいたければ…、って、あれ?
「なんだよ、コレ!?」
シャボン玉かよ、とサム君がつついた透明な玉。それは途端にポンと弾けて…。
「かみお~ん♪ ぶるぅだあ!」
ぶるぅのサイオン! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が跳ねて、出現したのがサイオン中継で使われる画面。これって、もしかしなくても…。
「ぶ、ぶるぅって言いましたか?」
シロエ君の声が震えて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が「うんっ!」と元気良く。
「ぶるぅが中継してくれるんだって、残酷焼き!」
「「「うわー…」」」
そんな、と叫んでも消えない画面。ついでに部屋から逃げ出そうにも、外から鍵がかかったようです。絶体絶命、見るしかないっていうわけなんですね、教頭先生の残酷焼きを…?
中継画面の向こう側では、教頭先生が食い入るように覗いておられました。ソルジャー夫妻の部屋に置かれたベッドの上を。
ベッドの方はソルジャーの配慮か、モザイクがかかって見えません。声も聞こえて来ないんですけど、教頭先生は大興奮で。
「おおっ…! こ、これは…!」
凄い、と歓声、けれど押さえていらっしゃる鼻。…鼻血が出そうなのでしょう。通常ならば。
「…鼻血、出ないね?」
いつもだったら、こういう時にはブワッと鼻血、とジョミー君。
「…そういうタイミングには間違いないな…。残酷焼きだと言ってやがったが…」
どうなるんだ、とキース君にも読めない展開、会長さんだって。
「ハーレイがスケベなことは分かるけど…。鼻血さえ出なけりゃ、覗いていられるらしいけど…」
なんだか苦しそうでもある、と顎に手を。
「眉間の皺が深くなって来てるよ、限界が来ない分、キツイのかも…」
「それは大いに有り得ますねえ…」
精神的にはギリギリだとか、とシロエ君。
「お身体の方も、キツイ状態かもしれません。…なにしろ残酷焼きですから」
最終的には命が無いのが残酷焼きです、と肩をブルッと。
「死ぬことは無いと思いますけど、普段の鼻血より酷い結果になるんじゃあ…?」
「本殺しだって言ってたぜ、あいつ…」
ヤバイんでねえの、とサム君も恐れた教頭先生の末路。私たちの末路も怖いんだけど、と消えてくれない中継画面を見守るしかないまま、どのくらい経った頃でしょうか。
「「「えっ!?」」」
画面がいきなりブラックアウトで、そのままパッと消えちゃいました。中継、終わったんですか?
「…消えましたね?」
終わりでしょうか、とシロエ君が言い終わらない内に、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の泣き声が。
「うわぁぁぁん、ぶるぅが気絶しちゃったぁー!」
「「「気絶!?」」」
「ハーレイ、酷いよ、ショートするなら一人でやってーっ!!!」
ぶるぅを巻き込まないで欲しかったよう、と泣き叫んでいる「そるじゃぁ・ぶるぅ」。残酷焼きにされた教頭先生、限界突破で頭が爆発したみたいですね…?
次の日の朝、教頭先生は食堂においでになりませんでした。それに「ぶるぅ」も。ソルジャー夫妻はルームサービスですから、現れるわけが無いんですけど…。あれっ、ソルジャー?
「…おはよう。…昨夜はとんでもない目に遭っちゃって…」
ソルジャーの目の下にはクマが出来ていました。何があったと言うんでしょう?
「…残酷焼きだよ、あのせいで巻き添え食らったんだよ!」
こっちのハーレイが派手に爆発、とソルジャーは椅子に座って朝食の注文。キャプテンは…?
「…ハーレイなら意識不明だよ。こっちのハーレイとセットでね」
まさか頭が爆発したらああなるとは、とブツクサ、ブツクサ。…どうなったと?
「サイオン・バーストとは違うんだけどね、凄い波動が出ちゃってさ…」
ぶるぅも、ぼくのハーレイも意識を手放す羽目に…、と嘆くソルジャー。
「でもって、ハーレイは真っ最中だったものだから…。抜けなくってさ!」
「その先、禁止!」
言わなくていい、と会長さんが怒鳴りましたが、ソルジャーは文句を言い続けました。貫かれるのは好きだけれども、入ったままで抜けないというのは最悪だとか、最低だとか。
お蔭で腰がとても辛いとか、トイレも行けない有様だとか。
「「「…???」」」
「いいんだよ、君たちが分かってくれるとも思ってないから!」
残酷焼きは二度と御免だ、とソルジャーは懲りているようです。海産物でしかやりたくないと。
「…いったい何があったんでしょう?」
「俺が知るか! 無益な殺生をしようとするからだ!」
二度とやらないなら、仏様も許して下さるであろう、とキース君。何が起こったか謎だとはいえ、もうやらないならいいでしょう。教頭先生、記憶もすっかり飛んでしまったそうですし…。
残酷焼きって怖いんですねえ、ソルジャーまでが残酷な目に遭ってしまったみたいです。海産物でやるに限りますよね、やっぱりアワビやサザエですよね…!
残酷に焼いて・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
ソルジャーが思い付いた、教頭先生の残酷焼き。海産物の残酷焼きと違って迷惑な企画。
途中までは楽しめたらしいですけど、とても悲惨な結末に。懲りてくれればいいんですが…。
さて、シャングリラ学園、11月8日で番外編の連載開始から、14周年を迎えました。
「目覚めの日」を迎える14歳と同じ年月、書き続けて来たという勘定です。
昨年に予告していた通りに、今年限りで連載終了。更新は来月が最後になります。
湿っぽいお別れはしたくないので、来月も笑って読んで頂けると嬉しいですね。
次回は 「第3月曜」 12月19日の更新となります、よろしくです~!
※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
こちらでの場外編、11月といえば紅葉の季節。豪華旅行の話も出たのに…。
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