忍者ブログ

シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

言えない悩み・第2話

会長さんの悪戯心で無駄毛を剃られた教頭先生。ハイレグ水着を身に着けるのに必要な部分だけ剃れば充分なのに、まるで無関係な所の毛までを剃り落とされたらしいのです。会長さん曰く、ツーフィンガー。指二本分だけの幅を残して。
「それって意味があるのかい? ぼくにはサッパリ分からないけど」
そう言ったのは時空を越えて現れたばかりのソルジャーでした。どの辺りから聞いていたのか分かりませんが、私たちの世界を覗き見するのが好きなのです。おまけにソルジャーはトラブルメーカー、よりにもよってこんなタイミングで出てくるなんて最悪としか…。
「ツーフィンガーの意味は分かるんだ。指の幅二本分だろう?」
このくらいかな、と指を揃えて出すソルジャー。
「それとも剃られる人の体格に合わせて決まるわけ? だったらもう少し太めになるね。ハーレイの手は大きいからさ」
「…別にそういうわけでもないけど」
会長さんがフウと溜息。来てしまったものは仕方ない、と腹を括ったみたいです。ソルジャーの方は興味津々、ツーフィンガーについて一通りの話を聞き出すまでは帰るつもりも無さそうでした。そんなソルジャーに会長さんは。
「指二本分は目分量ってトコじゃないかな、ぼくが見せられた参考図では長方形が描いてあっただけだから。もちろん写真なんかじゃない。ただのイラスト」
「イラストだって? 写真の方が良さそうなのに」
そっちの方が仕上がりをイメージしやすい、とソルジャーは指摘したのですけど。
「写真で出すのはアウトだってば! そういうサロンもあるかもだけど、真っ当なサロンは違うと思う。…君の世界はどうなってるのか知らないけどね、こっちの世界じゃそういう部分を撮った写真は表に出せない」
「…ふうん? そうか、教育上よろしくないのか…」
「大人相手でも一応禁止! 芸術以外はダメじゃないかと」
「なんだか面倒な世界だねえ…。そんな世界でツーフィンガーにする意味なんか何処にあるんだい? ますますもって分からないよ。見せられないんじゃ意味無いし!」
だってそういうものだろう、とソルジャーはソファに腰掛け、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が差し出す紅茶とタルトのお皿を受け取りながら。
「わざわざプロの手を借りて整えるんなら、それなりにお金もかかるじゃないか。披露しないでどうすると? こんなに綺麗にしてますよ、って見せびらかすのが普通じゃないかと…。ああ、もしかして温泉とかかな? 大浴場なら人も多いし、そういう所に行くためとか?」
「大浴場でも温泉場でもないってば! あえて言うなら身だしなみ!」
会長さんが繰り出した言葉に私たちはビックリ仰天。教頭先生が合宿でお風呂に入るべきか否か悩むようなヤツの、いったい何処が身だしなみだと? それが本当なら教頭先生の悩みは不要、育毛剤を探さなくてもいいわけで…。会長さん、教頭先生に言いに行ってあげて下さいよ~! …しかし、会長さんは私たちの方をチラリと眺めて。
「ああ、勘違いさせちゃったね。この国ではまだメジャーじゃないから、変な目で見られてしまうかと…。外国で流行っているとは言っても、どのレベルまで普及してるかは知らないんだ。だけどブルーがどんな意味かと訊いてくるから、身だしなみだと答えただけ!」
「…それってホントに身だしなみの意味があるのかい? 変な目で見られてしまうんだったら、やらない方が良さそうだけど?」
ますますもって意味不明、とソルジャーは自分の指を眺めて。
「この幅に何か深い意味でも隠されてるとか? なにしろ場所が場所だしねえ…。シンボル的な何かとか?」
「深読みしなくていいってば! ワンフィンガーもあるって言ったろ、単なる処理法の問題なんだよ!」
「………ワンフィンガー?」
それって何さ、とソルジャーが首を傾げました。もしやソルジャー、途中からしか話を聞いていませんでしたか? 会長さんが慌てて口を押さえています。ツーフィンガーに加えてワンフィンガー。ソルジャーの好奇心をくすぐる単語を出してしまうとは、思い切りドツボか特大の墓穴…?

「ねえ、黙っていたんじゃ分からないけど? ワンフィンガーって、どんなヤツだい?」
ソルジャーは気になって仕方ないという顔をしています。会長さんの心を読めば簡単に分かると思うのですけど、それをしないのがソルジャーの流儀。本当に興味をそそられた時は、相手が答えを口にするまで手を変え品を変えして追及するのが大好きで…。
「要は処理法なんだよね? ツーフィンガーというのは分かった。それとセットでワンフィンガーってヤツもある…、と。すると問題は毛の残し方?」
「下品な物言いはやめたまえ!」
柳眉を吊り上げる会長さんに、ソルジャーはフンと鼻で笑って。
「ぼくは毛の残し方としか言っていないよ? あそこの毛だとは一言も口にした覚えはないね」
「今、言った!」
「細かいことは言いっこなし! で、やっぱり残し方が問題になるってわけ? ツーフィンガーが指の幅二本分なら、ワンフィンガーは一本分?」
「………。分かってるんなら聞かなくっても…」
会長さんは額を押さえましたが、ソルジャーは全く気にしない風で。
「なるほど、ワンフィンガーは指一本ねえ…。そんな幅のを未練たらしく残しておくなんて、ますます意味が分からないなぁ。全部スッパリ剃ればいいのに」
「勿論そういう人だっているさ。身だしなみだと説明しただろ? ツーフィンガーもワンフィンガーも、手をかけてます、ってアピールなんだ。無駄毛の手入れをしていることが重要なんだよ」
「ふうん…。だったらハーレイも気にしなくってもいいのにねえ? ちゃんと手入れをしています、って証拠なんだし、わざわざ育毛しなくたってさ。ツーフィンガーとやらに整えたんだし」
堂々とお風呂に入ればいいんだ、と言うソルジャーは脱毛と男の世界な柔道部とが相容れないことを理解できないらしいです。会長さんやキース君たちも何と説明すればいいのか困っていますし、これは世界が異なるゆえの認識の差として流すべきかと思った所へ。
「ああ、ちょっと分かってきた気がするよ。セックスアピールが重要なんだね」
「「「は?」」」
ソルジャーが口にした妙な単語に、今度は私たちが『?』マークを飛ばす番。セックスアピールって、何処をどうすればそうなると? そもそもセックスアピールの意味自体、万年十八歳未満お断りの身にはイマイチ掴めていないのですが…。けれどソルジャーは勝手に一人で納得中。
「こっちの世界のハーレイを基準に考えようとしたのが失敗だった。ぼくのハーレイに置き換えてみれば良かったんだ。…もしもハーレイがツーフィンガーとやらになっちゃってたら興醒めというか、悲しいというか…。百年の恋も冷めそうだよね」
「「「???」」」
「だからさ、ぼくがハーレイとベッドインしようとしたとするだろ? 期待に満ちて脱がせてみたらツーフィンガーって最低だよ! ワイルドさの欠片も無いじゃないか」
男はやっぱり獣でないと…、とソルジャーは主張し始めましたが、そこで漸く会長さんが我に返って。
「ストーップ! 理解したらしいのは有難いけど、その辺でやめてくれないかな? この子たちはそういう話は理解出来ないし、余計な知識も増やしたくない。…とにかく、ハーレイは悩んでいるんだよ。それが分かれば充分だろう」
「うーん…。男らしさをアピールするには毛が無いとダメで、だけど現状はツーフィンガーで…。そうだ、それって見た目はどんな感じになるのかな? こう、漠然と想像するのと、実際に見るのとは違うとか?」
ソルジャーの関心はツーフィンガーから教頭先生の実情の方へと移ったようです。なんだか嫌な予感がするのは私だけ? ソルジャーは教頭室のある方向に視線を向けていますけど…。
「…幅は想像したとおりかな」
このくらい、とソルジャーが指を二本並べてみせました。
「だけど覗き見では幅くらいしか分からないね。ハーレイがトイレにでも行ってくれればいいんだけれど」
「トイレ?」
怪訝そうな会長さんに、ソルジャーは。
「トイレに行けばズボンを下ろしてくれるかなぁ…って。あ、紅白縞が残っているから見えないか…」
「いったい何が言いたいのさ?」
「君も覗き見したんだろ? ズボンの上から見てるだけだと実態がよく分からない。脱いだ時にはどんな具合か、やっぱり気になってしまうじゃないか!」
なんと言ってもツーフィンガー、とソルジャーは二本の指をビシッと立てて。
「ハーレイがお風呂に入るのを躊躇うという毛の生え方なんだよ? この目で見ないと一生の損! それに現状を把握できたら全部剃るべきか育毛すべきか、はたまたお風呂に入るべきか否か、適切な助言をしてあげられるかもしれないし!」
ここは一発、見学ツアー! とブチ上げたソルジャーを止められる人はいませんでした。いえ、止めるだけ無駄と誰もが諦めの境地というのが正しいのかもしれません。…教頭先生には気の毒ですけど、ソルジャーが教頭室まで出掛けて行ったら覚悟を決めてズボンを脱いで下さいです…。

ツーフィンガーとやらを見物する気満々のソルジャーは教頭室の様子を窺い、教頭先生が書類と格闘していることを確認してから。
「よし、仕事は暫く片付きそうにないね。出掛けて行っても逃亡の心配は無さそうだ」
「…逃がすつもりも無いくせに」
会長さんが大きな溜息をつき、ソルジャーにヒラヒラと右手を振って。
「さっさと見学とやらに行ってきたまえ、ハーレイが素直に要求を飲むかどうかは知らないけどね」
「聞き入れられなきゃ脱がすまでさ。じゃ、そういうことで…。とりあえず、ぼくはシールドに入って行った方がいいんだろうねえ?」
まだ生徒たちが残っているし、と言うソルジャーは校内の様子もチェック済み。紫のマントに白と銀なソルジャーの正装は会長さんの仮装衣装として披露されたこともありましたけど、その格好で出歩かれるよりはシールドの中の方が無難です。ソルジャーの目的が目的だけに、会長さんは制服を貸す気も無いのでしょうし…。
「是非シールドでお願いするよ」
案の定、会長さんは素っ気なく答えて生徒会室に繋がる壁を指差すと。
「ぼくの制服は貸さないからね! シールドに入ってコッソリ出掛けて、用が済んだら直帰だよ。此処には戻ってこなくていいから」
「え?」
キョトンと赤い瞳を見開くソルジャー。
「此処に戻らないって、どうする気だい? この後に何か予定でもあった?」
「は?」
今度は会長さんが目を丸くする番でした。
「どうするも何も、別に予定は無いけれど? でも君を交えてのティータイムを続けるつもりは無いね」
「河岸を変えると言うのかい? まあ、せっかくのツーフィンガーだし、それを肴に居酒屋とかで盛り上がるのも楽しそうかな」
「ちょ、ちょっと…」
会長さんがソルジャーの話を遮り、不安そうな表情で。
「もしかして、見学ツアーは君が単独で行くんじゃないとか? ぼくたちも一緒に参加しろと?」
「決まってるじゃないか、ツアーだよ?」
お一人様で行ってどうする、というソルジャーの返事にウッと仰け反る私たち。教頭室まで一緒に行けと? でもって教頭先生のツーフィンガーとやらを拝観しろと? そ、そんなことを言われましても…。教頭先生が恥ずかしがるとかそういう以前に、ツーフィンガーな部分がマズイんですけど!
「…ん? みんな、青い顔してどうしたんだい? ああ、ハーレイのアソコのことなら女子限定でモザイクをかけてあげるから! 他の子たちは問題無いだろ、男同士だしね」
柔道部なんかは合宿に行けば裸の付き合い、とソルジャーはクスクス笑っています。そりゃそうなのかもしれませんけど、モザイクだけで万事解決というわけでは…。教頭先生は合宿のお風呂で悩んでしまうほどツーフィンガーが嫌なのですし、見学ツアーを組んで訪問されたら大人しくズボンを脱ぐどころでは…。
「いいんだってば、そのツーフィンガーにどう対処すべきか助言するためのツアーだよ? ぐずぐずしてるとハーレイの仕事が終わってしまうし、急がないと」
さあ行くよ、とソルジャーが会長さんの腕をガシッと掴んで。
「ぼくはシールドに入って行くから、君が嫌なら強制連行! 傍目には君が一人で歩いているようにしか見えないよねえ? 抵抗してると大いに目立つよ。そこの子たちも行列を組んでお供してるし」
「わ、分かったよ! 自分の足で歩いて行けばいいんだろう!」
会長さんはソルジャーの手を振り払い、私たちの方へと振り向くと。
「…ごめん。ブルーは一旦こうと決めたら絶対引かないタイプだってこと、君たちだって知ってるだろう? ぼくがハーレイに悪戯したせいで巻き込んじゃって申し訳ないけど、見学ツアーに来てくれるかな?」
「………。俺たちに選択権は無いと思うが」
どう考えても逃げられん、とキース君が早々に白旗を。ソルジャーは満足そうに微笑み、シールドを発動させました。ツーフィンガーの見学ツアー、教頭室を目指して出発です~。

重い足取りで中庭を抜け、本館に入ってお馴染みの重厚な扉の前に着くと会長さんが扉をノック。何も知らない教頭先生が「どうぞ」と返事しています。声の調子が弾んでいるのは会長さんの思わぬ訪問に心躍らせているからでしょう。
「…失礼します」
会長さんが扉を開けると、教頭先生は満面の笑み。後ろにゾロゾロ連なっている私たちのことも大して気にならないみたい。
「よく来てくれたな。やっぱり今日はラッキーデーだ」
嬉しそうに言う教頭先生の姿に、会長さんの言葉が頭の中に蘇りました。会長さんと朝の挨拶を交わせた時は教頭先生にとってラッキーデー。どんな悩みを抱えていたって幸せ一杯というヤツです。でも本当に今日はラッキーデーなんでしょうか? 私たちが微妙な気持ちになった所でソルジャーがパッとシールドを解いて。
「こんにちは。…朝にブルーと挨拶出来たらラッキーデーだと言うのかい? だったら、ぼくは? 放課後にぼくと挨拶出来たらどうなるわけ?」
「こ、これは…。ようこそいらっしゃいました。おいでになることに気が付かなくてすみません」
慌てて謝る教頭先生に、ソルジャーは。
「そんなに謝ってくれなくても…。気付かないのは無理ないよ。だけど悪いと思ってるんなら、お願いを聞いて欲しいんだけど」
「お願い…ですか? お小遣いがお入り用だとか?」
「まさか。そっちはノルディで間に合っている。…君に見せて欲しいものがあってね」
「は…?」
意図が掴めない教頭先生にソルジャーがズイと近付いて。
「まず、立って」
「はあ…」
書き物をしていた教頭先生は素直に立ち上がり、言われるままにソルジャーと向かい合います。身長の差が大きいですから、当然、ソルジャーを見下ろす形。ソルジャーはニヤリと唇の端を吊り上げて…。
「ぼくはツーフィンガーを見たいんだよ」
「「「!!!」」」
直球勝負なソルジャーの台詞に教頭先生も私たちも声を失くしてしまいましたが。
「ズボンの上から覗き見したんじゃ、押さえつけられた状態の毛しか分からなくってねえ…。脱いだらどんな風に見えるか、それが気になって気になって。…だからズボンと紅白縞を下ろして見せて欲しいんだけど」
「そ、それは……こんな場所では……」
額にビッシリ汗を浮かべる教頭先生。ソルジャーはクッと喉を鳴らすと、仮眠室の扉に目をやって。
「じゃあ、あそこならいいのかな? ぼくと二人きりなら脱げると言うなら特別にサービスさせて貰うよ」
「…サービス…?」
「うん。ぼくが手ずから脱がせてあげて、それからベッドで手取り足取り、あれこれレクチャー」
「………!!!」
教頭先生は瞬時に耳まで真っ赤に。ソルジャーが言うレクチャーとやらを想像しただけでコレなんですから、脱がされたら鼻血でダウンでしょう。とはいえ、ソルジャーと教頭先生を二人きりにしたら何が起こるか考えたくもありません。…って、ソルジャー?
「気が変わった」
ストンと床に膝をついたソルジャーが教頭先生のベルトに手をかけ、鮮やかな手つきでシュッと引き抜き、続いてズボンのジッパーを…。
「二人きりっていうのもいいけど、見られてる方が興奮するよね。最近はぼくとハーレイの仲は至極円満、ぼくから御奉仕ってことも多いんだ。…せっかくだから腕前を披露しようかな」
絶好のチャンス到来! とソルジャーは教頭先生のズボンを下ろそうとしたのですけど、間一髪で会長さんがソルジャーをドンと体当たりで弾き飛ばして。
「余計なことはしなくていいっ!」
「いたたた…。これからが盛り上がる所なのに!」
「それが余計だと言ってるんだよ! 要は見られればいいんだろう!」
次の瞬間、教頭先生のズボンと紅白縞はストンと床に滑り落ちていました。会長さんがサイオンでやったようです。教頭先生は大慌てで両手で前を隠しましたが、それより前に見えてしまったツーフィンガー。…大事な部分はモザイクでしたけど、指二本分は目に焼き付いてしまいましたよ…。

「…思った以上に凄かったね、アレ」
ソルジャーがのんびりと口にしたのは私たちが逃げ帰って来た「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋です。ズボンと紅白縞が脱げ落ちた教頭先生を放置したまま、会長さんはソルジャーの首根っこを掴んで教頭室から飛び出して遁走。私たちと「そるじゃぁ・ぶるぅ」も必死に走って後をも見ずに…。
「凄いも何も…。君がアヤシイことを言うから、ぼくが脱がせる羽目になったのがキツイんだけど」
心の傷になりそうだ、と会長さんがぼやきましたが。
「そう? 君もハーレイに悪戯するのは大好きじゃないか。真っ裸で校内一周とかさ」
「あれはサイオニック・ドリームで服を着せてた! ぶるぅも首からぶら下げていたし、ハーレイが堂々と歩いてたから問題ないし!」
会長さんとソルジャーが言い争っているのは以前の悪戯のことでした。会長さんが教頭先生の失敗をネタに、お詫び行脚をしろと迫って真っ裸で校内一周の刑。教頭先生、靴と靴下だけを履いた状態で「そるじゃぁ・ぶるぅ」人魚を首にぶら下げ、学校中を歩いたという…。
「傍目には服を着ているように見えていたかもしれないけどねえ…」
覗き見してみれば素っ裸、とソルジャーは楽しげに思い出し笑いをしています。ソルジャーと会長さんは共に最強のサイオンを持つタイプ・ブルーですけど、経験値の差でソルジャーの方が力が上。それだけに会長さんのサイオニック・ドリームを見破るくらいはソルジャーにとっては朝飯前で…。
「あの素っ裸の時にツーフィンガーって状態だったら、きっと倍ほど笑えたと思う。なにしろ幅が指二本! おまけに長さを揃えて刈り込んであるし」
クスクスクス…とソルジャーの笑いは止まりません。教頭先生の大事な部分に残された毛は切り揃えられていたのです。お蔭で輪郭がボケることもなく、とても見事な長方形。お風呂に入るのを躊躇うわけだ、と誰もが納得するしかなくて。
「あれは本当に何か対策を考えないとマズイよねえ…。あそこまでインパクトがあるとは思わなかった。君の悪戯も大概だよ、うん」
ソルジャーでさえもマズイと思うツーフィンガー。それを実現させてしまった会長さんの方も、現物を目にして脱力中です。
「まさか切り揃えてあるなんて…。本当に身だしなみだったんだ…」
「百聞は一見に如かずと言ったろ? 見学ツアーを企画したぼくに感謝の言葉が欲しいくらいさ。…でも、ハーレイはどうするんだろう? そうだ、サイオニック・ドリームは?」
それで何とか誤魔化せるのでは、とソルジャーは提案したのですが。
「…ダメだね。ハーレイにサイオニック・ドリームの才能は無い」
致命的に器用さに欠ける、と会長さんが言えば、ソルジャーが。
「そうなのかい? そこのキースだって使えるじゃないか。ただし髪の毛限定で…って、それで充分乗り切れそうだよ? ツーフィンガーの部分限定のサイオニック・ドリームをハーレイがマスターすればいいんだ」
おおっ! 流石は経験豊富なソルジャーです。キース君の髪の毛のことなんか忘れてましたが、言われてみれば写真にまで写るレベルの高度なサイオニック・ドリームを使いこなしてるんでしたっけ…。ジョミー君だって外見だけなら坊主頭に見せられますし、坊主頭が出来るのだったら逆だって勿論可能ですよね。
「なるほどな…。俺の髪の毛と同じ理屈か」
いいかもしれん、とキース君。
「教頭先生なら少し練習すれば使えるようになるんじゃないか? ブルー、あんたが責任を持って指導するのが筋だと思うぞ。元はと言えばあんたのせいだし」
「…サイオニック・ドリームねえ…。解決策としては名案だけど、使えないものは使えないよ。ハーレイには才能が無いって言っただろう?」
「だったら俺やジョミーの時みたいにだな、サイオンをそっち方面に向けて活性化させればいいと思うが」
ひぃぃっ、それってサイオン・バーストを起こさせるって意味じゃないですか! 会長さんに任せておけば安全だとは分かっていてもサイオン・バーストは物騒です。下手をしたら三途の川を渡ってしまう結果になると聞いていますし、ツーフィンガー如きでそこまでのことをしなくても…。
「ハーレイの悩みは軽すぎるんだよ」
会長さんがキース君に返し、ホッと息をつく私たち。ですよね、ツーフィンガーなんて坊主頭に比べれば遙かにマシというものです。永久脱毛したわけじゃなし、いずれは伸びてきますって! なのに、会長さんが続けた言葉は…。
「サイオン・バーストで解決するなら手を貸したっていいんだけどね。…ハーレイは切羽詰まっていないんだ。あの格好でお風呂に入るか入らざるべきかをウジウジ悩んでいるだけだろう? それじゃバーストは起こらない。キースとジョミーは切実に追い詰められていたから可能だったのさ」
「そうか、サイオン・バースト自体が起こせないのか…」
仕方ないな、とキース君が溜息をつき、ソルジャーが。
「サイオニック・ドリームが使えないのなら地道に育毛するしかないね。それともブルーがフォローする? ハーレイがお風呂に入る時には毛があるように見せかけるとか」
「ぼくにそこまでする義務は無いし! ハーレイが自分で努力すべきだ」
「努力すべきと言ってもねえ…。努力したら毛が伸びるのかい? あ、そうだ。専門家に聞けば早いかも!」
「「「専門家?」」」
誰のことか、と問われる前にソルジャーはパチンとウインクしました。
「身体のことなら医者だろう? 育毛剤だって効くのを知っているかもしれない。この際だからハーレイを連れてノルディの所に行ってみようよ」
「「「ドクター・ノルディ!?」」」
いきなり出て来たエロドクターの名に私たちの声が引っくり返り、会長さんはポカンと口を開けたまま。けれどソルジャーは素晴らしいことを思い付いたという風に。
「ぼくの世界に劇的に伸びる育毛剤は無いけど、こっちの世界は違うかも! ほら、ヌカロクに役立つ漢方薬があったりするから、もしかしたら…。あの漢方薬はぼくの世界じゃ作れないんだ。材料が入手出来ないからね」
所変われば品変わる、とソルジャーは本気モードでした。確かにツーフィンガーを拝んで助言をどうこうとは言ってましたが、エロドクターに相談だなんて何か間違っていませんか…?


 

PR
Copyright ©  -- シャン学アーカイブ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]