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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

運の良し悪し
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。




シャングリラ学園、今日も平和に事も無し。…そんな感じの毎日ですけど、季節は秋です。学園祭の話題で華やぐ校内、1年A組はグレイブ先生の意向でお堅いクラス展示なオチでも。私たち七人グループは毎度お馴染み別行動で…。
「かみお~ん♪ 授業、お疲れ様ーっ!」
今日のおやつは洋梨のキャラメルムースなの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が迎えてくれる放課後の溜まり場。ソファに腰掛け、飲み物の注文なんかも取られて、ムースケーキを食べ始めたら。
「…コレをどう思う?」
会長さんがテーブルにコトリと置いた物。それは…。
「ちょ、本物!?」
ジョミー君が叫んで、キース君が。
「何処のヤクザから拝借したんだ、こんな物を!」
「か、会長だったらヤクザもお友達かもしれませんけど、流石にこれは…!」
銃刀法違反で捕まりますよ、とシロエ君も大慌て。
「早く返して来て下さい! お友達に!」
「…借りたってわけじゃないんだけどね?」
「それなら余計にヤバイだろうが!」
何処で買った、とキース君がテーブルをダンッ! と。
「今どき、レトロなタイプではあるが…。ヤクザ向けではないかもしれんが…!」
「まあねえ、ヤクザはオートマだよね?」
あっちの方が何かとお手軽、と会長さんが手に取った物。それは拳銃、いわゆるピストル。でも、オートマって何のことかな?
「あっ、知らないかな? これはリボルバーで、此処が弾倉。回転式になってるんだよ。オートマはオートマチックの略でさ、弾倉が入れ替え式なわけ」
握りの部分の内側が弾倉、という説明。西部劇とかでお馴染みなのがリボルバーの方で、ヤクザの皆さんは「弾倉さえ入れ替えれば楽々連射」なオートマチックらしいです。
それについては分かりましたけど、拳銃はどれでもマズイですよ!



この国で拳銃を堂々と持てる法律は無かったように思います。一般人は。なのに拳銃、「どう思う?」も何も無いもんだ、と私たちは大騒ぎになったんですけど。
「ふふ、引っ掛かった。…これは一応、偽物なんだよ」
とても良く出来たモデルガン、と会長さんが銃口を天井に向けて引き金を。パアン! と音はしましたけれども、あれっ、クラッカー…?
「そうだよ、ちょっとカスタマイズを…。普通の弾よりこっちの方が面白いから」
「あんたな…。それならそうだと先に言え!」
キース君が噛み付くと、会長さんは涼しい顔で。
「種明かしは後って、相場が決まっているけれど? 本物そっくりに見えるだろう?」
重さの方も本物と同じ、と会長さんがキース君に渡し、そこから順に回って来た拳銃。けっこう重さがありますです。材料を工夫してあるそうで…。
「リアリティーを追求してみたんだよ。殺傷力は無いけどね」
クラッカーな弾がパアン! と出るだけ、と会長さん。
「これをさ、学園祭で使ってみようと思ってさ…。作ってみたってことなんだけど」
「「「作った!?」」」
会長さんがモデルガンをですか?
「か、会長…。こんなの作れたんですか!?」
シロエ君が口をパクパクさせてます。シロエ君の趣味は機械いじりですし、シロエ君が作ったと言うんだったら分かるんですけど…。
「ぼくが作っちゃいけないかい? 人間、芸域は広い方がね」
何かとお得、と拳銃を手にした会長さん。
「学園祭の売り物に付加価値をつけるのもいいんじゃないかと…」
「「「付加価値?」」」
「サイオニック・ドリームのスペシャルの方だよ、お値段高めの」
あれの売り方にひと工夫、という話。学園祭での私たちの売り物はサイオニック・ドリームを使ったバーチャル・トリップ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議パワーと銘打って販売、ドリンクなどを飲んでいる間に旅が出来るという仕様。
スペシャルを買えば、よりリアリティー溢れるトリップですけど、どう付加価値を…?



学園祭の出し物、サイオニック・ドリーム喫茶な『ぶるぅの空飛ぶ絨毯』。毎年、商売繁盛です。スペシャルはお値段高めになるのに、絶大な人気。
けれど、バーチャル・トリップと拳銃、どの辺で結び付くんでしょう?
「おい、今年のスペシャルは西部劇か?」
ガンマン限定の旅になるのか、とキース君。
「それでは女子を逃すと思うが…。男子には売れるかもしれないが」
「西部劇じゃないよ? ラインナップは今年も豊富!」
でもね、と会長さんが例の拳銃をいじりながら。
「普通にお金を出して買うより、そこに博打な要素をね…。運が悪いと買えないという!」
「「「は?」」」
「ロシアン・ルーレットって聞いたことないかな、こんなヤツで」
まずは弾倉から弾を抜いて…、とクラッカー弾を取り出してゆく会長さん。一個、二個…、とテーブルに置いて、それから弾倉を指差して。
「ほら、一発だけ残っているだろう? 此処に」
でもって、コレを…、と弾倉を元に戻してからジャジャッと何度か回転させて…。
「さっきの弾が何処に行ったか、これで全く分からないってね」
サイオンで透視しない限りは…、と言い終えると「はい」と拳銃をキース君に。
「一番、どう? 頭に向けてパアンと一発!」
「や、やっぱりソレか! ロシアン・ルーレットと言っていたのは!」
「そうだけど? どうせ当たってもクラッカーだよ、勇気を出して運試し!」
引き金をどうぞ、という台詞。ロシアン・ルーレットって、もしかしなくても…。
「うん、当たっちゃったら死ぬってヤツだよ、元々は」
だけどクラッカーの弾だから、と押し付けられた運試し。リアリティー溢れる拳銃なだけに、キース君の顔色は良くありませんが…。
「くそっ、当たっても所詮はクラッカーだ! 南無阿弥陀仏…」
どうか御加護を、と左手首の数珠レットを繰って、頭にピタリと当てた銃口。引き金を引いたらカチッという音、当たらなかったみたいですねえ…?



ホッと息をついたキース君の次はジョミー君でした。やっぱりハズレで、次がサム君。音はカチッと鳴っただけ。マツカ君も同じで、スウェナちゃんも、それに私も。次は…。
「ま、待って下さい! ぼく、確実に当たるんじゃあ…!?」
誰も当たっていないんですから、とシロエ君。
「そうだと思うぜ? でもよ、シロエの番なんだからよ」
ちゃんとやれよ、とサム君がギロリ。
「他の誰かに当たるだろう、って最後まで名乗らなかったくせによ」
「ぼ、ぼくは確率の問題ってヤツを計算していた内にですね…!」
「どんどん確率が上がり始めて最後になったというだけだろうが!」
いい加減にしろよ、とキース君が凄みました。
「スウェナたちだってやったんだ! 次は貴様だ!」
「…は、はい…」
死んで来ます、とシロエ君が頭に向けた銃口。引き金を引くとパアン! という音、シロエ君はクラッカーの色とりどりのテープや紙片まみれに。
「…やっぱ、最後は当たるのかよ…」
例外はねえのな、とサム君が頷き、会長さんが。
「そりゃまあ、そういう仕様だからね? …七発入りなら最後は当たるよ」
学園祭では六発入りの標準タイプ、と言ってますけど、標準タイプって…?
「リボルバーは基本が六発なわけ。これは君たち用にカスタマイズで、実は八発」
「「「八発!?」」」
「そう! …シロエの運の悪さも大概だよねえ、運が良ければ当たらなかったのに」
「「「うーん…」」」
弾倉に何発入るかまでは、誰も確認していませんでした。そっか、八発入りだったんだ?
「そういうことだね。シロエもカチッて音で済んでた可能性もある」
でも、学園祭だと誰かが確実に当たる、と会長さん。
「スペシャルな夢を買いたい人は、まずはロシアン・ルーレット! 買わない人もね!」
一つのテーブルに今年は六人、と会長さんの思い付き。テーブルに着いたら六人でロシアン・ルーレット開始、弾に当たればスペシャルな夢は買えない仕組み。
「他の買わない人の権利は、決して譲って貰えないんだよ!」
また並び直して下さいという方向で…、との案らしいです。それは確かに博打ですねえ?



面白いじゃないか、と誰もが思ったロシアン・ルーレットな販売方法。高い夢を買うぞ、と勇んでテーブルに着いたとしたって、弾に当たれば買えません。残念な目に遭う人を見たなら、買うつもりが無かった他の人たちが…。
「買う可能性が高くなりますね!」
自分は運がいいわけですから、と弾に当たったシロエ君。
「運が良かった、とハイテンションになっていたなら、財布の紐も緩みますよ!」
「ぼくの狙いは其処だってね! ついでに、当たった人も必死で並び直すし!」
いつもの年なら一度で満足の所を二回来るから、と会長さんの悪辣な読み。
「商売繁盛間違い無しだよ、この方法は!」
「ええ、やりましょう!」
ぼくも拳銃を作りたいです、とシロエ君が手を上げました。会長さんは「頼もしいねえ…」と大喜びで、早速、瞬間移動でモデルガンのキットの箱を何箱も。
「それじゃ頼むよ、テーブルの数がこれだけだから…。予備も含めて、全部でこれだけ」
改造方法はこっちの紙に書いてあるから、と明らかに押し付けモードですけど。
「分かりました! えーっと、グリップがこうで、重しを入れて、と…」
コーティングがこうで…、とシロエ君が読み込んでいる会長さんの改造方法。
「大丈夫です、今週中には完成しますよ」
「本当かい? それじゃ、クラッカー弾も頼めるかな?」
クラッカーの装填がちょっと面倒なものだから…、と会長さんがまたも押し付け、シロエ君は。
「任せて下さい! 細かい作業は得意ですから!」
やり甲斐があります、と快諾しているクラッカー弾作り。
「…あいつ、上手いこと使われてねえか?」
サム君がヒソヒソと声をひそめて、ジョミー君が。
「ほら、さっき弾に当たっちゃったし…。ナチュラルハイじゃないの?」
「その可能性は大いにあるな。だが、やりたいなら任せておこう」
俺たちがババを引くわけじゃなし、とキース君。うん、シロエ君が喜んでやるんだったら、何も言うことはないですよね…!



シロエ君が作った拳銃とクラッカー弾は、学園祭で大好評でした。今年のテーブルは一つに六人、席に着いたら始まるロシアン・ルーレット。最初に誰が引き金を引くかはジャンケンで。
順に回して、弾に当たればスペシャルな夢は買えません。クラッカーまみれになるだけに嘘は絶対つけない仕様で、並び直すしか無かったオチ。
「会長の計算、当たりましたねえ…!」
例年以上に大入り満員になりましたよ、とシロエ君がベタ褒めの打ち上げパーティー。私たちは会長さんの家に来ていて、お好み焼きパーティーの真っ最中です。
「ぼくが思った以上に売れたね、スペシャルな夢も。…運がいいと思うと買うんだねえ…」
去年より高めの値段にしたのに、と会長さんが言う通り。ぼったくり価格がついていたのに、飛ぶように売れたスペシャルな夢。
ロシアン・ルーレットのせいで買い損なった人も並び直してまた来てましたし、商売繁盛だったんです。中にはとびきり運の悪い人も…。
「最悪だったヤツ、三度目の正直って引いた時にも当たってたよなあ…」
それも一発目で、とサム君が。
「うんうん、ジャンケンには勝っていたのにね…」
そのジャンケンで運が尽きちゃったよね、とジョミー君。気の毒すぎる男子生徒がそれでした。今度こそは、と勇んで引いた引き金でパアン! と。
「…四度目でようやくゲットだからな…」
普通は「四」は避けるものだが、とキース君が合掌を。
「死に通じると嫌われる数字で、しかも四人目…。あれで当たらなかったのは強運と言える」
「そうね、四回目の四人目なら、四が二つで死に番だわねえ…」
人の運というのも分からないわ、とスウェナちゃん。でもでも、学園祭は大賑わいでボロ儲けでしたし、ロシアン・ルーレットの効果は絶大だったと言えますよね…!



評判だったロシアン・ルーレット。せっかくだから、と私たちも再チャレンジをすることに。午後のおやつのアップルパイで、当たってしまえばおかわりは無しという約束。
「えーっと、面子が九人だから…」
八発用のだと足りないか、と会長さんが奥の部屋へと。
「「「……???」」」
まさか九人用も作ったんでしょうか、会長さんならやりかねませんが…。待っている所へ、部屋の空気がフワリと揺れて。
「こんにちはーっ!!」
楽しそうなことをやっているよね、と翻った紫のマント。別の世界から来たソルジャーです。
「あんた、何しに現れたんだ!」
キース君が叫ぶと、ソルジャーは。
「そりゃあ、もちろん…。ぼくもロシアン・ルーレットを!」
運の強さには自信があって、と威張るソルジャー。
「ダテにSD体制の世界で生きていないよ、だからやりたい!」
「…弾数に無理がありそうですけど?」
シロエ君が突っ込むと、ソルジャーは会長さんが消えた方を眺めて。
「その点は心配要らないってね! ブルーが十発入りのを持ってくるから!」
「「「十発!?」」」
「ぼくが来るかも、って計算していたみたいだよ? それにさ、数の関係で…」
奇数よりかは偶数の方がいいらしい、と言われた装弾出来る弾数。それじゃ、ホントに十発入りの登場ですかね…?
「はい、お待たせ…って、やっぱり来たんだ?」
拳銃を持って戻った会長さんが呆れ、ソルジャーが。
「ぼくが来ない筈がないだろう! 学園祭の間は遠慮したけど!」
今日は混ぜてよ、と拳銃を見詰めて、「十発だよね?」と。
「ちゃんと十発入るだろ、それ? ぼくの分まで!」
「…入るけど…。ぼくの分って、当たりたいわけ?」
「ううん、全然!」
当たったらアップルパイのおかわりが無いし、と食い意地が張っているソルジャー。運には自信があるそうですから、おかわりゲットのつもりですね?



ソルジャーも混ざることになったロシアン・ルーレット。会長さん自慢の十発入りの拳銃が登場、弾倉には十発入っていたようです。クラッカー弾が。
「空の所に一個入れるより、抜いていく方がスリルがねえ…」
学園祭では時間の関係で出来なかったけど、と弾を抜いてゆく会長さん。
「これも一種の演出ってヤツだよ。…よし、これで残りは一発だけ、と」
ジャジャッと回転させた弾倉、会長さんはソルジャーをジロリと睨んで。
「あのね…。これはサイオン禁止だから! 今、透視したよ!」
「ご、ごめん、つい…!」
「ぼくは君より経験値が低いわけだけど…。その程度のことは分かるから! サイオン禁止!」
改めて…、と回転させられた弾倉。そして順番決めのジャンケン、念押しに弾倉をもう一度回転、一番手のシロエ君が銃口を頭に向けて引き金を。…カチッ、と音がしただけで…。
「良かったあ…。今日は当たりませんでした!」
「おめでとう、シロエ。次はサムだね」
順番にどうぞ、と会長さん。サム君も外れ、キース君も、マツカ君も。
「ふうん…? それでぼくまで回って来た、と…」
ソルジャーがマツカ君の次で、拳銃の銃口を頭にピタリ。
「ちょっとドキドキするものだね。…オモチャなんだとは分かっていてもさ」
ぼくは本物を突き付けられたこともあるものだから…、とハイなソルジャー。初めてサイオンが目覚めた時には、問答無用で撃たれまくったらしいです。子供だったのに。
「全部サイオンで受け止めたからさ、死ななかったけど…。今日はどうかな?」
「運には自信があるんだろ?」
会長さんが「どうぞ」と促し、ソルジャーは引き金を引いたんですけど…。
「「「うわー…」」」
パアン! という音で派手に弾けたクラッカー弾。…まさかのソルジャーに当たりです。クラッカー弾の中身にまみれたソルジャーは…。
「当たっちゃったよ…。ぼくのアップルパイのおかわりは…?」
「無いねえ、そういう約束だからね!」
弾は出たから、今回、此処まで! と会長さんが仕切って、おやつの時間に。「そるじゃぁ・ぶるぅ」特製アップルパイのおかわり、ソルジャーの分だけが今日は無しです。悪いですけど、そういうルール。私たちで美味しく頂きますね~!



残念無念な結果に終わった、ソルジャーの初のロシアン・ルーレット。本当にサイオンを使っていなかったんだ、という点だけは評価出来たので、特別に、とアップルパイのおかわりが少し。他のみんなより小さいですけど。
「うーん…。あそこで当たらなかったら、もっと大きなアップルパイが…」
運には自信があったのに、と私たちのお皿を見ているソルジャー。
「だけど、スリルはあったかな。…パアンと当たった瞬間にね!」
ソルジャー、「死んだ」と思ったそうです。日頃、修羅場を渡り歩いているだけに。
「…人類軍が相手だったら、死ぬってわけにはいかないし…。オモチャだからこそ!」
ドキドキ感を味わえた、と楽しそうな所が凄すぎるかも。
「こっちの世界には、素敵な遊びがあるものだねえ…。気に入ったよ!」
絶賛するソルジャーに、会長さんが。
「あのねえ…。ぼくが遊びに変えたってだけで、元は命が懸かってるんだよ?」
「本当かい!?」
「今でもやる人がいるかどうかはともかくとして…。出来た当時は度胸試しで命懸け!」
本物の弾だし、当たれば終わり、という会長さんの解説。ソルジャーは「へえ…」と。
「ますますいいねえ、真剣勝負! これって癖になりそうだよ!」
「…毎回、これで遊びたいと?」
「機会があればね!」
サイオン抜きでロシアン・ルーレット。当たれば終わりというスリルの世界は、ソルジャーを魅了したようです。寄せ鍋だった夕食の席までに、何度もロシアン・ルーレット。誰かがクラッカー弾を食らう度にパアン! という音が。
夕食の後も、好みの飲み物を出して貰えるかどうかでロシアン・ルーレットを。キース君が弾に当たってしまって、コーヒーは貰えず、水をチビチビ。
「…くっそお…。ツイていないな」
コーヒーが飲みたい、というキース君のぼやき、ソルジャーは拳銃を振り回して遊びながら。
「そうだ、これって他にもあるんだよね? シロエが沢山作っていたから」
「あるけど? だけど、あれは六発入りだよ。…この人数では使えないよ」
会長さんの指摘に、ソルジャーが。
「ううん、六発あれば充分! ぼくの世界でも遊んでみたくて…」
一つ頂戴、とソルジャーは六発入りを貰ってウキウキ帰って行きました。クラッカー弾も箱一杯に貰っていたんですけど、どう遊ぶんだか…。



ロシアン・ルーレットにハマッたソルジャーが拳銃を貰って帰って、一週間。私たちも放課後に何度か遊んでいました。十発入りとか、八発入りで。
今日は土曜日、会長さんのマンションにお邪魔してるんですけど…。
「こんにちはーっ! 遊びに来たよーっ!!」
この間はどうも、と降って湧いたソルジャー。おやつの栗のタルトを頬張り、ニコニコと。
「いいねえ、ロシアン・ルーレット! あれで毎日、楽しんでるよ!」
「…君のシャングリラを巻き込んだのかい?」
その辺の面子を何人か、と会長さん。
「六発だしねえ…。ぼくの読みだと、君のハーレイの他に長老の四人?」
ゼルにヒルマン、エラとブラウ、と会長さんが挙げた名前に、ソルジャーは「ううん」と。
「最初はそれも考えないではなかったんだけど…。六発だからね」
丁度六人になるものだから…、と指を折るソルジャー。
「会議って言ったら、その六人だし…。其処で遊ぼうと思ったんだけどさ。でも…」
実際に弾を入れている内に気が変わったのだ、という話。
「こう、弾倉に一発ずつ入れていくだろう? クラッカー弾を」
「まあね、演出の内だしね? 装弾したのを抜いていくのは」
会長さんの相槌に、ソルジャーは「うん」と頷いて。
「そう思ったから、弾を入れてて…。六発だな、と」
「六発だねえ?」
「その六発で何か閃かないかい? もしも弾倉から抜かなかったら?」
「「「…へ???」」」
全部が当たりでロシアン・ルーレットどころじゃないですよ、その拳銃?
「ロシアン・ルーレットとしては駄目なんだけど…。六発というトコが大切なわけで!」
しかも抜かない! とソルジャーは強調しています。
「抜かないんだよ、六発の弾を! これが本当の抜かず六発!」
「やめたまえ!!!」
会長さんが怒鳴り、ソルジャーが。
「抜かず六発と言えばヌカロク、もうそのための拳銃だよ、あれは!」
「「「…はあ???」」」
ヌカロクって何か謎なんですけど、確か大人の時間の言葉。そういう拳銃なんですか、あれ?



シロエ君が学園祭用にと作った拳銃。標準タイプだという六発装弾出来るタイプで、たったそれだけ、クラッカー弾が六発入るだけ。どう転がったら大人の時間に…、と首を捻りましたが。
「分からないかな、弾を抜かないなら抜かず六発! とにかく素敵な拳銃で!」
これは有難く使わないと、とソルジャーは思ったらしいです。
「そんなわけだから、ゼルだのヒルマンだのと遊んでいるより、ハーレイと!」
「「「…二人?」」」
それは面子が足りなさすぎです。六人揃ってこそのロシアン・ルーレットでは…?
「細かいことはいいんだよ! 交互にやればいいんだから!」
ぼくとハーレイとで三回ずつ! と言うソルジャー。三かける二だと、六ですけど…。
「ほらね、ちゃんと合わせて六回! ハーレイとやろう、って思ったわけで!」
そして毎晩遊んでいるのだ、とソルジャーは胸を張りました。
「もちろんサイオンは抜きで引き金! ぼくも、ハーレイも!」
弾は一発を残して抜いて…、とロシアン・ルーレットの基本は変わらない模様。
「ぼくの番でパアン! と鳴ったら、御奉仕なんだよ!」
「「「御奉仕?」」」
「もう、ハーレイの望み通りに! しゃぶるのも、口で受け止めるのも!」
「退場!!!」
会長さんがレッドカードを叩き付けても、ソルジャーは帰りませんでした。
「ハーレイの番でパアン! と鳴ったら、そこはヌカロク! 抜かず六発!」
ガンガンとヤッてヤリまくるのみ! とヌカロクの登場、やっぱり意味が分かりません。御奉仕の方も謎ですけれど。
「そんな調子で、毎晩、ロシアン・ルーレット! 大人の時間を素敵に演出!」
最高の夜が続いているよ、とソルジャーは実に嬉しそうです。
「あの拳銃に感謝だね! ぼくのハーレイも喜んでるし!」
ただの御奉仕よりも嬉しいらしい、と感極まっているソルジャー。
「なにしろ、六発もあるものだから…。どっちに当たるか、それも謎だから!」
キャプテンが三発ともを無事にクリア出来たら、ソルジャーの御奉仕とやらが出てくるロシアン・ルーレット。そこまで長く待たされなくても、ソルジャーが一発目でパアン! と当たることだってあって、スリルが凄いらしいのです。役に立ってるなら、まあいいかな…。



どういう風に使われているのか、イマイチ謎が残る拳銃。けれどソルジャー夫妻にとっては、大人の時間を楽しめるアイテムに化けたらしくって。
「もう毎日が最高だからさ、この幸せをお裾分けしてあげたいと思ってね!」
「要らないから!」
会長さんが即答したのに、ソルジャーは。
「誰が君にお裾分けをするって言った? 可哀相なこっちのハーレイ向けだよ!」
ただし、ロシアン・ルーレットで、とソルジャーはニヤリ。
「…あのクラッカー弾ってヤツだけど…。中身、ハズレにも出来るよね?」
「「「ハズレ?」」」
ハズレも何も、クラッカー弾がパアン! と鳴ること自体がハズレの証拠ですけれど?
「それはそうだと思うけど…。これもやっぱり演出ってヤツで」
音だけ鳴って空クジというヤツ、とソルジャーも知っていた空クジなるもの。
「それを一発装弾したなら、余計に面白くなるのかな、とね!」
一人ロシアン・ルーレットだから、と言うソルジャー。
「「「…一人?」」」
「そう! 一人ロシアン・ルーレット! 引き金を引けるのは一日一回だけ!」
六発入りでもたったの一回、とソルジャーは指を一本立てました。
「弾倉に弾を一発残して、それからハズレの弾を追加で…。合計二発!」
それをこっちのハーレイが自分の頭に向けて引き金を引く、という説明。
「ロシアン・ルーレットはパアン! と鳴ったらハズレなんだけど、そこを逆にして!」
「…弾に当たれば当たりなのか?」
キース君の問いに、ソルジャーは「うん」と。
「だからハズレの弾を一発! ぬか喜び用に!」
「なるほどな…。しかし、当たったらどうなるんだ?」
「当たりかい? 幸せのお裾分けだしねえ…!」
ぼくからの御奉仕をサービスだよ、とソルジャーは笑顔で、会長さんが。
「それも要らないから!!」
「何を言うかな、選ぶのはこっちのハーレイだから!」
君の出番は全く無い! とキッパリと。…御奉仕って大人の時間ですよね、ロクでもない方へと話が向かっていませんか…?



キャプテンとロシアン・ルーレットで大人の時間を楽しむソルジャー、教頭先生にもお裾分けをと計画を。会長さんが「帰れ」と怒っているのに、シロエ君に。
「クラッカー弾、君が量産してたよね? ハズレ弾だって作れるのかい?」
「えーっと…。音だけっていうのは出来ますけれど…」
要は中身を入れないだけですから、とシロエ君。
「ぼくがわざわざ作らなくても、クラッカー弾の中身を抜けば完成する筈ですよ?」
サイオンで抜けるんじゃないですか、とシロエ君は真面目に答えたのに。
「縁起でもないよ、抜けるだなんて! 抜かず六発、抜くなんて駄目だね!」
作って欲しい、とソルジャーはズイと詰め寄りました。
「必要だったら、手間賃だって払うから! 希望の額を!」
「…そうですか…。それじゃ、一発分で、こんな所で」
これだけ下さい、とシロエ君が出した数字は暴利でした。けれどソルジャーは瞬間移動か、空間移動で財布を取り出し、気前良く「はい」と。
「とりあえず、百発分ほどね!」
「「「百発!?」」」
「こっちのハーレイ、運の悪さはピカイチじゃないか。だから百発!」
多めに仕入れておいて丁度いいくらい、とソルジャーはハズレ弾を発注しました。
「で、いつまでに作れるんだい?」
「材料さえあれば、今から作って…。そうですね、今日の夕方までに充分」
「素晴らしいよ! それじゃ、よろしく!」
ぼくと一緒に材料の仕入れに…、とソルジャーはシロエ君の首根っこを捕まえ、瞬間移動で消え失せました。間もなく帰って来たシロエ君はゲストルームにこもってハズレ弾作り、夕方には百発が完成したようで。
「出来たよ、ハズレ弾! 後はクラッカー弾と拳銃よろしく!」
貸して、と会長さんに強請るソルジャー。
「貸してくれないなら、サイオンで強引に貰って行くけど? 君の家から!」
「わ、分かったよ…!」
どうぞ、と会長さんが持って来た拳銃と、クラッカー弾が詰まった箱。ソルジャーはハズレ弾を詰めた箱を持っていますし、どうやら準備は完了ですね…?



ソルジャーがハマッたロシアン・ルーレット。教頭先生にも幸せをお裾分けとやらで、会長さんがギャーギャー怒っているのに、馬耳東風。
豪華ちゃんこ鍋だった夕食が済むと、私たちまで強引に連れて教頭先生の家へ瞬間移動。青いサイオンがパアアッと溢れて、フワリと身体が浮き上がって…。
「な、なんだ!?」
仰天しておられる教頭先生、食後のコーヒーをリビングで飲んでらっしゃった所。ソルジャーは愛想のいい笑みを浮かべると。
「こんばんは。…最近、ぼくはとても幸せなものだから…。君にも少しお裾分けをね」
「お裾分け…ですか?」
「そうだよ、御奉仕! 悪くないだろうと思うんだけどね?」
ぼくが御奉仕するだけだから、と一歩前へと。
「舐めて、しゃぶって、素敵に御奉仕! 本当は一発やらせてあげてもいいんだけれど…」
初めての相手はブルーと決めているそうだしね、と残念そうに。
「でも、御奉仕なら問題は無いし…。どうかな、御奉仕?」
「是非!!」
即答してから、教頭先生はアッと慌てて口を押さえて。
「す、すまん…! ブルー、い、今のはだな…!」
「君の本音だろう? …スケベ」
好きにすれば、と会長さんは冷たい瞳。
「それにね、君の運の問題でもあるようだから…。どうなるんだか、御奉仕の方」
「…運?」
はて、と怪訝そうな教頭先生に向かって、ソルジャーが。
「御奉仕の前に、まずはロシアン・ルーレット! そういう決まりなんだな、これが!」
「…ロシアン・ルーレット?」
「知らないかなあ? こういう遊びで…」
これが必須、とソルジャーは拳銃を取り出しました。
「これを頭に向けて引き金を…ね」
「はあ…。では、あなたの番の時に弾が飛び出したら、して頂けると…?」
教頭先生、頬が赤いです。…ロシアン・ルーレット、やっぱり御存知なんですね?



ロシアン・ルーレットが何かは御存知らしい教頭先生。ソルジャーは「うーん…」と拳銃を眺め、「それをやってるのは、ぼくのハーレイ!」と。
「ぼくのハーレイとは、そういう決まりでやってるけれど…。お裾分けだから…」
引き金を引くのは君だけだねえ、と教頭先生に銃口を。
「それも一日に一回限り! 弾に当たれば、ぼくが御奉仕!」
「…私が当たる方ですか!?」
「当たりクジとも言うからね! 当たるとクラッカーが飛び散る仕掛けで…」
そういうクラッカー弾が中に六発、と弾倉を示すソルジャー。
「この六発をさ、一発を残して抜いちゃうんだけど…。六発と言えば!」
「ヌカロクですか!」
「流石に君は分かっているねえ! うん、それでこそ!」
じゃあ、抜きまーす! とソルジャーは弾を抜き始めました。一個、二個と。五個抜き取ると、教頭先生に。
「はい、これで残りは一発だけど…。此処でハズレを仕込みます、ってね」
これは音だけのハズレ弾! と込められたシロエ君が作ったハズレ弾。
「音は鳴っても、クラッカーじゃないから…。ぬか喜びって弾なんだけどね」
「ええ、ぬかですね! ヌカロクを連想してしまいますね…」
教頭先生は舞い上がっておられ、ソルジャーは弾倉をジャジャッと回転させてから。
「はい、どうぞ。今日の一発、運試しに!」
「ええ!!」
教頭先生は自分の頭に銃口を向けて、何のためらいもなく引き金を。…本物の銃だったらどうしようとか、そういう考えさえも無いようです。引き金を引いた結果の方は…。
「残念でしたー! ハズレ弾さえ出ませんでした、ってね!」
カチッと音がしただけだよね、とソルジャーが拳銃を取り上げ、自分の頭に向けて引き金。今度もカチッと音がしただけ、「はい」と渡されたキース君がやってもカチッと。
「残り三発…。ハズレと当たりと、カチッていうのと…」
ソルジャーが言うなり、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「かみお~ん♪ ぼくもーっ!」
パアン! と飛び散ったクラッカー。教頭先生は「やはり当たりはあったのか…」と唖然呆然。なるほど、当たりの存在を知らせるパフォーマンスでしたか、今のヤツ…。



ソルジャー提供のロシアン・ルーレット、当たりが入っていることは確実。教頭先生はクラッカーまみれの「そるじゃぁ・ぶるぅ」をまじまじと見て…。
「…外れましたか、残念です…。私には運が無かったようです」
「そうみたいだねえ…。でもさ、君にも救いはあるよ」
これだけ出してくれれば、一日に一回チャンスをあげる、とソルジャーが示した暴利な金額。豪華ホテルのディナーコースが余裕で食べられて、おつりが来そうな数字ですけど…。
「分かりました! では、もう一回…!」
財布を出そうとする教頭先生に、ソルジャーは「駄目」と。
「一日一回! ロシアン・ルーレットの値打ちが下がるよ、何回もやれば!」
「そ、そうですね…。では、明日ですか?」
「そうなるねえ…」
今日は此処まで、とソルジャーが宣言、教頭先生は泣く泣く「では、お茶でも…」と私たちにも買い置きのクッキーを御馳走して下さいました。なかなか美味しいクッキーでしたし…。
「かみお~ん♪ クッキー、美味しかったね!」
瞬間移動で会長さんの家に帰ると、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がピョンピョンと。
「明日の夜にもお出掛けなんでしょ、ハズレだったらケーキだよね!」
「用意するって言ってたからねえ…。ハーレイとしては、是非とも当てたいトコだろうけど…」
運が悪い自覚はあるらしい、とソルジャー、腕組み。
「みんなも食べたいお菓子があったら、明日からリクエストしておくといいよ」
「おい、明日からって!?」
あんた、いつまで通うつもりだ、と訊いたキース君に、ソルジャーは。
「それはもう! ハーレイが諦めるか、見事に当たりを引き当てるまで!」
毎晩、ロシアン・ルーレット! って、平日もですか?
「平日もだけど? そうだ、御飯を御馳走になって、それからロシアン・ルーレットもいいね」
そっちのパターンも考えよう! と、ソルジャーは暴利ばかりか食事も貪るつもりです。私たちもお供させられてしまうようですし…。
「キース先輩、何かリクエストしたい料理はありますか?」
ぼくは豪華ならラーメンでもいいんですけれど、とシロエ君。キース君は…。
「そうだな、俺は何を食うかな…」
ジョミー君たちも相談をし始めてますし、教頭先生、もう完全にカモですねえ…。



翌日から、教頭先生はロシアン・ルーレットに挑み続ける日々になりました。私たちも付き添いという名目で、ハゲタカのように教頭先生の家で食べ放題。夕食を御馳走になった後には…。
「御馳走様でしたーっ! はい、今日も始めようか」
当たるといいねえ…、とソルジャーが弾を抜いてゆく拳銃の弾倉。一発残して抜いた後には、ハズレ弾の方も一発装弾。弾倉をジャジャッと回してから「どうぞ」と。
「当たりますように…。どうかな?」
「頑張ります!」
ロシアン・ルーレットで頑張るも何も無いのですけど、教頭先生、そう仰るのがお約束。頭に銃口を当てて引き金、今夜もカチッと空しい音が。
「駄目だったねえ…。今日は誰がやる?」
「あっ、ぼく、三発目を希望です!」
シロエ君が手を上げ、キース君が「俺は最初で」と。ジョミー君は四発目を予約、二発目はスウェナちゃんが名乗って…。
「うん、今日はシロエが大当たりってね!」
おめでとう! とソルジャーが渡す金一封。いつの間にやら、そういうルールが出来ました。教頭先生がお支払いになる、ロシアン・ルーレットへの挑戦代。そこから少々、ソルジャーが分ける金一封。クラッカー弾が当たった人が貰える仕組み。
「いいよな、シロエ…。お前、めちゃめちゃツイてるじゃねえかよ」
金一封、これで何度目だよ? とサム君が言う通り、バカヅキなのがシロエ君。本人によると、ただの勘なのだそうで。
「…一番最初に当たってしまったからでしょうか? なんだか相性、いいみたいです」
「らしいよねえ…。シロエ、羨ましすぎ…」
また当たるなんて、とジョミー君も指をくわえて見ています。でもでも、きっと教頭先生の方が遥かに羨ましいと思っておいででしょう。来る日も来る日もハズレですから。
「…私は、ハズレ弾さえ当たったことがないのだが…」
なんとか加減をして貰えないだろうか、と教頭先生が取り出した財布。
「…倍ほどお支払いさせて頂きますから、一日にせめて二回ほど…」
「駄目だね、これはそういうルールだからね!」
ソルジャーが断り、賄賂も通じず。…こんな調子で、どうなるんだか…。



街にジングルベルが流れ始めるクリスマス・シーズン、それでも当たらないのが教頭先生のロシアン・ルーレット。私たちは年を越すかどうかの賭けまで始めましたが…。
「あくまでぼくの勘ですよ? …此処ですね」
この日に賭けます、とバカヅキと噂のシロエ君が印を書いたクリスマス・イブの二日前。
「強気だねえ…。みんな年越しコースなのに…」
会長さんが呆れてますけど、シロエ君曰く、その日付を見たら嫌な予感がするのだそうで。
「…ぼくにとっての嫌な日ってヤツは、金一封を貰えない日ですから…」
きっと、この日を境に貰えなくなるって意味ですよ、と自信たっぷり。教頭先生がその日に当たりを引いてしまって、ロシアン・ルーレットも終了なのだと。
そして運命のシロエ君が賭けた日がやって来て…。
「さて、ハーレイ。今日は当たるとシロエが予言をしてたわけでね」
あのバカヅキのシロエなんだよ、とソルジャーが拳銃を教頭先生に手渡しました。夕食の後で。
「シロエの予言は当たるのかどうか、楽しみだねえ…」
「そうですか、シロエが…。では!」
教頭先生が拳銃を頭に当てて、引き金を引いて…。
「「「うわぁ!!!」」」
当たった! と誰もがビックリ、パアン! と弾けたクラッカー弾。色とりどりの紙テープが舞い、小さな紙片もヒラヒラと…。
「おめでとう! それじゃ早速、御奉仕を…!」
長かったねえ、とソルジャーが教頭先生の前に跪き、ズボンのベルトに手をかけた途端…。
「あれっ、ハーレイ?」
「…………」
教頭先生は仰向けに倒れてゆかれました。鼻血を噴いて、バッタリと。今日まで妄想逞しくなさったツケが回って来たのでしょうか?
「…それっぽいねえ…。うーん、この調子だと、頭がショートで寝込みクリスマスかも…」
ロシアン・ルーレットは怖かったんだねえ、とソルジャーが拳銃を見詰めています。当たったら死んだみたいだけれど、と。
「シロエの勘は当たったんだけど、これではねえ…」
まあ、存分に儲けたから、とロシアン・ルーレットは今日で終わりになるらしいです。ということは、私たちは賭けに負け、シロエ君が最後まで一人勝ち。これって拳銃との相性なんですか、私、山ほど賭けたんです。他のみんなも泣いてますです、あんまりです~!




            運の良し悪し・了


※長らくシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございました。
 生徒会長が自作した、ロシアン・ルーレット専用の拳銃。学園祭でも、その後も大活躍。
 弾に当たりたい教頭先生、クリスマス前まで頑張り続けて、やっと当たりが出たんですが…。
 結果は最後まで「お約束通り」、シャングリラ学園番外編は、こういうお話ですからね。
 さて、シャングリラ学園番外編は、今月限りで連載終了。14周年を迎えた後のお別れです。
 とはいえ、実は完結している、このシリーズ。誰も覚えていないでしょうけど(笑)
 そして場外編、シャングリラ学園生徒会室の方は、今後も毎日更新です。
 番外編も、気が向いた時に、何か書くかもしれません。
 皆様、これからも、シャングリラ学園生徒会室とハレブル、よろしくです~!

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 こちらでの場外編、12月は恒例のクリスマス。今年はサンタが大活躍…?
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