シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
シャングリラ学園、今週も平和で事も無く…。残暑も終わってそろそろ秋です。学園祭の準備なんかも始まりそうな気配、クラス展示か催し物か、とグレイブ先生がズズイと迫って1年A組は今年も真面目なクラス展示になるみたい。
とはいえ、私たち特別生には関係無いのがクラスの動向、別行動と決まってますからお気楽に。今日は土曜日、朝から会長さんの家に来ているわけでして。
「かみお~ん♪ 明日は何処かにお出掛けする?」
明日もお天気良さそうだし! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「何処かお勧めの場所ってある?」
穴場で食べ物が美味しくて…、とジョミー君が訊き、シロエ君が。
「遊べる所がいいですよね! 待ち時間無しで!」
「ああ。待ち時間無しは基本だな」
俺もそういう所がいい、とキース君が頷き、何処か無いかと相談が始まったのですが。
「こんにちはーっ!」
いきなり乱入して来た声。紫のマントがフワリと翻って…。
「ぶるぅ、ぼくにもおやつと飲み物!」
「オッケー! ちょっと待っててねー!」
キッチンに走った「そるじゃぁ・ぶるぅ」が焼き栗たっぷりのパイと紅茶を運んで来ました。それを「ありがとう」と受け取ったソルジャー、ソファにちゃっかりと腰を下ろして。
「秋だねえ…! これからが素敵なシーズンだよね!」
「あんた、俺たちに混ざる気か!」
今は出掛ける相談なんだが、とキース君。
「あんたが何をしたいのか知らんが、俺たちは静かに過ごしたいんだ!」
「遊びに行くと聞こえたけどねえ? 待ち時間無しの穴場とやらへ」
その行き先の何処が静かなんだか…、とソルジャーはタルトを頬張りながら。
「でもまあ、利害は一致してるし、この際、静かな場所ってことで」
「来る気なのか!?」
あんたまで、とキース君が叫んだのですけれど。
「明日はまだだね、色々と準備が要りそうだから」
「「「は?」」」
準備って何のことでしょう? いずれは一緒にお出掛けって意味…?
「俺たちは二度も同じ所へは行かないからな!」
行くなら勝手に行ってくれ、とキース君がキッパリと。
「いい場所だったら教えてやるから、一人で行くのもデートに行くのも好きにしてくれ!」
「うーん…。それは困るよ、君たちの協力が必須だからね」
「「「協力?」」」
なんとも不穏なこの台詞。遊びに行くのに利害が一致で、協力が必須って何事ですか?
「分からないかな、これからが素敵なシーズンなんだよ!」
何処のホテルも婚礼が一杯、とソルジャーは笑顔。
「ホテル以外にも色々あるよね、結婚式に使う場所!」
「あんた、結婚してるだろうが」
それとも招待されたのか、とキース君。
「俺たちは何も聞いていないが、ノルディが結婚するというのか?」
「するわけないだろ、こっちのノルディは遊び人だよ? だけど結婚式のシーズン!」
そして結婚式には前撮り、と妙な台詞が。
「「「前撮り?」」」
「そう! こっちのブルーも遊んでいたよね、前撮りで!」
ハーレイにタキシードを着せたりして…、と言われて思い出しました。会長さんが豪華なウェディングドレスをオーダー、教頭先生と前撮りなのだと誘い出しておいて陥れた事件。教頭先生、ゼル先生に拉致されてバイクで市中引き回しの刑でしたっけ…。
「あっ、思い出した? その前撮りを、ぼくもやりたくってねえ!」
「「「へ?」」」
間抜けな声しか出ませんでした。前撮りは結婚式の前にやるもの、ソルジャーはとっくに挙式済みです。なんだって今頃、前撮りなんかを…。前後が間違っていませんか?
「前後くらいは間違っていたっていいんだよ! うんと素敵な写真が撮れれば!」
ぼくたちには結婚写真が無くて…、と言われてみればその通り。マツカ君の海の別荘での人前式の挙式でしたし、結婚式そのものもソルジャーの結婚宣言くらいなもので。
「ほらね、結婚写真も無ければ、ウェディングドレスなんかも無くてさ…」
なんとも寂しい結婚式で、とソルジャーはフウと大きな溜息。
「こういうシーズンになると寂しくなるんだ、どうしてぼくには結婚写真が無いのかと!」
だから前撮り! という話ですが、それと穴場がどう繋がると…?
私たちがお出掛けの計画を練っていた行き先は、待ち時間無しで遊べる穴場。ソルジャーも行きたいように聞こえましたけど、其処へ前撮りなどと言われても…。
「君は何しに出て来たわけ?」
ぼくにはサッパリ…、と会長さん。
「いきなり出て来て利害が一致で、協力が必須という君の話と、ぼくたちの話はまるで噛み合っていないんだけどね?」
前撮りなんかは無関係だけど、と会長さんは冷たい口調。
「やりたいんだったら適当な場所を教えてあげるから、其処へ相談に行って来たまえ」
「そうだな、プロの方が何かとお役立ちだな」
衣装の手配からカメラマンまで…、とキース君も。
「璃慕恩院でも仏前式の挙式をやっているから、前撮りにも応じてくれる筈だぞ」
「分かってないねえ、ぼくが求めているのは穴場!」
人が大勢の所はちょっと…、とソルジャーが言うと、会長さんが。
「前撮りだったら、人が多くても大丈夫だから! ちゃんと整理をしてくれるしね」
見物客が多かったとしても写真には絶対写らない、と経験者ならではの証言が。
「会場もカメラマンもプロだし、そこはキッチリ!」
「うーん…。でもねえ、ありきたりな場所はイマイチだしねえ…」
ぼくは穴場を希望なのだ、とソルジャーの話は振り出しへ。
「君たちも穴場に行きたいと言うし、これはチャンスだと!」
「あのねえ…。ぼくたちは遊びに出掛けたいだけで!」
「穴場に行くなら、それに便乗したっていいだろ!」
君たちの素敵な穴場と言えば! とソルジャーは指を一本立てて。
「ズバリ、シャングリラ号ってね!」
「「「シャングリラ号?!」」」
なんでまた、と誰もがビックリ、会長さんも唖然とした顔で。
「シャングリラ号って…。も、もしかしなくても…」
「そうだよ、君たちの世界のシャングリラ号のことなんだけど!」
ぼくの世界のシャングリラを呼ぶのに「号」なんてつけることはしないし、と言うソルジャー。
「シャングリラ号は穴場だと思っていたんだけどねえ、君たちの」
たまに遊びに行ってるじゃないか、と鋭い指摘。それはそうですけど、シャングリラ号って…。
シャングリラ号はワープも出来る宇宙船。普段は二十光年の彼方を航行しています。今の技術では建造不可能な筈ですけれども、会長さんが無意識の内にソルジャーから設計図を貰ったらしくて、立派に完成してしまいました。
私たちの世界では「宇宙クジラ」と呼ばれる未確認飛行物体扱い、そのシャングリラ号で宇宙の旅と洒落込むこともたまにはあって。
「ぼくはシャングリラ号を使いたいんだよ、前撮りに!」
「なんでそういうことになるのさ!」
シャングリラ号は結婚式場じゃない、と会長さんが眉を吊り上げて。
「あれでも一応、いざという時の避難場所でね、遊び場なんかじゃないんだけれど!」
「…本当に? その割に楽しくやっているよね、あの船でさ」
乗り込んだ時はワイワイ騒いでイベントなんかも…、と切り返し。
「それに、充実の食料事情! 肉も野菜も凄いと聞くけど?」
「…そ、それはそうだけど…」
船の中でも生産してるし、乗り込む時には積み込みもするし…、と会長さん。
「だけど、遊びの船じゃないから! 普段は真面目に仕事だから!」
「どうなんだか…。ぼくのシャングリラと違って戦闘も無いし」
ぼくから見れば立派な遊び場、とソルジャーも譲りませんでした。
「だからシャングリラ号を貸してよ、前撮りに!」
正確に言うなら後撮りだけど、という発言。
「あの船だったら、ぼくのシャングリラと基本は全く同じだからね!」
素敵な写真が撮れるであろう、とソルジャーは極上の笑みを浮かべて。
「ブリッジに並んだぼくとハーレイとか、公園だとか、もちろん青の間なんかでも! ぼくはウェディングドレスを着ちゃって、ハーレイはタキシード姿でね!」
そういう写真を撮りたいのだ、とウットリしているソルジャー。
「ドレスとかはこれからオーダーするから、明日ってわけにはいかないけれど…。出来次第、ぼくとハーレイは休暇を取るから、君たちと一緒にシャングリラ号へ!」
そして前撮り! と迫られましても、ソルジャーの存在は極秘なわけで。
「無理だよ、君たちをシャングリラ号には乗せられないよ!」
君たちの存在がバレてしまう、と会長さん。
「そんなことになったらパニックなんだよ、SD体制とか、色々バレるし…!」
そういったことは伏せておきたい、という会長さんの話は本当。バレたらホントに大変ですよ!
ソルジャーたちの存在どころか、サイオンすらも秘密になっているのが私たちの世界です。寿命が長くて老けない人間は受け入れて貰えているようですけど、これから先は分かりません。そこへソルジャーが生きてるハードな世界がバレたら、仲間はパニック間違い無しで。
「いいかい、君にとっては普通のことでも、ぼくたちの世界はまるで免疫が無いからね?」
追われるだけでも経験が無いのに、人体実験だの戦闘だのと…、と会長さん。
「いつかそういう時代が来るかも、ってことになったら大パニックだよ!」
だからシャングリラ号には乗せられない、と大真面目な顔。
「前撮りをしたいなら、ホテルとかでね! 君もソルジャーなら分かるだろう!」
「そりゃあ、もちろん君の言うことも分かるけど…。でも、大丈夫!」
前撮りに行くのはぼくだから、と親指をグッと。
「サイオンの扱いは君とは比較にならないからねえ! 情報操作はお手の物だよ!」
ぼくはもちろん、君たちが乗り込んだことも隠せてしまう、とニッコリと。
「ついでに言うなら、シャングリラ号を呼び寄せることも出来るけどねえ?」
偽の情報を送ってもいいし、他にも方法は色々と…、と恐ろしい台詞。
「この秋は地球に来ないと言うなら、そうやって!」
「ま、待って! 来週、来るから!」
会長さんが叫んでからハッと口を押さえて。
「え、えっと…。い、今のは聞いていないってことで…!」
「もう聞いた!」
バッチリ聞いた、とソルジャーは嬉しそうに。
「来週なんだね、えーっと、暫くは衛星軌道上に滞在予定なんだ?」
「だ、だから、君たちを乗せるようには出来ていないと…!」
「忍び込んだらオッケーじゃないか!」
みんなで行こう! と見回すソルジャー。
「えーっと、こっちの面子が九人、ぼくとハーレイを合わせて十一人、と…」
まだまだ余裕、とソルジャーは天井の方を指差して。
「この人数なら、充分に飛べる! シャトル無しでも!」
「ちょ、ちょっと…!」
本気なのかい、と会長さんが慌てましたが、ソルジャーは。
「もう決めた! 来週は前撮りに出掛けるんだよ、君たちも連れて!」
シャングリラ号に密航しよう! と凄い話が。普通に乗るんじゃなくて密航するんですか…?
有無を言わさず決まった密航、ソルジャーはウキウキと帰って行ってしまいました。お昼御飯も食べずに、です。キャプテンの時間の都合をつける必要があるとか何とか言って。
「…か、会長…。エライことになっていませんか?」
密航ですよ、とシロエ君。
「いくら会長がソルジャーでもですね、密航がバレたら大変なんじゃあ…」
「その辺はブルーが上手くやるだろ、あれだけ自信に溢れてたんだし」
サイオンの扱い方も桁外れだし…、と会長さんが頭を振りながら。
「密航に関してはバレないと思う、これだけの人数で入り込んでもね」
「前撮りもですか?」
「そっちも上手くやると思うよ、ぼくたちをお供にゾロゾロと」
得意げな顔が見えるようだ、と大きな溜息。
「ウェディングドレスとタキシードを誂えに行くと言ってたからねえ、今日の間に」
「「「あー…」」」
そうだった、と覚えた頭痛。ソルジャーは私たちが仮装用の衣装なんかでよくお世話になる店の本店と言うか、別格と言うか、オートクチュール専門の店に行くんでしたっけ。
「あそこでも情報は誤魔化すんだよね?」
ジョミー君が尋ねて、会長さんが。
「そうだろうねえ、ぼくだと言えはしないしね?」
「店の方では金さえ入ればいいんだろうが…。それにしても…」
前撮りと来たか、とキース君も頭を抱えています。
「シャングリラ号で前撮りだなんて、前代未聞と言わないか?」
「決まってるじゃないか、カップルで乗ってる仲間もいるけど、前撮りはねえ…」
そんな使い方をした仲間は皆無、と会長さん。
「この船も思い出の場所なんです、って記念撮影はしてるだろうけど…。ウェディングドレスまで持ち込んで前撮りなんかはしてないね」
「だったら、あいつが初ってことかよ?」
サム君の問いに、会長さんは。
「前撮りっていうことになればね。ウェディングドレスはお遊びでたまに出て来るけどね」
「「「うーん…」」」
遊びだったら見たことも何度かありました。会長さん主催のお騒がせなイベントとかで。でも、本物の前撮りなんかはソルジャー夫妻が初なんですね…?
穴場へ遊びに行きたいな、と思ったばかりに、とんでもないことに巻き込まれてしまった私たち。よりにもよってシャングリラ号に密航、其処でソルジャー夫妻の前撮り。とっくに結婚しちゃってますから、ソルジャーの言う後撮りってヤツかもしれませんけど。
誰もがガンガン頭痛がする中、次の日も会長さんの家に集まって過ごしていると。
「こんにちはーっ!」
昨日はどうも、とソルジャーが姿を現しました。今日は私服で。
「昨日はあれから、ハーレイとお店に行って来てねえ!」
採寸して貰ってデザインも決めて…、とそれは御機嫌。
「急ぎで頼む、ってお願いしたから、今日は仮縫いに行くんだよ!」
「はいはい、分かった」
君のハーレイもブリッジから抜け出すんだね、と会長さん。
「何時に行くのか知らないけれども、何処かで私服に着替えてさ」
「ピンポーン! ハーレイにはちゃんと渡してあるしね、私服ってヤツを!」
こっちの世界でデートするのに私服は必要不可欠だから、と胸を張るソルジャー。
「ブリッジを抜けて部屋で着替えたら、ぼくと出発!」
「それで間に合いそうなわけだね、君たちの衣装」
シャングリラ号は週明けに戻って来るんだけれど、と会長さんが質問すると。
「もちろんだよ! 明日の夜には出来るらしいよ、だからバッチリ!」
火曜日の朝には取りに行ける、と満面の笑み。
「予定通りに水曜日に密航、木曜日に戻って来るってことで!」
「…君のハーレイの休暇も取れたと?」
「それはもう!」
ついでに「ぶるぅ」に留守番も任せた、とソルジャーの準備は抜かりなく。
「ぶるぅには山ほどカップ麺やお菓子を買ってやったし、それを食べながら青の間で留守番! 万が一の時には連絡が来るから大丈夫!」
いつもと同じで安心して留守に出来るというもので…、と言ってるからには、私たちも密航コースで確定ですね?
「そうだよ、ちゃんと学校に欠席届を出してよね!」
無断欠席でもかまわないけど、という話ですが、それはこっちが困ります。出席義務が無くても真面目に登校が売りの私たち。欠席届はキッチリと出してなんぼですってば…。
こうしてソルジャー夫妻の前撮り計画は順調に進み、火曜日には欠席届をグレイブ先生に出しに行く羽目に。「前撮りに行くので休みます」とは書けませんから、そこはバラバラ。
「キース先輩はやっぱり法事ですか?」
放課後の「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋でシロエ君が訊くと。
「それしか無かろう、親父にもそう言っておいたし…。大学の同期の寺に行くとな」
そのせいで今日は大荷物に…、と呻くキース君は法衣を持参でした。アドス和尚には「学校の帰りにそのまま出掛ける」と言って来たとかで、衣や袈裟が入った専用鞄を持って来ています。
「キースは家を抜け出すのも大変だよねえ…」
ぼくだと「ブルーの家に泊まりに行く」で済むんだけどな、とジョミー君。
「お坊さんはホントに大変そうだよ、だからなりたくないんだよ!」
「年中無休が基本だよなあ、坊主はよ…」
だけど時間の問題だぜ、とジョミー君の肩を叩くサム君は、ジョミー君とセットで会長さんの弟子という扱い。いずれはお坊さんなコースです。
「時間の問題でも、今は全力で避けたいんだよ!」
ジョミー君が叫ぶと、サム君が。
「それじゃお前は、欠席届になんて書いたんだよ?」
「旅に出ます、って」
「うわー…。家出かよ、それ」
捜さないで下さい、と書けば完璧だよな、というサム君の言葉にドッと笑いが。欠席届は本当にバラバラ、シロエ君は「修行に行って来ます」と書いたそうです。
「修行って…。シロエもついに坊主なのかよ?」
サム君のツッコミに、シロエ君は「いえ」と。
「ぼくとしてはですね、武者修行のつもりなんですが」
「ふうん? でもよ、グレイブ先生的には違うんでねえの?」
坊主に変換されているんじゃねえか、との指摘で起こる大爆笑。多分、そうなっているでしょう。
「ぼくたち、坊主率高いもんね…」
「俺は本職だし、お前もサムも坊主で届けが出ているからなあ…」
男子五人中の三人が坊主という現状ではな、とキース君がクックッと。
「シロエ、お前も坊主予備軍だと書かれていそうだぞ、閻魔帳に」
「えーーーっ!!?」
そんな、とシロエ君の悲鳴で、笑いの渦が。欠席届はやっぱり真面目に書かなきゃですよね?
坊主予備軍なシロエ君をネタに笑い転げて、完全下校の合図が流れてから会長さんの家へと移動。もちろん瞬間移動です。今夜はお泊まり、そして明日には…。
「…密航ですか…」
とうとう明日になりましたか、とシロエ君。
「一泊二日で密航の旅って、そんなの思いもしませんでしたよ…」
「ぼくもだよ。何処の世界に密航なんかするソルジャーがいると!」
シャングリラ号はぼくの指図で動かせるのに、と会長さんも肩を落としています。
「現に今日だって、色々と指揮を…。なのに、どうして…」
このぼくがシャングリラ号に密航、と会長さんが落ち込んでいるのとは対照的に。
「かみお~ん♪ 明日から密航だも~ん!」
御飯もおやつも、準備オッケー! と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「食料は一杯用意したから、ブルーに頼んで積んで貰うの!」
あっちのブルー、とピョンピョンピョン。
「これだけあったら、食堂のお料理、盗まなくても済むもんね!」
「「「あー…」」」
食事の心配を忘れていました、確かに密航者のために食事は出ません。会長さんがソルジャーであろうが、料理は何処からも出て来ないわけで…。
「どんなのを用意したんですか?」
その食料、とシロエ君がリビングに積み上げられた箱を指差すと。
「色々だよ? カップ麺もあるし、レトルトだって!」
御飯も温めるだけで食べられるから、とニコニコ笑顔。つ、つまり…。
「ぶるぅ、料理はしねえのかよ?」
「そだよ、青の間のキッチンはあんまり大きくないし!」
お湯を沸かしたり、レトルト食品を温めるくらいが限界なの! という返事。
「「「うわー…」」」
食料事情は最悪だったか、と今頃になって気が付きました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の美味しい料理や、シャングリラ号の食堂の自慢の料理は全く食べられないわけです。
「…シロエの欠席届じゃないけど…」
「修行の旅だな…」
此処で修行になってしまうのか、とキース君が左手首の数珠レットを一つ、二つと繰ってます。お念仏ですね、そういう気持ちになりますよねえ…。
その夜は「温かい食事にサヨナラのパーティー」、こんな食事は当分出来ない、と時ならぬ鍋になりました。豪華寄せ鍋、締めは雑炊、それからラーメン。一つの鍋ではないからこその雑炊とラーメン、両方です。食べた後は明日に備えて早寝。だって、夜が明けたら…。
「くっそお、寝心地のいい寝床もサヨナラなのか…」
まさに修行だ、とキース君。これまた寝るまで忘れてましたが、密航する以上はゲストルームに泊まるわけにはいきません。青の間の床に雑魚寝だそうで。
「んとんと、お布団は用意したんだけれど…」
ブルーに運んで貰うんだけど、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。会長さんの家の布団だけに上等でしょうが、問題は床。青の間の床は畳敷きではないわけで…。
「俺の経験からして、床が畳から板になっただけで寝心地がグンと…」
悪くなるんだ、とキース君が語る体験談。璃慕恩院での修行中には畳の部屋で寝ていたらしいですけど、他にも色々あったようです。
「青の間、板よりキツイよね?」
「思いっ切り硬いと思うぞ、俺は…」
覚悟しとけよ、と言われて涙が出そうですけど、密航だけに仕方ありません。青の間に入れるだけまだマシというもの、普通は倉庫とかですし…。
「うん、楽しく密航したいよね!」
そして前撮り! と出ました、ソルジャー。キャプテンも連れて、二人とも私服。
「おはよう、今日からよろしくねーっ!」
「どうぞよろしくお願いします」
お世話になります、と頭を下げるキャプテン。
「前撮りをさせて頂けるとか…。夢のようです、ありがとうございます」
「う、ううん…。それほどでも…」
何のおかまいも出来なくって、と会長さんがオロオロと。
「部屋は雑魚寝だし、食事もレトルトとか、カップ麺とか…」
「いえ、それだけあれば充分ですよ」
そうですね、ブルー? とキャプテンが微笑み、ソルジャーも。
「ぼくたちは耐乏生活が長かったしねえ、寝る所と食べるものさえあればね!」
もう最高に幸せだから、と言ってますけど。そりゃあ、前撮りで密航だなんて言い出しただけに、待遇に文句をつけようって方が間違いですよね?
シャングリラ号で前撮りなのだ、と意気込んでやって来たソルジャー夫妻。カメラはもちろん、こちらの世界で誂えた衣装も持って来ています。ソルジャーは「まずは…」と自分たちの荷物から運び始めました。瞬間移動で衛星軌道上のシャングリラ号まで。
「ぼくは整理整頓ってヤツが得意じゃないから、ぶるぅ、頼むよ」
ぼくに思念の波長を合わせてくれるかな? という注文。
「そしたら何処に置くのか指図が出来るし、それをお願い」
「オッケー! えーっと、ブルーたちの荷物が其処で…」
次はぼくたちの荷物をお願い! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。私たちの荷物が次々と消えて、行き先は宇宙みたいです。キース君の法衣の鞄は残りましたが。
「次が食料かな?」
「その前に、お布団! 敷きやすいように運んでおかなきゃ!」
「了解、布団、と…」
それが此処で…、とソルジャーは布団を運び終えた後、食料の箱も移動させました。荷物はこれで全部ですから、この後は…。
「準備完了! 出発しようか、シャングリラ号へ!」
ぼくが頼んだんだから、ぼくの力で! とソルジャーがパチンと指を鳴らして、たちまち迸る青いサイオン。フワッと身体が浮いたかと思うと…。
「「「わわっ!?」」」
トン、と足が床につき、見回せば其処は青の間でした。シャングリラ号の。
「すげえ…」
マジで宇宙に来ちまった、とサム君が声を上げ、マツカ君も。
「一瞬でしたね、いつも何処かへ行くのと同じで…」
「宇宙を飛んだって感覚は少しも無かったわよ?」
ホントにいつもと変わらないわ、とスウェナちゃん。
「でも、シャングリラ号なのよね?」
「本物のね! 其処に荷物もあるだろう?」
君たちの荷物も、食料や布団も、とソルジャーがそれは得意げに。
「ぼくにかかればこんなものだよ、だから前撮りだって安心!」
もう絶対にバレやしないから、と言うソルジャーによると、青の間は既にシールドされているそうです。清掃係も入ろうという気を起こさないよう、意識に干渉済みだとか。根城は確保したみたいですけど、さて、この先は…?
青の間に陣取ったソルジャー夫妻と、巻き込まれて密航した私たちと。ソルジャーは「いい写真を撮るには時間も必要」と、カメラを引っ張り出しました。
「このカメラ、ぼくの世界のヤツなんだけど…。使い方は至って簡単でね!」
これがシャッターで…、と始まる説明。カメラマンは誰でもいいのだとか。
「写真のセンスが謎だからねえ、要はシャッターさえ切ってくれれば」
ぼくがチェックして素敵な写真を選ぶまで、というアバウトさ。
「その場のノリで誰かが撮影、そんな感じでいいと思うよ」
ただ…、と視線が会長さんに。
「ぼくは前撮りに詳しくないから、経験者に衣装のチェックとかをお願いしたいなあ、と…」
「分かったってば! ドレスの裾とか、そういうのだね?」
「そう! それとポーズの指導もお願い!」
参考書は一応、持って来たから…、と抜け目ないソルジャーは何処かでゲットしたらしい前撮り撮影のマニュアルっぽい冊子を会長さんに「はい」と。
「うーん…。本職用かい?」
「ブライダル専門の写真屋さん向けのね!」
これでよろしく、と渡されたマニュアル本を会長さんがパラパラめくっています。その間にソルジャー夫妻は青の間の奥へ着替えに出掛けて行って…。
「見てよ、これ! レースとパールでうんと豪華に!」
凄いだろう、とソルジャーが披露したウェディングドレスはレースをふんだんに使ったもの。パールも沢山ちりばめてあって、長いトレーンがついていて…。
「ベールにもこだわって貰ったんだよ、ここのレースが高級品で!」
「ふうん…。その調子だとティアラも本物だとか?」
会長さんがつまらなそうに訊くと、「当然だよ!」と自信に溢れた答えが。
「このドレスに似合うティアラをお願い、って探して貰って…。ノルディが奮発してくれちゃってねえ、もう本当に本物なんだよ!」
王室御用達の宝石店から取り寄せましたー! というご自慢のティアラ。お値段は多分、聞いてもピンと来ないでしょう。放っておけ、と思う一方、キャプテンの方は…。
「…この服は変ではないでしょうか?」
「「「いいえ!!」」」
お似合いです、と揃って即答。白いタキシードは似合っていました。ソルジャーのドレスと釣り合うデザイン、あのお店、やっぱりセンスがいいです~!
ソルジャーが送った荷物の中にはブーケも入っていたらしく。間もなく立派な花嫁完成、ソルジャーがキャプテンの腕にスルリと腕を絡ませて。
「はい、前撮りの準備オッケー! 青の間はいつでも撮れるからねえ、まずはブリッジ!」
「「「ブリッジ!?」」」
いきなり中枢に出掛けるのかい! と誰もが驚きましたが、ソルジャーは「うん」と。
「シャングリラ号で前撮りだよ? ブリッジで撮らずにどうすると!」
ぼくたちの姿は見えていないから大丈夫! とシールドの出番、それでも写真は撮れますか?
「撮れるよ、サイオンで細工するから!」
さあ、行こう! とソルジャー夫妻は青の間を出発。バレやしないかとコソコソと続く私たち。通路に出るなり、ソルジャーは…。
「此処でも一枚撮っておきたいね、青の間の入口!」
「そうですね。私たちには馴染みの場所ですし…」
此処で撮りましょう、とキャプテンも。二人は入口を背にして立って、会長さんが。
「えーっと、ブルーはもう少し寄って…。そう、其処で!」
「かみお~ん♪ ドレス、直すから、動かないでね!」
裾はこんな感じがお洒落だと思うの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」も例のマニュアル本と自分のセンスとで、いそいそと。
「…仕方ない、俺が写すとするか…」
ジャンケンに負けたキース君がカメラを構えてパシャリと一枚、次は二番手のジョミー君。カメラマンは全員がやると決まってますから、私も一枚。トリがスウェナちゃんで。
「はい、撮りまーす! 幸せそうに笑って下さーい!」
パシャッと撮られた元ジャーナリスト希望のスウェナちゃんの一枚、きっといい出来になったでしょう。ソルジャー夫妻の表情もなかなか良かったですし…。
「ありがとう! ブリッジまでの途中も、いい所があればお願いするよ!」
ソルジャー夫妻はシャングリラ号の中を迷いもしないで歩いてゆきます。自分の世界のと同じ構造の船なんですから、当然と言えば当然ですけど。
「あっ、休憩室! 此処でも一枚!」
「「「はーい…」」」
ちょうど無人で良かったですね、とゾロゾロ入って休憩室でも何枚も。ソルジャーが座ったり、キャプテンと並んで座ってみたりと、椅子を使ってポーズが山ほど。此処だけで何枚撮りましたかねえ、ブリッジに着くまでに疲れそうです…。
あちこちで寄り道撮影しながら辿り着いたブリッジ、さぞかし人が多いのだろうと覚悟して入って行ったんですけど。
「「「あれ…?」」」
人が少ない、と拍子抜け。いつもだったら教頭先生が座っておられるキャプテンの席は空いていますし、ブラウ先生やゼル先生たちの席も無人という有様。他の所も人は少なめで。
「…どうなってるんだ?」
操舵士までがいないんだが、とキース君が言う通り、舵の前も無人。
「普段はこういう感じだけれど?」
オートパイロット、と会長さんが淡々と。
「自動操縦だよ、シャングリラ号の基本はね。衛星軌道上ともなったら、もうお任せ」
何かトラブルでも起きない限りは自動操縦、という台詞に、ソルジャーが。
「らしいね、こっちのシャングリラ号は。…ぼくの世界じゃ有り得ないねえ!」
「まったくです。レーダー係くらいしかいないようですねえ…」
私たちの世界では考えらない光景ですよ、とキャプテンも。
「ですが、これなら皆さんにどいて頂かなくても…」
「うん、素敵な写真が撮れるってね!」
何処から撮ろうか、とソルジャーはウキウキ。
「キャプテンの席もいいけど、まずは舵かな?」
「そうですね。舵輪を挟んで撮りましょうか」
「最初のがそれで、君が舵を握っている姿も撮りたいねえ!」
君の後ろにぼくが立って…、とソルジャーの注文、そういう写真も撮らされました。舵の向こうへ回ってシャッター、お次はキャプテンの席に移って…。
「最初は君が座って、と…。次は交代して…」
「ブルー、二人で座りませんか?」
膝の上に座ればいけますよ、とバカップルならではのキャプテンの発言、その案をソルジャーは嬉々として採用。
「此処まで来たってバカップルなのかよ…」
「密航してまで前撮りって所で、もう充分にバカップルだと思うがな…」
普通やらんぞ、とキース君。自分たちの世界のシャングリラ号を放置で密航、こっちの世界で前撮りしているソルジャーとキャプテンという船のトップな夫妻は確かにバカップルでしょう。自分の世界では無理だからって、前撮りなんかをやりに来るなんて…。
ブリッジでの撮影が済んだら、公園へ移動。芝生に東屋、その他もろもろ、絵になる撮影スポットがてんこ盛りだけに、ソルジャー夫妻はポーズを取りまくり、私たちは写真を撮らされまくり。次は天体の間だと言われましたが…。
「「「えー…」」」
一休みしたい、と誰からともなく漏れた本音に、ソルジャーも「うん」と。
「とっくにお昼を過ぎてたっけね、一度休んで、それから続きを」
「そうですねえ…。夜景に切り替わるまでには時間はまだまだありますし」
キャプテンが頷き、私たちは。
「「「夜景?」」」
「そうだけど? 公園もブリッジも、それに通路も夜は照明が暗くなるしね!」
その時間にも写さなくちゃ、とソルジャーがニコリ。
「公園なんかは徐々に暗くなるし、夕方からは公園で何枚もだよ!」
「「「うわー…」」」
そこまでするのか、と力が抜けそうな足で青の間に戻る途中で、通路の向こうから足音が。一瞬、ドキリとしましたけれども、やって来た人は気付きもしないでスタスタ歩いてゆきました。ブリッジにいた人と同じで、私たちが見えていないのです。
「この程度のことでビクビクしない! もっと堂々と!」
歩け、歩け! とソルジャーにどやされながら戻った青の間、其処での食事は…。
「かみお~ん♪ お湯はたっぷり沸かしたからねーっ!」
「ぼくのに入れてよ、待ち時間が五分みたいだから!」
「オッケー!」
他のみんなも順番にね! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。ウェディングドレスが汚れないよう、私服に着替えたソルジャーを始め、誰の食事もカップ麺で。
「…同じ麺なら、ぶるぅの特製フカヒレラーメンが食べたかったです…」
シロエ君がポツリと零して、ジョミー君が。
「食堂に行けば、きっとラーメン、あるんだよねえ…」
「あるよ? ラーメンもあるし、担々麺もね」
シャングリラ号の食堂は麺類も豊富、と会長さんもカップ麺を啜りながら。
「密航中でなければ、ぼくなら食べ放題なのに…。我儘も言いたい放題なのに…!」
ネギ多めだとか、チャーシューをもっと増やしてくれとか…、とブツブツと愚痴る会長さん。なまじトップなソルジャーだけに、侘しさは私たち以上でしょうねえ…。
悲しすぎるカップ麺の昼食の後は、またまたソルジャー夫妻がウェディングドレスとタキシード着用、天体の間での撮影から。階段やら、階段の上のフィシスさん愛用の占い用のテーブルと椅子やら、撮影スポットは此処も沢山。それが済んだら色々な場所で写して回って、公園に行って。
「うん、いい感じ! これから暮れていくからねえ…」
「暗くなる直前が一番いいのは何処でしょうねえ…」
もちろん夜景も撮りましょう、とソルジャー夫妻は元気一杯、私たちの方はゲンナリで。
「…まだ撮るのかよ…」
「公園だけでは済まないよ、夜景…」
ブリッジも夜景アリなんだよ、とジョミー君が嘆けば、シロエ君も。
「通路もです。…それに農場も暗くなりますから」
「「「あー…」」」
もうその他は考えたくない、と泣きの涙の私たち。それだけ頑張って撮って回っても、撮影の後の夕食タイムは…。
「えとえと、レトルトカレーと、ハヤシライスと…。ハンバーグとかもあるんだけど!」
「ぼくはハンバーグで!」
「私はカレーでお願いします」
前撮りバカップルはレトルトでオッケー、温めるだけの御飯も粉末スープもまるで気にしていませんけれど。
「…ぶるぅのハヤシライスが食べたい…」
「この際、オムレツでもいいですよ…」
「…食堂に行けば、夜の定食もカツカレーもあるな…」
多分、ハンバーグもあるんだろうな、とキース君でなくても募る侘しさ、会長さんは。
「今夜の定食、ハンバーグどころかステーキだよ。…希望者にはガーリックライスもアリで」
「「「ガーリックライス…」」」
この御飯との差は何なんだろう、と空しさMAX、けれど気にしないバカップル。
「明日は朝一番に公園に行かなきゃいけないねえ!」
「ええ、明るくなる前から待っていましょう」
きっと素敵な写真が沢山撮れますよ、と盛り上がっているソルジャー夫妻。
「「「…夜明け前…」」」
どこまで元気な二人なんだ、と打ちのめされても、只今、前撮りで密航中。逃げ場所は無くて、温かい御飯も食べられなくて…。
「「「………」」」
トドメはこれか、と私たちの心を季節外れの寒風が吹き抜け、青の間に敷かれた何組もの布団。雑魚寝は会長さんの家やマツカ君の別荘でもやってますけど、床が違います。
「…やはり背中にきやがるな、これは」
明日の朝はきっと腰が痛いぞ、とキース君が唸って、シロエ君が。
「布団があるだけマシなんでしょうが…。でも、これは…」
「惨めすぎだぜ、でもって、なんで俺たちだけなんだよ!」
ブルーもだけどよ、というサム君のぼやき。青の間に備え付けの会長さんのベッドは、バカップルのものになっていました。そこにもぐり込んでいるソルジャー曰く…。
「ぼくたちは明日も前撮りだからね、しっかり寝ないといけないんだよ!」
「また撮り直し、というわけにもいきませんから…。やはり睡眠をしっかり取りませんと」
目の下にクマや、ブルーの肌に艶が無いというのは論外です、とキャプテンも。
「それでは、おやすみなさいませ」
「おやすみなさいーっ!」
今夜は睡眠第一だから! とソルジャー夫妻の夫婦の時間は無いようですけど。
「…あのベッドは本来、ぼくのなんだよ…」
背中が痛い、と会長さんがゴソゴソ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「ごめんね、ぼくだけ、いつもの土鍋…」
「仕方ねえよな、ぶるぅの土鍋は此処の備品だしよ」
よく寝て明日の食事を頼むぜ、とサム君の声。
「「「…食事…」」」
明日もレトルト三昧だけど、と泣けど喚けど、逃げ出せないのが密航者。それでもなんとか眠れたようで、次の日の朝は…。
「さあ、張り切って前撮りに行こう!」
公園が明るくなる前に! と無駄に元気なウェディングドレスのソルジャーがブチ上げ、私たちは腰や背中を擦りつつ。
「…今日で終わりだよな?」
「終わりですけど、ぼくの気力も尽きそうです…」
前撮りは二度と御免です、とシロエ君が零して、会長さんも「二度と密航してたまるか」と自分の境遇を嘆き中。シャングリラ号でこんな惨めな思いをするとは、人生、ホントに分かりません。ソルジャー夫妻の前撮りアルバム、どうか撮り直しだけはありませんように~!
宇宙で前撮り・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
ソルジャー夫妻の前撮りならぬ後撮りのために、なんと、シャングリラ号に密航する羽目に。
しかも食事はレトルト三昧、寝る時も青の間の床に布団な悲劇。二度と御免ですよねえ…。
次回は 「第3月曜」 9月20日の更新となります、よろしくです~!
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こちらでの場外編、8月と言えば、お盆の棚経。今年もスッポンタケのために…。
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