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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

取れない免許
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。




シャングリラ学園、今日も平和に事も無し。学園祭の話題が出始める頃で、何かと賑やかではありますが…。でもでも、特別生な上に学園祭で何をするかは決まっているのが私たち。「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋を公開しての喫茶店です。
サイオニック・ドリームで世界の観光名所なんかを体験できるのが売りの、その名も『ぶるぅの空飛ぶ絨毯』。サイオニック・ドリームは会長さんがやってますけど、表向きは「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議パワーという謳い文句。サイオンは明らかに出来ませんしね!
1年A組のクラスメイトや、他のクラスは学園祭に関心大ですけれども、私たち七人グループはといえば…。
「…キース来ねえな、法事だっけか?」
聞いてねえけど、とお昼休みにサム君が。ランチを食べに来た食堂です。
「月参りの方じゃないですか? 法事じゃなくて」
法事だったら欠席ですよ、とシロエ君。
「あれは一日潰れますしね、欠席届を出す筈です。でも、朝のホームルームで欠席だとは…」
「言ってなかったね、グレイブ先生…」
確かにそうだ、とジョミー君も。
「後から来るってことだよね? だったら、やっぱり月参りかな」
「そうね、午後から来るってことね」
たまにあるもの、とスウェナちゃんが言う通り。元老寺の副住職を務めるキース君には、月参りという仕事があります。その日は檀家さんの家に行ってから学校なわけで…。
「大変ですよね、キース先輩も。…制服で月参りには行けませんしね」
「だよなあ、坊主は衣を着ていなくっちゃな」
この後は学校がありますから、とは言えねえしよ、とサム君が頭を振っています。
「此処からだったら学校の方が近そうだ、と思ったってよ、着替えに戻るしかねえんだよなあ…」
「学校の方も、制服で来ることに決まってますしね…」
お坊さんの衣も私服扱いになるんでしょうね、とシロエ君もフウと溜息を。法衣と袈裟はお坊さんの制服ですけど、学校の制服とは別物です。そのままで来たらコスプレ扱い、校則違反になること間違いなし。キース君は月参りの度に着替えに帰って出直しなわけで、本当にご苦労様としか…。



シロエ君の読みが正解だったらしく、キース君は午後の授業が始まって直ぐに現れました。「すみません、月参りで遅れました」と教室の後ろの扉から。
特別生には出席義務さえ無い学校だけに、授業をしていたエラ先生も気にしていません。普通の生徒が遅刻して来たら、その場でお説教ですが。
キース君は何も無かったような顔で自分の席に着いて、授業の方も粛々と。次の時間も淡々と終わって、終礼だってグレイブ先生は普段と何の変わりもなくて…。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
授業、お疲れ様ぁ! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が迎えてくれた放課後の溜まり場。秋とは言っても残暑を引き摺った季節なだけに、梨のクレープが出て来ました。甘く煮込んだ梨を挟んでリキュールで仕上げて、バニラアイスが添えてあります。
「有難い…。これは疲れが取れそうだ」
頂きます、と合掌しているキース君。月参り、そんなに疲れましたか?
「当たり前だろうが! クーラーの効いた教室にいたら分からんだろうが、暑かったぞ!」
暑さ寒さも彼岸までとか言うくせに…、と仏頂面。秋のお彼岸は終わりましたけど、今年はしつこく暑いんです。真夏並みではないですけれど。
「しかもだ、今日の月参りは自転車で回るコースだったんだ!」
「「「あー…」」」
それはキツイ、と誰もが納得。暑い季節はお坊さんの衣もスケスケとはいえ、全く涼しくないというう話は嫌と言うほど聞かされています。スケスケの下に着ている白い着物が暑いんだそうで、重ね着状態になってますから。
「今日は自転車だったのかよ…」
そりゃ疲れるわ、とサム君がキース君の肩をポンポンと。
「俺もジョミーも棚経の時は自転車だしなあ、辛さは充分、分かるぜ、うん」
「棚経に比べればマシなんだが…。それでもキツイものはキツイな」
ついでに他の寺の坊主と出くわしたから余計に気が滅入った、と言ってますけど。月参りに行くお坊さんって必ず決まってますよね、ダブルブッキングは有り得ませんよね…?



門前の小僧習わぬ経を読むという言葉通りに、キース君のお蔭でお寺事情に嫌でも詳しい私たち。何処の家でも、月参りを頼むお寺は一ヶ所だけの筈です。元老寺だったら元老寺だけで、他のお寺からは来ない筈。アドス和尚かキース君かと、お寺の事情で行くお坊さんは変わっても。
「…先輩、まさかのダブルブッキングが起きたんですか?」
行ったら他のお坊さんがお経を上げてましたか、とシロエ君が訊くと。
「いくらなんでも、それだけは無いと思うんだが? …いや、たまにあるかもしれないが…」
このご時世だし、とキース君。
「引越して来たから菩提寺が家の近所に無いのは、よくあるケースだ。そうなってくると葬儀屋に頼んで紹介して貰うことになるから…」
丸投げしたら手違いが起こらないとは言い切れないな、と凄い話が。丸投げって…?
「坊さんの紹介を頼んだ以上は、月参りもその坊さんなんだが…。会館専門の坊主もいるしな、忙しすぎて月参りに行けなくて代理を頼んで、そこでミスったら…」
ウッカリ二人に頼んだ場合は起こり得るな、というのが月参りのダブルブッキング。でも、元老寺だと有り得ないってことは、どうして他のお寺のお坊さんに遭遇しちゃったんですか?
「間違えるなよ、檀家さんの家で会ったというわけじゃない」
月参りの途中で出くわしたんだ、と溜息をつくキース君。
「…暑い最中にすれ違ったというだけなんだが、向こうは車だったんだ!」
「「「車?」」」
「軽自動車だったが立派に車だ、エアコンを効かせてそれは涼しそうに!」
俺は自転車で走っているのに、と聞かされたら分かったキース君の気分。きっと心の底から羨ましいと思ったんでしょう、車で走る月参り。
「楽して回っていやがるな、とは思ったんだが、これも修行の内だと気持ちを切り替えてだな…。檀家さんの家で月参りを済ませて、次の家へと急いでいたら…」
「また車ですか?」
シロエ君の問いに、キース君は。
「車だったら、もう耐性は出来ていた! 今度はスクーターが来やがったんだ!」
あれこそ坊主の必需品だ、という言葉で思い出しました。アドス和尚も棚経の時はスクーターだと聞いています。それにスクーターで走るお坊さん、けっこう見掛けるものですしね?



棚経の季節でなくても、月参りで走るのがお坊さん。アドス和尚も檀家さんの家が遠い時には車で行ったりするそうですけど、スクーターも愛用しています。
ところが、キース君にはスクーターの許可が未だに下りないのでした。副住職になった時点で駄目だったからには、この先も当分、許可は出そうにありません。
「…スクーターでしたか…。それは羨ましいですね…」
先輩の場合は車以上に、とシロエ君の顔に同情の色がありありと。
「キース先輩、スクーターには乗れませんしね…」
「親父のせいでな! 普段だったら、スクーターのヤツに会っても滅入りはしないが…」
先に車に出会った分だけ、羨ましいと思う心が増えていたのに違いない、と左手首に嵌めた数珠レットの珠を繰っています。心でお念仏を唱えている証拠。
「…俺としたことが、まだまだ修行が足りないらしい」
「仕方ないですよ、暑い中を自転車なんですから」
「…しかもチラリと見られたような気がして、余計にな…」
なんで自転車で走っているのだ、と思われた気がするらしいです。いつもだったら月参りの途中に出会ったお坊さんは誰もが戦友、「頑張れよ」と心でエール交換なのに。
「やっぱり暑さが悪いんだろうな、そんな気持ちになるってことは」
心頭滅却すれば火もまた涼し、と言った坊主もいたというのに…、と再び繰られる数珠レット。
「俺の修行がいつまで続くか分からんが…。早くスクーターに乗れないものか…」
「直訴しかないと思うけど?」
アドス和尚に、と会長さんが口を開きました。
「待っていたんじゃ、スクーターに乗れるチャンスは四十歳だね」
「「「四十歳?」」」
どういう根拠でその数字が、と私たちは驚いたんですけれども、キース君は。
「そうか、あんたもそう思うのか…。紫の衣になるまでは無理、と」
「アドス和尚は厳しいからねえ…。君は全く年を取らないわけだし、自転車でいいと思っていそうだよ? 相応しい人物になるまではね」
それの目安が紫の衣、と会長さん。今のキース君は萌黄色、いわゆる黄緑色なんですけど、お坊さんとしての階級が上がれば松襲という色になるとか。紫っぽくも見える青色、その上になったら紫の衣。紫の上は緋色しか無いそうですから、紫は偉い色なんでしょうね。



会長さん曰く、紫色の法衣を着られる年齢の下限が四十歳。そこまではいくら修行を積んでも着られない色で、大抵のお坊さんは紫色で終わりだそうで。
「緋色は七十歳になってから、というのも大きい問題だけれど、許可の方もね…」
簡単には下りないものなのだ、と会長さん。
「だから普通は、紫になれば偉いお坊さんという認識かな。その偉い人を自転車で走らせているとなったら、アドス和尚の評価が下がりそうだし」
「「「あー…」」」
そういう理由で渋々許可を出すわけか、と理解しました。対外的な圧力と言うか、周囲の視線に負けると言うか。アドス和尚としては、四十歳でも自転車でいいと思っていそうですけど。
「四十歳かよ…。今から何年かかるんだよ?」
お前、それまで待てるのかよ、とサム君が。
「ずっと自転車で走り続けるのかよ、クソ真面目に? 先は長いぜ」
「…分かってるんだが、あの親父が許可を出すわけが…」
ブルーが一筆書いてくれたら別なんだが、とキース君の視線が会長さんに。
「銀青様の仰せとなったら、親父は無条件降伏だからな」
「生憎と、ぼくにそういう趣味は無くてね」
これでも修行をダブルで積んでいるわけで…、と会長さん。
「璃慕恩院で修行した後は、恵須出井寺にも行ってたと言った筈だけど? あそこはキツイよ」
「…俺の修行など、たかが知れていると言いたいわけだな?」
「悪いけど、ぼくから見れば、ぬるま湯。…スクーターは自力で勝ち取りたまえ」
直訴しろと背中は押してあげたし、と銀青様は助けてあげないようです。
「思い立ったが吉日と言うしね、これも何かの御縁だろう。駄目で元々!」
「分かった、親父に掛け合ってみる」
それもまた修行というものだろう、とキース君は決意を固めました。
「妙な問答を吹っ掛けられても、努力はしないと…。スクーターのために」
「頑張るんだね、副住職。…駄目だった時は残念パーティーをしてあげるから」
「かみお~ん♪ 明日は土曜日だもんね!」
お祝いのパーティーが出来るといいね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が飛び跳ねています。明日は会長さんの家で昼間から焼肉パーティー、お祝いの方か、残念な方か、どっちでしょうね?



次の日、私たちは朝からワクワクと会長さんの家に出掛けてゆきました。会長さんの家から近いバス停に集合ですけど、キース君は抜き。今日のパーティーの主役ですから、満を持しての登場がいいと会長さんが言っていたからです。
「キース先輩、今日は重役出勤ですしね…。お祝いだったらいいんですけど」
会長さんの家まで歩く途中も、話題はひたすらスクーターで。
「どうなんだろうなあ、俺は危ない気がするんだけどよ」
なんたってアドス和尚だぜ、とサム君が。
「棚経の時に自転車でお供する年もあるけどよ…。容赦なくスクーターで飛ばしていくしよ」
全力で漕ぐしかねえんだぜ、と体験者ならではの重い言葉が。
「ジョミーも何回もやられた筈だぜ、あのシゴキ」
「…うん、朦朧としてくるよね…。スピード、落としてくれないもんね」
前はキースがアレをやられていたんだよね、とジョミー君も。
「住職の資格を取るよりも前は、お父さんのお供で走ってたんだし…」
「そうですよ? ジョミー先輩たちと会うよりも前にもやってた筈です」
シロエ君は事情通でした。私たちよりも付き合いが長いですから、キース君がお寺を継ぐのを拒否するよりも前の話も知っているわけで。
「跡継ぎがいます、って披露しなくちゃいけませんしね。小学生の時からやっていたんだと思いますよ。棚経のお供」
「…子供でも容赦なく飛ばしてたのかよ?」
スクーターで、とサム君が震え上がりましたが、シロエ君は。
「いえ、そこまでは聞いてませんから、加減していたんじゃないですか?」
「だよねえ、子供じゃついてけないよ」
いくらキースでも絶対に無理! とジョミー君。よっぽど飛ばして行くんでしょうけど、そのスクーターがキース君の望みで希望。許可が下りてるといいですよねえ…。



スクーターに乗る許可は出たのか、駄目だったのか。会長さんの家に着くなり尋ねましたが、会長さんも「そるじゃぁ・ぶるぅ」も口を揃えて。
「さあねえ…? これに関してはサプライズを希望で、見ていないんだよ」
「ぼくも見てない! キースから直接聞きたいもんね!」
それがいいと思うの! と答えた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、バースデーケーキを彷彿とさせる立派なケーキを用意していました。ベリーと生クリームで華やかに飾って、真ん中にホワイトチョコレートらしきプレートが。でも、真っ白。
「これはキースが来てから書くの! お祝いなのか、残念なのかが分からないから!」
どっちかなあ? と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が首を傾げた所へチャイムの音がピンポーンと。いよいよ主役の登場です。出迎えに走った「そるじゃぁ・ぶるぅ」と一緒に現れたキース君を、私たちは盛大な拍手で迎えたのですが…。
「…悪い、その拍手は無駄になったようだ」
親父は許してくれなかった、と肩を落としたキース君。「馬鹿が!」と一喝されて終わってしまったそうです、スクーターの許可を巡る話は。
「…問答さえも無かったのかよ?」
「まさに問答無用だったな」
聞く耳さえも持たなかった、と項垂れている副住職。「そるじゃぁ・ぶるぅ」がケーキのプレートに「残念でした、お疲れ様」とチョコレートで書き入れ、キース君が入刀を。
「クソ親父めが!」
バアン! とケーキナイフでザックリ切られたケーキですけど、キース君の役目はそこまでです。綺麗に切れるわけがないですから、「そるじゃぁ・ぶるぅ」と交代で…。
「…残念ケーキか…」
そして昼飯は残念パーティーになるわけなのか、とケーキを食べるキース君が背中に背負った哀愁の二文字。気の毒ですけど、スクーターはやっぱり…。
「四十歳まで無理なんだろうな、俺の衣が紫に変わる日まではな!」
残念すぎる、とケーキをパクパク、ヤケ食いと言うかもしれません。お相伴する私たちの方は、残念ケーキでも、お祝いケーキでも、美味しければ充分ですけどね…。



お昼御飯は焼肉パーティー、祝賀会ならぬ残念パーティー。さて、と焼肉を始めた所で、シロエ君が突然、思い付いたように。
「そうだ、キース先輩、準備だけでもしておきませんか?」
「準備?」
「スクーターに乗る準備ですよ! 免許が無いと乗れませんからね、スクーターには」
免許だけでも取りませんか、と前向きな提案。ちょっと気分が上向くのでは、と。
「それはそうかもしれないが…。俺が免許を取ったとバレたら、親父が何と言い出すか…」
コッソリ乗ってはいないだろうな、と勘繰りそうだ、と言われてみればヤバいかもです。運転免許を持っているなら、誰かの家に隠しておいたスクーターに乗って走ることが可能になりますし…。
「バレちゃうのかな、運転免許を取ってたら?」
ジョミー君の問いに、会長さんが。
「バレるんだろうねえ、免許の交付はお役所だからね」
キースが家族と暮らしている以上は何処かでバレる、とキッパリと。
「一人暮らしなら安全だけどね、キースの場合は確実にバレてしまうだろうねえ…」
「…俺もそう思う。免許を取ったら、確かに気持ちは上向きそうだが…」
現実問題として無理なんだ、とキース君が零した途端に。
「こんにちはーっ!」
部屋の空気がユラリと揺れて、紫のマントが翻りました。
「キースの残念パーティーだって? 美味しそうだよね、焼肉パーティー!」
ぼくも食べる、と一瞬にして着替えてしまった私服。会長さんの家に置いてある服です。ソルジャーは空いていた椅子に腰掛け、ちゃっかり面子に混ざってしまって。
「昨日から様子は見てたんだけどさ、駄目だったんだ? スクーター」
「キッチリとな! 俺は四十歳まで乗れないんだ!」
紫の衣になるまでは自転車で走るしかないんだ、とキース君。
「気分だけでも運転免許が欲しい所だが、それさえ取れない身の上なんだ!」
色々な意味で残念パーティーなんだ、とジュウジュウと肉を焼くキース君ですが…。
「その免許って、無いと駄目なのかい?」
無免許の人もいるようだけど、と言うソルジャー。とんでもないことをサラッと口にしてくれましたけれど、無免許運転は駄目ですってば…。



意外に多いのが無免許運転。スクーターとかバイクはもとより、普通の車や軽トラックでも。一度も自動車学校に通ったことが無いのが自慢の人も存在すると聞きます。けれど普通は免許無しで乗ったら警察のお世話になるわけですから…。
「あんたは俺を前科一犯にしたいのか!」
無免許でスクーターに乗ったと警察にバレたら捕まるんだが、とキース君。
「そうなったら親父がどう出るか…。殴る蹴るくらいで済めばいいがな、来る日も来る日も罰礼を三千回とか言われそうだぞ、間違いなく!」
「罰礼って、どんなのだったっけ?」
「南無阿弥陀仏に合わせて五体投地だ、スクワット並みにキツイんだ!」
百回も続ければ膝が笑う、と肩をブルッと。
「修行中なら一日に三千回もアリだが、毎日とまでは言われないぞ!」
「ふうん…? でもね、無免許運転の人もけっこういるからねえ…」
君が知ってる所で言うならハーレイだろうか、と何故か教頭先生の名前が。車を運転してらっしゃいますけど、まさか免許を持ってないとか?
「ちょっと、ハーレイって…。あれでもゴールド免許だよ?」
無免許どころか模範的ドライバーの内なんだけど、と会長さん。
「妙な話を吹き込まないで欲しいね、シャングリラ学園の教頭が無免許だなんて!」
「えっ、でもさ…。無免許じゃないかと思うんだけど?」
ぼくのハーレイと同じ理屈で、と謎な台詞が。キャプテンは確かに無免許でしょうが、それは別の世界の人間だからじゃないでしょうか。運転免許を取りたくっても、必要な書類が揃うとはとても思えませんし…。
「違うよ、車の話じゃなくって! もっと大きな!」
「…大型特殊免許かい?」
会長さんが訊くと、「その一種かも…」とソルジャーは顎に手を当てて。
「ぼくの世界じゃなんて呼ぶのか詳しくなくてね、興味が無いから」
「「「は?」」」
「だってそうだろ、人類が決めたルールなんかはミュウには意味が無いってね!」
だから免許の名前も知らない、とソルジャーは言っていますけど。教頭先生がソルジャーの世界で必要な種類の免許なんかを取る理由が無いと思うんですが…?



教頭先生は無免許なのだ、というソルジャーの主張。しかもソルジャーの世界で言う所の免許、そんな代物はこっちの世界じゃ誰も必要としていません。車やバイクを運転できれば充分、よくて飛行機といった感じじゃないんでしょうか。あれっ、飛行機…?
まさか、と頭に閃いたもの。飛行機よりも遥かに大きくて、空を飛ぶもの。
「そう、それだよ! シャングリラだよ!」
こっちの世界じゃシャングリラ号と呼ぶんだっけか、と笑顔のソルジャー。
「あれの免許は持っていないと思うんだけど! こっちのハーレイ!」
ぼくのハーレイも無免許だから、とソルジャーは威張り返りました。
「なにしろ、ぶっつけ本番だったし…。アルタミラではずっと檻の中だし、免許も何も!」
とにかく宇宙に飛び出しただけだ、と凄すぎる話。宙航とやらに一隻だけあった宇宙船に乗って飛び立ったとかで、免許などは持っているわけがなくて。
「もうその後は、飛びさえすればいいってね! それで充分!」
そして無免許で今に至る、と得意顔。
「人類の世界で免許を取りに出掛けたとしたら、一発で合格するんだろうけど…。そんなつもりも予定も無いしね、無免許人生まっしぐらってね!」
今日もシャングリラは無免許運転で飛んでいる筈だ、と言われて知った無免許な事実。キャプテンが無免許運転だったとは知りませんでした。すると、教頭先生も…?
「そうじゃないかと思うんだけどさ、どうなってるわけ?」
ソルジャーに訊かれた会長さんは、苦々しい顔で。
「…そっちの方なら無免許だねえ…。免許があるならゴールド免許の筈だけど!」
違反はともかく無事故だから、ということは…。
「会長、もしかしてシャングリラ号は免許無しでも操縦できるんですか!?」
ぼくでも動かしていいんでしょうか、とシロエ君が訊き、ジョミー君も。
「ぼくでも操縦できちゃうわけ? あの大きいのを?」
「うーん…。ハーレイは無免許なんだけど…。その他は、ちょっと…」
「「「え?」」」
「一応の基準はあるんだよねえ、あれを動かす以上はね!」
ハーレイが乗っていない時には他の仲間が動かしてるし、と会長さん。そっか、全員が無免許運転ってわけじゃないんですね、シャングリラ号は…?



会長さんが話してくれた所によると、シャングリラ号を操縦するにはシミュレーターを使った練習なんかも要るようです。その上、練習を始めるためには…。
「「「運転免許?」」」
「そうなんだよねえ、誰が決めたか謎なんだけどさ…」
最低でも原付バイクの免許が必要、と会長さん。
「つまり、君たちではスタートラインに立てないわけだよ。シャングリラ号を動かすにはね!」
「…あんた、免許を持っていたのか?」
聞いたこともないが、とキース君が突っ込みを。
「それともソルジャーも無免許とやらでかまわないのか、シャングリラ号は?」
「そもそも、操縦しないしねえ…。わざわざ操縦するくらいだったら、丸ごと運ぶよ」
サイオンで運んだ方が早い、と天晴れな返事。
「それにね、ぼくが操縦するとしたって免許は要らない。ハーレイと同じで特例ってね」
現場で経験を積んだからいい、と例外扱いになるのだとか。教頭先生も現場での経験豊富だからという理由で無免許、他にも無免許組がいるそうですけど…。
「…今からとなると、試験みたいなのがあるんだよ。実技と、筆記と」
受験資格は原付免許くらいはあるということ、と私たちの前に聳えたハードル。私は別に動かしたいとも思いませんけど、男の子たちはそうではなかったようで。
「…原付かよ…」
「つまりは俺にも無理なわけだな、スクーターの免許が取れない以上は…」
原付免許が欲しくなった、とキース君が言えば、シロエ君も。
「ぼくもです。それさえあったら、シャングリラ号に乗った時には実技の練習、出来ますよね?」
どうなんですか、と訊かれた会長さんは。
「そりゃまあ、駄目とは言わないだろうね、係の方も」
シミュレーターは使わせて貰えるだろう、という返事。
「今の君たちでも出来るんだけどね、シミュレーターで遊ぶくらいのことは。だけど遊びは練習にカウントされないし…」
実技試験を受けるために必要な時間をカウントして欲しいのなら、原付免許、という話。持っています、と届け出ておけば、シミュレーターを使った時間が公式練習扱いになるのだそうです。所定の時間をクリアした時は、実技試験への道が開けるわけですか…。



シャングリラ号を動かすためのスタートラインは原付免許。それを知った男の子たちは、俄然、色めき立ちました。原付免許さえ持っていたなら、シャングリラ号に乗った時にはシミュレーターを使って練習。塵も積もれば山となる、ですし…。
「いつかは動かせるかもしれないんですね、シャングリラ号を!」
やってみたいです、とシロエ君が声を上げ、ジョミー君だって。
「ぼくもだよ! やっぱり憧れだよね、面舵いっぱーい!」
「俺もやりてえ…。カッコいいよな、宇宙船だもんな」
サム君もウズウズしている様子で、マツカ君までが。
「一度くらいは動かしたいですね、あんな大きな宇宙船ですし…」
「俺もやりたいのは山々だが…。原付免許が…」
あの親父が立ちはだかっている間はとても無理だ、とキース君だけがぶつかった壁。えっ、シャングリラ学園の校則の方はどうなんだ、って? そっか、校則…。
「原付バイクは禁止だったと思うわよ?」
校則で、とスウェナちゃんも私と同じ考えに至ったようです。
「学校に乗ってくるのはもちろん、免許を取るのも駄目だった筈よ」
「「「あー…」」」
そうだった、と残念そうな声が漏れたのですけど、会長さんが。
「免許についても、特別生は除外だったと思うけど? 親の許可さえ貰っていればね」
「本当ですか!」
だったら取れるわけですね、とシロエ君が躍り上がって、他のみんなも。キース君以外は。
「…また俺だけが駄目なのか…」
親父が許可を出すわけがない、とキース君にだけアドス和尚という分厚い壁が。原付免許を取ったとバレたら激怒しそうなアドス和尚がいるわけですから、シャングリラ号の操縦も無理。
「…なんか、お前ってツイてねえよな…」
スクーターも駄目で、シャングリラ号も駄目なのかよ、とサム君が。
「分かった、俺も付き合ってやるから。…原付免許は四十歳まで待つことにするぜ」
その頃には俺も住職の資格を持ってるかもな、とサム君ならではの人の好さ。これはなかなか真似出来ませんよね、シロエ君とかジョミー君とかは原付免許を取りに出掛けそうですよ?



スクーターに乗っての月参りも駄目で、シャングリラ号の操縦資格も手に入れられないキース君。四十歳になったらスクーターの許可は下りそうですけど、それまでは原付免許がお預け、シャングリラ号の操縦資格も貰えない始末。サム君は付き合って四十歳まで待つそうですが…。
「ごめんね、ぼくはお先に取らせて貰うから!」
原付免許も、シャングリラ号の操縦資格も…、とジョミー君。
「ついでに住職の資格の方はさ、もう永久に取らないってことで!」
「おい、貴様! 原付免許の件はともかく、坊主の方は銀青様の直弟子だろうが!」
なんという罰当たりなことを言うのだ、とキース君が怒鳴っても、馬耳東風で。
「それとこれとは関係無いし? シロエとマツカも一緒に取るよね、原付免許?」
「そうですね。ジョミー先輩たちと一緒に行くのが良さそうですね」
「ぼくもそっちを希望です。確か一日で取れるんですよね」
筆記試験とかと講習だったでしょうか、とマツカ君。あれって、そんなに簡単なんだ?
「らしいですよ? ですから誰でも乗ってるんですよ」
難しいなら、もっと少ない筈ですよ、と聞いて納得。一日で取れるような免許でシャングリラ号を動かす資格のスタートラインって美味しすぎです。男の子たちがキース君を捨てても取りたがるわけで、私もちょっぴり欲しいような気が…。
「ジョミーたちが行くなら、私も一緒に行こうかしら?」
それさえあったらシャングリラ号を動かしたくなった時に便利だし、とスウェナちゃんも乗り気になったようです。よし、私も、と思ったんですけど…。
「ちょっと待ってよ? 一応、確認しておくから」
嘘を言ってたら大変だしね、と会長さんが電話をかけています。教頭先生にかけてるんだな、と思ったのに…。
「ああ、ゼル? シャングリラ号のことで訊きたいんだけど…」
「「「………」」」
キャプテンじゃなくて機関長の方に質問するとは、教頭先生の家に電話するのが嫌なんですね?
「…普通はキャプテンに訊くと思うが…」
キース君が呆れて、ソルジャーも。
「こっちのハーレイ、嫌われてるねえ…。真っ当な質問もして貰えないなんてね!」
なんてことだろう、と深い溜息を。私たちだってそう思いますです、質問くらいはしてあげたって減りはしないのに、避けるんですか…。



ゼル先生の家に電話している会長さん。シャングリラ号の操縦資格を取るために必要なものは原付免許で良かったよね、と確認中で。
「うん、そう。…原付免許があったら誰でもシミュレーターの公式練習が…。えっ?」
なんだって、と訊き返して。
「それは聞いてはいないんだけど…。いつ決まったわけ?」
「「「???」」」
何か雲行きが怪しいようです。原付免許から普通免許に変わっていたとか、そういう感じ?
「ぼくは承認した記憶なんか…。適当に決めろと言ったって?」
じゃあ仕方ない、と会長さんは電話を切って。
「…ごめん、規則が変わってた。原付免許があればオッケーなのは間違いないけど…」
「年齢制限でも出来たのか?」
キース君の問いに返った答えは…。
「高校卒業以上だってさ、シャングリラ学園の場合は在学中は無理だって」
「在学中って…。ぼくたち、一度、卒業したけど?」
特別生になる前に、とジョミー君が言ったのですけど、会長さんは。
「それはカウントされないらしいよ、シャングリラ学園は普通じゃないから…。特別生は特殊な立場になるしね、一度目の卒業はノーカウントだって」
だから君たちには最初から資格が無いらしい、と申し訳なさそうな会長さん。
「ぼくが適当に決めろと言った会議の議題に入っていたらしいね、この話。つまり、君たちが原付免許を取って来たって…」
「シャングリラ号の操縦資格は得られないわけか。なら、安心だ」
俺も心安らかに四十歳まで待てるらしい、とキース君はホッとしているようです。
「サムを巻き込んでしまったからなあ、申し訳なくて…」
「俺はいいんだぜ、気にしなくっても。…でもよ、誰も資格を取れねえってのは嬉しいかもな」
出遅れねえってことなんだし、とサム君も。
「特別生をやってる間はジョミーもシロエも無理ってわけだろ、原付免許があってもよ」
「そうなるねえ…。一度決まった規則を変えるのは大変だからね」
ソルジャーの権限で変えようとしても何かと面倒、と会長さんは規則を元に戻すつもりは無いらしいです。シャングリラ号の操縦資格が一気に遠のきましたね、原付免許だけって話から…。



こうして夢に終わってしまったシャングリラ号の操縦資格。原付免許を取ろうとしていたジョミー君たちは残念そうで、キース君のスクーターの許可の残念パーティーは全員分の残念パーティーになりつつあったわけですけれど。
「えーっと…。原付免許だけでもオッケーなように出来ないこともないけれど?」
会長さんならぬソルジャーの言葉に誰もがビックリ。会長さんの替え玉になって会議に出掛けて、規則を変えようというのでしょうか?
「それはしないよ、面倒だからね! ぼくのシャングリラの会議でも充分、面倒なのにさ!」
なんでこっちに来てまで会議、と顔を顰めてみせるソルジャー。
「要はアレだよ、ぼくの得意なサイオンだってば! ちょっと細工をすればオッケー!」
例外規定を意識の下に書き込むだけだ、とニッコリと。
「こっちの世界でシャングリラ号に関わってる人、そんなに多くはいないから…。ぼくにかかれば五分もあればね、充分に出来るわけだけど!」
君たち七人を例外として認めるという新しい規則、とのアイデアにジョミー君たちは飛び付きました。たったの五分で例外扱い、貰えない筈のシャングリラ号の操縦資格への扉が開くと言うのですから。後は原付免許さえ取れば、シミュレーターでの練習が出来て…。
「それ、お願い! この際、キースはどうでもいいから!」
ジョミー君が頼んで、シロエ君も。
「キース先輩には悪いですけど、サム先輩も一緒ですしね。ぼくからもよろしくお願いします!」
「…俺には止める資格が無いしな…。物分かりの悪い親父を持ったのが運の尽きだった」
他のヤツらをよろしく頼む、とキース君は副住職ならではの潔さ。
「俺とサムもいずれは原付免許を取ることになるし、それまでは待ちの姿勢だな」
「オッケー! それじゃ、君たち七人分ってことで細工するけど…」
その前に、とソルジャーは私たちの方へと向き直りました。
「君たちはシャングリラ号の操縦への道が開けるわけなんだし…。代わりと言ってはアレなんだけれど、運転の練習をちょっと手伝ってくれるかな?」
「「「は?」」」
「大したことじゃないんだよ、うん。君たちの手さえ貸してくれれば」
運転の練習をするのは君たちじゃないし、と妙な依頼が。ソルジャーが運転免許を取ろうというわけでしょうか、こっちの世界で使えるヤツを…?



是非とも欲しいのがシャングリラ号の操縦資格を得るための道。特別生をやってる間は無理な所をソルジャーが例外にしてくれるそうで、そのためだったら手伝いくらい、と考えるわけで。
「何を手伝えばいいんですか?」
シロエ君の質問に、ソルジャーは。
「話が早くて助かるよ。…ブルーときたら、さっきもゼルに電話をするくらいでねえ…」
そういうブルーを変える手伝い、とパチンとウインク。
「つまりさ、こっちのハーレイがブルーを上手く乗りこなせるよう、お手伝いを!」
「「「乗りこなす?」」」
「そのままの意味だよ、まずはデートから始めようかと!」
そしていずれは本当の意味で乗れるように、と極上の笑みが。
「ベッドの上でね、ブルーに乗っかって腰を振るわけ! 大人の時間の醍醐味ってね!」
「退場!!!」
会長さんがレッドカードを叩き付けて怒鳴り、私たちも。
「「「そ、それは…」」」
そんな恐ろしいことを手伝える猛者がいるわけありません。具体的な内容を聞かなくっても、手伝ったら最後、会長さんに殺されることは確実で…。
「…せ、せっかくのお話ですけど、お断りさせて頂きます!」
ぼくは死にたくないですから、とシロエ君が逃げ、ジョミー君だって。
「ぼくも嫌だよ、それ、絶対に殺されるから!」
「間違いないな。…俺も断る、ただでも恩恵を蒙れる日までが長いわけだし」
シャングリラ号の操縦資格は永遠に手に入らなくてもかまわない、とキース君も断り、サム君も、私たちも首をコクコクと。引き換えにするものが大きすぎます、命あっての物種ですから…!



こうして原付免許を取ろうという話は立ち消えになって、シャングリラ号の操縦資格への道も閉ざされてしまいましたが、誰も後悔しませんでした。ソルジャーだけを除いては。
「…まだ気が変わったとは思わないのかい?」
ぼくにはお安い御用だけれど、と今日も押し掛けて来たソルジャー。
「ぼくの手伝いをしてくれるだけで、シャングリラ号の操縦資格が手に入るけどね?」
「要らないと何度も言ってます!」
押し売りはお断りなんです、とシロエ君が手で追い払う仕草、ジョミー君も。
「キースのスクーターの許可と同じでさあ…。待ったらオッケーになるって可能性もあるし」
「そうだぜ、四十歳になった頃には規則が変わるってこともあるしよ」
気長に待つぜ、とサム君が返して、キース君が。
「待てば海路の日和あり、という言葉もある。…俺は危ない橋は渡らん」
自転車で月参りに走る度に肝に命じている、と断固お断りだという姿勢。事の起こりはスクーターでしたし、キース君が自転車で走り続ける間は誰の決意も固そうです。
「…ぼくはお得だと思うんだけどなあ、たったの五分で作業完了!」
「その五分で、ぼくたちの命が思いっ切り危うくなるんですよ!」
会長に本気で殺されますから、とシロエ君がブルブル、会長さんは冷たい笑みで。
「ほらね、この通り、みんな分かっているから! セールスに来るだけ無駄だから!」
「うーん…。でもねえ、みんなの協力があれば、君とハーレイとの仲だって…」
きっと前進する筈なんだよ、と諦めないのがソルジャーです。当分は押し売りに来そうですけど、甘い誘いに乗ったら命がありません。自転車で走るキース君と同じに修行のつもりでシャングリラ号の操縦資格は諦めるのが吉でしょう。原付免許で乗れるというのが美味しすぎました。
「何度来て貰っても、断りますから!」
お帰り下さい、とシロエ君が手を振り、私たちも両手で大きくバツ印。原付免許で乗れると噂のシャングリラ号は美味しいですけど、やっぱり命が大切です~!




           取れない免許・了


※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 キース君が免許を取る話から、シャングリラ号の免許の取り方が判明したんですけれど。
 原付免許でいけると聞いていたのに、変わった規則。ソルジャーに頼むしか、って残念すぎ。
 次回は 「第3月曜」 9月19日の更新となります、よろしくです~!

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 こちらでの場外編、8月と言えば来るのがお盆。卒塔婆書きに始まり、棚経で…。
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