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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

試験発表(不合格)

試験発表(不合格) ・第1話


校長先生、合格発表を見に来たんですが…私の番号がありません。あああ、やっぱり試験問題と風水お守りを買うべきでした。向こうで合格した人たちが騒いでいます。いいなぁ…羨ましいなぁ…。

「ジョミー、俺たち、また一緒だな!」
「サムも合格できたんだね。危ないって言っていたからちょっと心配してたんだけど」
「うん、噛んでもらったおかげかも」
「噛んで…?なに、それ」
快活そうな金髪の男の子と友達の会話が聞こえてきました。
「知らないのか、お前?…そるじゃぁ・ぶるぅっていうヤツが住んでる部屋があるんだよ。学園のマスコットで不思議な力があるんだってさ。こいつに試験前に頭を噛んでもらうと、追試にも赤点にもならないらしいぜ」
「じゃあ…もしかして、その部屋に…」
「おう!捜すの大変だったけどな。先生も生徒も滅多に部屋に辿りつけないという座敷童みたいなモンらしいし。それにさ、やっと見つけたのに…オレ、動物に好かれやすいだろう?噛んでもらうまでがまた一苦労で…」

サムという男の子が「そるじゃぁ・ぶるぅ」を殴った話を披露しているのを聞いた私は悔しい思いで一杯でした。受験に来た日に偶然見つけた「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋。…あの時、頭を噛んでもらっていれば私も合格できたのに…。
「サム!ジョミー!…よかったわ、みんな合格できて!」
「スゥエナ!これから楽しくなりそうだね♪」
あぁぁ、あの女の子も前からの友達みたいです。いいなぁ…。私も合格したかったなぁ…。あうあうあう~!!

 

試験発表(不合格) ・第2話


校長先生、掲示板を穴が開くほど見つめてますけど、私の番号、やっぱり無いです。…訂正も…ないのでしょうか。あ、またまた合格組が騒いでますよ(涙)


「あっ、キース先輩!もちろん番号ありましたよね?」
「当然だ。シロエ、お前は来年の下見か?」
「違いますよ。これ、受験票です。…ぼくの」
「お、お前…受験したのか、今年!?…受かったのか!?」
「はい!受かっちゃいました」
シロエと呼ばれた男の子がペロッと舌を出しましたけど、もしかしなくても1学年下みたいです。この子が受かって…私が落ちたぁぁ!?かなり…かなりショックかも…。

「と、いうわけで、キース先輩。これからよろしくお願いします!」
「うっ…。まさか入試まで受けにくるとは…。お前、いったいオレになんの恨みがあるんだ!?」
「やだなぁ、恨みなんてないですよ。宿命のライバルとして認めてほしい、って、いつも言ってるじゃありませんか。ぼくの夢はとりあえず先輩から1本取ることなんです」
シロエ君がニッコリ笑いました。
「でもって、オリンピックを目指すんですよ。先輩、一緒に表彰台に上がりましょう!もちろん金メダルはぼくが貰いますけどね」
「………。オレは柔道を捨てて野球部に入るかもしれないぞ?甲子園で白球を追うのもいいかもしれん」
「だったらぼくも野球にしますよ。目指せ未来の大リーガーです!」
「どこまでオレをライバル視するんだ、お前…」
キース先輩と連呼されていた男の子がガックリ肩を落としています。宿命のライバル…。なんてかっこいい響きでしょう。ああ、でもでも…この二人の行く末は…不合格の私には絶対見届けられないんです。

あああ、試験問題と風水お守り、それに「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議な力!3つもの幸運を拾い損なったのが激しく悔やまれますが、後悔先に立たず。…帰ろうかな…。くっすん。

 

試験発表(不合格) ・第3話


校長先生、いくら掲示板を眺めていても奇跡は起こりそうもないので帰りますね。…あれ?あの銀髪の人は確か…。


「試験、落っこちちゃったのかい?」
受験に来た時「午後の試験問題を買わないか」と声をかけてきた先輩がニコニコしながらやって来ました。
「そういう人にお勧めのアイテムを売って回っているんだよ。ぼくの名はブルー。300年間生徒会長をやっている。これは生徒会の資金稼ぎの一環で…。リオ、こっちに1個持ってきてくれ」
リオと呼ばれた男の子が運んできたのは釣りとかに使うクーラーボックスのようなケースでした。
「これはパンドラの箱というんだ。開くと色々なことが起こるが、最後に希望が入っている…かもしれない」
「…パンドラの箱…?」
「我が学園のマスコット、そるじゃぁ・ぶるぅの欲求が山ほど詰まった魔法の箱でね。注文を全てこなした人には奇跡が起こると言われている。たとえば…補欠合格とか」
生徒会長さんの話はとっても魅力的でした。パンドラの箱…。いいかも…。
「その箱、とても高いんですか?」
「今ならタイムサービスで2千円だ。安いだろう?効果が無かった場合は返金するよ」
2千円!…それならなんとか払えそうです。これで補欠合格できるんだったら安いものですし、ダメでも返金してもらえるなら…。

私はパンドラの箱を抱えてウキウキと家に帰りました。「帰宅するまで決して蓋を開けないこと」と約束させられたので、部屋に入ってから開けてみると…1枚のメモが入っています。
「○○駅前商店街のタコ焼きを10個、この箱に入れてねv」
これが注文というヤツですか!私は自転車にパンドラの箱を乗っけて商店街に走り、タコ焼きを買って箱に突っ込みました。蓋を閉め、すぐに開けてみるとタコ焼きは消えていて、またメモが。
「○○の店のアイスキャンデー全種類を入れてねv」

こんな調子でお使いに走りまくって日は暮れて…。自転車をこぐ体力も財布の中身も尽きてきた頃、現れたメモは。
「○○温泉(駅前の銭湯です)の男湯の脱衣場にこの箱を置いてねv」
え。…男湯って…男湯の脱衣場って、そんな殺生な!!!でも、ここまできて諦めたのでは女が廃るというものです。私は根性で一旦家に帰ってパパの大きなコートと帽子を身につけ、マスクとサングラスで顔を隠して駅前の銭湯に出かけました。
「………」
男湯の暖簾をくぐると番台のオバちゃんに無言でお金を差し出し、脱衣場に入ってパンドラの箱を床によいしょ、と置くと。
「ありがと~!」
バンッ、と箱の蓋が開いて「そるじゃぁ・ぶるぅ」と呼ばれていた生き物がお風呂グッズを抱えて飛び出し、勢いよく服を脱ぎ捨てると一目散に男湯に走っていきました。そして箱の中にはもうメモは入っていなかったのです。

校長先生、とても不思議な体験でした。やっと家に帰ってきて、足はパンパン、財布はスッカラカンですけども…。パンドラの箱の要求には全て応えたと思っています。補欠合格、よろしくお願いいたします~!!!




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