シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
ローズマリーのおまじない。
学校から帰った時にテーブルの上にあった新聞。ママがおやつを用意してくれるのを待つ間に、なんとなく広げてみたんだけれど。たまたま開いた所にチラッと載っていたんだ。
植物と伝説だったかな。カラーの写真付きのコラムで、その日はローズマリーだった。ハーブとしての使い方や効能の他に、ローズマリーに纏わる伝説なんかが書いてあって。
(わあ…!)
ローズマリーを使ったおまじないが一つ。ローズマリーの小枝を枕の下に入れて眠ると、未来の夫が夢に出て来るんだって。
(いいな…)
大きくなったらハーレイのお嫁さんになると決めているぼく。「お嫁さん」という言葉は正しくないかもしれないけれども、ハーレイに貰ってもらうんだから「お嫁さん」だよね。他の言い方をぼくは知らない。「伴侶」じゃ偉すぎるような気がするし…。
ぼくが「お嫁さん」だと、ハーレイは「夫」。ぼくの未来の夫はハーレイ。
パパとママにはまだ秘密だけど、ハーレイのパパとママは将来の結婚相手だと認めてくれてる。ローズマリーのおまじないを使えば、きっとハーレイが夢に出て来る。
(このおまじない、いいな…)
ハーレイの夢はよく見るけれども、ぼくの結婚相手としてじゃないから…。
夢の中でキスをすることも、愛し合うことも多いというのに、ハーレイと本物の恋人同士として夢の時間を過ごしているのは、いつだって、いつだってソルジャー・ブルー。
前のぼくがハーレイを独占していて、小さなぼくは入り込めない。どんなに幸せな夢の中でも、ぼくは小さなぼくじゃない。目が覚めると少しガッカリするんだ。また今日もぼくじゃなかった、って。ぼくだったけれど、ぼくの身体じゃなかった、って。
ハーレイと本物の恋人同士になりたいのに。
夢の世界の中だけでいいから、本当に本物の恋人同士。おまじないを使えばなれるかも…。
(だって、ハーレイのお嫁さんだものね?)
未来の夫が夢に出て来る、ローズマリーのおまじない。
それを使って見る夢だったら、ハーレイはぼくの夫に決まってる。キスくらいきっと出来る筈。運が良ければその先だって…。
(いつも前のぼくに盗られちゃうけど、ぼくがハーレイのお嫁さんなら話は別だよ)
ソルジャー・ブルーにハーレイを持って行かれてしまわない夢。
ぼくの夫のハーレイの夢。
(…絶対、素敵な夢が見られるよ)
だからおまじないをしようと思った。ママと一緒におやつを食べた後、ママが片付けをしている間に庭に出掛けた。ハーブが植えてある庭の一角。料理に使うミントやタイム、オレガノなんかが植わった中に、ローズマリーもちゃんと在る。濃い緑の葉をたっぷりと茂らせた小さな木。
その木から一枝、ポキリと折り取って失敬してきた。寝るまでに萎れてしまわないように、水を含ませた紙を枝の切り口に巻き付けておくのも忘れなかった。
夕食を済ませてお風呂に入って、机に飾ったハーレイとぼくが写った写真を眺めて過ごして。
(ふふっ、ハーレイの夢を見るんだもんね)
パジャマ姿のぼくはローズマリーの小枝を手に取り、枕の下にそうっと入れた。ローズマリーの強い香りがぼくの手からフワリと立ち昇る。如何にも効きそうな、頼もしい移り香。
(きっとハーレイに夢で会えるよ)
ぼくの夫になるハーレイ。どんな夢が見られるんだろう?
枕の下に入れたローズマリーと、ぼくの手に残った移り香と。普段は部屋に無い香りに包まれ、ドキドキしながら眠りについた。
今夜はきっと、ハーレイの夢。前のぼくにハーレイを盗られない夢…。
幸せを夢見てベッドで眠ったぼく。
でも…。
「やはりお前か、ソルジャー・ブルー!」
気付けば、ぼくはメギドに居た。あの地球の男、キース・アニアンが銃口をぼくに向けている。もうどうなるかは分かっていた。
(酷いや、夢じゃなかったの!?)
普段のぼくなら、此処で夢だと気付きはしない。前の生での記憶のとおりに進んでゆく夢。銃で撃たれて、痛みのあまりにハーレイの温もりを失くしてしまって、泣きながら独り死んでゆく。
幾度となく繰り返し見て来た夢。いつも泣きながら目を覚ます夢。
ところが今日のぼくは違った。夢の中のぼくはローズマリーの小枝をしっかり覚えていたから、夢だと気付いて泣きそうになった。
ハーレイの夢を見ようと思っていたのに、よりにもよってメギドの夢。
おまじないなんて効かなかった。ローズマリーの小枝は未来の夫の夢の代わりにメギドの悪夢を運んで来た。ぼくは撃たれてまた死んでしまう。
(これじゃ逆だよ、ハーレイを失くす夢なんて…!)
だけど、どうすることも出来ない。いくら泣きそうでも、夢の中身は変えられない。
そうしたら…。
「ソルジャー・ブルー……ではないのか。子供か」
何をしている、と銃をホルスターに仕舞って、寄って来るキース。
其処はメギドだけど、メギドじゃなかった。あの忌まわしい青い光が満ちたメギドの制御室には違いないけれど、ただそれだけ。発射までのカウントダウンも止まってしまって、そういう機能を持った部屋だというだけのこと。
ぼくも十四歳のぼくになってて、おまけにパジャマ。
(…どうなってるの?)
何が何だか分からないぼくの直ぐ目の前にキースが来た。その手に体温計みたいな簡易サイオン測定装置。それがぼくの喉に当てられて、ピピッと鳴って。
「タイプ・ブルーか。…サイオンレベルは危険性なし、と」
そう、今はこういう機械がある。サイオンタイプが瞬時に分かって、サイオンを扱えるレベルも判別できる。前の生と同じタイプ・ブルーのくせに不器用なぼくは危険性ゼロ。喧嘩でサイオンを使ってしまって相手がケガとか、そういうトラブルすら起こさないレベル。
ぼくのサイオンを測ったキースは腰をかがめて、アイスブルーの瞳でぼくを見詰めた。背が高いキースと小さなぼくでは、そうしないと顔を覗けないから。
「それで、こんな所へ子供が一人で何をしに来た?」
何故なんだろう、このキースは怖い感じがしない。危険な地球の男でもない。
国家騎士団の制服を着てはいるけれど、ぼくへの殺意も感じはしない。
「…だって、未来の結婚相手に会えるって……」
素直に喋ってしまっていた。
ぼくったら、なんでキースにこんなことを話しているんだろう?
それに右手にローズマリーの小さな枝。
メギドの夢を見る度に冷たく凍える筈の右手に、枕の下に入れて眠ったローズマリー。
……なんで?
どうして変なことが起こっているんだろう?
メギドの夢でキースと話をしたことは無い。いつも問答無用で撃たれて、それっきり。
なのに、この夢のキースは違った。屈んで視線を合わせてくれたし、厳しかった表情も穏やかなそれへと変わって。
「奇遇だな。俺も結婚相手を探していてな」
「えっ?」
見たこともないキースの笑顔。それに結婚相手って言った?
ぼくが声さえ出せない間に、キースは「マツカ!」と大きな声で背後に向かって呼び掛けた。
(あっ…!)
メギドでチラッと見かけたマツカ。ぼくが道連れにしようとしていたキースを救い出して逃げたタイプ・グリーンのミュウだった。
マツカを見たのはその一瞬だけ。でも今は色々と知っているから、普通に出て来た。キースのと似た国家騎士団の制服を纏って、キースに向かって敬礼する。
「マツカ、こいつだ。こいつが俺の結婚相手らしい。見ろ、ローズマリーを持っている」
「本当ですね。おめでとうございます、キース」
ちょ、ちょっと待って。
ぼくはハーレイに会いに来たのに!
ハーレイに会いたかったのに…。
違うと懸命に抗議したけれど、キースは「照れるな」と笑っただけ。
マツカはぼくに「パジャマだと此処は寒いですよ」なんて言いながら、自分の上着を羽織らせてくれた。国家騎士団の制服の上着。まさか夢で着るとは思わなかった。
でもでも、そんな場合じゃなくって、何かが絶対間違ってるから!
ぼくはキースの結婚相手ではないし、ローズマリーの小枝だってそのために持っていたわけじゃない。ハーレイの夢を見ようと思って枕の下に入れただけなのに、どうしてキース?
勘違いだと主張したって、所詮は子供の言うことだから。
キースにもマツカにも聞き流されて、アッと言う間に話はしっかり進んでしまった。
流石は夢で、全く整合性が無い。
ミュウと人類はとっくに和解してしまっていた。メギドなんて無かったことになってた。
ぼくは地球だか、見たこともない首都惑星ノアだかに連れて行かれて、キースが住んでいる家の一室を充てがわれていた。ぼくの世話はマツカがしてくれていて、未来のキースの伴侶扱い。
キースは嬉しそうにしている上に、ぼくが小さな子供なことも全く気になんかしていない。
「結婚式にはお前の仲間も呼ばないとな」
上機嫌であれこれ決めてゆくキース。
ぼくの意見は聞いてもくれない。もちろん逃がしてなんかくれない。逃げ出したくても瞬間移動すら出来ないぼくは家から一歩も出られない。
(助けて、ハーレイ! 助けに来てよ!)
思念波も上手く紡げないぼく。何処に居るのかも分からないハーレイに助けを求めることなんか出来やしない。手紙を書いて届けようにも、ぼくは家から出られない。
そうこうする内に結婚式の招待状が作られてしまって、代表でハーレイが来ることになった。
(もしかして、ぼくを助けに来てくれるの?)
映画で見たようなワンシーン。
結婚式場からぼくを攫って逃げるハーレイ。
きっと、そういう夢なんだ。未来の夫が出て来るだけの夢より、うんとドラマティックな演出。
ハーレイと一緒に逃げてハッピーエンド。
キースなんかと結婚するのは腹立たしいけど、最後はハッピーエンドなんだよ…。
ついに結婚式の日が来て、ぼくはドレスを着せられた。
ふんわり膨らんだ歩きにくい純白のウェディングドレス。白いレースのベールを被せられた頭に花の飾りを乗っけられてしまい、お揃いの花をメインに作った白いブーケも持たされた。
「お綺麗ですよ」
付き添いのマツカに褒められたって、ぼくはちっとも嬉しくない。キースのお嫁さんなんて。
(…ドレスはハーレイと選びたかったんだよ!)
だけど今更どうにもならない。キースが待つチャペルへ行くしかない。エスコート役のマツカの腕に掴まってバージンロードを歩くしかない。
(ハーレイ、何処で助けに来てくれるのかな…)
バージンロードを歩く間か、キースと並んで祭壇の前に立った瞬間か。
早くハーレイがぼくを攫いに来てくれないか、と考えながらチャペルに入って衝撃を受けた。
招待者の席に笑顔のハーレイ。心からぼくを祝福している顔。
『ブルー、おめでとうございます』
ご丁寧に喜びの思念波まで届けてくれて、バージンロードを歩いてゆくぼくに嬉しげな顔。赤い絨毯の先にはタキシードのキースが待っているのに。
ぼくと結婚の誓いを交わそうと、ぼくが着くのを待っているのに…。
(酷い、ハーレイ!)
ぼくを攫って逃げるどころか、祝福されてぼくはキースのお嫁さん。
まだ小さいのに、このままキースのお嫁さん…。
(…なんで? どうしてハーレイのお嫁さんじゃないの?)
ポロリと涙が零れそうになった時、ブーケの中のローズマリーに気が付いた。
花嫁のブーケに挿し込まれたローズマリーの小枝。愛の貞節と永遠を祈って挿し込まれる小枝。この小枝が新居の庭に根付けば幸せになれると伝えられてきたローズマリー。
(……ローズマリーだ……)
独特の香りがする細い葉を沢山つけた緑の小枝。未来の夫の夢を見たくて、ハーレイが出て来る夢が見たくて枕の下に入れて眠った小枝。
それなのに、ハーレイじゃなくてキースが来た。ハーレイにキースとの結婚を祝福された。このローズマリーが諸悪の根源。
(ハーレイがぼくの結婚式を祝いに来るなんて…!)
白いブーケからローズマリーの小枝を乱暴に抜き取って、それでハーレイの頬っぺたを思い切り引っぱたいてやって叫んだ。
「あんまりだよ!」
ハーレイのお嫁さんになりたかったのに。
そのためにローズマリーを採って来て枕の下に入れていたのに…!
其処でパチリと目が覚めた。
もう明け方で、小鳥が鳴いてる。今日は土曜日の朝だっけ…。
ハーレイが来てくれる土曜日の朝。いつもは幸せな気分で一杯なのに、今朝は最悪。
もう少し目が覚めるのが遅かったなら、キースと結婚してしまう所だった。
ハーレイはぼくを攫って逃げてくれなくて、ぼくの結婚を祝ってくれた。
強引にキースの未来の花嫁に決められてしまって、キースの家で暮らしていたぼく。ハーレイが助けに来てくれるのだと思い描きながら我慢をしていた。
いつかはきっとハッピーエンド。
そう思いながらウェディングドレスも着たのに、ハーレイは攫いに来てくれなかった。
枕の下を探ってみれば、ローズマリーの緑の小枝。夢の中でハーレイの頬っぺたを叩いた小枝。
ぼくが勝手におまじないをして、ああいう夢を見たんだけれど。
ハーレイは何も悪くはないんだけれども、酷すぎて悔しくてどうにもならない。
ぼくがキースのお嫁さんだなんて。
それをハーレイが祝福してくれるなんて、悲しいどころか腹が立つってば…!
とってもとっても腹が立ったから、来てくれたハーレイに八つ当たりをした。
ぼくの部屋でテーブルを挟んで向かい合いながら夢の話をして、薄情すぎると怒りをぶつけた。
「なんでお祝いしに来るわけ? 攫って逃げてくれる代わりに!」
「お前が勝手に見た夢だろうが、俺には救助義務は無い」
「そんなことない! あの夢、ぼくには本物だから!」
ぼくはあの夢の中に居たんだから、とこじつける。夢から逃げ出せなかったぼくは、夢の中から動けない。つまりは夢の世界が本物、本物のぼくは夢の世界に居たのだ、と。
そうしたら、ハーレイは「ああ、なるほど…」とポンと手を打って。
「うんうん、それで昨夜の俺の夢にはお前が出て来なかったんだな。…別の場所に居たと言うなら仕方ない。災難だったな、今度は二人で同じ夢を見よう」
なんて笑って言うから、ぼくは椅子からガタンと立ち上がった。
「どうした、ブルー?」
「直ぐ戻って来る!」
部屋を飛び出して階段を駆け下り、玄関から庭へ。
昨日、胸をときめかせて覗き込んだハーブが幾つも植わった一角。ぼくの不幸を笑うハーレイに仕返しするにはこれしかない。
ローズマリーの小枝をポキリと折り取った。
ぼくと同じ目に遭えばハーレイだって、ぼくの気持ちが分かるって…!
庭で採って来たローズマリーの緑の小枝。「はい」とハーレイに差し出した。
「これを枕の下に入れて寝てみて。ぼくが使ったおまじない」
ね? と意地悪く微笑んでやった。
「きっとゼルとかヒルマンとかが来るよ。ちゃんと結婚してあげてよね」
ぼくも夢の中でハーレイを祝福してあげるから。
おめでとうって言ってあげるから。
「でもね、ぼくを引っぱたくのは無しだよ? ハーレイがやったら大人げないでしょ?」
大人が子供を叩いたりしたらみっともないよ、と注意をしたら。
「…俺は嫁さんを貰う立場で、誰かの夢に出る方なんだが?」
そういう夢を見る立場ではない、とハーレイはニヤリと笑みを浮かべた。
「そのおまじないで夢に出るのは未来の夫というヤツだろう? 未来の嫁さんではないぞ」
従って俺には効かない筈だ。
俺がヒルマンだのゼルだのの夢に出るならともかく、その逆は無いな。
「どうだ、ブルー? 文句があるか?」
「……………」
ぼくはとんでもない夢を見たのに。
ハーレイと結婚したかったのに、酷すぎる夢を見てしまった。
笑い飛ばしてくれたハーレイを同じ目に遭わせてやろうと目論んだのに、ローズマリーの小枝のおまじないは効かないだなんて…。
プウッと頬っぺたを膨らませていたら、ハーレイがローズマリーの小枝をヒョイと摘んだ。
「こいつは俺には効かないらしいし、お前、もう一度試してみるか?」
ほら、と渡されそうになったから「要らない!」とハーレイの手ごと突き返す。
「嫌だよ、今度こそ結婚させられそうだし!」
「どうだかな? 俺と結婚出来るかもしれんぞ、試す価値はある」
「もう嫌だってば、ローズマリーは!」
ケチがついたおまじないなんか二度と御免だ。
次は上手く行くかもしれないと夢見る気持ちは多少あるけど、失敗したら大惨事。キースと結婚なんか嫌だし、ゼルとかヒルマンでも嫌だ。
ぼくが結婚したい相手はハーレイだけ。
ハーレイと結婚出来る夢なら、おまじないに頼る価値もあるんだけれど…。
酷い目に遭って、ハーレイに当たり散らしたおまじない。
未来の夫が、大好きなハーレイが夢に出て来る筈だったおまじない。
ローズマリーの小枝は懲りたけれども、諦め切れない未来の夫を夢に見ること。だって、ぼくが見る夢の中ではハーレイの相手はいつだって、いつだってソルジャー・ブルー。ハーレイと本物の恋人同士でキスを交わせて、幸せの中に浸るのはいつもいつもソルジャー・ブルー…。
「…ハーレイの夢が見たかったのに…」
結婚する夢が見たかったのに、と項垂れていたら、ハーレイにあっさり見抜かれた。
「お前の目的は結婚じゃないな? それとセットのキスだの何だの、そういうのだな?」
「な、なんで分かるの!?」
「図星か。…そうだろうとは思ったんだが、今の答えでハッキリ分かった」
鎌をかけられて引っ掛かった、ぼく。真っ赤になってももう遅い。
「いいか、その手のおまじないはな、相手の姿が見えたらラッキー程度のものなんだぞ? チビのくせして欲張るからそういうことになる」
「……そうなのかな?」
「多分な。未来の結婚相手を見るだけだったら、俺はこういうのを聞いたことがあるが」
結婚式で貰えるケーキ。
ウェディングケーキの一部だったり、お土産用の別のケーキだったり。
とにかく結婚式で貰ったケーキの欠片を使った、おまじない。
ケーキの欠片をお気に入りのハンカチに包んで枕の下に入れて眠れば、未来の結婚相手に出会う夢が見られるとハーレイに教えて貰ったけれど。
そんな特別なケーキを貰うアテは無いし、キースの夢だって懲り懲りだから。
仕方ないから、寝る前にハーレイとぼくが一緒に写った大切な写真にお祈りをする。
どうか今夜は幸せな夢を見られますように。
大好きなハーレイと過ごす素敵な夢が見られますように…。
(ソルジャー・ブルーじゃ駄目なんだよ、うん)
幸せになるのはぼくでなくっちゃ。
前のハーレイは前のぼくのだけど、今のハーレイはぼくのもの。
だから盗らないでよ、ソルジャー・ブルーだった、ぼく。
前のハーレイは盗らないって約束するから、今のハーレイを盗らないで。
自分にお願いって変だけれども、ホントのホントにお願いだから。
ぼくのハーレイをぼくにちょうだい……。
おまじない・了
※よりにもよって、キースのお嫁さんになる夢を見てしまったブルー。
ハーレイに八つ当たりまでしていましたけど、自業自得と言いますよね、これ…?
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