シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。
新しい年が明け、今日は一月十五日。小正月とかいうヤツです。ちょうどお休み、会長さんの家でゆっくりしようと揃ってお出掛け。バス停からの道は雪もちらついて寒かったですが、マンションの中は暖房が効いてポカポカ、会長さんの家のリビングもポカポカで…。
「かみお~ん♪ 今日は十五日だしね!」
はいどうぞ、と出て来たものは熱い紅茶やコーヒーならぬ緑茶でした。何故に、と目を疑えば、お次は蓋つきの器が運ばれて来たからビックリです。これってスフレじゃないですよね?
「なに、これ?」
ジョミー君が指差すと、「そるじゃぁ・ぶるぅ」はニコニコと。
「小豆粥だよ、十五日だもん!」
「小豆粥?」
「えとえと、無病息災だったっけ?」
どうだっけ、と会長さんに視線が向けられ、会長さんが。
「邪気払いと一年間の健康を祈る行事だし、無病息災って所かな。キースは家で食べて来ていそうだけれど」
「ああ、おふくろに食わされたな」
此処で食ったら二回目だ、とキース君。
「ぶるぅ、アレンジしてくれてるのか? 中華風とか」
「ううん、普通に小豆粥だけど…。カボチャを入れて中華風のも美味しいよね、ってブルーに言ったら、今日のは普通に炊くべきだ、って…」
小正月だし、という答え。縁起物はアレンジするより正統に、とのことらしいですが、小豆粥かあ…。同じお粥なら中華風とか、アワビ粥とか…。
「ダメダメ、今日はこれの日だから!」
文句を言わずにキッチリ食べる! と会長さん。うーん、これって美味しいのかな? どうなんだろう、と一口、食べてみたら。
「「「美味しい!!!」」」
小豆しか入っていないお粥が、ふっくら、ホコホコ。小豆はホクホク、お米もトロリと蕩けそうです。何か工夫をしたお粥なのか、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の腕なのか。
「あのね、小豆はきちんと浸けておくのがコツでね、それからね…」
しっかりと炊けば美味しいんだよ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。うん、この味なら小豆粥でも充分オッケー、立派に午前のおやつかも~!
驚いてしまった小豆粥ですが、美味しかったら誰も文句はありません。一週間ほど前に七草粥を御馳走になっていますし、新年早々、お粥、二回目。次に食べるならどんなお粥がいいだろう、とお粥談義に花が咲いたり。
「中華風が美味いぜ、粥といえばよ」
胡麻油が食欲をそそるんだよな、とサム君が言えば、シロエ君も。
「いろんなお粥がありますからねえ、中華風。鶏肉入りとか、干し貝柱とか…」
「中華もいいがだ、俺はアワビ粥も捨て難い」
隣の国の、とキース君。私も「それ、それ!」と叫んじゃったり。アワビ粥は「そるじゃぁ・ぶるぅ」が何度も作ってくれました。中華の国のお隣の名物らしいですけど。
「粥はあの辺りの国に限るな、ポリッジよりもな」
ポリッジは駄目だ、とキース君の眉間にちょっぴり皺が。ポリッジって確かお粥ですよね? そんなに駄目なの?
「ポリッジといえば不味いというほどの代物だぞ、あれは」
よくもあんなに不味いものを食えるもんだ、とブツブツブツ。キース君、ポリッジ、食べたんですか…? もしや本場で?
「いや、本場というわけじゃない。一種、トラウマと言うべきか…」
「「「トラウマ?」」」
「あっちの方の本にはよく出るからなあ、一度食いたいと思ってな…。それで、おふくろに」
シャングリラ学園に入るよりも前の話だが、と溜息が一つ。ポリッジなるものに興味津々だった中学時代のキース君。わざわざ街の輸入食料品店まで自分で出掛けて、オートミールなるものを買って帰って、「作ってくれ」とイライザさんにお願いしちゃったらしいのですが。
「…で、どうでした?」
ぼくもポリッジは未経験で、とシロエ君が訊けば。
「………。二度目は要らんな」
「そこまでですか!?」
「興味があるなら、お前も食え! ぶるぅに作って貰ってな!」
あれは体験しないと分からん、とキース君はそれは不快そうな顔。
「しかもだ、俺がウッカリ買ったばかりに、親父もおふくろも食い物を無駄にしてはいかんと言い出して…。それから暫く、俺の朝飯はオートミールのオンパレードだった!」
ポリッジだけでもクソ不味いのに、と嘆き節が。素材からして不味かったですか、噂に聞くポリッジなるお粥…。
キース君曰く、とてつもなく不味いらしいポリッジ。それに比べれば小豆粥でも天国のお粥と呼べそうなほどの勢いだそうで。
「坊主の俺なら極楽のお粥と呼ぶべきなのかもしれないが…。今日のぶるぅの小豆粥なら、もう間違いなく極楽だな。お前たちも是非、ポリッジを試してみてくれ」
「遠慮します!」
不味いと聞いたら誰でも嫌です、とシロエ君が即答しました。
「いくらぶるぅでも、不味いものを料理したなら、絶対、不味いに決まってますから!」
「うんうん、俺も死にたくはねえし」
同じ食うなら美味いものをよ、とサム君がすかさず相槌を。
「材料からして不味いんだろ、それ。キースがトラウマになったんだからよ」
「どう転んでも不味かったからな!」
あの朝飯は二度と御免だ、とキース君はそれこそ吐き捨てるように。
「腐ってもシリアルの一種だと言うから、俺なりに色々、試しはしたんだ! ミルクだけでは普通に不味いし、蜂蜜も砂糖も入れたんだが!」
レーズンなんかも入れたんだが、と苦々しい顔。
「どんなに工夫を凝らしてみてもだ、クソ不味いものは不味いんだ! あれだけは駄目だ!」
よくもあんなもので粥を作りやがって、とキース君がののしれば、会長さんがのんびりと。
「仕方ないねえ、元々が馬の餌だしね?」
「「「は?」」」
「オートミールはオーツ麦でさ、小麦が出来ない地域じゃ主食になってたけれど…。ちゃんと小麦が取れる場所では馬に食べさせる餌だったんだよ」
「だったら、俺は馬が食うものを食ったのか!?」
なんで馬の餌が粥になるんだ、とキース君は唖然としていますけれど。
「栄養だけは満点らしいよ、オートミールは」
それでポリッジで病人食にも…、と会長さん。
「お粥は病人食にもよく使うしね? 何処の国でも考えることは同じなんだよ。君たちだって小豆粥と聞いてあまり嬉しくなさそうだったし」
「「「うーん…」」」
病人食のお粥は確かに美味しくありません。ポリッジもそうだと言われれば納得なんですけれども、実に奥深いお粥の世界。同じお粥を病人食で食べるんだったら、中華風とかアワビ粥とかの国が断然いいですよね?
そういう話になるのを見越していたんでしょうか、お昼御飯はなんと参鶏湯。アワビ粥の国のお料理です。鶏肉と一緒にじっくり煮込んだ高麗ニンジン、クルミに松の実、それからニンニク。糯米が入ってお粥風と言えばお粥風で。
「「「いっただっきまーす!」」」
寒い冬だけに、トロトロの煮込みが美味しい季節。これもお粥の一種だよね、と舌鼓を打って、一緒に出されたチヂミもパクパク。こんなお昼が食べられるんなら小豆粥の日もいいものです。御馳走様、と食べ終えてリビングに移動して…。
「お粥の日も悪くなかったね」
当たりだよね、とジョミー君が言い、キース君も。
「そうだな、美味い粥なら文句は言わん。ポリッジだけは本当に勘弁だが…」
あれを美味しく食える人間がいたら尊敬する、と顔を顰めてますから、よっぽどなんでしょう、ポリッジとやら。ついでに材料のオートミールも。そんな感じでワイワイガヤガヤ、お粥や食べ物を語っていたら。
「かみお~ん♪ ちょっと早いけど、おやつにどうぞ!」
はい! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が長方形に切られた「おこし」のようなものをお皿に盛り付けて運んで来ました。他にもお菓子はあるそうですけど、ティータイムまでにスナック感覚でどうぞ、という趣向。
「おこしですか?」
シロエ君が手を伸ばし、私たちも遠慮なく取って、一口齧って。
「美味いぜ、これ! なんか蜂蜜が利いてるよな!」
「蜂蜜よりも濃い味じゃない? ちょっと美味しいわよ、このおこし」
サム君とスウェナちゃんが称賛するとおり、普通のおこしより甘さがあります。それに材料も、おこしとは少し違って見えるんですけど…。
「おこしじゃないよね、なんだろう?」
ジョミー君が首を捻って、キース君も。
「どちらかと言えば焼き菓子に分類されそうなんだが…。ナッツという味でもなさそうだな」
「えっとね、フラップジャックなんだけど…」
「「「フラップジャック?」」」
なんですか、それは? 名前からして、おこしと別物。クッキーとかの一種ですかね、それともビスケットに入りますかね…?
甘くてサクサク、食べ応えのあるフラップジャック。こんなお菓子は初めてかも、と齧りながらも正体が気になるところです。これってクッキー?
「んーとね、フラップジャックはフラップジャックだと思うんだけど…」
クッキーよりかはビスケットかな、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「お菓子の本だと、ビスケットとかショートブレッドの辺りに載ってることが多いしね」
「ショートブレッドか…。紅茶の国の菓子だな、それは」
キース君が返すと、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は。
「そうなの! フラップジャックは紅茶の国だと調理実習で作るみたいだよ!」
「「「調理実習?」」」
「うんっ! 簡単だからね、ちょちょっと混ぜて焼くだけだしね!」
オーブンで、という返事。何をちょちょっと混ぜるんでしょうか、この舌触りは薄くスライスしたアーモンドとかに似てはいますが、味はナッツじゃないですし…。
「決め手はゴールデンシロップなの! お砂糖を作った残りの蜜で作るの、紅茶の国のシロップなんだよ!」
さっき急いで買いに行ったの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」はエッヘンと。
「キースが美味しくないって言うから、美味しいのを作ってみようと思って!」
「なんだと!? すると、こいつの材料は…」
まさか、とキース君の顔色が変わって、会長さんがクスクス笑い出しました。
「そのまさかだよ。オートミールさ、フラップジャックの材料は」
「「「ええっ!?」」」
美味しいじゃないか、と改めて齧る私たち。これって普通に美味しいですよ?
「キース先輩、ポリッジは本当に不味いんですか?」
シロエ君が問い詰め、キース君は。
「ほ、本当に不味かったんだ! オートミールそのものも不味かったんだが!」
「そうですか? 料理の仕方がまずかったんじゃあ…?」
「俺はきちんとレシピを調べておふくろに渡した、本当だ!」
それにおふくろは料理上手だ、と言われても美味しいフラップジャック。こうなってくるとポリッジが不味い話も嘘くさいです。嘘だろう、と決め付けた私たちだったのですが…。
「「「…ごめん、悪かった…」」」
ホントに不味い、と揃って嘆いたおやつの時間。論より証拠、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」が作ってくれたポリッジ、オートミールのミルク粥。もう最悪に不味いんですけど~!
不味いとしか言えない味のポリッジ。これに比べれば小豆粥は本当に天国だか極楽の味だった、とキース君に平謝りに謝っていたら。
「こんにちはー!」
「「「!!?」」」
誰だ、と振り返った先に私服のソルジャー。「珍しそうなものを食べてるね」と近付いて来て、空いていたソファにストンと座って、フラップジャックに手を伸ばして。
「うん、美味しい! 甘くてサクサク、こういうお菓子も好きだな、ぼくは」
「なら、ポリッジも是非、食ってくれ!」
美味いんだぞ、とキース君が自分の器を指差し、私たちも揃って「美味しい」と連呼。ソルジャーは興味をそそられたらしく、ポリッジを注文しましたが…。
「なんだい、これは? …ぶるぅの料理とも思えないけど…」
どっちかと言えばぼくの世界のぶるぅの料理、と絶妙な表現をしたソルジャー。悪戯小僧で大食漢な「ぶるぅ」は料理をしませんけれども、もしも作ったらこういう味かもしれません。「ぶるぅ」に悪意が無かったとしても。
「あんたでも無理な味か、やっぱり」
キース君が訊くと、ソルジャーは「うん」と。
「栄養剤なら多少不味くても我慢するけど、食べ物はねえ…。こういうのはちょっと」
地球の食べ物とも思えない、と不味さの表現、また一つ進化。
「これはいったい、何ものだい? ノルディと食べて来た美味しい食事も吹っ飛ぶじゃないか」
「ポリッジと言う名の粥なんだが」
俺のトラウマになった粥だ、とキース君。
「材料自体が不味いんだ、と言ったら、ぶるぅが同じ材料で美味い菓子を作ってきたもんでな…。俺が嘘つき呼ばわりをされて、気の毒に思ったぶるぅがポリッジをな」
「それをぼくにも食べさせたわけ!?」
不味かった、とソルジャーはペッペッと吐き出す真似をした後、フラップジャックをパックリと。
「でもって、こっちが美味しいお菓子の方だった、と…。これは美味しいから、まあいいけど」
それにノルディと食べたお粥も良かったし、と笑顔のソルジャー。中華粥でも食べましたか?
「ううん、今日はパルテノンの料亭で豪華な新春メニュー! 締めが小豆粥で!」
小豆粥を食べる日なんだってね、とソルジャーは至極御機嫌です。なるほど、小豆粥は縁起物だという話ですし、締めの御飯が小豆粥になったわけですか…。
美味しい小豆粥を食べて来たソルジャー、ポリッジの不味さも許せる模様。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の小豆粥と同じでじっくりと炊いてあったのでしょう。テーブルのポリッジは片付けられて、代わりに冬ミカンのムースタルトが出て来ました。飲み物も紅茶にコーヒー、ココア。
「いいねえ、地球の食べ物はこうでなくっちゃ!」
ソルジャーは嬉々としてフォークを入れつつ、部屋をぐるりと見回して。
「…あれ? 小豆粥の日だけど、粥杖は?」
「「「は?」」」
「だから、粥杖! 小豆粥の日にはセットなんだろ?」
ノルディに聞いたよ、と言われましても…。粥杖って、なに?
「知らないわけ? ぼくでさえもノルディに教わったのに!」
そしてお尻を叩かれたのに、と妙な台詞が。
「「「お尻?」」」
ソルジャー、何か悪さをしたのでしょうか? 覚えが悪くてお尻を一発叩かれたのか、エロドクターだけにセクハラなのか。何故にお尻、と誰もが首を捻りましたが。
「え、粥杖はお尻を叩くものだと言われたよ? 騙されてはいないと思うんだけど…」
ちゃんと床の間に飾ってあったんだしね、と言葉はますます謎な方へと。何が床の間にあったんですって?
「粥杖だよ! こう、木の棒でさ、神社で配るとノルディは言ったよ」
そして神社の焼印があった、とソルジャーは両手で棒の大きさを示しました。四十センチくらいの長さらしくて、それが料亭の床の間にあったという話。
「何に使うんだろ、って眺めていたらさ、「こうですよ」ってノルディが握って、ぼくのお尻をパシンと一発! なんか、そういうものらしくって」
「「「…え?」」」
そんなの知らない、と会長さんの方に視線を向ければ、「嘘じゃないよ」という答えが。
「粥杖というのは嘘じゃない。小正月に小豆粥を炊いた木の燃え残りを使うって話もあるけど、今じゃ普通に作るかな。昔はメジャーな行事だったらしい」
「ノルディもそういう話をしてたね、小豆粥の日には粥杖でお尻を叩き合ってた、って」
「マジかよ、それ!?」
なんで尻なんかを叩くんだよ、というサム君の疑問は私たちにも共通の疑問。エロドクターのセクハラだったというわけじゃなくて、粥杖なるもの、ホントにお尻を叩くんですか…?
「叩いてたらしいよ、ずっと昔は」
会長さんがソルジャーの言葉を肯定したため、私たちは揃ってビックリ仰天。お尻なんかを叩き合うとか、叩くとか。それにどういう意味合いがあると?
「あれかよ、ケツを叩くってヤツかよ?」
急がせる時とかによく言うよな、とサム君が。そういえば「早く宿題をやってしまえ」とか、仕事を急げとか、そういう時には「尻を叩く」と言うような気が。しっかりやれ、と気合を入れる時なんかにも。
「ふうん…? お尻を叩くって、そういう意味もあったんだ…」
やる気を出させるためにお尻を…、とソルジャーが感心していますから、粥杖でお尻を叩く方にはまるで別の意味があるんでしょうか?
「そうだけど? ぼくがノルディに聞いた話じゃ、なんか子宝を授かるらしいよ」
「「「子宝?」」」
「うん。粥杖でお尻を叩いて貰うと妊娠するって話だったね。ついでに、女性が男性のお尻を叩けば、その男性の子供を授かるっていう話もあって」
つまりは子種を授かるのだ、とソルジャーは説明してますけれど…。本当にそれで正解ですか?
「正解だねえ、ブルーがノルディに聞いてきた話。もっとも、ブルーのお尻を叩いたところで子供なんかは生まれないけどね」
ノルディはいったい何を考えて叩いたのやら、と会長さん。するとソルジャーは大真面目に。
「夫婦和合に協力しますよ、って叩いてくれたよ?」
ぼくのハーレイがビンビンのガンガンになるようにという願いをこめて、とソルジャーの瞳がキラキラと。
「子宝を授かるくらいの勢いでヤッて貰えるといいですね、ってノルディがね!」
「はいはい、分かった」
勝手に好きなだけ授かってくれ、と会長さんが手をヒラヒラと。
「良かったねえ、粥杖を飾っているような老舗で小豆粥を食べられて。君の自慢話はちゃんと聞いたし、後は帰ってご自由にどうぞ」
夫婦で存分に楽しんでくれ、と追い出しにかかった会長さんですが。
「ちょっと待ってよ、それだけだったらとうの昔に帰っているから!」
食事が済んだらぼくの世界へ直行で…、とソルジャーは私たちの方へと向き直りました。
「ぼくは用事があって来たんだ、こっちへね」
「「「用事?」」」
不味いポリッジに引っ掛かってましたし、おやつ目当てではなさそうです。ソルジャー、いったい何の用事が…?
「粥杖だけどね…。ノルディに色々聞いたんだけどね」
詳しい話を、とソルジャーはソファに座り直すと。
「元々は小豆粥を炊くのに使った棒だけれども、今じゃ神社で授与するくらいで小豆粥には使ってないって話だったね」
「そうと決まったわけでもないから! 小豆粥用に授与する神社もあるから!」
そこを間違えないように、と会長さんが反論を。
「棒の先に御札が挟んである、って神社もあるんだ。無病息災、厄除け祈願の御札がね。粥杖を頂いて家に帰って、御札を玄関とかに貼るってわけだよ。そして粥杖の方は…」
お粥を炊くのかと思ったのですが、今の世の中、木を燃やしての調理は一般的ではありません。ゆえに粥杖、小豆粥を炊く時にお粥をかき混ぜるものらしくって。
「しっかり混ぜて無病息災、縁起物のお粥の出来上がりだから! そこの粥杖、お粥用だから!」
本来の意味で使っている、という話ですが、ソルジャーの方は。
「でもさ、その粥杖でお尻を叩けば子宝だろう?」
「そ、それは…。粥杖というのはそういうものだし、お尻を叩けばそうなるだろうね…」
「ほらね、神社で貰ったヤツでも子宝を授かる棒なんだよ! 粥杖は!」
そういう役目を担い続けて千年以上、と言うソルジャー。そこまでの歴史を背負ってましたか、粥杖とやら。
「らしいよ、ノルディが自信たっぷりに由緒を教えてくれたしねえ…。そして子宝を授かる棒っていうことで独自の進化を遂げた地域もあるんだってね?」
「「「進化?」」」
「そう! 子宝祈願に特化した粥杖、木で出来たアレの形なんだよ!」
男だったら誰でも持ってるアレの形、とソルジャーはそれは嬉しそうに。
「アレを象った、一メートル近い大きな棒でさ。そういう棒が粥杖な地域があるって言ったよ、ノルディはね! それで女性のお尻を叩けば、もれなく子宝!」
小豆粥の日の行事らしい、とソルジャーは膝を乗り出して。
「その粥杖を聞いた途端に閃いたんだ! これは使えると!」
「……何に?」
会長さんが嫌そうな顔で言っているのに、ソルジャーの方は気にも留めずに高らかに。
「ヘタレ直し!!」
「「「ヘタレ直し?」」」
なんですか、それは? 粥杖を使って何をすると?
「ヘタレ直しと言えば決まっているだろう!」
ヘタレと言えばたった一名! とソルジャーは胸を張りました。
「こっちのハーレイ、それはとんでもないヘタレだからねえ…。粥杖を使って直すべきだと!」
子宝と聞けば使うしかない、と解説が。
「あの棒で男性のお尻を叩けば、その男性の子種を授かるらしいしね? つまり、こっちのハーレイのお尻を粥杖で叩くと、子種を授けるパワーが伝わる!」
ヘタレなアソコにパワーが漲る筈なのだ、という凄い発想。私たちは声も出ませんでしたが、ソルジャーの喋りは滔々と。
「そういう風に使えそうだし、ヘタレ直しをしようと提案しに来たわけだよ。そしたらケツを叩くってサムの言葉が来ちゃって、グンと自信が深まっちゃって!」
やるっきゃない! とグッと拳を握るソルジャー。
「お尻を叩けばやる気が出るって言うんだろう? やる気、すなわちヤる気ってね!」
ガンガンと攻める方向で…、と粥杖の解釈はエライ方へと。
「こっちのハーレイのお尻を粥杖で叩けば、ヘタレが直ると思うんだ! もう叩くしか!」
「…それで直ると?」
あんなヘタレが、と会長さんが鼻で笑いましたが、ソルジャーは。
「やってみなくちゃ分からないってね! 叩くしかないと思うんだけど!」
ちょっと粥杖を借りて来て…、と本気でやる気。借りるって、何処で粥杖を?
「ノルディに連れて貰った店だよ、粥杖を飾っているからね! 夜の営業時間までの間に瞬間移動で杖を拝借、ハーレイのお尻を叩きに行こうと!」
君も来たまえ、と会長さんに矛先が。
「なんでぼくが!」
「ハーレイのヘタレが直れば色々とお世話になるだろ、ハーレイのアソコに!」
「そっちの趣味は全く無いから!」
「そう言わずに!」
ヘタレさえ直れば素晴らしい男になるんだから、と相変わらずの思い込み。会長さんにはその手の趣味は無いというのに、自分がキャプテンと夫婦なばかりに会長さんにも教頭先生との恋や結婚を押し付けがちなのがソルジャーです。
「ぼくがハーレイのお尻を叩いても効果は高いと思うけどねえ、君も叩いて!」
そして子種を貰ってくれ、と強引に。会長さんは教頭先生のヘタレ直しに興味も無ければ、子種なんかも要りはしないと思うんですが…?
粥杖を借りて教頭先生の家へ出掛けよう、とソルジャーは会長さんを口説きにかかりました。是非ともお尻を叩いてやろうと、ヘタレを直して素晴らしい男にしてやるべきだと。
「子種をガンガン授ける杖だよ、おまけにお尻を叩けばやる気も出てくるんだしね!」
「だから、そういう趣味なんか無いと!」
「食わず嫌いは良くないよ! 一度くらいは食べられてみる!」
ヘタレの直ったハーレイに、とソルジャーは譲らず、会長さんは仏頂面で聞いていたのですけど。
「…待てよ、ハーレイのお尻を叩けばいいわけか…」
これはいいかも、と顎に手を。
「分かってくれた? ハーレイのヘタレが直ればいいっていうことを!」
「うん。ヘタレ直しという名目があれば、お尻を叩き放題っていう事実にね」
思いっ切り引っぱたくチャンス! と会長さんの発想も斜め上でした。
「何かと言えば妄想ばっかりしている馬鹿のお尻を思いっ切り! ヘタレ直しは大義名分、その実態は単にお尻を叩きたいだけ!」
「ちょ、ちょっと待って! ぼくが言うのはそういうのじゃなくて!」
「君にもメリットはあると思うよ、粥杖ってヤツが欲しくないかい?」
借りるんじゃなくてマイ粥杖、と会長さん。
「マイ粥杖? …なんだい、それは?」
「そのものズバリさ、君専用の粥杖だってば!」
やる気が出てくる棒のことだ、と会長さんはニッコリと。
「君のハーレイのお尻を叩けば、君が子種を授かるわけだよ! パワーアップのためのアイテム、君の青の間に一本、粥杖!」
「…神社へ貰いに行くのかい?」
「それじゃイマイチ有難味がない。君のハーレイ、木彫りが趣味だろ? これぞ粥杖、っていう棒を彫って貰って、それを使って小豆粥を炊けばバッチリ粥杖!」
正真正銘の粥杖誕生、と会長さんの唇に笑みが。
「サイオンを使えば、粥杖が燃えないようにシールドしながら小豆粥を炊ける。そうやって出来た粥杖で君のハーレイのお尻を一発、こっちのハーレイには何十発と!」
ヘタレ直しで叩きまくれば場合によっては効くであろう、という見解。
「たとえハーレイには効かなくっても、君はマイ粥杖をゲット出来るし、悪い話じゃないと思うけど? 作るんだったら、その粥杖でハーレイのヘタレ直しもね!」
うんと立派な粥杖がいい、と言っていますが、その粥杖で教頭先生のお尻を何十発も…?
「えーっと…。今から作るって…。間に合うわけ?」
マイ粥杖は欲しいけれども、とソルジャーが首を捻りました。
「小豆粥の日、今日だろう? 今から帰ってぼくのハーレイに彫らせていたので間に合うかな?」
時間的にかなり厳しい気が、と真っ当な意見。けれど、会長さんは「大丈夫!」と。
「本物の粥杖にこだわるんなら、小豆粥の日は今日じゃない。一ヶ月ほど先のことだよ」
「一ヶ月?」
「今は暦が昔と違っているからねえ…。粥杖が始まった頃の暦で計算すると、一ヶ月ほどズレが出るわけ。えーっと、本物の小正月は、と…」
いつだったかな、と壁のカレンダーをチェックしに行った会長さんが戻って来て。
「うん、いい具合に週末と重なっていたよ。ぼくたちの学校もバッチリお休み! 屋上で小豆粥を炊こうよ、竈は用意しておくからさ」
「それはいいかも…。その日に小豆粥を炊くのに使えば、その粥杖は本物なんだね?」
ぼくのハーレイが彫ったヤツでも、とソルジャーが訊くと、会長さんは。
「小正月の日に小豆粥を炊きさえすれば粥杖だよ! 神社で授与して貰わなくても!」
「その話、乗った!」
マイ粥杖、とソルジャーが会長さんの手をガシッと握って。
「ぼくのハーレイのパワーアップが第一なんだね、マイ粥杖! それのオマケがこっちのハーレイのヘタレ直しで、粥杖はぼくが貰っていいと!」
「もちろんさ。ヘタレ直しはどうでもいいから、君が大いに活用したまえ」
「ありがとう! マイ粥杖を持てるだなんて…。言ってみるものだね、ヘタレ直しをしてみよう、っていう話も!」
こっちのハーレイのヘタレも見事に直るといいね、とソルジャーは嬉しくてたまらない様子。それはそうでしょう、マイ粥杖が貰えるというのですから。
「マイ粥杖かあ…。それはやっぱり、アレの形にすべきかな?」
「君の好みでいいと思うよ、それと君のハーレイの木彫りの腕次第だね」
「ハーレイに頑張って彫って貰うよ、来月までに! 材料の木は何でもいいわけ?」
ぼくの世界の木でいいのかな、という質問に、会長さんは。
「材料はこっちで用意するよ。一応、指定があるからね」
「そうなんだ?」
「柳の木っていうのが主流で、アレの形に彫るって地方は松なんだけど…。どっちがいい?」
「松に決まっているだろう!」
断然、松で! とソルジャーがマイ粥杖で目指す所はキャプテンのためのパワーアップのアイテムでした。教頭先生のヘタレ直しは既に二の次、三の次ですね…。
マイ粥杖を作って貰えると決まったソルジャーは上機嫌で夕食時まで居座り、寄せ鍋を食べて帰って行きましたけれど。
「お、おい…。粥杖って、あんた、本気なのか?」
本気でやる気か、とキース君が会長さんに問い掛け、シロエ君も。
「いいんですか、パワーアップのアイテムだなんて…。そんな迷惑なものを作らなくても…」
「平気だってば、アイテムの使用は向こうの世界に限られるしね?」
あっちのハーレイも充分にヘタレ、と会長さんが。
「ブルーがこっちに連れて来たって、バカップルくらいが限界なんだよ。粥杖でお尻を引っぱたいても人の目があれば大丈夫ってね!」
コトに及ぶだけの度胸は無い! と言われてみればそうでした。ソルジャー曰く、「見られていると意気消沈」。悪戯小僧の「ぶるぅ」が覗きをやっているだけで駄目だと噂のヘタレっぷり。たとえ粥杖でパワーアップしても、その辺りは直りそうになく…。
「なるほど、あっちは安心なわけか…。しかし教頭先生の方は…」
どうなんだ、というキース君の問いに、会長さんは「もっとヘタレだし!」とアッサリと。
「これでヘタレが直る筈だ、と叩いてやっても直るわけがない。だけどブルーは効くと信じてヘタレ直しを提案して来たし、この際、日頃の恨みをこめて思いっ切り!」
引っぱたく! と会長さんの決意は揺らぎなく。
「そのためにも立派な粥杖を作って貰わないとね、木彫りが得意なブルーの世界のハーレイに! ここはやっぱり一メートルで!」
ブルーもそういうタイプの粥杖が欲しいようだし…、と会長さん。
「松の木を用意しなくっちゃ。どう彫るかはあっちのブルーとハーレイ次第で!」
「「「………」」」
一メートルもの長さの粥杖が出来てくるのか、と溜息しか出ない私たち。しかもソルジャーのお好みはアレの形です。ロクでもないのが彫り上がるんだな、と遠い目になれば、会長さんが。
「そういう形をしているからこそ、こっちのハーレイが釣られるってね!」
「「「は?」」」
「粥杖を作るイベントに招待してから、お尻をガンガン叩くつもりでいるんだけれど…。普通だったら痛くなったら逃げるものだよ、黙って叩かれていいないでね」
けれどもヘタレ直しとなれば…、と会長さんはニンマリと。
「これで効くのだと、ヘタレが直ると信じて叩かれ続けるわけだよ、ハーレイは!」
たとえお尻が腫れ上がろうとも! と強烈な台詞。教頭先生、大丈夫かな…?
そうして二度めの小正月。旧暦の一月十五日の朝、私たちは会長さんのマンションに集合となりました。折からの寒波で寒いんですけど、小豆粥を炊く場所は屋上です。如何にも寒そう、とコートにマフラー、手袋なんかで重装備。会長さんの家の玄関に着いてチャイムを押すと。
「かみお~ん♪ ブルーも来ているよ!」
後はハーレイを待つだけなの! と「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお出迎え。暫くは暖かい所に居られそうだ、とホッと一息、リビングに案内されてみれば。
「やあ、おはよう。どうかな、ぼくのハーレイの腕は?」
ジャジャーン! とソルジャーが持ち上げて見せた、一メートルはあろうかという太い棒。アレの形だと言われればそうかな、と思いますけど、細長い松茸でも通りそうな感じ。
「こだわったのはね、この先っぽの辺りでさ…」
リアルに再現してみましたー! とか威張っていますが、松茸にしては妙な傘だという程度にしか見えません。万年十八歳未満お断りの団体様に自慢するだけ無駄なのでは…。
「うーん、やっぱり分かってくれない? でもねえ、もうすぐ値打ちの分かる人が来るからね!」
そっちに期待、と言い終わらない内にチャイムの音が。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が飛び跳ねて行って、「ハーレイ、来たよーっ!」という声がして。
「今、行くからーっ!」
会長さんが叫び、私たちはコートやマフラーを再び装備。玄関まで行くと、防寒スタイルの教頭先生が立っておられて。
「おはよう、今日は粥を御馳走してくれるとブルーに聞いたのだが…」
「そうだよ、小正月には小豆粥だしね」
古典の教師なら知ってるだろう、と会長さん。
「本格的に炊いてみたいし、屋上に竈を用意したんだ。もちろん薪で炊くんだよ」
「ほほう…。それはなかなか美味そうだな」
竈で炊いた飯は美味いものだし、と教頭先生は頷いておられます。どうやら粥杖を作る話はまるで御存知ないようで…。
「とにかく寒いし、小豆粥を炊きながら温まろう、っていうのもあるから!」
会長さんがエレベーターの方へと促し、「そるじゃぁ・ぶるぅ」も。
「小豆粥、準備、きちんとしてあるからね! 後は炊くだけ!」
「というわけでね、今日はよろしく」
ぼくも楽しみにしてたんだ、と言うソルジャーに教頭先生が「こちらこそ」と笑顔で挨拶を。言い出しっぺはソルジャーですけど、全く気付いておられませんね?
屋上に着くと、風が比較的マシな辺りに竈が据えてありました。種火は投入してあったらしく、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が薪を手際よく入れればボッと炎が。
「えとえと、炊けるまでお鍋に触らないでね!」
小豆粥が駄目になっちゃうから、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。大きな土鍋が竈にかけられ、薪をどんどん燃やせば煮えるという仕組みですが。
「これで薪をつつけばいいと?」
ソルジャーが例の棒をヒョイと取り出し、教頭先生に「見てよ」と笑顔を。
「粥杖なんだよ、この棒は! 小豆粥を炊くのに使えばパワーが宿ると聞いたから!」
「粥杖…ですか?」
「古典の教師なら知らないかな? これでお尻を叩いて貰えば子宝が!」
そういうパワフルなアイテムなのだ、とソルジャーがこだわりの先っぽとやらを教頭先生の鼻先に突き付け、教頭先生の目が真ん丸に。
「…こ、これは…!」
「見ての通りだよ、子宝祈願でパワーアップならこの形! ぼくのハーレイがこだわって彫って、これからパワーを入れるわけ!」
こうやって、と先っぽの方から竈の焚口にグッサリと。けれどもシールドされているだけあって、粥杖は焦げもしませんでした。ソルジャーは鼻歌まじりに薪を突き崩しながら。
「ぶるぅ、もっと空気を入れた方がいい?」
「そだね、火力は強い方がいいね!」
アヤシイ形の粥杖が薪をガサガサかき混ぜ、舞い上がる火の粉。やがてグツグツと鍋が煮え始め、小豆粥がしっかり炊き上がって…。
「はい、食べて、食べてー!」
寒いからしっかり温まってね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお椀に小豆粥を取り分け、お箸と一緒に全員に配ってくれました。うん、なかなかに美味しいです。竈の威力は大したものだ、と寒風の中で啜っていれば。
「はい、粥杖! 注目、注目ーっ!」
そしてハーレイはお尻を出して! とソルジャーが小豆粥を食べ終え、粥杖を高々と振り上げて。
「これでお尻を引っぱたいたら、子種がバッチリ! きっとヘタレも直るから!」
「…ヘタレ?」
なんのことですか、と尋ねた教頭先生、会長さんに「立って!」と立ち上がらされて。
「ヘタレ退散ーっ!」
バッシーン! とソルジャーの気合を込めた一撃。「うっ!」と呻いた教頭先生のお尻に向かって、今度は会長さんが粥杖を。
「ヘタレ直しーっ!」
ビシーッ! と激しい音が響いて、教頭先生は慌てて両手でお尻を庇われたのですが…。
「ダメダメ、粥杖は叩いてなんぼ! これでヘタレが直るんだし!」
ソルジャーが叩き、会長さんが。
「ブルーが考えてくれたアイデアなんだよ、ぐんぐんヘタレが直る筈だと!」
さあ、頑張っていってみよう! と粥杖攻撃、二人前。教頭先生はソルジャーからの「パワーアップのアイテムなんだよ、ぼくのマイ粥杖!」という囁きに負けて、逃げる代わりに耐え続けて。
「…ハーレイ、欠席だったって?」
週明けの放課後、ソルジャーが「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋を訪ねて来ました。
「そうなんだよねえ、ゼルたちの噂じゃ、なんか痔だとか」
そういうことになってるらしい、と会長さん。ソルジャーは深い溜息をついて。
「おかしいなあ…。あれだけ叩けばヘタレも直って万々歳だと思ったんだけど…」
「ほら、ヘタレのレベルが違うから! 君のハーレイの方はどうだった?」
「凄かったよ! 粥杖でポンとお尻を叩けば、グンとパワーが!」
実に素晴らしいアイテムが手に入ったものだ、とソルジャーは御満悦でした。キャプテンの場合は一発叩けばパワーが漲るらしいのですけど。
「…教頭先生、思いっ切り叩かれすぎたしね…」
帰りは車にも乗れなかったものね、とジョミー君。
「欠席なさるのも仕方ないだろう。ダメージはかなり大きいと見た」
当分は再起不能じゃないか、とキース君が頭を振っている横で、会長さんとソルジャーはヘタレ直しの次なるプランを練っていました。
「君のハーレイには効いたってトコを強調してやれば、まだまだいけるね」
「腰が痛くて欠席だなんて言っていないで、ヤリ過ぎで休んで欲しいものだねえ…」
マイ粥杖ならいつでも貸すよ、とソルジャーは気前がいいんですけど。ヘタレ直しに効くと信じているようですけど、会長さんの目的はそれじゃないですから! 教頭先生、ヘタレ直しだと思わずに逃げて下さいです。でないとお尻が壊れますよう~!
小正月のお粥・了
※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
小正月の粥杖の話は、本当です。平安時代には宮中でも女官たちがやっていたくらい。
マイ粥杖を作ったソルジャーですけど、教頭先生には受難だった日。お大事に、としか…。
次回は 「第3月曜」 10月21日の更新となります、よろしくです~!
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こちらでの場外編、9月とくれば、秋のお彼岸。当然、厄日になるわけですけど…。
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