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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

寺へ…

会長さんの健康診断を巡る一連の事件が終わった次の週の土曜日のこと。慰労会と称して会長さんのマンションでお好み焼きパーティーが開催されることになりました。お昼前にみんなでお邪魔して、ホットプレートを並べて賑やかにお好み焼きを作るんですけど…お世話係は「そるじゃぁ・ぶるぅ」。たかがお好み焼きでも料理となれば放っておけないみたいです。
「ぶるぅ、次は海老を沢山入れてほしいな」
会長さんが言えばサッと具を入れ、次はトトト…と走っていって他のプレートのを裏返して。
「はい、これ、上からギュッと押さえといてね」
そう言いながら、焼きあがってきた別のプレートのお好み焼きにソースを塗って青海苔と粉カツオを振りかけています。要するに、私たちは何を焼くかの注文をつけて、出来上がったものを切り分けてお皿に乗せるだけでした。どうかすると切り分けるのも「そるじゃぁ・ぶるぅ」がやってくれたり。なんとも楽でいいですよねえ。サム君はしっかり会長さんの横に座っています。
「よかったな、サム。今週もブルーと別れずに済んで」
キース君が焼きソバ入りのを頬張りながらニヤリと笑って言いました。
「おう!…俺、頑張るって決めたんだ。なあ、ブルー?」
「うん。とりあえずの目標はデートだっけね」
サム君と会長さんが頷き合い、キース君はフウ、と溜息をついて。
「サムの意気込みは分かるんだがな。…ブルーはガード固そうだぜ?目標はデートだなんて言っていないで、別れ話を持ち出されないことにしといた方がいいんじゃないか」
「別れ話…?」
「そうだ。ブルーなら、ある日突然、言いかねないぞ。もう飽きたから別れたい…って」
「…えっ…」
言葉に詰まってしまうサム君。キース君は大真面目な顔で続けました。
「お前だって知ってるだろ?…ブルーは女好きなんだ。ついでに人をからかうことも大好きで…。今はお前に好意的だが、別れ話で済めば御の字で、気付けば教頭先生みたいにオモチャにされていたりしてな」
「…そんな…。そんな、まさか…。ブルー…?」
サム君が不安そうに会長さんを見ています。うわぁ、なんだか雲行きが…。会長さんがサム君の肩を軽く叩いて微笑み、キース君に。
「キース!…サムをからかったら許さないよ」
「…バレたか…。悪い、サム。お前があんまり幸せそうにしてるもんだから、つい…」
ちょっかいを出したくなったんだ、と笑うキース君を会長さんは冷たい視線でチラッと眺めて。
「なるほど。…モテない男の僻みってヤツか」
「なんだと!?」
「本当のことを言ったまでさ。大学でも彼女は見つからないんだろう?」
「…俺は女にモテたいと思ったことは一度も無いぞ」
キース君の低い声を会長さんは意にも介さず、更に続けて。
「ぼくもからかっているだけだよ。君が硬派なのは知ってるからね。…で、その大学のことだけど。大学を卒業するのと住職の位を貰う修行とは別。…いつ道場に行くんだい?」
「………。まだ決めていない」
「そうだろうねえ…」
クスクスクス、と会長さんはおかしそうに笑い、並んだホットプレートを見回して。
「あと2、3回焼いたらお好み焼きは終わりかな。ふふ、パーティーが済んだら、なぜ笑ったか全員に教えることにしよう。…サムをからかった罰にはちょうどいいだろ?」
「待て!!その話だけはやめてくれ!!!」
「…いやだね」
会長さんは慌てふためくキース君を赤い瞳で見据えました。
「ぼくとサムとは公認だよ…って宣言した時、なんて言ったかもう忘れたんだ?サムをからかっちゃいけないよってキッチリ釘を刺したのに」
あ。そういえば、そんなことがありましたっけ。あれから色々あり過ぎたので、すっかり忘れていましたけど。
「ソルジャーの命令に逆らった以上、それなりの覚悟はあるんだろう?…諦めたまえ、キース・アニアン」
いきなりソルジャーの肩書きを持ち出す会長さんに、キース君の顔は真っ青でした。よほど知られたくない何かを抱えているようです。
「ふぅん…。キースに秘密なんかあったんだ」
ジョミー君が興味津々といった様子でシーフード入りのお好み焼きをつつきました。
「シロエは何も聞いていないの?…昔からの知り合いだよね」
「えっと…。お坊さんになるって決めた後のことは知らないんです。道場って言われたら柔道の方かと思っちゃいますし」
「そっかぁ。じゃあ、ブルーに聞くしかないんだね。パーティーの後が楽しみになってきちゃった」
それは私たちも同じでした。いったいどんな秘密なのか、とワイワイ騒ぎながら残りのお好み焼きを食べている間、キース君は明らかに意気消沈。うーん、秘密って何でしょうね?

ホットプレートとお皿の片付けが済み、リビングに移動すると「そるじゃぁ・ぶるぅ」が飲み物を配ってくれました。キース君は話題の主役とあって中央に座らされ、会長さんが向かい側。私たちはグルッと周囲を取り巻くように思い思いの場所に座ります。もちろんサム君は会長さんのすぐそばでした。
「さてと。…尋問を始めようか。言っておくけど、緋の衣の高僧を敵に回したら一生住職になんかなれないからね。お父さんとお母さんが泣くことになるよ?…降伏したまえ、寺の跡取り」
「うう…」
コーヒーカップを前に項垂れているキース君。会長さんはソルジャーの次は緋の衣で脅しをかける気でした。
「年寄りと女子供も大事にしなくちゃいけないけれど、檀家さんは丁重に扱えって教えられていないかい?ぼくが本山に一声かければ君は住職になれなくなる。元老寺の檀家さんは困るだろうね」
「…俺にどうしろと…」
「時期住職の地位と引き換えに無理矢理にでも答えてもらう。…檀家さんを困らせたいか?」
「………」
なんとも凄い脅し文句にキース君は額に汗を浮かべています。会長さんなら本気でそれくらいのことはやりかねません。後で撤回するにしたって、キース君に不利な情報を本山に流すくらいはしそうです。
「まずは質問を一つ。…道場に入るのはいつだ?」
「…決めていない…」
「理由は?…言いたくなければ君の心を読んだ結果をみんなに話す」
「………。ど、道場に入るには条件が…」
キース君は俯いたままブツブツと小さな声で呟きました。
「条件、ね。…続けたまえ」
「…それが…条件というのが剃髪で…」
「「「ていはつ?」」」
えっと。剃髪って…もしかして頭をツルツルに…?ひっくり返った声で叫んだ私たちに会長さんはニコッと笑って。
「そう、キースの自慢の髪を剃らなきゃいけないっていうことさ。道場に入る必須条件」
「た、確か…」
ジョミー君がプッと吹き出し、必死に笑いを堪えながら。
「子供の時に1回だけ丸坊主にして、それが似合わなかったから…お坊さんが嫌になったんだっけ…?」
「ええ。先輩の辛い過去なんですよ」
うんうん、とシロエ君が頷いています。
「道場に入るには丸坊主が条件だったんですか…。それじゃ決心がつかないっていうのも無理はないかも」
「でも、道場で修行をしないと住職の位は貰えないんだよ」
そういう決まりになってるからね、と会長さんはキース君の髪に手を伸ばしました。
「この髪型は似合ってるけど、元老寺を継いでゆくためには一度は必ず剃らなくちゃ。ついでに言えば…そこそこ高い位にならない限り、丸坊主でいなきゃいけないんだよね。キースがどんなに頑張ったって、5年くらいは丸坊主の日々が続くってわけ」
「「「5年!?」」」
「最短で5年。うっかり足踏みすればもっと期間は長くなる。…ぼくは1回も剃ったことないけど、キースがぼくと同じ裏技を使う気だったら勉強だけでは済まないんだ。丸坊主に見えるように、周囲の人間全てに暗示をかけなきゃならないんだから」
なんと!…今から頑張ってサイオン能力を向上させるか、諦めて丸坊主の道を選ぶか。努力家のキース君が道場に入る時期を決めてないなんて変だと思っていましたが…そんな理由が…。
「やっぱり髪の毛のことで決めかねてたんだ。まったく驚きだな…。宗門校まで入ったくせに悩んでるなんて、まさしくヘタレ。残念だけど、住職の位は取れそうにないね」
「…………」
「どうしたの?反論してごらんよ。…亀のように蹲ってるだけでは剃髪コースは止められないけど」
ソファで頭を抱えているキース君を会長さんはツンツンとつつき、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に「ねぇ?」と同意を求めました。
「ぼくだって頑張って修行したんだ。緋の衣は何もしないで貰えるわけじゃないんだからさ。最初の道場入りは特に厳しいよ。…まぁ、細かいことは置いておくとして、その髪の毛。どうするんだい、本当に?」
「……まだ4年ある。大学を卒業してから道場に…」
「それで決心がつくのかい?…まさか外国のお寺や聖地を見て回ってから、なんていう逃げを打つんじゃないだろうね?」
うっ、と呻き声を上げるキース君。どうやら図星だったみたいです。よほど丸坊主が心の傷に…。でも会長さんは全く容赦しませんでした。
「そうか、檀家さんの期待を裏切るんだ?…お父さんもガッカリするだろうねぇ。シャングリラ学園を1年で卒業したから、同い年の人より2年以上も早く住職の位を貰える筈なのに…。いっそ本山に進言してあげようか?元老寺の跡取りのキース・アニアンは住職になる気は無いそうです、って」
「それは困る!!」
「じゃあ、剃髪」
会長さんはビシッとキース君を指差し、ソルジャーの表情で言い放ちました。
「サムのことでぼくの命令に逆らったんだし、この際、剃るっていうのはどうかな?…よくあるじゃないか、お詫びの印に丸坊主にしました…っていう人が。丸坊主にして詫びてもらえばスッキリするし、君も決心がついて一石二鳥だと思うんだよね」
「「「……!!!!!」」」
キース君も私たちも仰天して声も出ませんでした。か、会長さんったらなんてことを!…もちろん、いつもの冗談ですよね…?

それから一時間ほど後のこと。気の毒なキース君は、会長さんが元老寺から瞬間移動で取り寄せた墨染めの衣を着せられてリビングに一人で座っていました。ソファではなくて絨毯に座布団が敷かれ、その上に正座しています。
「…ブルー、本気でやるつもりかな…」
サム君が廊下から中を覗き込んで小さな声で言いました。会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は奥の寝室に引っ込んでいて、私たちは少し開いたドアから中を窺ってはコソコソ話しているのです。
「やるんじゃないでしょうか…」
心配です、とマツカ君。
「急にこんなことになってしまって…。キース、大丈夫だといいんですけど」
「先輩の心の傷を抉るようなものですからね。荒療治にも程がありますよ」
シロエ君が頭を振って、サム君が。
「俺は全然気にしてないんだけどなぁ、さっきの話。…でもブルーは怒っちゃったみたいだし…俺の力じゃ止められないか」
「止めない方がいいと思うよ。それでブルーと喧嘩になったらどうするのさ」
別れ話になっちゃうよ、とジョミー君が言い、サム君は「そうだな…」と溜息をつきました。
「やっぱ、友情より恋人を取るべきだよな。…それとも、これって逆だっけ?」
「いいんじゃない?人それぞれだと思うもの」
スウェナちゃんの言葉に一斉に頷く私たち。そもそも、墓穴を掘ったのは他の誰でもなくキース君です。悪乗りした会長さんを止めようなんて命知らずは誰もいませんし、ここは諦めてもらうしか…。やがて奥の寝室の扉が開いて「そるじゃぁ・ぶるぅ」と会長さんが出てきました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は四角いお盆を持ち、後ろに続く会長さんは…去年の夏休みに見た緋色の衣を着ています。
「やあ、お待たせ。…キースは逃亡してないだろうね」
「逃げてないけど…。ブルー、本気で?」
恐る恐る尋ねるサム君に、会長さんはニッコリ笑って答えました。
「元老寺の跡取りが飛び込んで来たんだよ。見事な坊主頭にしてあげるのが剃る者の剃られる者に対する礼儀だろう?…ちゃんと緋の衣を着てあげたんだし、この袈裟だって上等なんだ」
ほらね、と立派な袈裟を披露する会長さん。その横に立つ「そるじゃぁ・ぶるぅ」が持つお盆には鋏とバリカン、安全剃刀にシェービングクリームが乗っかっています。いったい何処から調達して来たんだか…。
「ああ、これ?キースの法衣を取り寄せる時に、元老寺から一緒に…ね。ぼくとぶるぅはバリカンもシェービングクリームも要らないし」
会長さんはキース君を丸坊主にする気満々でした。ドアを押し開け、先頭に立ってリビングの中に入ってゆきます。
「キース、剃髪の用意が出来たよ。…暦を見たけど日もいいようだし、今日から立派なお坊さんだ」
「うっ……」
床に置かれたお盆の中身にキース君は息を飲みました。剃髪が必須条件というので道場入りを悩んでいたのに、こんな形で坊主頭にされるだなんて夢にも思っていなかったでしょう。いっそ吹っ切れていいのかも知れませんけど、可哀相というかなんというか…。
「緋の衣の高僧に頭を剃って貰えるなんて幸運、滅多に無いよ。お父さんだって感激するさ」
会長さんがキース君の前に敷かれた座布団に座り、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお盆の横に座ります。きっとお手伝いをするのでしょう。私たちはキース君に悪いと思いつつも、好奇心を隠せません。3人を遠巻きにしつつ見やすい位置にちゃっかり陣取っています。
「それじゃ、キース。覚悟はいいね?」
合掌する会長さんにキース君が合掌して深く頭を下げ、呪文のような言葉を呟いて…。
「…お願いします」
「よく言った。君の長髪も…これで終わりだ」
会長さんが頷いて鋏を取り上げ、キース君の長い前髪を掴みました。鋏が黒い髪を挟んで、サクッと髪の毛が切れる音が。あぁぁ、やっちゃった…!

「…やってないよ」
笑いを含んだ声がリビングに響き、会長さんがスッとキース君の髪から手を離します。あれ?…切れてない?
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは…以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 …他人の髪の毛を無断で切ったら暴行罪になっちゃうんだよね。今回は無断じゃないけど、脅して切ろうっていうんだからさ。…場合によってはもっとマズイことに」
警察沙汰は困るじゃないか、と会長さんは笑っています。それじゃさっきのサクッて音は…?
「ああ、あれくらいは簡単だよ。サイオニック・ドリームの一種。キースは実際に髪を切られたような感じがした筈だ。どうだった、キース?…未来の住職の感想は?」
「…俺の決心を犠牲にして鋏を止めたのか…。ソルジャー・ブルー…」
キース君が眉を寄せ、怒ったような顔で唇を震わせました。そりゃあ確かに…あれだけの覚悟を決めさせておいて幻覚とはいえ切られちゃったのに、何も無かったと笑われたんじゃあ…。
「あ、そう。…せっかくの決心を裏切られたのが不満なんだ。だったら初志貫徹で剃髪する?ぼくは一向に構わないけど」
楽しげに鋏を左右に振ってみせる会長さん。
「それじゃ続行しちゃおうか。…ぶるぅ、袖が邪魔だから頼むよ」
「オッケ~♪」
会長さんの後ろに回った「そるじゃぁ・ぶるぅ」が緋の衣の袖を持ち上げ、鋏を持った手がキース君の髪にまさに触れようとした時です。
「や、やめてくれーっ!!!」
転がるようにキース君が後ろへ逃れ、髪の毛を両手で押さえました。
「やめる、やっぱり遠慮しておく!俺はまだ…まだ、そこまでの決心が…」
「…だろうね。みんなの手前、格好をつけてみたものの…逃げ道が見えたら一目散っていうわけだ」
クスクスと笑う会長さんにキース君は反論しませんでした。
「ああ、その通りだ…。俺は檀家さんのために髪の毛すら犠牲にできないヘタレ坊主だ」
「それでかまわないと思うけどね。まだ若いんだし、無理しなくても…さ。何処まで耐えられるか試してみたけど、よく頑張った方じゃないかな。本当のヘタレだったら髪を掴まれる前に逃げ出してる」
「…そうだろうか…?」
「うん。ぼくが取り寄せた法衣を文句も言わずに着ただろう?あの辺りから感心してた。…本物のヘタレ坊主はぼくの方。いくらタイプ・ブルーで強いサイオンを持ってるからって、一度も剃髪したことが無いっていうのはヘタレだっていう証拠だよ。君は子供の頃に経験してる分、ぼくよりも上。だから道場にも、きっと入れる」
今は勉強の方を頑張って、という会長さんにキース君は勇気づけられたようで。
「…そうか…。焦らなくても大丈夫なのか…」
「ぼくの方が焦ったかもね。君がパニックに陥って逃げて帰るのを期待したのに、逃げるどころか居座られちゃって。サイオンまで使う羽目になるとは思わなかった。…君はハーレイと違ってからかいにくいタイプだったよ。ハーレイなら…ぼくが剃髪だと宣言した瞬間に後をも見ずに逃げると思うな」
そう言った会長さんが不意に吹き出し、クックッと涙を流して笑いながら。
「ご、ごめん…。ハーレイが…丸坊主に…なったところを…想像しちゃって…」
「「「!!!」」」
教頭先生が丸坊主。その衝撃的な映像は瞬時に私たち全員の頭の中に浮かびました。こ、これは…おかしいなんてレベルじゃなくて…もう、どうしたらいいんだか…。こういう時にサイオンは非常に不便です。他の誰かが考えたことがポロッと零れて、巡り巡って…最終的に辿り着いたのはゼル先生のトンガリ頭と並んだ教頭先生の坊主頭が光り輝くという凄い映像。
「誰だ、バレエなんて考えたヤツは!」
キース君の絶叫が響き、私たちの頭の中でゼル先生と丸坊主の教頭先生が真っ白なチュチュで手を組み、『四羽の白鳥』を二人で踊りだします。頭には『白鳥の湖』の羽根のカチューシャ。わ、私たち、もうダメかも…。

お好み焼きパーティーはとんでもない方向に突っ走った末、大爆笑で終わりました。緋の衣の高僧が床を叩いて笑い転げる構図なんかは、そうそうお目にかかれるものじゃありません。こんな人でもちゃんと高僧になれたんですし、キース君だって住職になれると思います。道場入りはすぐでなくてもいいんですから。
「キース、これに懲りたらサムをからかうのはやめることだね」
普段着に着替えた会長さんが同じく着替えを済ませたキース君に言うと、キース君は「さぁな」と笑って。
「あんたの方こそ、教頭先生をからかって遊ぶのは大概にしとけよ?…いつか食われちまっても俺は知らんぞ」
「ハーレイはヘタレだから何をしたって大丈夫。…サムもいるから安心だよ」
「…そのサムに食われちまったりしてな」
キース君の言葉にサム君は耳まで真っ赤になってしまって、会長さんが。
「言ってるそばから早速かい?…懲りてないんなら剃髪用具一式を買い揃えてもいいんだよ?」
いつでも丸坊主にできるようにね、と人差し指と中指で鋏の形を作って動かし、軽く脅しをかけてみせます。
「うっ…。分かった、俺が悪かった!…謝るから、それだけは勘弁してくれ」
「言葉より行動で示して欲しいな。今後、サムをからかうのは一切禁止。もしもやったら剃髪用具をぶるぅの部屋に常備するから覚悟したまえ。キースが抵抗するようだったら、その時は…ジョミー、みんなを頼む」
「えっ、ぼく?…なんで?」
目を丸くするジョミー君に会長さんはニコッと微笑みかけました。
「ぶるぅには剃髪の手伝いをして貰わなきゃいけないし…キースはキレると怖いタイプ・イエローだから、みんなにシールドを張ってあげられそうなのはタイプ・ブルーの君だけなんだ」
「えぇっ、そんなの無理だよ、シールドなんて!」
「いざとなったらなんとかなるさ。…まぁ、キースが大人しく丸坊主になれば何もかも丸くおさまるけどね」
本当か!?と、心で叫ぶ私たち。会長さんがそんな悪戯をやらかさないのが一番平和でいいんです。でもキース君が諦めて剃髪する可能性もゼロじゃないですし、そしたら道場入りも問題ないし…。じゃあ、やっぱりキース君が会長さんに丸坊主にされてしまうのが最良の結末っていうことでしょうか?
「キースが道場に入る時には頭を剃ってあげてもいいよ。それ以外の時でも、いつでも歓迎。その長髪をバッサリやるのは楽しそうだ」
「…あんた、面白がっているだろう」
「決まってるじゃないか。だから教えないよ、サイオンで誤魔化す方法なんか…ね」
それは自分で努力したまえ、とクスクス笑う会長さん。キース君はガックリと肩を落としてしまいました。いつか会長さんに剃髪して貰って道場入りか、サイオンでなんとかする方法を求めて頑張るか…道場入りとは無関係に無理に坊主頭にされてしまうか。髪の毛への未練で道場入りを決めかねているキース君の未来は三択です。どれになっても私たちには関係ないですけども、元老寺の跡取りとして住職への道を進むしかないのは間違いなくて…。元老寺の本堂に住職として座れる日まで、キース君、負けずに頑張って~!




 ※2008年7月28日にブルー追悼と銘打って書いた「番外編の番外編」です。
  アニテラ17話に出てきたセリフのパクリをお楽しみ頂ければ…(笑)



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