シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、役立たずのソルジャー補佐はクビにならずに出勤してます。クリスマスを目前にして青の間にクリスマスツリーが出現しました。全体が青く輝く綺麗なツリーは「そるじゃぁ・ぶるぅ」が何処かで見つけてきたものです。
サンタに「ブルーと一緒に地球へ行きたい」と頼めば実現すると考えていた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、ソルジャーに「サンタは大人にはプレゼントをくれないから、ぼくも一緒にというのは無理だ」と聞かされ、諦めた様子でした。あの時、ソルジャーを慰めようと阿波踊りまで踊った「そるじゃぁ・ぶるぅ」。普段の行動からは想像もつかないほど「そるじゃぁ・ぶるう」はソルジャーを大切に思っているようです。
「…ぶるぅが諦めてくれてよかった。クリスマスツリーも送ってきたし、頭の中はもうクリスマスで一杯かな」
ソルジャーはコタツでお茶を飲みながらツリーを眺めておられました。
「一緒に地球へ行くんだ、と言い出した時はどうなることかと思ったけれど」
「よほどソルジャーのことが好きなんですね。サンタさんへのお願いのこととか、阿波踊りを踊ってみせたこととか」
そう言った拍子に、つまらないことを思い出しました。劇場で会った阿波踊り勝手連の代表さんが「ソルジャーは阿波踊りが上手いらしい」と言ってましたっけ。
「…あのぅ、ソルジャー…。ひとつお尋ねしてよろしいですか?」
「なんだい?」
「前に噂を聞いたのですけど、ソルジャーも阿波踊りをなさるというのは本当でしょうか」
「そういえばもう何十年も踊ってないか…。見たことのない者が殆どになってしまったかもしれないな」
えぇぇっ!あの噂は真実だったんですか!?
「シャングリラに阿波踊りを持ち込んで広めた、と言っただろう。ぼく自身が踊れなくてどうする」
ひゃぁぁ!…それじゃ、やっぱり揃いの法被で勇壮な男踊りとか、それとも粋でしなやかな女踊りとか…。
「ぼくは両方踊れるが?…でなければ皆に教えることができないだろう」
それは…かなり見てみたいかも。「そるじゃぁ・ぶるぅ」ですら見事に踊っていたのですから。
「…いつかそういう機会があれば」
そうおっしゃってソルジャーはコタツからお出になりました。ベッドへ行かれるのだと思ったのですが。
「少しだけ外へ出かけてくる。…誰かが来たら、すぐに戻ると言っておいてくれ」
青の間からテレポートされたソルジャーがお帰りになったのは30分ほど経った頃でした。アタラクシアにある有名な和食器店の名前が書かれた紙袋を提げていらっしゃいます。
「…すぐに戻ってくるつもりだったが…こういう店にはクリスマス用のいい包装紙が無いのだな」
「は?」
「子供向けの包装紙は置いていないと言って、ラッピングしてくれる店を教えてくれた。そこで包み直してもらってきたんだ。思ったより時間がかかってしまった。…留守の間に誰か来たかい?」
「いいえ、どなたもおいでになっていません」
「それはよかった。…皆、ぼくが外へ出かけるのを危険だと言って嫌がるから。でも、どうしても行きたかった」
ソルジャーは紙袋から小さな包みを取り出されました。クリスマスらしい包装紙に可愛くリボンがかかっています。
「ぶるぅが「クリスマスに新しい湯飲みが欲しい」と思っているんだ。それが分かった時から時々あちこちの店をここから眺めて捜していた。この店の湯飲みが一番ぶるぅの好みに合いそうでね」
クリスマスまで隠しておかなくては、とベッドの下に紙袋ごと大切そうにしまわれました。
「喜んでくれるといいんだが。…ぶるぅが初めてサンタから貰うプレゼントだし」
えっ、ソルジャーがプレゼントなさるんじゃなくてサンタさんですか?
「サンタを信じている子供だよ、ぶるぅは。眠っている間に誰かに届けてもらわなくては…。ぼくが行くとサンタじゃないと分かってしまう。ぶるぅはぼくのサイオンに敏感だ」
ああ、それでこの前、ソルジャーが沈んでいらしたのが分かったんですね…「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「こんなに楽しい気分でクリスマスのプレゼントを捜したことはない。……ぶるぅは貰ってくれるだろうか」
「欲しがっているものなんでしょう?大丈夫ですよ」
「ああ、そうか。…そうだったな」
ましてサンタさんからのプレゼントだと信じているんだし大丈夫、と思った私はソルジャーのご様子が少しおかしかったことに全く気付きませんでした。
「ところで、ソルジャー。さっきから気になっていたんですけど、そのお姿で行かれたんですか?」
瀟洒な白と銀の上着に薄紫のマント。目立つなどというレベルではありません。
「ああ。…大丈夫、人間にはこの服装には見えていない。もちろん髪も、この瞳もだ」
そういえば服装以前の問題でした。ソルジャーの赤い瞳に驚かない人間は多分いないでしょう。
「普通の人間だと思い込ませるようにサイオンを使っているんだよ。…ぶるぅにも同じ力がある。だから自由に出歩いてるし、食べ歩きだってできるわけだ。ぶるぅの服もぼくのとあまり変わらないだろう?」
言われてみればそのとおりです。気にしたこともなかったですけど、「そるじゃぁ・ぶるぅ」はソルジャーとよく似た服で…とても目立つ服でウロウロ外出してましたっけ。あんな格好のお客さんが来たら、普通の店なら大騒ぎです。今まで気付いていなかったなんて、私も相当な間抜けなのかもしれませんね。
マザー、今日はソルジャーと「そるじゃぁ・ぶるぅ」の特別な力を知りました。自分の外見をごまかすなんて、並みのミュウには出来ません。一時的な目くらましなら、私でも頑張ればなんとかなるかもしれませんけど、長時間、しかも不特定多数が相手となると難しそうです。ソルジャーがお出来になるのは納得ですが、「そるじゃぁ・ぶるぅ」にもそんな力があったとは。「そるじゃぁ・ぶるぅ」はいったい何者なんでしょうか、マザー…?