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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

ソルジャー補佐  第5話

マザー、肩書きばかり立派で中身が伴っていないソルジャー補佐です。シャングリラにもクリスマス・イブがやってきました。子供たちが劇場でキャロルを歌い降誕劇を演じます。いい子の部屋には夜にサンタクロースが訪れるとあって、この日ばかりは「そるじゃぁ・ぶるぅ」も悪戯をせずにいましたが…。

「あっ、ソルジャーだ!」
えっ?…子供たちの声に、公園にいた私とキャプテンは驚いて辺りを見回しました。公園には大きなツリーが飾られ、ソルジャーもお見えになるはずですが予定の時間には早すぎます。お供のリオさんが時間を間違えたのでしょうか?
「なんだ、ぶるぅじゃないか。…悪戯できないので散歩中だな。ああして見るとまるで似てないこともない」
キャプテンがおっしゃるとおり「そるじゃぁ・ぶるぅ」がのんびり散歩をしていました。
「ぶるぅも明日で1歳か。誕生日のプレゼントはクリスマスと一緒にされるわけだな」
「明日が誕生日だったんですか?」
「なんだ、知らなかったのか。…ソルジャーから聞いているものと思っていたが」
「いいえ、全然。何か用意しないとまずいでしょうか?」
「ぶるぅにはアイスがあれば十分だ。その気があるなら手作りアイスでも贈るといい」
そんな会話をしている所へソルジャーがおいでになったのですが…子供たちはビックリ仰天。
「えっ、ソルジャー!?…ソルジャーが二人!!?」
「…君たちに会うのは初めてかな?…ぼくと、あっちと。どっちが本物のソルジャーだろうね」
ソルジャー、もしかして楽しんでらっしゃいますか?子供たちはソルジャーと「そるじゃぁ・ぶるぅ」を交互に見比べ、やがてソルジャーの方を指差しました。
「こっちだと思う。…あっちのソルジャーとは何度も一緒に悪戯したけど、いつも後から叱られたから。ソルジャーがそんなことなさるわけがないでしょう、って」
「そうだったね。ぶるぅと遊んでやってくれてありがとう。…また一緒に遊んでやってくれると嬉しいな」
「はい、ソルジャー!!」
子供たちは元気一杯です。いいんですか、ソルジャー?シャングリラ、めちゃめちゃにされちゃいますよ?

ソルジャーは公園、ブリッジ、劇場、食堂…とシャングリラ中を回り、会う人ごとに言葉を交わしていかれました。全員と話し終える頃にはすっかりお疲れになっておられましたが、そんな気配は微塵もお見せになりません。この後はパーティーもあるので皆がソルジャーと会場へ行こうと待っているのが分かります。
「みんな、ソルジャーを少し休ませて差し上げてくれ。…会場へは後でおいでになるから」
キャプテンが馴れた様子で割って入るとリオさんと私に「ソルジャーをお部屋へ」と指示されます。私たちは急いでソルジャーを青の間にお連れし、ベッドに横になっていただきました。
「…情けないな…。皆が楽しみに待っているのに」
『ソルジャーのお身体の方が大切なのは、皆、承知していますから』
パーティーの時間になってもソルジャーは横になられたままで、リオさんが会場へ欠席を伝えに行きました。
「ぶるぅは?…あれから姿を見ていない」
「お出かけしたんじゃないでしょうか?悪戯するとサンタさんが来ないと思ってますから、退屈して外へ」
「じゃあ、その内に戻ってくるな。…早く寝ないとサンタは来ない、とも言っておいたし」
ソルジャーはベッドの下に隠したプレゼントの包みを出してくれるように、とおっしゃいました。
「子供たちのサンタの役目はヒルマンなんだが、ぶるぅの分はハーレイに頼んだ。…パーティーが終わったら、これをハーレイに届けてくれ。ぶるぅが悪戯好きでなければ、あらかじめ預けておけたんだけどね」

そういうわけで私はパーティーが終わって少し経った頃、キャプテンのお部屋に行ったのですが。
「キャプテン!?…本当にサンタさんなんですか!?!」
キャプテンは赤いサンタの衣装を身につけ、付け髭までしてらっしゃいました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の悪戯で長老方が白いファーつきの赤いマントというクリスマスっぽい衣装を着せられた時、キャプテンだけはご無事だったので(補聴器にトナカイの角をくっつけてらっしゃいましたが)、船長服以外のお姿を拝見したのは初めてです。
「…ぶるぅにプレゼントを届けるんだぞ?私だとバレては可哀相だ。最初のクリスマスくらいサンタを信じたままでいさせてやろう、と長老全員の意見が合った。皆、プレゼントも用意してきたし」
机の上に置かれた白い袋には長老方から「そるじゃぁ・ぶるぅ」へのプレゼントが詰められているようです。キャプテンはソルジャーが用意なさった湯飲みの箱をその中に加え、夜中になったら届けに行くとおっしゃいました。…夜更けのシャングリラでサンタクロースをなさるキャプテン。ちょっと見てみたい気がします。

「ソルジャー、プレゼントをキャプテンにお渡ししておきました。夜中に届けて下さるそうです」
青の間に戻って報告するとソルジャーはベッドの上で笑みを浮かべて頷かれました。
「ぶるぅは部屋で眠ったよ。ちゃんと大きな靴下も用意したようだ。…でも、靴下で間に合うかな」
長老方が用意なさったプレゼントのことをご存知のようです。私も用意すればよかったかも。あっ、プレゼントといえば明日は「そるじゃぁ・ぶるぅ」の誕生日だとキャプテンが…。本当に手作りアイスでいいんでしょうか?
「…かまわないよ。ぶるぅはアイスが大好きだから、作ってくれれば喜ぶと思う。でも…」
ソルジャーは瞳を閉じて深い溜息をつかれました。
「もしかしたら。…明日になったら、ぶるぅはいなくなっているかもしれない」
え?「そるじゃぁ・ぶるぅ」がいなくなる?
「初めてのクリスマス・プレゼントを用意したけど、それを喜んでくれるぶるぅは…いないかもしれないんだ」
なんですって!?…なぜですか?どうしていなくなるなんておっしゃるのですか、ソルジャー!?
「…君はソルジャー補佐、だったな。…話しておいた方がいいかもしれない。ぼくも…まだ眠れそうにない」

マザー、青の間に出勤するようになって以来、勤務時間はとても規則正しいものでした。ソルジャーのお身体のこともあって、退勤時間は予定より早くなることもけして珍しくはなかったのですが…。この日、私は初の残業になりました。クリスマス・イブに残業といえば世間では「惨め」の代名詞になっているようですけれど、ソルジャーのお役に立てるのならば惨めだなんて言い出すミュウはきっといないと思います、マザー。




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