シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、救助班最後の仕事は…とても劇的な現場でした。「天体の間で火災発生、フィシス様とも連絡取れず!」との知らせにシャングリラ中が大騒ぎになり、出動していく私たちへのエールの思念も凄かったです。
「フィシス様、アルフレート様!ご無事ですか!?」
火災のせいかロックされてしまった扉を破壊して飛び込んで行くと、煙と一緒に香ばしい匂いがしてきました。そしてアルフレート様が凄いお顔で私たちのことを睨んでいます。
「いったいなんの騒ぎですか。…フィシス様に無礼は許しませんよ」
「火災報知機が鳴ったんです。連絡は途絶、扉にはロック……飛び込むのが普通だと思いますが」
「…ああ…煙センサーを忘れていました。しかし、私たちはシールドもロックもしておりません」
アルフレート様と押し問答になりそうな所へ、フィシス様が奥から出てこられました。
「ごめんなさい…迷惑をかけてしまったようですね。シールドとロックは、多分あの子がやったのでしょう」
あの子って、誰!?…フィシス様のお顔が向けられた方を見ると「そるじゃぁ・ぶるぅ」が座っていました。後姿なので状況はよく分かりませんが、そばの床から煙がもくもく上がっています。
「焼芋を焼いてくれるのだそうです」
フィシス様はにこやかな笑顔でおっしゃいました。
「私の地球を見たいと言って来たものですから、さきほど見せてあげました。思った以上に喜んでくれて…お礼に焼芋を作ってあげる、と。『女性は甘いものが好きだろう?』なんて言葉、どこで覚えてきたのでしょうね」
ニコニコと無邪気に笑ってらっしゃるフィシス様。「そるじゃぁ・ぶるぅ」はフィシス様を独占しようとシールドを?…だんだんませてきたようです。って、感心している場合じゃなくて!…床が、床が焦げます、フィシス様~!!!
消火器を抱えて走りましたが、煙の元は床に置かれたドラム缶でした。燃えてるのは落ち葉みたいです。
「…邪魔をしないでくれたまえ」
振り向いた「そるじゃぁ・ぶるぅ」が偉そうな声で言いました。
「せっかく芋が焼けてきたのに。…それに、ぼくの女神に気軽に声をかけないでくれないか?」
え。『ぼくの女神』って?…まさか、まさかフィシス様があの『女神ちゃん』!?口をぱくぱくさせていますと、フィシス様が近づいてらして無敵の笑顔で微笑まれました。
「皆さん、ぶるぅもこう言っています。…お騒がせしておいて悪いのですけど、どうかお引取り下さいませ」
こう言われては勝てません。私たちは扉を壊したことを詫びながら退出するしかありませんでした。フィシス様と『女神ちゃん』の関係も謎のままです。…それにつけても、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。毎回毎回、よくもあれだけ…。
マザー、救助班は報われることが実に少ない職場です。皆さんの信頼は厚いのですが、やたら貧乏くじを引かされている気がするのは私の未熟さゆえでしょうか…?