シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、『青の間清掃員』になれました!青の間に堂々と入れます。今度こそソルジャー・ブルー様にもお会いできると思ったのですが…。清掃中は他の部屋でお待ちになっているそうです。それが何処かは先輩たちも知りません。どこまで行っても手の届かない方みたいです。残念。
初めて青の間に入った時はビックリしました。床の周りは水に満たされ、私たちが乗ってきたエレベーターから下の方へと続くスロープは緩やかな螺旋を描いて深い水の底へ沈んでいます。スロープを降りるには水に入るしかないようですが、どうしてそんな構造なのかは先輩にも分からないらしいです。水没している部分の掃除は清掃員の管轄ではなく、専門の人が毎月1回、メンテナンスを兼ねて行うということでした。
「だから私たちが掃除するのはここから先ね。ああ、ベッドには触らないように」
先輩に言われて改めて見ると、大きな天蓋の下に立派なベッドが置かれています。その周囲には青白い照明が幾つか。その他に家具は一切見当たりません。バスルームなども無さそうですし、隠し部屋でもあるのでしょうか?
「あるらしい、とは聞いているけど…掃除していても見つからないわ。何処にあるかは長老方とリオさんくらいしかご存じないんじゃないかしら?…さぁ、おしゃべりはこれでおしまい」
リーダー格の先輩の声を合図にお掃除開始。床にモップをかけて綺麗に磨き、天蓋や照明も丁寧に掃除していきます。私の割り当ては床掃除でした。モップがけをしていると、床にひっそりと輝くものが。…糸でしょうか、それとも髪の毛…。え?銀色に光る髪の毛…?そっとかがんで拾ったそれは間違いなく銀色の髪でした。青の間に落ちている銀髪といえば、落とし主は憧れのソルジャー・ブルー様!!!
「ラッキー!」
いきなりお宝ゲットです。ハンカチを出して髪の毛を包み、そっとポケットにしまいました。なんてツイているのでしょう。お掃除にはさほど時間はかからず、ミーティングが終わっても時計は正午前でした。
せっかく拾ったソルジャー・ブルー様の髪の毛を失くしては一大事、と部屋の方向へ歩いていると…「かみお~ん♪」と聞き覚えのある歌が。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が真昼間からカラオケの練習を始めたようです。…ん?「そるじゃぁ・ぶるぅ」といえば…。そういえば、アレも銀髪でしたっけ!しかも青の間に出入りしています。もしかして「お宝」だと思った髪の毛の主はソルジャー・ブルー様ではないのかも…?
「お邪魔します!!」
私は「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋の扉をノックしましたが、カラオケに夢中の住人が返事するわけありません。何度もノックした後で扉を開き、ズカズカと中に踏み込みました。ヘタクソな歌がピタッと止んで…。
「乱暴だな。…年寄りと女子供は丁重に扱えと教えられていないか?」
「…無視してたのはそっちです。それより、これ。…青の間に落としてきませんでした?!」
ハンカチに包んだ銀髪を突きつけながら、ガブリとやられるのを覚悟しましたが。
「…違う。これはぼくじゃない」
クンクンと匂いを嗅いで「そるじゃぁ・ぶるぅ」は断言しました。
「これはブルーの匂いがする。…で、こんなことでカラオケの邪魔をしたのかい?」
あ。やばい。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の目が据わってます。って、やっぱりガブリとやるんですかぁぁぁ!!!
マザー、思い切り噛まれましたが、ソルジャー・ブルー様の髪の毛は噛まれても離しませんでした。今は大切にしまってあります。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の嗅覚が役立ったので、噛まれたことは許しますとも。しかし「そるじゃぁ・ぶるぅ」の生活空間は青の間とは正反対ですね。ベッドの他に土鍋に本棚、オモチャ沢山、いつの間にやらコタツまで。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋が乱雑なのか、青の間が殺風景なのか…。判断に悩むところです、マザー。