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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

青の間清掃員  第2話

マザー、青の間清掃員はとても素敵な職場です。ソルジャー・ブルー様にはお会いできませんが、髪の毛をいただいてしまいました。…正確には「拾った」んですけれど。初日に拾えたので「また拾えるかも」と目を皿のようにして捜しているのに、あれから二度と見つかりません。よほどラッキーだったんですね。

今日も私は先輩たちと青の間の掃除に向かいました。静謐な青の間の掃除は何度行っても緊張します。ところが今日はなんだか空気が違うような…?
「あっ、あそこ!」
先輩が指差したのは天蓋つきのベッドが置かれた青の間の中心。天蓋の外、円形になった部屋の空きスペースに「とんでもないもの」が鎮座しています。青の間におよそ似合わないそれは、何処から見てもコタツでした。4人が入って麻雀をするのにちょうど良さそうなサイズのコタツ。そこにぬくぬくと入っているのは…。
「そるじゃぁ・ぶるぅ!?」
「…掃除係か。これは撤去しないでくれたまえ。まだブルーに見せていないんだ」
コタツに入ったまま、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が言いました。
「捜すのはとても大変だった。この部屋に合っているだろう?」
得意そうな顔ですけれど、青の間にコタツはミスマッチです。アイボリーの「こたつテーブル」に柔らかな青色のコタツ布団という組み合わせだけは色彩的に許せますが…。でも何故コタツなのでしょう?
「…ブルーは何も欲しがらないから」
こたつテーブルの上にミカンを盛った籠が現れ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は1つ掴んで剥き始めました。
「ブルーは何も欲しがらない。ベッドしかない部屋でいつも一人だ。…だからコタツがいいと思って」
剥いたミカンを丸ごと口に入れ、2、3度噛んでからゴクリと飲んで。
「ブルーの他に3人座れる。フィシスとぼくと…それからハーレイ。…みんな一緒ならきっと楽しい。面子が揃えば麻雀だって始められるし」

そう言って「そるじゃぁ・ぶるぅ」はコタツにもぐってしまいました。きっとネコのように丸くなるのでしょう。勝手に置かれたコタツと山盛りのミカン。どうしたものか、と先輩たちは悩んでいます。
「ソルジャーに断りもなく勝手に持ってきたんでしょう?…私は撤去すべきだと思うわ」
「だいたい、まるで似合ってないし。青の間の雰囲気ブチ壊しよ」
「でも…言われてみればベッドしか無いっていうのは寂しいかも。横になってらっしゃる時間がほとんどだとは聞いているけど、ベッドだけでは病室みたい…」
私も少ない脳味噌で考えました。ベッドしか無いのはソルジャー・ブルー様のご意思だとしても、「そるじゃぁ・ぶるぅ」のコタツ持ち込みはどうも悪戯ではなさそうです。青の間にこっそり「贈り物」を送っているうちに「楽しい生活」をプレゼントしたいと思ったのかもしれません。「そるじゃぁ・ぶるぅ」はいつも楽しく生きてますから。
「…先輩。判断はソルジャーにお任せしませんか?」
「ソルジャーに?」
「はい。…これはソルジャーへの贈り物ですし、私たちが処分するのはどうかと思ったのですけれど」
「うーん、確かにそうかもね…。留守の間に自分宛のプレゼントを誰かに勝手に捨てられちゃったら、つまらないものでも腹が立つかも。じゃあ、このままにしときましょう」
先輩は「そるじゃぁ・ぶるぅ」がもぐり込んでいるコタツを眺め、パンパンと手を叩きました。
「さぁさぁ、みんな、お掃除開始!…定刻までに終わらなかったら、ソルジャーにご迷惑がかかるわよ!」

私たちが掃除を終えると「そるじゃぁ・ぶるぅ」はコタツから這い出し、ゴソゴソと座り直しました。
「ブルーがコタツを気に入るようなら、明日からはコタツ掃除もしてくれたまえ」
えっ、コタツ掃除もするんですか?
「ブルーのベッドは係がいるけど、ベッド以外は清掃員の仕事だろう」
プイッとそっぽを向いた「そるじゃぁ・ぶるぅ」はコタツに自信があるようでした。もしかしたら、もしかするのかも?ソルジャー・ブルー様のお部屋にコタツ。映像でしか存じ上げない憧れの方がコタツでミカン、おまけにフィシス様やキャプテンも入って麻雀大会?…まるで想像できません。第一、青の間に似合ってません!

マザー、今夜はちょっと頭痛がします。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が持ち込んだコタツが青の間に定着してしまったらどうしましょう。…明日、青の間に伺った時、コタツが消えているよう祈ります、マザー…。




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