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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

青の間清掃員  第3話

マザー、青の間清掃員は思い出に残る職場でした。初日に拾った「ソルジャー・ブルー様の髪」は私の大切な宝物。ロケットに入れて持ち歩きたいくらいです。そして清掃員として最後に目にしたものは…。

青の間のお掃除は塵や汚れが殆ど無いこともあって、そんなに時間はかかりません。ですから「そるじゃぁ・ぶるぅ」が運び込んだコタツという珍妙な家具が増えても特に困りはしませんでした。こたつテーブルを外してコタツ布団(掛け布団と敷布団が揃っています)をパタパタとはたき、布団乾燥機を軽くかける程度。先輩いわく「青の間の雰囲気ブチ壊し」ですが、ソルジャー・ブルー様のお気に入りなら…。でも「そるじゃぁ・ぶるぅ」の我儘が勝っただけでは、というのが清掃員の全員一致の見解です。だってやっぱり似合いませんもの。

さて。その日も青の間とコタツを掃除しようと皆で揃って出かけていくと…。
「あら?「そるじゃぁ・ぶるぅ」があんな所に」
先輩が指差したのはコタツではなく、ソルジャー・ブルー様の天蓋つきベッドの方でした。コタツ大好きの「そるじゃぁ・ぶるぅ」がコタツから出て、ベッドを取り巻くように巡らされている溝の縁にいます。
「…ねえ、溝の中に足を突っ込んでない?」
「あ、本当だ…」
ブーツを脱いで両足を溝に突っ込み、のんびり座っているようです。溝には水が循環していて常に流れがあるのですけど、足を突っ込んで楽しいでしょうか。まさか金魚でも放したとか…?
「金魚?!…それはマズイわよ」
「ですよね、すぐに回収しないと」
網なんか持って来ていませんが、とりあえず確認しなくては。金魚どころかウナギってこともありますし。

私たちが慌てて走っていくと「そるじゃぁ・ぶるぅ」はおかしそうに笑いました。
「金魚もウナギも入れてないよ」
心を読まれたらしいです。いっそスッポンと思えばよかった…。
「スッポンは困る。だって噛まれたら大変だろう」
自分だって噛み付くくせに、大変も何もないものです。私たちは溝を覗いて、思わずアッと叫びました。これは…金魚もウナギも、スッポンすらも放流できそうにありません。絶えず循環していた綺麗な水は白く濁って、ほのかに湯気が昇っています。更に、そこはかとなく漂う匂いは…。
「知らないかな、足湯」
温泉特有の匂いがする溝に両足を浸けた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、足先でゆっくりと水…いえ、お湯をかき回しました。
「源泉からお湯を運んでみたけど、いい湯加減だ」
コタツの次は足湯ですか。…次から次へといったい何を…。

「昨日、突然ひらめいたんだ。…ここなら足湯が作れるって」
そう言った「そるじゃぁ・ぶるぅ」は完全に悪戯っ子の顔つきでした。こんなことしていいんでしょうか?
「でもブルー、この匂いは好きじゃないかもしれない」
そりゃあ硫黄の匂いですから。…ソルジャー・ブルー様が相手でも悪戯しますか、そうですか…。
「やっぱり別のにしようかなぁ」
フッと硫黄の匂いが消えて、お湯が透明になりました。瞬時に入れ替えてしまったようです。
「虚弱体質に効く塩類泉。…よく温まるし、ブルーに合うのはこっちかな…」
パシャパシャとお湯を足でかき混ぜながら「そるじゃぁ・ぶるぅ」は勝手に納得しています。青の間がますます怪しいことになってきましたが、清掃員の身では何を言っても無駄という気が…。先輩たちも呆れて無言。
「ああ、この溝は清掃員の管轄じゃないだろう?…放っておいてくれたまえ」
プイッ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」はそっぽを向きました。確かに溝の掃除は清掃員の仕事じゃありません。私たちは「何も見なかった」「何も見ていない」と呟きながら掃除を終えて帰りました。そして翌日、青の間に行くと溝はすっかり元通り。ただ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がコタツに入って温泉ガイドを読んでいたのが気になります。

マザー、青の間に突然現れた足湯、ソルジャー・ブルー様はお試しになったでしょうか?もしもお気に召したとしたら、今日も青の間に「そるじゃぁ・ぶるぅ」特製足湯がオープン中かもしれません…。




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