忍者ブログ

シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

アルトちゃんレポート・その1

     ※アルトちゃんレポートとは…
  シャングリラ学園連載当時、アルト様が「乱入」としてご好意で
  書いて下さった「お話」が幾つかあります。
  それを『アルトちゃんレポート』という形で掲載させて頂きます。
  乱入なだけに、私が書いた話と時間が前後することもあります。
  お祭り感覚ですので、ひとつよろしくお願いします。
 


「グレイブ先生!」
 苦虫を噛んだような表情で教室から出て行く背中に声をかけた。
「おや、君は……」
 眉間を人差し指でコンコンと叩き、何やら記憶を呼び覚ましているらしい。
(今度の試験の時にやってみようかな…)
 なんとなく思いながらもう一度呼ぶ。
「ああ、思い出した」
 本当に効果がありそうで、これは真剣に試してみる価値あり!だ。
「君は入学試験の数学が1点という史上最低の記録でパスしたアルトだな」
(ふわぁぁっ、やば)
 まさかそんなチェックが入っているとは思わず、声をかけたのを忘れて逃げ出そうとした。
「待て」
 手首を掴まれ逃走が阻まれる。
「待てません! 待ちません! それに手を掴むなんて、セクハラです!」
「あ~ら。生徒にセクハラなんて、聞き捨てなりません」
「ミシェル……いや、パイパー教諭」
 キリキリと強い表情で歩み寄ると、手首を掴む手をピシャリと叩いた。
「離しなさい」
「しかし。私は彼女の担任で、彼女は夢か幻かぶるぅの悪戯かと思えるあの点数の持ち主なんだ」
「それとこれと話が別。それに私が逃げさせません」
 反対の手首を掴まれてしまう。
「これはセクハラじゃないわよね、アルトさん」
「……は…はい…」
 そらならばとグレイブは手を離した。
「それで、セクハラの原因は何かしら?」
「セクハラではない」
 言い切ったグレイブをミシェルが正面から見上げれば、火花が散っていそうだ。
(こ、この先生たち……仲悪い…とか?)
「そもそもこの生徒の方から声をかけてきた」
「そうなの?」
「……は…はい」
「それで用件は何?」
「あの変なぶるぅっていう子のことを知りたくて……」
「そんなことなの」
 パッと手が離れる。
「教えてあげればいいのよ」
 大人の女の笑みが浮かべば、グレイブ先生にも大人の男の笑み…ではなくて、鬼教師の笑みが浮かんでいた。
「毎日補習の最後にテストを行う。その結果で少しずつ教えていってやろう」
「それってひどい!」
「一石二鳥だろう。成績が上がる、秘密を知ることが出来る」
 それを言われると誰だって弱い。
「1点から這い上がるのはそれほど難しいことではない。心配するな、きっちり仕込んでやる」
「謹んでお断りを……」
「寮生活だろう? 逃げ場はない」
 背筋に冷たいものが走った。
 もしかして1点で滑り込んだのは人生最大の間違いだったかもしれない……




PR
Copyright ©  -- シャン学アーカイブ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]