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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

アルトちゃんレポート・その10
「まりぃ先生~」
 昨夜のセルジュ君ショックから寝不足になり、1時間目が終わると同時に保健室に駆け込んだrちゃんと私。
「あらぁ、どうしちゃったの二人とも。寝不足はお肌に悪いわよ」
 そう言うまりぃ先生のお肌はつるつるのすべすべ。
 充実してますっていう感じが私たちにも分かる。
「昨日眠れなくて。ね~」
 と二人で声を合わせて言う。
「あら。また数学? …それはアルトちゃんだけだったわね」
「アルトは数学で寝不足にならないですよ、先生。だって寝ちゃうもん」
「そうだったわね。ごめんなさい。それで原因は何?」
「とあることを目撃しちゃって…」
「何かしら~? 生徒会長?」
「違うんです。セルジュ君が……」
 そこまでrちゃんが口にするとまりぃ先生はすっくと立ち上がり、『外出中・急患は教頭先生のところへ』というプラカードをドアの外に下げると、あたしたちを保健室の奥に誘った。
 そ、そっちは特別室……。
「ま、まりぃ先生?」
「さ、早く」
 ごっくんと唾を飲み込んで足を踏み入れる。
 と、そこは保健室どころか学校とも思えない豪奢な内装の部屋だった。
 真ん中にベッドが一つ。隣にソファ。
 奥にもう一つドアがある。
 ベッドは綺麗にメイクされていて、いつでも準備OKという感じだ。
 自然顔が赤くなる。
「さ、ここなら大丈夫。それでセルジュ君がどうしたの?」
「その前に先生、どうしてセルジュ君の名前だけで…。過剰反応のような気がするんですけど」
「あら…そう……。貴方たち同じ同好会だから知っているのかと思ったけれど、知らないのね」
「えっ?」
 rちゃんと私、声を揃えて答える。
 セルジュ君に秘密が?
「転任してきて最初のお仕事は生徒の健康記録を見ることなんだけど。セルジュ君、1年生なんだけれど、その記録がず~っとあるのよ」
「ず~っとって…どれくらいですか?」
「数えるの面倒臭くなっちゃったから、50年分で止めちゃったけど、その倍はあったわ」
 嘘!
 ということは、セルジュ君1年生じゃなくて…えっと…生徒会長みたいにずっとここの生徒ってこと?
「他に、そういう生徒いるんですか?」
「数学同好会の人はみんなそうよ」
「ええええっ!」
 じゃパスカル先輩も、ボナール先輩も100年以上…。
 なんだか目が回ってきた。
「ま…まさかグレイブ先生は……」
「さて、どうかしら? 職員のカルテは私でも見られないのよ」
「じゃあ可能性有りってことですよね!」
 rちゃんが勢いこんで叫ぶ。
「ゼロじゃないってことね。それでそのセルジュ君がどうしたのかしら?」
「キスしてたんです!」
 勢いのままrちゃんが叫ぶ。でも直後顔が真っ赤になっちゃった。
「相手は?」
 あれ? まりぃ先生は冷静。すごくびっくりするかと思ったのに。
「それが暗くてよく見えなかったんです……」
「でも喧嘩しちゃったみたいで…」
「そう…」
 言いながらまりぃ先生は近くの端末で何か作業を始めた。
「ねえ、この子じゃない?」
 モニタを覗き込んであたしたちはその美貌に驚きながらも頷く。
 その子は写真でも人間っぽくなく見えたから。
「この子みたい。髪型と髪の色しか分からないけど」
「うん。…ってこの子、男の子!」
「え~っ!」
「シャングリラ学園幻の美少年ジルベール。ほんとに在籍してたのね~」
 な、なんだかまりぃ先生の目がハートに。
「会ってみたいじゃない? それに生徒なんだから健康診断しなくちゃね」
 まりぃ先生、生き生きとしちゃってます。
 でも本当に綺麗な男の子。
 1年生って書いてあるけど、クラスは書いてない。
 もしかして生徒会長さんと同じでクラスがないのかな?
「ねえ。アルト」
「なに?」
「よく分からないけどさ、もしかしてこのジルベール君もセルジュ君と同じくらい1年生やってるのかな?」
 ん~どうだろ。でも可能性あるよね。
 あれこれと色々話しながらスクロールさせていて、ある一点であたしたちの目が止まった。
「数学同好会所属!」
 も、もしかして、これは会えるかもしれないってこと?
「その時は、呼んでね」
「は…はい!」
 思わず返事しちゃったけど、そんな都合良く呼べるかな。
 いや、いざとなったらあたしが数学の教科書をガン見すればいいってことだよね。
 よ、よし!
 今日から違う意味でクラブ活動が楽しくなりそう。……たぶん。





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