シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
ものすご~くヤバい気配に、とにかくどこか暇そうな部に入ってしまおうか、と考えながらこっそり後ろのドアから教室を出た時だった。
「アルト君?」
目の前に立ちはだかる二人が見知らぬ人、それも先輩だと分かると、
「違います!」
反射的に答えてすり抜けようとした。
だが「やっぱりそうか」ほんの少し微笑して腕を掴まれた。
「違うって言ってるじゃないですか!」
「これって何だ? 反比例の法則か?」
「いや。確率の問題だろう」
「いずれにせよ、百%であることに間違いはない」
先輩に都合のいい会話を続ける二人の間で、必死に手を振りほどこうとする。
「だ…だれか!」
だがクラスメートはほとんど見学に行ってしまっていて、残っているのは数人の女子だけだった。
「ご招待中だから、心配しないで」
二人のうちちょっと疲れた優男風の先輩が言えば、納得したようなしないような雰囲気が流れた。
「ご招待遠慮します、しますから離して……って、あ~っっっ」
完全に荷物状態で身体の大きな先輩に引きずられ始めれば、事情が分からないすれ違う女の子の手を掴み、
「お願い一緒に来て!」
叫ぶと同時に先輩同様、がっつりと手首をロックした。
「ようこそ数学同好会へ」
連れてこられたのは校舎の端の理科室。
その真ん中に用意された椅子に座っていた。
「グレイブ先生から聞いてるはずだが」
「聞きましたけど、お断りしました。今もその気持ちは変わりませんから! ね!」
巻き込まれた女子生徒も勢いのまま頷く。
「あれ、そうなの? 話が違うな」
「間違えたのか? 同名の生徒がいるとか?」
「いや、こんな妙な名前の人間が二人もいるはずがない」
「確かに」
反論したいけれど、出来そうな雰囲気は……ない。
「僕はパスカル。こっちはボナール。数学同好会の会長と副会長だ」
「そうですか~。お断りしたから帰っていいですよね?」
「他にも部員がいるが……全員に会ってみないか?」
「結構です」
「会いたいです」
へっ?
隣に座っている女の子を見る。
突然の出来事にも関わらず落ち着いている風だ。
「全員に会ってから決めてもいいと思います」
「おお、君は話が分かるね。名前は? もしかして君が本当のアルト君?」
「私はrです」
「rか! 何と数学的な名前だ。是非とも入部してもらいたい。……まぁ同好会だが」
パスカル先輩は嬉しそうだと分かる笑みを浮かべた。
※rちゃんって…?
「そるじゃぁ・ぶるぅ」の姿を描いて下さった方です。
リンドウノ様です…ってバラしちゃってもいいのかな?