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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

クラブ見学・第2話

アイスキャンデーを食べてエネルギーを充填した私たちはクラブ見学を続けることにしましたが…スウェナちゃんの顔が暗いような?
「私、新聞部がいいかなぁって…ちょっと思ってたの。でも、新聞部に入ったら…そるじゃぁ・ぶるぅ同好会みたいに過激な取材をしなきゃいけない時もあるのよね」
「そんなことはないだろう。あいつらはまるでパパラッチだ」
見も蓋もないことを言い放ったのはキース君です。
「新聞部はもっと常識的な活動をするクラブだと思う。…だが、俺たち7人が怪しげな仲間とやらである以上、情報収集とネタが命の新聞部は勧められないな」
「…やっぱりそうよね…。みんなのことを取材してこいって言われたら、私、困るわ。だから入りたいクラブは無いって言ったの」
スウェナちゃんの新聞部への未練は『そるじゃぁ・ぶるぅ同好会』のおかげでどうやら断ち切れそうでした。
「じゃ、サッカー部を見にいこうよ!あっちのグランドで活動中ってチラシ貰ったし」
「ジョミーはサッカーが好きだもんなぁ。今度は出てこねぇだろうな、そるじゃぁ・ぶるぅ」
サム君が心配そうに呟くとマツカ君が真面目な顔で。
「大丈夫でしょう。スポーツと料理は無縁ですから」
そうですね。料理が趣味の「そるじゃぁ・ぶるぅ」がサッカーに興味があるとは思えません。私たちはグランドに出かけることにしました。

「うわぁ…。やってる、やってる♪」
サッカー部はちょうど練習試合の最中でした。部員が大勢いるらしくって、試合をしているメンバー以外にもユニフォーム姿の生徒が沢山います。入部希望らしき新入生と話をしている部員の姿も…。
「ぼく、行ってくるね!みんなはどうする?」
「俺は柔道部に行きたいんだ。体育館で練習しているらしい」
キース君の主張にシロエ君が即座に頷き、マツカ君の手を掴みました。そういえば勧誘してましたっけ。
「僕も柔道部を見たいです!マツカ君にも見せてあげたいし、ここで一旦別れませんか?」
「そうだね。じゃ、サッカー部が一段落したらメールするから、また場所を決めて集まろうよ。…サムたちは?」
「ん~と…俺はサッカー部を見ていくかな。柔道ってよく分からないし」
「私もサッカーを見ようかしら。…あ、でも…日焼け止め持ってきてないわ。こんないい天気だと日焼けしちゃうわよね?」
「あっ!私も忘れてた。真っ赤になったら大変かも…」
オロオロと頬に手を当てる私とスウェナちゃんの姿にシロエ君がクスクスと笑いだしました。
「じゃあ、先輩たちも柔道部を見に来ませんか?体育館なら日焼けする心配はないですよ」
「そうね…。サッカーはまた今度にするわ。ジョミーは入部するに決まってるもの、絶対、試合に呼び出されるし」
私たちはジョミー君とサム君をグランドに残し、体育館に向かいました。

「とぉりゃぁぁぁ!!」
柔道部が練習している方から凄い掛け声が聞こえてきます。行ってみるとマットの上に柔道着を着た部員が次から次へと投げ飛ばされているところでした。投げているのは凄く体格のいい人ですが…って、えええっ!?もしかして、あの人は…。
「教頭のハーレイ先生だ」
キース君が淡々とした声で言いました。
「先生は最高位の十段をお持ちで、黒帯どころじゃない紅帯なんだぞ。だが決してそれを自慢なさらず、今も黒帯を締めておられる。俺は先生の指導が受けたくて、この学園に入学したんだ」
「…そうなんだぁ…」
私は部員に稽古をつけてらっしゃる教頭先生を尊敬の眼差しで見つめました。シロエ君も頬を紅潮させています。昨日、宇宙クジラの件で教頭先生のことを宇宙人の手先かも、なんて言っていたことは完全に忘れたようでした。
「先輩、早く声をかけに行きましょうよ!」
「そうだな。マツカも連れて行くか」
「あ、あの…。ぼく…」
「いいからついて来い!スタンガンに頼ってるようじゃ男じゃないぞ。ハーレイ先生に鍛えてもらえ!」
ずるずるずる。…マツカ君は引きずられるように連れて行かれてしまいました。スウェナちゃんと私は壁際に座って見物です。しばらくするとキース君とシロエ君が借り物らしい柔道着に着替えて教頭先生の前で礼をしたではありませんか!マツカ君が不安そうな顔でマットのそばに立っています。
「…もしかして試合する気かしら?」
「多分…。あの二人、柔道バカみたいだし」
ダッ、と飛び出したシロエ君が見事に投げ飛ばされました。
「くっそぉ…!まだまだ」
立ち上がろうとしたシロエ君ですが、教頭先生はそっちを見ようともせずにキース君に「かかってこい」と合図しています。キース君がサッと身を屈め、懐に飛び込んでいったものの…。
「どりゃぁぁぁ!」
教頭先生はキース君の腕を掴むなり、一本背負い。ドスン、とマットに落ちたキース君はしばらく立てませんでした。
「ふむ…。なかなか筋がいい」
キース君とシロエ君を交互に見ながら教頭先生は満足そうです。
「では、二人とも入部するんだな?…そっちの子は?」
「ぼ、ぼ、ぼく……柔道なんて…」
後ずさりするマツカ君をキース君がガシッと捕まえました。
「彼には強い心身が必要と見ました。ぼくとシロエがフォローしますので、よろしく御指導お願いします」
「よし!気に入った。では、あちらで入部手続きをしてきなさい。私は忙しい身だから、いつも指導ができるわけではないが…可能な日は全力で稽古をつけるというのが信条だ」

こうしてキース君とシロエ君、マツカ君のクラブが決まりました。今頃はきっとジョミー君もサッカー部に…って、あれ?ジョミー君とサム君が走ってきます。
「…ダメだったんだよ、サッカー部!」
私たちの前に立つなりジョミー君が叫びました。
「ぼくたち、1年で卒業しちゃうことになってるっていうの、ホントだったんだ。サッカー部の顧問のシド先生がそう言ったんだよ!でさ、1年しか在籍しない生徒はレギュラーにできない決まりだからって…。レギュラーになれないサッカー部なんて意味ないし!」
「…ってわけ。それでも強引にねじ込んで、自主練習の時は遊びに来ていいって許可は取り付けたみたいだけどな」
「だってサッカーはしたいじゃないか!シド先生もいいって言ったし、特に部員にこだわらなくても…」
う~ん、ジョミー君は入部できなかったみたいです。もしかして私たち7人はかなり特殊な立場にいるんでしょうか。クラブ活動も自由に選べないなんて、私たちの身にいったい何が…?




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