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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

アルトちゃんレポート・その6

 名前が呼ばれてびっくり硬直。
 rちゃんの名前が呼ばれて、よかったね!って言ってた口はそのまま凍り付いた。
 あぁこれって、くじ運良いのか悪いのか。
 どうせなら違うクジの時に当たってくれたらよかったのに。


 ポスターを見つけた翌日、クラスでグレイブ先生からダンスパーティーの詳細が知らされ、生徒は盆踊りがメインだと知って、ホッとしたような残念なような。
 だってダンスなんて踊ったことないし。教えてくれる人もいないし。
 関係ないなと思って部室に足を向けた。
 結局数学同好会に入部したrちゃんと私。
 恐怖の日々が始まるかと思えば、初日から今日まで問題集どころか数字にもご対面せず、ひたすらひたすらダンスの練習だった。
「男がリード出来なかったら、恥ずかしいだろう? だから手伝ってくれ」
「今まで同好会に女子生徒はいなかったからね」
 先輩たちに言われて問答無用で練習に付き合うことに。
 でも先輩たちは初心者から見たら雲の上の人のように上手で。
 rちゃんとこっそり、「本当は私たちのための練習みたいだよね」なんて話して、数学同好会もいいかもなんて思った。
 あくまでも数学とご対面してない今の話だけど。
 初日の部活が終わる頃、
「数学が1点だとすれば、ダンスは2点だね」
「ワルツ限定なら1.5点だな」
「特訓すれば何とかなる」
 そう言って肩を叩かれた。
「有り難いことに寮生だから。夕食後も練習出来る」
 セルジュ君……有り難いような有り難くないようなお言葉です。
「じゃあ夕食後、コミュニティーホールにね」
 数学の次にダンスが嫌いになりそう。
「アルト、頑張って! 頑張ってダンス界の☆になるのよ!」
 rちゃんはダンスの素質があるってセルジュ君に言われていたし。
「ダンス界の☆はrちゃんがなって! 私はダンス界の特異な☆になるっ!」
 自分でも訳分かんないことを叫んでみた。
「うん、頑張ろう!」
 でも…でもね、抽選に当たらないとこの特訓も水の泡なんだよね。
 まあでも楽しいし数学じゃないからいいか。


 そんな日が続いてダンスパーティー当日。
 浴衣姿で盆踊り……まではよかった。
 だんだん動悸がしてくる。
 もう当たって欲しいのか当たって欲しくないのか分からない。
(ううん、当たって欲しくないんだ)
 だって、結局ダンスの点は2点止まりだったし。
 最初にrちゃんの名前が呼ばれて大騒ぎ。
 先輩たちも投票で選ばれていたから、抱き合って喜んだ。
 それでよかったのに。
 先輩たちは「大丈夫だよ」と言ってくれる。
 でも先輩! 私2点です! 初日から進歩ないんです!
 たらぁりと冷や汗が流れる。
 数学同好会の三人は2点は了承済みとして、他の男の子と生徒会長は知らないんだよね、2点だっていうこと。
「やっぱり辞退した方がいいよね」
 こそこそと先輩に相談すれば、
「パートナーチェンジがあるからなぁ」
 ボナール先輩がビシリと言う。
 それがなければ先輩かセルジュ君に犠牲になってもらえばと思っていたんだけど……。
「でもアルト、ここで踊らないと後悔するよ、絶対。良い思い出になるって」
「そうかもしれないけど、サイテーの思い出になる可能性も…」
 今の私は恐ろしく後ろ向き。気持ちは参加したいけど、身体は参加したくないって、どうしたらいいの?
 もうすぐ先生たちの準備が整ってしまう。
 そうしたら……。
 グレイブ先生に抽選外になるようにお願いしておけばよかった!と思ったけどもう後の祭り。
 ため息を吐き出そうとした瞬間、
「どうしたんだ?」
 人垣がサッと割れて現れたのは生徒会長と副会長だった。
 パスカル先輩が事情を話すと、
「数学同好会の三人と最初に踊って次に僕、後は女性教諭にバトンタッチというはどうかな?」
「えええっ」
 三人で終了でいいです。
 そう思ったけど声が出てこない。
 だって生徒会長と至近距離で会ったのなんて初めてだし。話をしたのだって初めてだし。
「それがよろしいですわね」
 副会長が頷くと、私の意思なんて問題外のようで決まってしまった空気が流れた。
「で、で、でも!」
 勇気を振り絞って叫ぶ。
「僕の好奇心だから。2点のダンスを見て見たいんだ」
 もしかして生徒会長っていぢわるさんですか?
 有無を言わさぬ裁定を下して「そういうことで」と去っていってしまった。
「伊達に三百年生徒会長してないね」
 そういう結論でいいんでしょうか?
「頑張ろう!」
 rちゃんの励ましに頷いて、もう開き直るしかないと思った。




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