シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
「試験試験…あぁ…」
数学の教科書を開いて見るまでは出来るようになった。
こうして昼休みも部室で特訓!を銘打たれて。イヤだったけど先輩たちもセルジュ君も、rちゃんも付き合うと言われてしまえば、当の私が逃げるわけにも行かず……。
でも読み始めると途端に目眩が。
「眠くなるという人はよくいるけど…」
セルジュ君が言えば、
「珍種だな」
笑いながらパスカル先輩が答える。
「珍しい動物みたいに言わないで下さい!」
「でもねえ…」
クスクスとパスカル先輩の笑い声は続く。
「でも、そんな状態で入学試験で1点も採れたのって、奇跡的だと思う」
rちゃんの鋭い指摘にぐうの音も出ない。
「たぶんね…」
急に真面目ぶったパスカル先輩が向き直り、
「選択式の回答欄があったろう?」
「あ!」
問題用紙は伏せたままだったけど、記号を書いた記憶があった。
「それだよ」
全部解凍を『a』にしたっけ。あれが一つ当たってたのかも。
「よかったね、0点じゃなくて」
「うん」
思い切り返事したけど、後から考えたらよかったのかどうかアヤシイ。
「ところでね」
rちゃんが思い出したように口を開き、
「クラスメイトが増えたの」
「へえ。入学直後に珍しい。可愛い女の子?」
「パスカル先輩は! 違う。生徒会長」
「え!?」
パスカル先輩とボナール先輩は驚きの声をあげた後、力の抜けた表情をしてみせた。
「先輩、どういうことなんですか?」
セルジュ君が一年代表で尋ねる。
「アルト、もう勉強しなくても大丈夫だよ。中間対策としては、だけど」
「え?」
「生徒会長がクラスメイトになったら、学年一位は間違いなしだ」
「嘘っ!?」
じゃあこれで一位は安泰だねってみゆちゃんたちが言っていたのは本当だったんだ!
「でも、教科書が読める努力は続けないとね。」
「う……うん」
まぁそれでも討ち死に覚悟で頑張る必要もなくなったんだ。
でも本当かなぁ?
昼休みが終わって教室に戻ると、教頭先生が教室に。
慌てて席に着くと古典の授業が始まった。
こっちは眠くなるんだよな…。
―――生徒会長も眠そうだね
メモ書きしてrちゃんに投げる。
と、こっちを向いて、うんうんと頷いてくれた。
でも次の瞬間、ガタンと大きな音がした。
(えっ!?)
倒れたのは生徒会長だった。
教頭先生が走り寄ってきて腕を取っている。
こ、これは…まりぃ先生にご恩返しするチャンスかも!
グッと拳を握りしめてrちゃんを見る。
思いは同じ。
「保健室へ行った方がいいと思います」
「私とrちゃんで責任を持って保健室まで送りますから」
「早退した方がいいだろう。今、リオかフィシスを呼びにやるから」
えええっ。なんとか保健室に拉致する方法は……。
必死に考えていると、
「…保健室でいいよ、ハーレイ。…アルトさんとrさん…だったね。すまないけど、保健室まで連れて行ってくれるかな?」
「「はいっ!!」」
何という幸運!
私たちは意気揚々と生徒会長を保健室に連れて行った。
「まりぃ先生。お願いします」
「あらぁ~、可愛い仔猫ちゃんたち、どうしたのかしら?」
奥から出てきたまりぃ先生。今日も大人の色香が漂っていて素敵ですっ
「まぁ、倒れてしまったのかしら? ベッドに寝かせて差し上げて」
あ…あれ? 特別室じゃなくて、普通のベッドでいいんですか? まりぃ先生。
「はい」
辛そうな呼吸でベッドに横になると、生徒会長は襟を緩めた。
その色っぽいことったら!
顔だけじゃなくて全身真っ赤になりそうで慌てて保健室を飛び出した。
「に……任務完了」
rちゃんと声を揃えて言った。
あの後何があったかなんて、私たちには分からない。
でもまりぃ先生の色気が5割増しになったことは学校中の評判になった。
……原因、生徒会長?
rちゃんとこっそり話し合ったけど、結論は出なかった。
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