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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

校内見学・第3話

食堂で『クレープ冷麺』を食べさせられたジョミー君は激辛カレーで見事に復活しました。私たちは校内をあちこち見て回った後、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋に行ってみることに。スウェナちゃんが宇宙クジラの件を知りたがっていたからです。生徒会室の壁の紋章を使って入った部屋では、会長さんが待っていました。
「やあ、やっと来たね。今日はスフレをご馳走するつもりだったんだけど…ぶるぅが…」
視線を追ってゆくと床に大きな土鍋があって、その中で「そるじゃぁ・ぶるぅ」が丸くなっています。どうやら寝ているみたいですね。
「うん、そうなんだ。クレープ冷麺がよほど不味かったらしい。お昼も食べずに寝込んでいるよ。スフレを作るんだって張り切っていたのにね」
「どうして土鍋で寝ているの?あそこにちゃんとベッドがあるのに」
そう言ったのはスウェナちゃんです。
「あれは昼寝用のベッドなんだよ。ぶるぅの本当の寝床は土鍋。一番くつろいで寝られるらしい」
「ふぅん、ねこ鍋みたいなものかな?…自分も寝込むような料理を食べさせるなんて迷惑なヤツ!凄く不味かったよ、クレープ冷麺」
プゥッと頬をふくらませたジョミー君の手に会長さんが食券のようなものを握らせました。
「すまない、ぶるぅは悪戯好きなんだ。これで許してやってくれないか?…教職員用ステーキランチの食券だ」
「えっ!先生用のメニューなの?そんなの生徒が食べちゃっていいの!?」
「ああ。…ぼくは特別だからいくらでも手に入る」
ニッコリ笑った会長さん。三百年間在籍しているという話は本当なのかもしれません。ジョミー君はクレープ冷麺の恨みも忘れて、狂喜しながら食券を財布にしまいました。

「さて。ぶるぅが寝込んでるから、買い置きのポテトチップスしか無いんだけども…宇宙クジラの何が知りたい?」
会長さんが徳用ポテトチップスの大袋を開けながら言いましたけど、私たち、宇宙クジラの話なんか此処でしてましたっけ?
「いいや。でも宇宙クジラのことで来たんだろう?それくらい分からないようじゃ、生徒会長なんかやっていないさ」
「…面妖な…。あんた、俺たちの心が読めるのか?」
キース君の不審そうな問いに会長さんは満面の笑みで頷きました。
「その通り。君は実に理解が早いね。ぶるぅの手形で仲間になったとは思えないくらい優秀だ」
「なんだと…?」
「ああ、まだあまり多くを語る時期ではないんだよ。君も仲間だということだけを心に留めておいてほしいな。今日は宇宙クジラについて少し話をしておこう」
胡散臭そうに見つめるキース君を片手で制して、会長さんは紅茶を淹れ始めます。サム君とシロエ君はもうポテトチップスに手を伸ばしていました。

「君たちは宇宙クジラについてどんな話を聞いている?」
「そりゃ…未確認飛行物体だろ?」
会長さんの問いに間髪を入れずに答えたのはジョミー君でした。
「おう、UFOってヤツだよな」
「たまに雑誌に載りますよね…ちょっとマニア向けの」
サム君とマツカ君もさすが男の子、好奇心一杯の目をしています。
「ぼくは信じていませんけども。錯覚ですよね、キース先輩」
「でなければ偶然の産物だな。小惑星などがそう見えたとか」
対照的に夢もロマンも無いのが柔道一直線コンビ。
「私はUFOじゃなくて宇宙で生きてるクジラだって説を信じるわ。真空でも息ができて、広い宇宙をどこまでも泳いでいくの。淋しそうに見えるけど、きっとどこかに仲間がいるのよ」
ロマンチストなのはスウェナちゃん。えっと…私はUFO派かな?
「なるほど。模範的な答えが揃ったな」
会長さんが満足そうに頷き、テーブルの上にスッと1枚の紙を差し出しました。ビッシリと何かが書かれています。
「これは過去数年間の宇宙クジラの目撃情報と、ある情報を重ね合わせた統計だ。この部分を見てくれたまえ。…宇宙クジラが頻繁に目撃される時期と、我がシャングリラ学園の教頭・ハーレイ先生の長期出張の時期は見事にピタリと重なるんだ」
「「「えぇぇっ!!?」」」
私たちは思わず叫んでいました。教頭先生と宇宙クジラにいったいどんな関連性が???
「もしかして教頭先生は宇宙人に人体実験されてるとか!?」
「げげっ、そうかも!ジョミー、恐ろしいことサラッと言うなよ」
「おいおい、それはないだろう。UFOなんて嘘っぱちだ」
「でも…統計が出てるんですよね…。ぼく、心配になってきました」
「きっと何かの陰謀ですよ!教頭先生は宇宙人の手先なのかもしれません。そう思いませんか、先輩たちは?」
「え…。私、そんなの怖いわ。宇宙クジラは神様のお使いかも、って思ってたのに…」
みんなワイワイ騒いでいます。私も頭の中が混乱しそうになっていました。教頭先生が実験体で、宇宙人の手先に改造されて、この星を密かに侵略中!?

「あははは、みんな想像力が豊かで実に嬉しいよ」
会長さんが愉快そうに笑い、ティーカップを優雅に傾けて。
「今、教えられることはここまでなんだ。想像を膨らませるも良し、忘れるも良し。…とにかく宇宙クジラは存在する。君たちが映像を見たことにもまた意味がある。…校内見学の時間はそろそろ終わりだ。また気が向いたら遊びにおいで。ね、ぶるぅ?」
土鍋の中からいつの間にか「そるじゃぁ・ぶるぅ」が覗いていました。ジョミー君を警戒しているようです。
「ごめん、ごめん。…さっきは悪かったよ」
ジョミー君は土鍋のそばに座ってポケットから棒付きキャンデーを取り出しました。
「これ、昨日のエッグ・ハントで貰ったんだ。まさか寝込むなんて思わなくって…。早く元気になっておくれよ」
「かみお~ん♪」
キャンデーを貰った「そるじゃぁ・ぶるぅ」は嬉しそうに叫び、早速ペロペロ舐め始めます。すっかり仲直りしたようですね、ジョミー君と。私たちは宇宙クジラの半端な謎を抱え込んだまま「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋から生徒会室に戻りました。そして教室に行って、終礼をして…。

「結局、なんだったんだろう、宇宙クジラって」
校門でまた集まった私たち7人は教頭室のある校舎の方をしばらくの間、眺めていました。教頭のウィリアム・ハーレイ先生と宇宙クジラの間にどんな関係があるのか、分かる日はまだまだ遠そうです…。




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