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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

カテゴリー「シャングリラ学園・本編」の記事一覧

入学式 ・第1話


待ちに待った入学式の日がやってきました!桜は満開、お天気も最高です。

バレンタインデーの後はパンドラの箱を使って「そるじゃぁ・ぶるぅ」と文通を続けていたんですけど、昨夜は「明日は入学式だね。やっと学園へ来てくれるんだね!」と書かれたメモが入っていました。ええ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は長い手紙は書いてこないので、文通はとても楽でしたとも。面倒な日は「今日も一日、元気にしてた?」と書くだけで喜んでもらえましたから!入学したら色々と情報を教えてくれるでしょうし、ご縁は大切にしないと、です。

えっと…校門まで来ましたけれど、入学式の看板の横で写真撮影してる人が沢山いますね。私も初めて着るシャングリラ学園の制服にドキドキです。ああ、やっぱりママと一緒に来ればよかった。一人前になったような気分で「入学式くらい一人で行けるもん。パパやママが来てる人なんて少ないに決まってるし!」と言っちゃったのを早くも後悔しています。どうしよう…記念写真も撮れないよう…カメラも持って来てないし…。

「やあ!君も新入生?…一人なのかい?」
いきなり声をかけられて振り向くと、金髪の男の子が明るい笑顔で立っていました。優しそうなパパとママが一緒です。
「ぼくはジョミー・マーキス・シン。…ジョミーでいいよ。君、カメラ持ってきてないみたいだし、ママがうちのカメラで撮ってあげましょうかって言ってるんだ」
「えっ、いいんですか?」
「うん。ママ、撮ってあげてよ。看板の隣あたりがいいかな?」
ジョミー君のママはとても優しくて、カメラをパパに任せて私の制服の襟を直したり、髪を整えたりしてくれました。お蔭で記念写真は綺麗に撮れ、ジョミー君や友達のサム君、スウェナちゃんと一緒に写して貰ったものも合わせてプリントして下さるということに…。うわぁ、早速お友達が出来ちゃいましたよ。

「一人で来るなんて偉いのねえ。私、恥ずかしくなっちゃった」
スウェナちゃんが言うと、ジョミー君とサム君も頭をかいています。サム君もスウェナちゃんもパパとママが来てるんです。
「ジョミー、そろそろ式が始まるわ。ちゃんといい子にしてるのよ」
「分かってるってば、ママ!…ちぇっ…ぼくもかっこよく一人で来ればよかったかなぁ」
溜息をつくジョミー君。でも保護者が来ていない新入生の方が圧倒的に少数派です。見回した限り、そんな子は…。あ、あそこの男の子たちはそうかも?…と、颯爽と会場へ歩いていく二人連れに目を留めたのですが…。
「待って、キース!肩にゴミがついてるわ」
「シロエ、校門の所にいるから、勝手に帰ったりしないでね。キース君と出かけるんなら必ずメールを入れるのよ!」
あああ、二人ともママがついてきています。…そっか、保護者なしで入学式に行こうだなんてかなり生意気だったかも。
パパ、ママ、ごめんなさい…。入学式、居眠りしたりしないようキチンとするから許してね。



入学式 ・第2話


入学式の会場に入ると「前から順に着席するように」と先生方がおっしゃっています。私はジョミー君、サム君、スウェナちゃんと並んで座ることになりました。右隣はスウェナちゃんで左側はグレーの髪に金色っぽい不思議な色の瞳の男の子です。制服でなかったら女の子と間違えてしまいそうな、とても可愛い顔立ちですけど…話しかけてみようかな?
「こんにちは、はじめまして。私、みゆといいます」
「…あ、ああ…。こんにちは…。ジョナ……マツカです」
んーと。…内気なのかな?挨拶だけで話が終わっちゃいましたよ。いやいや、前の学校でいじめられてたとか、そういうこともあるかもですし!だったら新しい環境で心機一転、明るい学校生活を楽しまない手はないですよねえ。なんたって今日から新入生です。よ~し、私も頑張るぞ!

壇上には大勢の先生と来賓の方が座っておいでになりました。生徒と保護者が会場に入り終わると扉が閉められ、入学式の始まりです。
「新入生の諸君、シャングリラ学園へようこそ。私は教頭のウィリアム・ハーレイ。我々は厳しい試験を突破してきた君たちを心から歓迎する」
先輩方が校歌を歌って下さり、続いて校長先生のご挨拶。大きな目ばかりがやたらと目立つ妖怪じみた顔の校長先生が演壇の前に立たれた時、奇妙なことが起こりました。スーツ姿の男の先生が二人がかりで大きな土鍋を壇上に運び込み、演壇のすぐ脇に置いたではありませんか。なんでしょう、あれは?
「皆さん、入学おめでとう。この良き日を祝して、学園からの贈り物です。君、蓋を取って」
校長先生の指示で土鍋の蓋が取られると、土鍋の中からパーン!とクラッカーが弾け、子供のような影が飛び出しました。
「かみお~ん!…あ、間違えた、間違えちゃった。カミング・ホーム!ようこそ、シャングリラ学園へ。ぼくの名前は、そるじゃぁ・ぶるぅ。今日からここが君たちの家だと思って楽しい学校生活を送ってね!」

銀色の髪に銀の上着、紫のマントをなびかせた姿は間違いなく「そるじゃぁ・ぶるぅ」でした。校長先生の半分ほどしか背がないくせに威張ってふんぞり返っています。えっと…「先生や生徒でも滅多に会えない座敷童のような存在」だというのは単なる噂で、本当は出不精なだけだったとか?こんなに堂々と出てきてますし。
「新入生の諸君、そして保護者の皆さん。あなた方はとても幸運なのです」
校長先生が「そるじゃぁ・ぶるぅ」をよいしょ、と抱き上げて演壇の上に座らせました。
「そるじゃぁ・ぶるぅはシャングリラ学園のマスコットですが、誰でも、いつでも会えるというわけではありません。そして彼の姿を見た者にはもれなく幸運が訪れる、と言われています。今日は特別に姿を見せてくれました。さぁ皆さん、おめでたい入学式を祝い、そるじゃぁ・ぶるぅのご利益にあずかれるよう、三本締めをいたしましょう。ヨーッ…」
「シャシャシャン、 シャシャシャン、 シャシャシャン 、シャン」
「ヨー、 シャシャシャン 、シャシャシャン、 シャシャシャン 、シャン」
そるじゃぁ・ぶるぅも演壇の上で楽しそうに手を叩いていました。いくら「シャン」グリラ学園だからって、入学式に三本締めって…第一、締めちゃったら入学式はそこで終わっちゃうんじゃあ!?
でも、ジョミー君もサム君もスウェナちゃんも…マツカ君も掛け声と共に手を叩いていますし、まぁ、いいか。
「ヨー 、シャシャシャン、 シャシャシャン、 シャシャシャン、 シャン」

…私たち、これからどうなっちゃうんでしょうか~。



 

入学式 ・第3話


校長先生の音頭の三本締めで終了なのかとビックリしちゃった入学式ですが、終わりではありませんでした。三本締めが済むと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が演壇から飛び降りて土鍋に入り、気持ちよさそうに丸くなります。どこかでこんなのを見たような…。あ、そうか。猫が土鍋で寝ている姿が人気の『ねこ鍋』に似ているんですね。校長先生もご自分の席に戻られ、来賓の挨拶などが続きました。皆さん、お話が長いです。なんだか眠くなってきたかも…。

『居眠るな、仲間たち!』
ウトウトしかかっていた私の頭の中に、突然、声が響きました。驚いて見回しましたが、来賓のおじさんの声とは全然違う声だったような気がします。もっと若くてハリのある声…。気のせいかな?
『シャングリラ学園へようこそ。今、そるじゃぁ・ぶるぅの力を借りて、君たちにメッセージを送っている』
え?…ええっ、誰かの声が頭に直接…。どうなっているんでしょう?キョロキョロするとマツカ君と目が合いました。
『このメッセージを受け取ったなら、クラス分けが終わって帰宅する前にある場所に集合して欲しい』
メッセージは途切れなく続いていて、マツカ君が目をパチパチしながら私の顔を見つめています。もしかしてマツカ君にもこの声が聞こえているんでしょうか?
「何か聞こえてる?」
思い切って小声で囁くとマツカ君が頷きました。
『集合場所は…もう分かるね?君たちが来るのを待っているよ』
頭の中に構内の地図らしきものがパァッと広がり、行くべき場所を示されたかと思うと…それっきり声は聞こえなくなってしまったのです。来賓の退屈なお話が響いているだけで…。

「これで入学式を終わります。新入生の皆さんは廊下に張り出してある名簿でクラスを確認し、教室に入るように」
教頭先生の合図で私たちは立ち上がり、会場を出ることになったのですが…さっきのメッセージはなんでしょう?マツカ君に聞こえていたのは確かですけど、スウェナちゃんには聞こえなかったようでした。私、おかしくなっちゃったのかな?
『おかしくなんかないよ、大丈夫。こっちを見て!』
さっきとは違う声に呼ばれて壇上を見ると「そるじゃぁ・ぶるぅ」が土鍋の中からニコニコ顔で手を振っていました。そういえばこの声は「そるじゃぁ・ぶるぅ」の…。といっても銭湯で「ありがと~!」と叫んだのと、さっきの挨拶しか聞いたことないんですけどね。
『ほらね、ちゃんと聞こえてるでしょ?心配しなくていいからね~』

そっか…。頭が変になったわけではないみたいです。きっと何か仕掛けがあるのでしょう。メッセージのことは後でマツカ君に聞いてみればいいし、まずは自分のクラスを確認しなくちゃ!どんな人と同じクラスでしょうか。友達が沢山できるといいな♪




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補欠合格 ・第1話


「捨てる神あれば拾う神あり
受験生も歩けばぶるぅにあたる」

校長先生、お言葉ありがとうございます!
パンドラの箱のおかげで補欠合格できました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」にあたったおかげですね。校内でチョコのやりとりをしない者は礼法室にてバレンタインのお説教ですか。でもって積極的に参加すべし、と。チョコのやりとりも温室のチョコレートの噴水もすっごく興味がありますけども、まずはパンドラの箱で補欠合格させてくれた「そるじゃぁ・ぶるぅ」にお礼を言わなくちゃ、です。



えっと…パンドラの箱は今も大切に持っていますが、補欠合格の知らせを貰った時、お礼状と一緒に何か入れようと思ったのに…私、お小遣いをパンドラの箱の要求で使い果たしてしまっていて。ママに前借を頼んでみたら「無駄遣いしちゃったんでしょう」とすげなく断られてしまいました。
仕方ないから台所にあったカップ麺を入れてみたんですけど、気に入られなかったのか「お湯を注いででろでろになった状態」で返品されてきたんです。どうしましょう、何か…気に入ってもらえそうなもの…。そういえばお風呂が好きでしたっけ。
なのでスーパー銭湯の回数券を1枚入れておいたら「いいお湯だったv」って書いたメモが入っていましたけれど、やっぱり何かが足りませんよね。そっか、チョコレートの噴水か!

私はチョコレートの型になりそうな器をみつくろって紙袋に入れ、シャングリラ学園の温室に向かいました。わぁ、本当にチョコレートの噴水がありますよ!生徒さんがミカンをコーティングしたりして盛り上がっている横からお弁当箱の蓋(これが一番、チョコレートの型に向いていそうだったんです)を差し出し、チョコレートで一杯にして…固めるために一旦、外へ。
折からの寒さでチョコはすぐに固まってきます。ちょうど氷の張った池があったので浮かべてみたら見る見るうちに綺麗なチョコが出来ました。よいしょ、と型から抜いてチョコレートが1個出来上がり。温室に取って返してまたチョコレートを流し込んで…。

その繰り返しでチョコレートを10個作った私は家に帰って、可愛い空き箱に1枚ずつ紙に包んだチョコレートを詰め、ラッピングしてリボンをかけて。…「そるじゃぁ・ぶるぅ」、気に入ってくれるでしょうか?
とりあえず「シャングリラ学園で一番チョコレートをあげたい気分」なのは今は「そるじゃぁ・ぶるぅ」です。美形の生徒会長さんも気になりますが…パンドラの箱を売って下さったのはあの人ですが、補欠合格させてくれた恩人にお礼を言わなくちゃなりません。

私はお気に入りの便箋にこう書きました。
「ありがとう、そるじゃぁ・ぶるぅ。大好き!」
そしてチョコレート入りの箱と一緒にパンドラの箱に入れ、パタンと蓋を閉めたのです。…しばらくして蓋を開けてみるとチョコレートと便箋は消えていて、代わりにメモが入っていました。
「照れちゃうよv」。

校長先生、もしかして…「そるじゃぁ・ぶるぅ」に告白したことになっちゃったのではないでしょうね?なんだかちょっと心配に…。

 

補欠合格 ・第2話


校長先生、もうすぐバレンタインデーですね!美形の生徒会長さんにどうしても「まともなチョコ」を差し上げたいと思い、バイト禁止の校則を破って中華料理店で皿洗いのバイトをしてきました。なんとかバレずに済みましたです。生活指導の先生がラーメンを食べに入って来られたのを厨房から見かけた時は心臓が凍りましたが。…シャングリラ学園はバイトはOKなんでしょうか?

ともあれ懐が暖かくなりましたので、チョコレートを買いに行けますよ。でも生徒会長さんは「300年も在籍している」なんておっしゃってましたし、どんなチョコレートをお渡しすればいいのか全く見当がつきません。凡人の考えなど及ばない方かも…。思えばチョコレート発祥の地では「酒は口からではなくお尻から」飲むものだったとか。酒宴では奴隷が王様や貴族のお尻に恭しくお酒を注入していたと聞き及びます。そんな時代もあったんですから、300年もの年季の入った生徒会長さんのお好みのチョコは常識では考えられないようなモノかもしれません。どうしましょう…。

考え込んでいた時、目に入ったのは部屋に置きっぱなしにしていたパンドラの箱でした。シャングリラ学園のマスコットにして「生徒や先生でも滅多に出会うことができない」座敷ワラシみたいな存在だという「そるじゃぁ・ぶるぅ」なら生徒会長さんのお好みのチョコを知っているかも!?うん、ダメ元で聞いてみるのがいいかも、です。私は早速、自分のオヤツに買ってきたチョコレート・ポッキーをパンドラの箱に入れ、「生徒会長さんのチョコの好みを教えて下さい」と書いた便箋を添えて蓋を閉めました。

待つこと30分。…そろそろいいかな、と箱を開けてみるとポッキーは無くなっていて、代わりにメモが入っています。
「ブルーはバレンタインデーのチョコならなんでもオッケー。もらうチョコの数は学園でダントツの1位だよ。…好みがうるさいのはぼくの方。君のチョコには愛がこもっていて感激しちゃったv」

校長先生、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何か勘違いをしてないでしょうね?心配ですけど、生徒会長さんのチョコの好みが特にないらしいことは分かりましたので、ちょっとデパートまで走ってきます!



 

補欠合格 ・第3話


今日はいよいよバレンタインデー!
美形の生徒会長さんに渡すチョコレートを抱えて学園にやって来ましたが…まずは温室のチョコレートの滝に詣でて必勝祈願。ちゃんと手渡せますように&熱い想いが通じますように、と心をこめて拝んでおきました。バナナやミカンをコーティングしている生徒さんたちに変な顔をされましたけど、縁起かつぎは重要です。

えっと…生徒会長さんは…。捜していると生徒会室を見つけました。ちょうど扉が開いて会長さんが出てらっしゃいます。
「あのっ、これ!…受け取って下さい!!」
バイト代を張り込んで買った舶来モノのチョコレートの箱を差し出しながら、私は真っ赤になっていました。だって…人生初の本命チョコってヤツなんですもの。
「ぼくに?…嬉しいな。…そういえば、君は…」
生徒会長さんはニッコリ笑って受け取って下さり、お茶を飲んでいかないかい、と誘って下さったではありませんか。夢みたい…。生徒会室に入ってみると、机の上にチョコレートが山積みでした。「そるじゃぁ・ぶるぅ」のメモにあった「ブルーがもらうチョコの数は学園でダントツの1位」というのは本当のようです。私のチョコはどうなるのでしょう。こんなに沢山あったのでは…。でも私が渡したチョコレートの箱は机の上ではなく、生徒会長さんのものらしい鞄の中に入れてもらえたんです。もしかして想いが通じましたか?どきどき…。

「ぶるぅと文通してるんだってね」
生徒会長さんがティーカップを差し出しながらおっしゃいました。
「は?」
「パンドラの箱、使ってくれているだろう?…今年箱を買った人の中で注文を全部こなした人は君だけなんだ。他の人は3つ目くらいでリタイヤしちゃったみたいだね。リタイヤは当然、返金の対象外なんだけど」
「私だけ…だったんですか…?」
「うん。補欠合格できただろう?…それだけじゃない。ぶるぅも凄く喜んでたよ。「身体を張って男湯に連れてってくれたんだ」と感激していた。「愛がないとできないよね」って」
う。…なんだか不吉な予感が…。
「おまけに手作りチョコレートが愛のメッセージと一緒に届いた、と大喜びで見せに来たよ。ぶるぅは…まだまだ子供だし、ああ見えてシャイだから、文通が精一杯だろうけれど…仲良くしてやってくれると嬉しいな」
ひゃああ!…やっぱり「そるじゃぁ・ぶるぅ」は勘違いを…!!
生徒会長さんはニコニコ笑ってらっしゃいます。
「ぼくにくれたチョコレートだけど、ぶるぅが楽しみに待ってたんだよ。「半分はぼくにくれるよね」って。なにしろ君は…ぶるぅの大切なペンフレンドだし。後で届けに行かなくちゃ」
「じゃあ、鞄に入れてらしたのは…」
「他のに混じって分からなくなると困るだろう?大切なチョコレートが」
「あのぅ…。私は生徒会長さんに…そのチョコレートを…」
私は必死に言ったのですが。
「おや、不満かい?…ぶるぅと仲良くしておいて損はないよ。ぶるぅを大事にしてくれる人は…ぼくにとっても特別だ」
えぇっ!?…それなら話は別かも!…その他大勢に数えられるより、少々ズレていても特別な方がお得です。ええ、きっと!

私のチョコレートは生徒会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が半分ずつ食べて下さったようです。なぜ分かるかって?…夜にパンドラの箱を開いてみたら、メモが入ってましたから。
「チョコレート、ありがとう。美味しかったよv」って。
生徒会長さんがおっしゃったとおり「そるじゃぁ・ぶるぅ」と文通するのも…有意義なことかもしれません。生徒会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は親しいようですし、「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」と言います。
校長先生、とりあえず「そるじゃぁ・ぶるぅ」と文通しながら学園生活を始めてみようと思いますけど、300年も在籍してらっしゃるという生徒会長さんのハートを射抜くのは難しいですか?




試験発表(不合格) ・第1話


校長先生、合格発表を見に来たんですが…私の番号がありません。あああ、やっぱり試験問題と風水お守りを買うべきでした。向こうで合格した人たちが騒いでいます。いいなぁ…羨ましいなぁ…。

「ジョミー、俺たち、また一緒だな!」
「サムも合格できたんだね。危ないって言っていたからちょっと心配してたんだけど」
「うん、噛んでもらったおかげかも」
「噛んで…?なに、それ」
快活そうな金髪の男の子と友達の会話が聞こえてきました。
「知らないのか、お前?…そるじゃぁ・ぶるぅっていうヤツが住んでる部屋があるんだよ。学園のマスコットで不思議な力があるんだってさ。こいつに試験前に頭を噛んでもらうと、追試にも赤点にもならないらしいぜ」
「じゃあ…もしかして、その部屋に…」
「おう!捜すの大変だったけどな。先生も生徒も滅多に部屋に辿りつけないという座敷童みたいなモンらしいし。それにさ、やっと見つけたのに…オレ、動物に好かれやすいだろう?噛んでもらうまでがまた一苦労で…」

サムという男の子が「そるじゃぁ・ぶるぅ」を殴った話を披露しているのを聞いた私は悔しい思いで一杯でした。受験に来た日に偶然見つけた「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋。…あの時、頭を噛んでもらっていれば私も合格できたのに…。
「サム!ジョミー!…よかったわ、みんな合格できて!」
「スゥエナ!これから楽しくなりそうだね♪」
あぁぁ、あの女の子も前からの友達みたいです。いいなぁ…。私も合格したかったなぁ…。あうあうあう~!!

 

試験発表(不合格) ・第2話


校長先生、掲示板を穴が開くほど見つめてますけど、私の番号、やっぱり無いです。…訂正も…ないのでしょうか。あ、またまた合格組が騒いでますよ(涙)


「あっ、キース先輩!もちろん番号ありましたよね?」
「当然だ。シロエ、お前は来年の下見か?」
「違いますよ。これ、受験票です。…ぼくの」
「お、お前…受験したのか、今年!?…受かったのか!?」
「はい!受かっちゃいました」
シロエと呼ばれた男の子がペロッと舌を出しましたけど、もしかしなくても1学年下みたいです。この子が受かって…私が落ちたぁぁ!?かなり…かなりショックかも…。

「と、いうわけで、キース先輩。これからよろしくお願いします!」
「うっ…。まさか入試まで受けにくるとは…。お前、いったいオレになんの恨みがあるんだ!?」
「やだなぁ、恨みなんてないですよ。宿命のライバルとして認めてほしい、って、いつも言ってるじゃありませんか。ぼくの夢はとりあえず先輩から1本取ることなんです」
シロエ君がニッコリ笑いました。
「でもって、オリンピックを目指すんですよ。先輩、一緒に表彰台に上がりましょう!もちろん金メダルはぼくが貰いますけどね」
「………。オレは柔道を捨てて野球部に入るかもしれないぞ?甲子園で白球を追うのもいいかもしれん」
「だったらぼくも野球にしますよ。目指せ未来の大リーガーです!」
「どこまでオレをライバル視するんだ、お前…」
キース先輩と連呼されていた男の子がガックリ肩を落としています。宿命のライバル…。なんてかっこいい響きでしょう。ああ、でもでも…この二人の行く末は…不合格の私には絶対見届けられないんです。

あああ、試験問題と風水お守り、それに「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議な力!3つもの幸運を拾い損なったのが激しく悔やまれますが、後悔先に立たず。…帰ろうかな…。くっすん。

 

試験発表(不合格) ・第3話


校長先生、いくら掲示板を眺めていても奇跡は起こりそうもないので帰りますね。…あれ?あの銀髪の人は確か…。


「試験、落っこちちゃったのかい?」
受験に来た時「午後の試験問題を買わないか」と声をかけてきた先輩がニコニコしながらやって来ました。
「そういう人にお勧めのアイテムを売って回っているんだよ。ぼくの名はブルー。300年間生徒会長をやっている。これは生徒会の資金稼ぎの一環で…。リオ、こっちに1個持ってきてくれ」
リオと呼ばれた男の子が運んできたのは釣りとかに使うクーラーボックスのようなケースでした。
「これはパンドラの箱というんだ。開くと色々なことが起こるが、最後に希望が入っている…かもしれない」
「…パンドラの箱…?」
「我が学園のマスコット、そるじゃぁ・ぶるぅの欲求が山ほど詰まった魔法の箱でね。注文を全てこなした人には奇跡が起こると言われている。たとえば…補欠合格とか」
生徒会長さんの話はとっても魅力的でした。パンドラの箱…。いいかも…。
「その箱、とても高いんですか?」
「今ならタイムサービスで2千円だ。安いだろう?効果が無かった場合は返金するよ」
2千円!…それならなんとか払えそうです。これで補欠合格できるんだったら安いものですし、ダメでも返金してもらえるなら…。

私はパンドラの箱を抱えてウキウキと家に帰りました。「帰宅するまで決して蓋を開けないこと」と約束させられたので、部屋に入ってから開けてみると…1枚のメモが入っています。
「○○駅前商店街のタコ焼きを10個、この箱に入れてねv」
これが注文というヤツですか!私は自転車にパンドラの箱を乗っけて商店街に走り、タコ焼きを買って箱に突っ込みました。蓋を閉め、すぐに開けてみるとタコ焼きは消えていて、またメモが。
「○○の店のアイスキャンデー全種類を入れてねv」

こんな調子でお使いに走りまくって日は暮れて…。自転車をこぐ体力も財布の中身も尽きてきた頃、現れたメモは。
「○○温泉(駅前の銭湯です)の男湯の脱衣場にこの箱を置いてねv」
え。…男湯って…男湯の脱衣場って、そんな殺生な!!!でも、ここまできて諦めたのでは女が廃るというものです。私は根性で一旦家に帰ってパパの大きなコートと帽子を身につけ、マスクとサングラスで顔を隠して駅前の銭湯に出かけました。
「………」
男湯の暖簾をくぐると番台のオバちゃんに無言でお金を差し出し、脱衣場に入ってパンドラの箱を床によいしょ、と置くと。
「ありがと~!」
バンッ、と箱の蓋が開いて「そるじゃぁ・ぶるぅ」と呼ばれていた生き物がお風呂グッズを抱えて飛び出し、勢いよく服を脱ぎ捨てると一目散に男湯に走っていきました。そして箱の中にはもうメモは入っていなかったのです。

校長先生、とても不思議な体験でした。やっと家に帰ってきて、足はパンパン、財布はスッカラカンですけども…。パンドラの箱の要求には全て応えたと思っています。補欠合格、よろしくお願いいたします~!!!




受験生 ・第1話


校長先生、受験に来ました。「みゆ」といいます。…あのぅ、なんか「そるじゃぁ・ぶるぅ」とかいうのがいたんですけど…でもってアイス食べてたんですけど、あれも生徒さんですか?専用の部屋があるってことは特待生かなにかでしょうか。親御さんの寄付がものっすごい、大富豪のお子さんだったり…しますか?だったら早いとこコネつけて…いやいや、仲良くなっておいた方がいいのかな~、なんて。…あ。その前に合格しないと話になりませんね。てへっ。



受験生 ・第2話


校長先生、受験生のみゆです。難関だとは聞いてましたけど、午前の部、予想以上に難しくって…。でも午後の部と面接で挽回したいと思っています。
お弁当を食べていたら、銀髪に赤い瞳のすごい美形の人が来て「ぼくは300年以上在籍している」って言ったんですよ。そいでもって「午後の試験問題を買わないか」と。予想問題じゃなくて本物だって言われました。
ものすごく心が動いたんですけど…お値段を聞いたら私のお小遣いではとても…。「分割払いと出世払いもOKだ」なんてウィンクされちゃいましたが、でもやっぱり…とても払えそうにないですし…。在学中の授業料より高いんですもの!
そういうわけで試験問題は買っていません。正々堂々、午後の試験に挑みます!



受験生 ・第3話


校長先生、昨日の試験結果は散々でした。やっぱり「300年以上在籍している美形の先輩」から問題を買えばよかったかも…。でもまだ面接が残っていますし、好感触だったと思います。
ただ、会場に入る前に占い師だという金髪美女の先輩に呼び止められて「あなた、面接で落ちますわよ」と言われたのが引っかかっているんです。その先輩から「この風水お守りを持てば絶対に合格しますわ」とパワーストーンのストラップみたいなのを見せられました。
昨日のことがありますし、とても心が動いたんですが…やっぱりお値段が凄く高くて。そしたら昨日「試験問題を買わないか」と言っていた美形の先輩が来て「今ならぼくの知り合いってことで半額にまけさせるよ」と…。でもやっぱり…高いし…何より試験は実力で合格したいですし!
校長先生、正々堂々と受験してみました。あとは合格発表を待つだけです。合格できますように…。




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