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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

儲かるヌード

※シャングリラ学園シリーズには本編があり、番外編はその続編です。
 バックナンバーはこちらの 「本編」 「番外編」 から御覧になれます。

 シャングリラ学園番外編は 「毎月第3月曜更新」 です。
 第1月曜に「おまけ更新」をして2回更新の時は、前月に予告いたします。
 お話の後の御挨拶などをチェックなさって下さいませv




今年も夏休みスタートです。柔道部の合宿と、毎年恒例のジョミー君とサム君の璃慕恩院修行体験ツアーも終わって、今日は慰労会。クーラーが効いた会長さんの家で真昼間からゴージャスな焼き肉パーティーに興じ、締めとばかりに男子は冷麺、スウェナちゃんと私もミニサイズで。
「あー、生き返ったー!」
たっぷり食べた、とジョミー君は御満悦。璃慕恩院では麦飯と精進料理ばかりですから、焼き肉沢山でかなり元気が出た模様。この調子で夏休みの楽しい計画へレッツゴーだ、と皆で予定をチェック。三日後にはマツカ君の山の別荘、それが済んだらお寺関係者はお盆の準備で。
「此処が憂鬱…」
今年もお盆だ、とジョミー君がガックリと。
「棚経、行かなきゃ駄目なんだよね?」
「当たり前だろうが!」
キース君が即座に返しました。
「今年はどっちのコースを希望だ? 俺と回るか、親父と回るか」
「……選べるんだったらキースがいい……」
「親父に希望だけは伝えておこう。どうなるかは親父次第だがな」
親父にしごかれるコースもいいもんだぞ、とキース君の表情、鬼コーチ。なにしろお盆を控えて卒塔婆書きに忙しく、自分の時間がリーチ状態。卒塔婆のノルマが残り何本、と数える日々で。
「くっそお…。お盆当日まで残り…」
「おやおや、今日も懐かしのアニメの名文句かい?」
会長さんがニコニコと。
「地球の滅亡まで残り何日、あのカウントダウンは良かったねえ…。ぼくはリメイクよりオリジナルがいいな、たとえ放映当時は打ち切りアニメであっても!」
「俺はどっちでもいいんだが…。それよりもだ、卒塔婆が一気に書ける何かが貰えるんなら何処へでも行くぞ」
「そしてお盆までに戻って来るんだね?」
「そういうことだな、地球再生ならぬ卒塔婆一気に書き上げツールだ!」
それは卒塔婆プリンターと言うのでは、という突っ込みを入れたい気分。わざわざ宇宙の旅をしなくてもプリンターでガチャンガチャンと刷れるのでは…。
「ふうん? お盆までに何処へ行くって?」
「「「!!?」」」
誰だ、と振り返った先に会長さんのそっくりさん。私服ってことは、これからお出掛け?



「こんにちは。今日はノルディとデートした帰りなんだよ」
フルコースを御馳走になって来たから今はお茶だけ、とソルジャーは「冷麺、食べる?」という「そるじゃぁ・ぶるぅ」の申し出を断りました。
「でもって夏だねえ、今年も卒塔婆の季節なんだね?」
「やかましい! あんたと旅に出掛ける頃には全部終わっている!」
横から出て来て引っかき回すな、とキース君。
「卒塔婆も棚経も海の別荘より前に終了だからな、あんたとは何の関係も無い!」
「無いねえ、それに抹香臭いのも嫌だし」
「なら、なんで来た!」
「夏だから!」
思いっ切り夏、とソルジャーは窓の向こうの抜けるような青空へと大きく両手を広げて。
「夏は解放感溢れる季節! この素晴らしい季節に、是非、素敵企画!」
「「「素敵企画?」」」
「そう! ノルディも大いに乗り気だったし、やるだけの価値はあると思うよ」
「ノルディ!?」
会長さんがピクリと反応。
「君はいったい何の企画を?」
「儲かる企画!」
「それって、何さ?」
「チャリティーだよ! ただし相手はノルディ限定、チャリティーで得られたお金は君のもの!」
ぼくのお勧め、とソルジャーの瞳がキラキラと。
「君が頑張ればガンガン儲かる! そりゃもう、笑いが止まらないほどに!」
「どういう企画?」
儲け話と聞いた会長さんが食らい付けば、ソルジャーは「素敵企画!」と満面の笑顔。
「脱げばお金が貰えるんだよ!」
「「「脱ぐ!?」」」
「そう! 脱いでチャリティー、これぞチャリティーヌードってね!」
うんと色々あるんだってば、と得々と説明を始めるソルジャー。なんでも大学のサークルの活動資金を集めるためのヌード写真なカレンダーとか、もっと真面目に病気撲滅のチャリティーで有名女優が脱ぐだとか。要は脱いだらお金が入るようですけれども、それを誰にやれと?



ソルジャーお勧め、チャリティーヌード。何処で聞き込んで来たかはともかく、持ち掛けた先はエロドクター。でもって得られたお金が会長さんの儲けってことは、もしかしなくても…。
「もちろん、ブルーが脱ぐんだよ!」
脱げば脱ぐほど儲かる仕組み、とソルジャーは笑顔全開で。
「全部脱げとは言ってないしさ、それに元ネタのチャリティーヌードも色々あるし! リボンで隠すとか、方法はもう幾らでも!」
景気よくスッポンポンもあるんだけどね、とソルジャー、ご機嫌。
「ノルディはとっても乗り気な上に、ドカンと出すって言ってたよ? この夏は是非、脱ぐべきだね!」
脱いで儲けてウハウハ行こうよ、と会長さんの肩をポンッ! と。
「儲け話は好きだろう? せっかく考えてあげた素敵企画を活用してよ」
「お断りだから!」
誰が脱ぐか、と会長さんは怒りMAX。
「勝手に話を決めてこないで欲しいんだけど! 迷惑だから!」
「そうかなあ? ただ脱ぐだけでいいんだよ?」
「なんでノルディの前なんかで!」
「前で脱げとは言っていないよ、写真を撮ったらそれで充分!」
カレンダーとかにすればいいのだ、と譲らないソルジャーですけれど。
「そっちの方こそお断りだよ、なんでノルディにオカズを提供するような真似を!」
「「「おかず?」」」
オカズって、なに? 私たちが顔を見合わせていると、会長さんは「ごめん、失言」とお詫びの言葉を。
「君たちには通じないんだったっけ…。とにかく大人の世界な隠語で、ノルディが喜んじゃうって意味だよ。写真なんかを渡したら最後」
「「「あー…」」」
要は教頭先生と同じことか、とストンと納得。会長さんの写真を見ながらロクでもない夜を送ってらっしゃると噂に聞いていますから…。
「そうそう、それと同じだよ。そんな素材をノルディに渡す必要は無い!」
儲け話でも却下するのみ、と会長さんは憤然と。
「脱ぐんなら君が脱ぎたまえ! 同じ顔だから!」
それで充分、と指をビシィッ! とソルジャーに。確かに顔は同じですから、ソルジャーが脱げばいいんですよねえ?



「…ぼくが脱ぐわけ?」
それはなんだか違う気がする、とソルジャーは自説を唱え始めました。
「君が脱ぐから価値があるんだよ、ノルディにとっては。だからこそチャリティーでお金も出すけど、ぼくだとねえ…。お金は貰えそうにないんだけれど」
「貰えばいいだろ!」
日頃から毟っているくせに、と会長さんが反論すれば。
「だから話にならないんだよ! わざわざ脱いだりしなくってもねえ、ぼくはお金を貰えるし! 脱いでお金を貰えたとしても、日頃のお小遣いの延長なんだよ」
それではチャリティーの趣旨から外れる、と些かこじつけムードなお話。けれどソルジャーは思い込んだら一直線だけに、違うと思えば譲るわけがなく。
「とにかく、君でなければノルディにとっては意味がない。ぼくじゃ価値なし!」
「そうとも思えないけどねえ…」
「そう言わずに! この夏の記念にパアーッと脱ごうよ、景気よく!」
「君が脱いだらいいだろう!」
チャリティーの相手がノルディでなければいいんだろう、と会長さん。
「チャリティーヌードはぼくだって知っているんだよ。趣旨は色々、お金を出してくれる人も色々。だったら相手を変えればいい」
君のヌードの価値が分かる人、と会長さんはトンデモ話を持ち込んできたソルジャーの顔をまじっと見詰めて。
「ノルディにももちろん分かるだろうけど、世の中にはもっと切実に君のヌードを希望な誰かがいそうだけどねえ? 君よりはぼくだと思うけれどさ」
「…それって、まさか…」
「こっちの世界のハーレイだけど?」
アレから毟れ、と会長さん。
「そしてアイデアの提供料として、ぼくにも一割よこしたまえ」
「一割!?」
「二割でも三割でもかまわないけど…。ホントは五割と言いたいけれども、大負けに負けて一割でいい。チャリティーだしね?」
脱いでこい! と会長さんは言い放ちましたが、エロドクターならぬ教頭先生を相手にチャリティーヌード。しかも脱ぐのはソルジャーだなんて、そんな企画が通るんでしょうか…?



「…こっちのハーレイ相手に脱げって? このぼくに?」
これでも結婚してるんだけど、とソルジャーは唇を尖らせながら。
「ノルディだったら赤の他人だから脱いでもいいけど、ハーレイはねえ…。なんだか浮気をしてるみたいで気が咎めるよ、うん」
「実は浮気もやりたいくせに!」
会長さんの鋭い突っ込み。
「ノルディとヤろうと考えてみたり、こっちのハーレイも巻き込んで三人でだとか、ロクなことを言わない筈だけどねえ?」
「ぼくはいいんだよ、ぼくだけに限った問題だったら! 問題はぼくのハーレイで!」
ああ見えて非常に繊細なのだ、とソルジャー、至って真面目な顔で。
「ぼくが自分以外の誰かと…、と考えただけでドツボにはまるし、ましてや脱いで写真となるとねえ…。それをオカズに励む誰かがいると思えば萎えちゃいそうだよ」
それは非常に困るのだ、とブツブツブツ。
「ベッドで思い出されたら最後、ヌカロクどころかお預けコース! ぼくの裸を目にしただけで勝手にどんどん意気消沈で!」
「…だったら、セットで脱いでしまえば?」
「「「セット?」」」
会長さんの発言は文字通り、意味不明というヤツでした。何をセットにするのでしょう? ソルジャーのヌードとセットだなんて、全く見当つきませんけど?
「…セットって、何さ?」
ソルジャーにも通じなかったようです。ということは大人の時間の話ではなく、至って普通の次元の何か。セットものとは何なのだろう、とソルジャーも込みで全員で首を捻っていると。
「分からないかな、セットはセット! 意気消沈にならないように!」
会長さんが指を一本立てました。
「君のハーレイ、要は君が自分一人のものでさえあればいいんだろ?」
「それはまあ…。そういうことかな?」
「だからさ、そこをセットでクリア! 君だけじゃなくて君のハーレイも一緒に脱いだら問題解決、二人セットでチャリティーヌード!」
そういうチャリティーヌードもアリだ、と会長さん。何人もが一緒に写っている写真は多いという話ですけれど。…ソルジャーとキャプテンがセットで脱いだら、それって猥褻スレスレでは?



一人で脱ぐのが問題だったらセットで脱げ、という凄い提案。会長さん曰く、チャリティーヌードには大学のサークルのメンバーが全員揃って一枚の写真に、などというのもよくあるケース。ゆえにソルジャーとキャプテンがセットでも何の問題も無いそうですが…。
「おい。それはマズイと俺は思うが」
キース君が口を挟みました。
「サークルのメンバーだったらまだしも、こいつらの場合は夫婦だぞ? 猥褻物になったりしないか、その写真とやら」
「そこが売りだよ、分かってないねえ…」
まだまだだねえ、と会長さん。
「ヤッてる所を撮ったらマズイよ? だけど、それっぽく見える写真はオッケー!」
そこが大切、とニッコリと。
「ハーレイの夢はぼくとの結婚、結婚、すなわちぼくと一発!」
その夢の世界をチラリと見せるチャリティーなのだ、と会長さんは得意げな顔。
「ブルーとの絡みはハーレイの夢じゃないけどねえ…。あくまでぼくにこだわってるけど、自分そっくりの向こうのハーレイとブルーの絡みは別次元だよ」
結婚すれば叶う筈の夢、と言われてみればそうなのかも…。ソルジャーも「ふうん?」と首を傾げつつ。
「じゃあ、アレかい? ぼくとハーレイが二人で脱いで、きわどい写真を撮りまくるって?」
「早い話がそんなトコかな、別にきわどくなくてもいいけど」
二人揃って裸なだけで充分だから、と会長さん。
「後はハーレイが勝手に脳内で補完するしさ、裸で並んで座るだけでも」
「そこはハーレイの膝に座りたいねえ…」
どうせだったら、とソルジャーは俄然、乗り気のようで。
「そういう写真を撮るんだったら、ぼくのハーレイも恥ずかしがる程度で済むと思うよ。ぼくとセットならオカズにされても自分のものだと断言出来るし!」
絡んでるのが自分だから、とソルジャーの心は決まった様子。
「儲け話はぼくも嫌いじゃないからねえ…。ぼくのハーレイとこっちの世界でデートするには資金だって要るし、たまには自分で稼ぐのもいいね」
ハーレイと二人で荒稼ぎ! と言い出しましたが、毟る相手は教頭先生。猥褻スレスレのきわどいヌードを売り付けることは可能でしょうか…?



教頭先生に自分とキャプテンのヌード写真を売り付けたくなって来たらしいソルジャー。しかも猥褻スレスレなのを、と話は恐ろしい方向へと。
「どうせだったら選べるチャリティーヌードもいいねえ…」
「「「選べる?」」」
なんのこっちゃ、と目を丸くした私たちですが、ソルジャーは。
「そのまんまだよ、選べるヌード写真だよ! でなきゃ注文出来るとか! お好みで!」
こっちのハーレイの好みに合わせて選べるヌード、とニコニコニコ。
「チャリティーヌードを撮影するにはカメラマンってヤツが必須だろ? そのカメラマンを使う代わりに、こっちのハーレイが自分で撮影! これだ、と思うベストショットを!」
ついでにポーズの注文なんかも、とソルジャーの瞳が煌めいています。
「あんな絡みを撮ってみたいとか、こういう絡みが好みだとか! 言って貰えればポーズをつけるし、これぞチャリティー!」
そしてこっちのハーレイにも美味しい話、と自信満々。
「これを断る馬鹿はいないよ、絶対に! 持ち掛けたら確実に釣れるかと!」
「…鼻血じゃないかと思うけどねえ?」
釣れる前に、と会長さん。
「想像しただけで鼻血の噴水、チャリティーで募金どころの騒ぎじゃなさそうだけど?」
「だから予め、予告をね!」
チャリティーのお知らせを渡しておけば無問題、とソルジャーはフフンと鼻で笑って。
「妄想の段階の鼻血の方はね、家で一人で噴いて貰うよ。お知らせのチラシで噴きまくっておけば、チャリティーにもきっと乗り気になるさ」
妄想だけでは終わらないよ、と絶大な自信。
「この妄想が実現するのだ、とカメラまで誂えそうだけど? でもってポーズの注文なんかもしてくれそうでさ、ぼくの懐が大いに潤うわけ! 君にも一割!」
「…お知らせねえ…」
「絶対、効果はあると思うよ? ぼくと、ぼくのハーレイとのチャリティーヌード!」
早速チラシを作らなくては、と突っ走ってますけど、そのヌードとやら。キャプテンの承諾が必要な上に、撮影場所だって要るんですけど…。その辺をどう考えてるのか、なんだかとっても怖いんですけど~!



「…撮影場所?」
ピッタリの所があるじゃないか、とソルジャーは言ってのけました。
「来月だよねえ、マツカの海の別荘行き! あそこがピッタリ!」
「「「えぇっ!?」」」
「それに結婚記念日に合わせての旅行だろ? 結婚記念日にチャリティーヌードをやろうって言ったらハーレイも反対しないと思うし」
「「「………」」」
エライことになった、と青ざめても既に手遅れと言うか、何と言うか。ソルジャーの頭の中ではしっかり企画が立ち上がっていて、チラシまで作るつもりです。つまりはチラシを貰った教頭先生がソルジャーの話に乗りさえすれば…。
「そう! チャリティーヌードで大儲け!」
この夏の海は実に素敵な思い出が出来る、とソルジャーは思い切り暴走モード。
「チラシにはぼくのハーレイの写真も要るねえ、二人並んで撮ろうかな? それとも二人でベッドに入って、上掛けから覗いた肩から上とか…」
「そんな写真を何処で撮るわけ!?」
ぼくの家は絶対貸さないからね、と会長さんが怒鳴れば、ソルジャー、ケロリと。
「なんで君の家なんか借りなきゃいけないのさ? 青の間があるのに」
「カメラマンは?」
「ぶるぅに決まっているだろう! 日頃から覗きで鍛えたぶるぅだよ!」
きっと素晴らしい写真を撮る筈、とソルジャーが挙げた名前は大食漢の悪戯小僧のものでした。何かといえば大人の時間を覗き見していると聞いていますし、写真くらいは撮るでしょうけど…。
「ね? いいカメラマンだと思うだろ?」
チラシの段階で既にチャリティー! とソルジャーは自画自賛しています。
「ぶるぅが調子に乗った場合は隠し撮りだってしそうだからね? ぼくのハーレイがOKさえすりゃ、そういう写真もチラシに使える」
そしてチラシは無料サービス、と言われなくともチラシは無料。教頭先生が盛大に鼻血を噴き上げるレベルのものであっても、あくまで無料。ソルジャー曰く、チラシで妄想して楽しんだ分もチャリティーに気前よく出してほしいということで…。
「チャリティーって本来そういうものだって聞いてるしね? 無料サービスで奉仕の精神!」
ご奉仕とはちょっと違うけどね、と妙な発言が聞こえましたが、聞こえなかったことにしておきますか…。



カッ飛んだアイデア、チャリティーヌード。あまりの展開に止めることさえ出来ないままに、ソルジャーは勝手に計画を立ててウキウキ帰って行ってしまいました。海の別荘で撮影だとか、チラシを作って教頭先生に渡すのだとか。私たちの頭痛の種だけ増やしてくれて…。
「…で、どうなったんだ、あの計画は?」
キース君が超特大の溜息つきで尋ねる、会長さんの家での昼食タイム。あの日から時は順調に流れ、山の別荘ライフも終わって今はお盆が目の前です。ソルジャーは山の別荘にチラシの見本を持って現れましたが、それ以降、特に動きは無くて。
「さあねえ? …チラシは無事にハーレイの手に渡ったようだけどねえ?」
考えたくない、と会長さん。
「あのチラシ、結局、隠し撮りだろ? ブルーはチラシにそれもきちんと書いたらしくて」
「「「ええっ!?」」」
見本の段階では「隠し撮り」の文字は何処にも無かったと記憶しています。ソルジャーとキャプテンがベッドで抱き合っていた写真は肩から上だけ、もちろんカラー。それをメインに「チャリティーヌード撮影会!」の文字や、撮影会の趣旨の説明や…。
「こんな感じで好みのポーズを指定できます、と書いたついでに隠し撮りだって書き添えたんだよ。本当に本物の現場をぶるぅが撮りました、って!」
「「「うわー…」」」
教頭先生の鼻血の噴水が目に浮かぶような気がします。会長さんによると、教頭先生、チラシが汚れてしまわないよう透明なケースに入れたのだとか。
「でもって毎晩、眺めてるわけ。…それから貯金通帳も」
「「「貯金通帳…」」」
そんな代物をチェックしているなら、チャリティーヌードにドカンとつぎ込むつもりでしょう。ソルジャーが作ったチラシには料金は一切書かれていなくて、「チャリティーですから、お気持ちでどうぞ」という一文だけ。
「あの「お気持ち」が問題でねえ…」
会長さんの言葉に、キース君が「ああ」と。
「あれが一番くせ者だよなあ、ケチったら自分が恥をかくしな…。しかし、坊主の世界もアレだし、俺もよく檀家さんに「はっきり値段を言って下さい」と頼まれて困ることがある」
お気持ちはあくまでお気持ちなのだ、ということですけど、支払う人の懐具合で変わるらしいそれは得てして見栄の世界だそうで。教頭先生も破格の値段を支払うおつもりでらっしゃるだろう、とキース君。うーん、ソルジャー、ぼったくりですか…。



チラシを受け取った教頭先生のその後も分からず、ソルジャーが何を企んでいるかも全く読めず。そのソルジャーは至極ご機嫌で顔を出しては食事やおやつを食べて行くだけ、訊くだけ無駄な雰囲気です。そうこうする内にお盆も終わって…。
「かみお~ん♪ ぶるぅもブルーも来てるよ!」
海の別荘への出発日。アルテメシア駅の中央改札前に出掛けてゆけば、ソルジャー夫妻と「ぶるぅ」が揃って待っていました。会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」も。
「おはよう、今年もよろしくね!」
「今年もよろしくお願いします」
ソルジャー夫妻の挨拶が終わらない内に「すまん、すまん」と教頭先生ご登場。ソルジャー夫妻の顔を見るなり頬を赤らめ、「よろしく」と挨拶しておられます。
「…あの挨拶だと…」
ジョミー君が呟き、サム君が。
「やる気なんだぜ、例の撮影会」
「ぼくたちは無関係だと思いたい…んですけどね?」
何も言われていませんからね、とシロエ君。そういえば何も聞いていないか、と浮かんだ光明。もしかしたら撮影会とやら、関係者だけで行われるのかもしれません。
「そうだといいが…」
そう思いたいが、とキース君がソルジャー夫妻をチラリと眺めて、マツカ君が。
「どうなんでしょう? 今までのパターンから考えると…」
「待て、言うな」
言霊と言うぞ、とキース君。
「俺たちはあくまで部外者だ。海の別荘へ行くだけなんだ、泳ぎにな」
「そうよね、それと海辺でバーベキューよね」
スウェナちゃんの言葉に私も「そうそう!」と乗っかり、この際、チラシもチャリティーヌードも綺麗に忘れておくことに。海の別荘はプライベートビーチでの時間たっぷり、庭のプールも使い放題。美味しい食事もついていますし、いざ出発~!



電車での時間は貸し切り車両なだけに快適に過ぎて、駅に着いたらマイクロバスでのお出迎え。一年ぶりの海の別荘は海水浴で幕開けです。真っ白な砂が嬉しいプライベートビーチで泳いで、遊んで。バカップルなソルジャー夫妻も「ぶるぅ」も一緒。
「やっぱり地球の海はいいよねえ…」
ソルジャーが大きく伸びをしていますが、その姿に教頭先生が熱い視線を。なにしろソルジャーは水着一丁、見たくなる気持ちは分かりますけど…。
「…例年だったら会長の方を見てらっしゃいますよね?」
シロエ君が声を潜めてヒソヒソと。
「だよね、あっちを見てるってことは…」
やっぱり例の撮影会? とジョミー君。私たちは「シーッ!」と唇に指を当て、コソコソと砂浜で輪になって。
「…チラシに日付は書いてあったか?」
キース君の問いに答えられる人はいませんでした。熟読せずにチラリと見ただけ、感想を求めるソルジャーに「いいんじゃないか」と返しただけ。
「いつだったでしょう?」
「さあ…?」
撮影会の開催は疑う余地もなさそうですけど、日取りが不明では先手を打って逃亡することは不可能です。巻き込まれないためには三十六計逃げるに如かずで、ソルジャー夫妻と一緒にいる時間を短くするしかないというのに…。
「結婚記念日でチャリティーだとか言ってたか?」
確かそうだな、とキース君。
「あいつらの結婚記念日といえば…」
「キース、それさあ…」
今日じゃなかった? とジョミー君の口から怖い台詞が。
「「「今日?!」」」
「シーッ!」
ジョミー君からの鋭い警告。
「うろ覚えだけど、今日だった気が…」
「…今日でしたよ…」
思い出しました、というシロエ君の言葉の追い討ち。まさかXデーは今日とか?



出来ることなら失礼したい撮影会。部外者であると信じたいものの、そうでない可能性もまた高く…。巻き込まれる前に逃げ出そうにも、今日がXデーだというなら難しそうで。違ってくれ、と祈るような気持ちで夕食の席に出掛けてゆくと。
「かみお~ん♪ 今日はお祝いだよ!」
「ぼくのパパとママの結婚記念日~!」
キャイキャイとはしゃぐお子様が二人。「ぶるぅ」の方は未だに決着がついてはいないママの座に顔を顰めるソルジャーを他所に飛び跳ねています。
「えとえと、今年で何回目だっけ?」
「ぶるぅ。そういうのはあまり訊くものではないぞ」
老けた気分になるからな、とキャプテンが返し、ソルジャーは。
「そう? 金婚式なんかゴージャスそうだよ、金だけに君が励んでくれそう」
「…私に今から貯金しておけと? 金製品をプレゼントするために…ですか?」
「違う、違う! 金が違うよ、君の金だけあれば充分!」
「…そちらの方の金でしたか…」
鍛えておきます、と頬を赤らめているキャプテン。このバカップルを何とかしてくれ、と叫びたい気分を堪えつつ、記念日とあればお祝いの言葉も必要で…。
「「「おめでとうございまーす!」」」
「ありがとう。ぼくとハーレイとの結婚記念日を祝して、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
カチン、カチンとグラスが触れ合い、豪華な夕食が始まりました。各自の席に置かれたメニューによると、デザートは結婚記念日のケーキ。これは逃亡出来ません。普通のデザートなら「これは好きじゃない」とばかりに「御馳走様」と席を立つのもアリですが…。
「いいかい? 今年もやるからね、ハーレイと愛の共同作業!」
「「「はーい…」」」
項垂れるしかない私たち。ソルジャー夫妻の結婚式は人前式で、夕食の席からなだれ込んだもの。それだけにウェディングケーキも入刀式も無くて、その分を取り戻すべく、結婚記念日にはケーキへの入刀式があるのです。切り分けられたケーキは食べるのが礼儀。
「結婚記念日はやっぱりいいねえ…」
「そうですねえ…」
食事の合間にキスを交わして、「あ~ん♪」と食べさせ合っているバカップル。もしもXデーが今日なら、この熱々の雰囲気のままで撮影会とか…?



どうか今日ではありませんように、という祈りも空しく、私たちは捕獲されました。結婚記念日ケーキが配られる中で、ソルジャーが「今日の良き日の記念にイベント!」と高らかに叫び、その場で巻き込まれてしまったのです。
「…なんでこうなる…」
「キース先輩、今更ですよ…」
あの計画が決まった時から運命は決まっていたんですよ、とシロエ君。夕食を終えた私たちは一時間の休憩時間を挟んでソルジャー夫妻の部屋へ。その一時間の間にソルジャーとキャプテンは撮影に備えてお風呂に入っておくのだそうで…。
「このドア、開けたくないんだけれど…」
ジョミー君の嘆きは皆に共通、開けたいわけがありません。しかし背後で「かみお~ん♪」の声。
「ねえねえ、なんで開けないの?」
もう時間だもん! と手を繋いで現れた「そるじゃぁ・ぶるぅ」と「ぶるぅ」のコンビ。付き添いとばかりに会長さんも一緒に来ていて。
「…逃げても無駄だよ、相手はブルーだ。ぼくも開けたくはないんだけどね」
「そう言わずに!」
その声と共にドアがガチャリと中から開いて、バスローブ姿のソルジャーが。
「まあ入ってよ、後はこっちのハーレイだけだし!」
「どうぞ、入ってごゆっくり」
見学者用の席はあちらに、とキャプテンが示した先に人数分の椅子が並んでいました。広い部屋には大きなベッドがありますけれども、それと椅子との間にはけっこうスペースが…。カメラマンな教頭先生が楽々と動けるように、でしょうか?
「ああ、あのスペース? 場合によっては有効活用!」
ソルジャーが微笑み、キャプテンが。
「チャリティーヌードですからねえ…。ご注文によっては、あそこでブルーを」
「「「………」」」
大人の時間はベッドだけではなかったのか、と思ったのですが、さにあらず。キャプテンの言葉には続きがあって。
「ソフトSMとか言いましたかねえ、縛ることになっているのですよ」
「「「縛る?」」」
「ええ。海ですから昆布はどうか、とブルーが雰囲気溢れる小道具を用意したようで…」
ご期待下さい、と笑顔のキャプテン。誰もそんなの期待してません~!



ソルジャーを縛る昆布まで用意されているらしい、チャリティーヌード撮影会。どうなることやら、と震えている間にノックの音がコンコンと。
「…こんばんは」
ドア越しの声に、ソルジャーが「待ってたよ!」とドアを開けて客人を招き入れ…。
「ちょっとお客が増えちゃったしねえ、もしかしたら来ないかと心配したけど…」
「すみません、遅くなりました。…覚悟を決めるのに少々時間が…」
お恥ずかしいです、と教頭先生。お買いになったのか借り物なのか、プロ顔負けのカメラを引っ提げ、撮影する気は満々といった所でしょうか。
「こんな機会は二度と無いかもしれませんしね、恥は其処の海に捨ててきました」
「うん、素晴らしい度胸だよ! ご期待に応えて頑張らないと…。それで、例のものは?」
「こちらに用意して参りましたが、如何でしょう?」
気持ちばかりのチャリティーですが、と教頭先生は提げていた紙袋をソルジャーに。チラリと見えた中身にビックリ、帯封つきの最高額の紙幣がドッサリ無造作に…。
「「「…スゴイ…」」」
教頭先生が物凄い額の貯金を持っておられるとは聞いていましたが、本当だったみたいです。会長さんがチッと舌打ちをして。
「…ぼくとの未来のための資金を無駄遣いって?」
「す、すまん…! しかし、お前はこういった美味しいチャンスを一切くれないし…」
「それに関しては何も言わない。ただ、無駄だなあ、って思ってねえ…」
写真なんか撮れやしないくせに、と会長さん。
「究極の鼻血体質の君に何が出来ると? どうせ一枚も撮れないだろうし、無駄だよね、お金」
「そんなことはない!」
大志を抱けば撮れるものだ、と大きく出ました、教頭先生。
「しかもチャリティーヌードだぞ? いわゆる猥褻なヌードとは違う!」
「どうなんだか…」
ソフトSMまであるみたいだよ、と会長さんは鼻でフフンと。
「君が希望すればブルーを昆布で縛るんだってさ、それもチャリティーの内らしい」
「そ、ソフトSM……」
「おや、まだ鼻血は出ないんだ? カメラマン魂で頑張りたまえ」
大金をドブに捨てないように、と会長さんから再度の注意。ソルジャー夫妻はベッドの脇でスタンバイしてますけれども、教頭先生、大丈夫ですかねえ?



「御準備の方はよろしいでしょうか?」
よろしかったら脱ぎますが、とキャプテンが声を掛ける中、教頭先生はカメラを覗いて。
「は、はあ…。注文もつけられると聞いておりますが…」
「その件でしたら、私よりもブルーの方が…。どうなのです、ブルー?」
「いいよ、たっぷり貰ったからね。まずはどういうポーズなのかな、君の希望は?」
「そ、そのう……」
普通にキスでお願いします、と教頭先生。
「バスローブはお召しになったままでいいですから」
「ふうん? いいけど、それはヌードじゃないしね…」
写真は駄目、とソルジャーが逆に注文を。教頭先生は「えっ?」と瞳を見開いて。
「そこは写真は駄目なのですか?」
「うん。ぼくがやるのはチャリティーヌード撮影会! 脱ぐのが前提! 脱いでからならベッドインでもソフトSMでも何でも御希望に応じるけどね」
間違えないように、と釘を刺してから、ソルジャーはキャプテンの首に腕を回して。
「ハーレイ、とりあえずキスらしいよ?」
「そうらしいですね。では、キスをしながら…」
「脱いでベッドに行くのがいいかな?」
「いえ、ベッドで脱がせるべきでしょう。その方が絵になりますよ」
きっと、と始まる熱いキス。写真撮影が出来ない教頭先生はともかく、私たちには目の毒です。この先は大人の時間あるのみ、そんなものを見学させられましても…。
『大丈夫』
「「「えっ?」」」
今の、誰? キョロキョロと見回すと、会長さんがニヤニヤと。
『ブルーは最初から毟ることしか考えてないし、ハーレイの鼻血なんか気にしちゃいない。ぼくはハーレイが大金をドブに捨てるのを見に来ただけでね、君たちの方も御同様ってね』
ハーレイが倒れたら撤収するよ、と続く会長さんの思念。でもでも、教頭先生、カメラを構えてらっしゃいますが? バカップルが脱いだら写真を撮るべく、準備万端整ってますが…?



結婚記念日にチャリティーヌード撮影会。そうやって関連付けられたせいか、ヘタレと評判のキャプテンはギャラリーを気にせず堂々とソルジャーをベッドに押し倒し、バスローブに手をかけました。
ヌードになったら撮影OK、教頭先生がカメラをグッと。
「あっ、ちょっと待って!」
ソルジャーの「待って」が誰に向けられたものか分からないため、キャプテンも教頭先生も動きがピタリと止まりましたが。
「えっと、ハーレイ? ううん、君じゃなくてこっちのハーレイ。…チャリティーに沢山出してくれたし、特別に一枚、凄いのを撮らせてあげるから!」
「は?」
「これがいい、っていうシーンがあったら一声かけてよ。そこで交代させるから」
「「「交代?」」」
何を交代するのだろうか、と悩むよりも前にソルジャーの声が。
「ぼくのハーレイと君とが交代! チャリティーヌードだし、脱いで交代!」
そして遠慮なくぼくと絡んで一枚、とソルジャーは極上の笑みを浮かべて。
「カメラはぶるぅに頼めばいいよ。ね、ぶるぅ?」
「かみお~ん♪ うんと上手に撮ってあげるね、エッチの写真!」
「…え、エッチ…」
教頭先生の声が裏返り、ソルジャーが。
「ぶるぅ、そこはエッチじゃなくって! チャリティーヌードはあくまで芸術!」
「でもでも、見た目はエッチだよう!」
これから大人の時間だよね? という無邪気でおませな言葉が炸裂。
「それでハーレイ、何処で代わるの? あのねえ、ぼくのオススメはねえ…、って、あれっ?」
どうしたの、と「ぶるぅ」が目を丸くする前で噴水の如き教頭先生の鼻血。
「…こ、交代…。と、特別に一枚……」
ヌードで一枚、と呟いた教頭先生、それを最後にドッターン! と床へ。もちろん意識があるわけもなくて、カメラはシャッターを切られることなく転がっていて…。



「はい、大金をドブに捨てたってね」
会長さんが冷たく言い捨て、ソルジャーが。
「ううん、無駄にはなっていないよ。ぼくとハーレイとで有意義に使う!」
「だろうね、チャリティーヌードだしねえ?」
脱ぎもしないで荒稼ぎか、と会長さん。
「で、この馬鹿は此処に置いてってもいい? 連れて帰りたい気分じゃなくてね」
「よかったら後で縛っておこうか、其処の昆布で」
ソフトじゃなくてうんとハードに、というソルジャーの提案に、会長さんは「うん」と即答。
「好きに縛っておいてよ、昆布が乾いた後が楽しみ」
「引きちぎれるとは思うけれども、其処までの過程、録画するのもいいかもねえ…」
そのカメラは録画も出来るようだし、とソルジャー、パチンとウインク。
「この際、脱がせて縛っておくよ。気に入ったらチャリティーヌードってことで」
「了解、ぼくの取り分だった一割の中から支払わせて貰う」
そしてその写真で脅すのだ! と会長さんはブチ上げました。ゼル先生とかにバラ撒かれたくなければ出すものを出せ、と教頭先生に迫るとか。それもチャリティーヌードなのだと言ってますけど、どうなんでしょう? とりあえず大人の時間は見ないで済んだし、良かったです~!




          儲かるヌード・了

※いつもシャングリラ学園を御贔屓下さってありがとうございます。
 ソルジャーのアイデア、チャリティーヌードは未遂に終わってしまったようですが…。
 教頭先生から毟れてご機嫌、こうなるのは見えていましたけどね。
 シャングリラ学園、11月8日に番外編の連載開始から9周年の記念日を迎えました。
 感謝の気持ちで月2更新が恒例でしたが、絶望的に使えないのがwindows10 。
 シャングリラ学園、月イチ更新のままでした。申し訳ありません。
 次回は 「第3月曜」 12月18日の更新となります、よろしくです~! 

※毎日更新な 『シャングリラ学園生徒会室』 はスマホ・携帯にも対応しております。
 こちらでの場外編、11月は、ソルジャーがニートっぽいという話が切っ掛けで…。
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