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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

甘やかされる手

「いたっ!」
 ブルーが小さな悲鳴を上げた。向かい合わせで座っていたハーレイが「どうした?」と尋ねる。此処はブルーの部屋で、怪我をするようなことは無い筈なのだが。
「…引っ掛かった…」
 左手を見詰めているブルー。ハーレイとティータイムを楽しんでいる最中なのに、何処に左手を引っ掛けたのか。ブルーの前にはテーブルと紅茶が入ったカップ、それに焼き菓子の皿しか無いというのに。
「………」
 よほど痛かったのか、血でも出たのか。左手を軽く握ったままのブルーに、ハーレイはもう一度尋ねてみた。
「どうしたんだ?」
「…ちょっとだけ…」
 そう答えたブルーは、まだ手を見ている。
「見せてみろ」
 小さな左手を引き寄せたハーレイは「これか」と僅かに血を滲ませた人差し指に気付いた。白い指先の爪の際にポツンと赤い血。雫とも呼べない、ほんの僅かな血の滲み。すぐ側に薄くめくれた皮が少しだけ。
「ささくれか…。こいつを引っ掛けちまったんだな?」
「うん…」
 元々、めくれかかっていたのを服にでも引っ掛けたのだろう。薄皮が引っ張られ、めくれて血が出た。そんな所だ。激痛とはとても呼べないけれども、引っ掛ければ痛いものではある。
「お前、お父さんかお母さんに逆らったか?」
「なんで?」
「ささくれは親不孝をすると出来るというんだ。…お前はあまりしそうにないが」
「逆らってないよ。…でも出来ちゃった」
 ブルーは左手を自分の前に戻すと、ささくれを右手の指で引っ張ろうとした。取り除こうとしているのだろうが、ハーレイの経験からしても上手くいくことは滅多にない。
「こら、引っ張ったら酷くなるぞ。爪切りは持っているんだろう?」
「んー…」
「不精していないで取ってこい。俺が切ってやるから」
 その言葉にブルーはパッと顔を輝かせ、「取って来る!」と部屋から駆け出して行った。階段を下りてゆく軽い足音。
(…そうか、この部屋には無かったのか…)
 爪切りを取りに階下へ行く時間すらも、ブルーは惜しかったのだろう。少しでも長くハーレイと一緒に過ごしていたくて。



 薬箱から取って来たのか、はたまた何処かの引き出しからか。爪切りを持ったブルーが間もなく戻って来た。自分でささくれを切ってくればいいのに、「はい」とハーレイに爪切りを差し出す。ついでに自分の左手も。
「…本気で取って来たんだな? お前、自分で出来ないのか?」
「出来るけど、ハーレイが切ってくれるって…。ダメ?」
 期待に満ちた眼差しと、小首を傾げたその愛らしさ。ハーレイは「参ったな」と呟いて爪切りを受け取り、ブルーの小さな左手を掴んだ。
 ささくれだけを切り取るために最大限の注意を払う。ブルーの肌を傷つけないよう、ささくれを引っ張ってしまわないよう。そうっと、そうっと爪切りを大きな手で扱って…。
「よし、これでいいな。…どうだ、まだ引っ掛かるか?」
「ううん、大丈夫」
 もう痛くない、と左手を撫でて自分の椅子に戻ったブルーだったが。
「…ふふっ、左手」
 嬉しそうに微笑むブルー。左手が何だと言うのだろう、とハーレイは爪切りをテーブルに置いて問い掛けた。
「左手がどうかしたのか、ブルー?」
「ハーレイに握って貰うの、いつも右の手ばかりだから…。左手が自己主張したのかな、って」
「…そうかもな。お前が喜ぶのは右手だからな」
 前の生で最期を迎えたブルーは右手が凍えて冷たいと泣いた。最後にハーレイの腕に触れた右の手に残った温もりを失くしてしまって、独りぼっちになったと泣きながら死んだ。
 その記憶が今も残っているから、右手を握ってやると喜ぶ。機嫌を損ねてしまった時でも、右の手を握って語りかけてやれば次第に笑顔が戻ってくる。
 再会してから今日までの間に、何度、右の手を握っただろう?
 けれど左手をしっかりと握った覚えは一度も無かった。右手は甘やかしてやっているのに、その陰に隠れて忘れられがちなブルーの左手。
 ブルーがささくれを作らなかったら、あんな風に優しく扱う機会は無かっただろう。ささやかな自己主張をしてきたブルーの左手。普段はかまってやらない左手…。



 ささくれが出来ていた辺りを撫でているブルーの小さな手。ソルジャー・ブルーだった頃よりも小さな手をした十四歳のブルー。前の生ではしなやかで長かった指が、今は細っこくて柔らかい。
(…ブルーの手も滑らかで柔らかかったが、子供の手と比べるとやはり違うな…)
 そんなことを思いながら見ていて、ふと気付いた。前の生と今の生との大きな違い。
「そういえば…」
 口を開くと、ブルーが「何?」と見上げてくる。ハーレイは穏やかな笑みを浮かべた。
「いや。…昔は俺だけの特権だった筈なのにな、と思ってな」
「何が?」
「お前の手だ。お前、いつも手袋をしていただろうが」
「あっ…!」
 自分でも忘れていたのだろう。ブルーがしげしげと自分の両手を見詰める。手のひらを眺めて、裏返してみて。手の甲をじっと見てから、また手のひらに視線を落とす。
「…ホントだ、手袋のことなんか忘れてた…」
「俺も今の今まで気付かなかったさ、していないのが普通になってたからな。…前は俺とドクターくらいしか見ていなかったのを惜しげもなく大盤振る舞いか」
「見られたって減らないと思うけど…」
「減りはしないが、俺の特権が一つ無くなった。そいつが実に残念だな」
 残念だ、とハーレイはブルーの手を取った。右手も、忘れられていると自己主張をした左手も。
「…こうして見てみると小さいだけで、他はあんまり変わっていないか…。お前の手だという気がするからな。指紋なんぞは気にしなかったし、手相を見ることも無かったが…。お前の手だな」
「そう?」
「ああ。他の奴の手を差し出されたって俺には分かる。お前じゃない、と」
「そうなんだ…。ぼく、自分でも分からないかも…。だって、殆ど見なかったから」
 前の生のブルーは常に手袋をはめていた。ソルジャーの衣装の重要なパーツの一つであったし、戦闘に赴くブルーの身体を保護するためのものだったから。
「…ハーレイ、手だけでも分かるんだ? ぼくの手だ、って」
「自信はあるな。なんだ、偽物の手でも出してくるのか? そういう童話もあったっけな」
「墨を塗った手でも、ぼくだと分かる? 泥だらけの手でも?」
「お前の手ならな」
 任せておけ、とハーレイは笑った。扉からそういう手が突っ込まれたなら、掴んで引っ張って、捕まえて。墨でも泥でも洗い落として悪戯者の正体を暴くまでだ、と。



「…そっか、手だけで分かっちゃうんだ…」
 しきりに感心しているブルー。前の生では手袋があまりにも普通だったから、そちらの記憶しか残っていない。自分の指紋がどんな風だったか、手のひらを走る三本の線がどうだったかも曖昧なもので、いざ目の前に突き出されたとしても自分の手だと即答出来るかどうか。
「ハーレイ、凄いね」
「そりゃあ、俺しか見なかったしな? 俺だけが見られる宝物だぞ、じっくり観察して当然だ。…もっとも、お前、明るい所は嫌がったからな…。そんなに長くは見られなかったな」
「ちょ、ハーレイ…っ!」
 ハーレイが何を言っているのかに気付いたブルーは真っ赤になったが、ハーレイはブルーの手を離さない。「子供のお前には何もしないさ」と捕えた両手を愛おしそうに眺める。
「…お前の手。前はもう一回りは大きかったな、そのくらいまで育たんとな? あの頃はゆっくり見られなかったし、今度はじっくり見させて貰う。そしてたっぷり味わうのさ」
 今でも美味しそうなんだがな、とハーレイは名残惜しそうにブルーの手を解放した。
「これ以上見ていたら食いたくなる。…此処までだな」
「味見していいよ?」
「そういう台詞は育ってから言え」
 ハーレイの軽い拳がコツンとブルーの頭を小突いた。
「食べ頃に育つまで食わないと俺は決めているんだ。育った方が断然、美味い」
「柔らかいよ? 多分、今の方が」
 手も柔らかい、とブルーは両手を差し出したけれど、ハーレイは鼻で笑っただけだった。
「まあ、子牛でも子羊でも柔らかいしな? しかしだ、ミルク臭いとも言う」
「ミルク臭い!?」
「味わい深くはないってことだ。柔らかいだけでは旨味が足りない。…ミルク臭いお前もいいかもしれんが、やはり育った方がいい」
「…ミルク臭いなんて、酷いよ、ハーレイ!」
 ブルーは頬を膨らませたが、「それで間違いないだろう?」と返された。
「お前、本当に毎日ミルクを飲んでいるしな? 背が伸びるようにと頑張ってるだろ、ミルク臭くなっていると思うぞ」
「……それ、子牛とかとは違うと思う…」
「似たようなモンだ。分かったらその手は仕舞っておけよ」
 俺が味見をしたくなる前に、と促されたブルーは両手を膝の上に置いてテーブルの陰に隠した。意地悪なハーレイに見せてたまるものか、と意地になったまではいいのだけれど。



(……どうしよう、これじゃ食べられないよ……)
 両手を隠してしまったブルーは直ぐに窮地に陥った。テーブルの上の紅茶と焼き菓子。どちらも手が片方でも空かない限りはブルーの口には入らない。サイオンで運ぶという手もあったが、今のブルーはサイオンに関しては不器用だった。紅茶は零してしまいそうだし、焼き菓子も落とす。
(…うー……)
 食べたいけれど、食べられない。そんなブルーの悩みを他所にハーレイは紅茶で喉を潤し、空になったカップにティーポットから熱いおかわりを注ぎ入れた。焼き菓子も美味しそうにモグモグと食べて、「美味いぞ?」とブルーに微笑みかける。
「どうした、今日は食べないのか? まだ半分以上残っているが」
「………手!」
「手?」
「ハーレイが手は仕舞っておけって!」
 自分が勝手に仕返しとばかりに仕舞ったくせに、ブルーはハーレイに怒りをぶつけた。
「ぼくの手、テーブルの下だから! 手が使えないから食べられないし!」
「……うんうん、なるほど。良く分かった」
 こういうことだな、とハーレイの手が伸ばされて。
「ほら、ブルー」
 ブルーの唇の前に焼き菓子を刺したフォークが突き出された。焼き菓子もフォークも、ブルーのもの。ハーレイが切って、突き刺して差し出しただけで、ブルーの焼き菓子とブルーのフォーク。
「…な、何なの、ハーレイ?」
「手が使えないから食えないんだろう? これなら食えるな?」
「…う、うん……」
 答えるために開けた口の中に焼き菓子が素早く押し込まれた。有無を言わさぬハーレイの動きにブルーは目を白黒とさせたけれども、噎せ返るような突っ込み方では無かったから。
(……く、悔しいけど……。悔しいけど、美味しい……)
 無言で噛んで飲み下したら、今度は紅茶のカップが出て来て。
「まだ熱いから気を付けろよ?」
「ハーレイ、これって…!」
「お前の両手を甘やかしてやることにした。…右手は元から甘えん坊だし、左手も今日は甘えたいようだしな? 食わせてやるからゆっくり食べろ」
 こんなチャンスは滅多に無いぞ、と覗き込んでくる鳶色の瞳があまりにも優しかったから。
 ブルーの八つ当たりじみた怒りと子供っぽい意地は何処かへ消えた。そして大人しく食べさせて貰う。前の生で倒れて寝込んだ時などに、ハーレイがそうしてくれていたように…。



 ハーレイに食べさせて貰った紅茶と焼き菓子。紅茶はおかわりも淹れて飲ませてくれた。まるで小さな子供にするように、あるいは前の生で倒れたブルーにしていたように。
 食べ終える頃にはブルーの胸一杯に幸せが溢れ、もっと、もっと、と強請りたいほどで。
「…ねえ、ハーレイ」
「なんだ?」
「もうすぐお昼御飯だけれど…。食べさせてくれる?」
 本当に強請ってみたら、ハーレイはブルーが両手を隠したテーブルにチラリと視線をやって。
「お前の両手がそう言ってるのか?」
「…うん。今日は一日、お休みだって」
「夕食までは知らんぞ、俺は。お父さんとお母さんの前では流石に出来ん」
「晩御飯の時には起きるらしいよ。だから、それまで。…ダメかな、ハーレイ?」
 左手はうんと重傷なんだよ、とブルーはささくれの痕を示してみせた。つまりは両手がテーブルの下から外に出てしまったわけで、ハーレイがプッとたまらず吹き出す。
「出て来たようだが? お前の両手」
「重傷だってば! 体育の見学みたいなものだよ、出て来ていたって休みなんだよ!」
「そう来たか…。分かった、今日の昼間は見学なんだな」
 特に左手が重傷なのか、とハーレイはテーブルの下から姿を現したブルーの手を見た。
「ささくれの所、まだ赤いな。…まだ痛むか?」
「少しだけ…。でも重傷だよ?」
「分かっているさ。少しとはいえ血も出てたしな。…前のお前は怪我をしていても黙っていたが」
「……そうだったね」
 ソルジャーだった頃のブルーは戦闘で傷を負うこともあった。小さな傷でも侮れないから、必ず治療は受けたけれども、ノルディには固く口止めしていた。ブルーが負傷したと知れたら、誰もが酷く心配するから。ほんの小さな掠り傷でも、それをブルーに負わせてしまったと気に病むから。
「そしてお前が黙ってた挙句、俺だけが気付く羽目になるんだ」
「…何度もそれで叱られたっけね…」
「当たり前だ! いつもお前は黙っているから、俺は本当に気が気じゃなかった。お前が戻る度に、怪我をしていないかとノルディに訊いて…。あいつも「ご無事です」としか答えないから、船の中が落ち着いて青の間に行くまで無傷かどうかも分からないんだぞ!」
「ぼくは大抵、無傷だったよ?」
 そう答えたけれど、無傷ではない日も何度もあった。だからハーレイは溜息をつく。
「…無傷のことが多かった分、たまに怪我をされると堪えたんだ。…守れなかった、と」



 前の生でブルーが戦いに出る時、シャングリラの指揮はハーレイが執った。ブルー以外に戦える者はおらず、戦闘班と言っても戦線に出るにはあまりに弱い。ゆえに戦闘の殆どをブルーが担い、戦闘班が補助することになる。彼らに指示を下す立場がハーレイだった。
 戦闘班の力が充分であれば、ブルーが負傷することはない。ブルーを守ろうとハーレイは懸命に指揮を執るのだが、力及ばず、守り切れなくて傷を負わせて。…それがハーレイには辛かった。
「俺はお前を守りたかった。…それなのに俺には力が無いんだ」
「そんなことないよ。ハーレイはいつも頑張ってくれた」
「どうだかな…。お前の手袋やマントの方が、俺より優秀だった気がする」
「…あれはそのために作ってあったよ。その代わり、いつも着てなきゃいけなかった…」
 手袋だってはめたままだよ、とブルーは呟く。
「いくら慣れてても、素手とはやっぱり違うもの…。ハーレイの前で外してた時は幸せだった」
 そのぼくの手を覚えててくれた、とブルーは微笑む。
「自分でも記憶があやふやなのに…。ハーレイは手だけでぼくが分かる、って。そんなにしっかり見てくれてたんだ、と思ったら嬉しくなった。…ハーレイはぼくより詳しいんだ、って」
「そりゃあ、俺だけの特権だしな? じっくり見なけりゃもったいないじゃないか」
 そしてその手をまた見られた、とハーレイはブルーの手を取った。
「俺の記憶よりも小さくなったが、お前の手だ。…しかも、ささくれが出来たりする」
「ささくれ?」
「あの手袋をしていた頃には無かっただろうが? ささくれなんかは」
「うん…。そんなのが出来る手袋だったら意味が無いしね」
 戦闘の時にブルーの身を守るために作られた特別な手袋。人の温もりは伝えるけれども、爆発や炎から来る攻撃的な熱は通さない。「身に着ける人を守りたい」というミュウたちの思いを集めて作り上げられたソルジャーの衣装。それを着けていれば、ささくれが出来る筈もない。
「…俺はささくれの出来る今の手が好きだな、同じお前の手には違いないが」
「………。ハーレイ、もしかして荒れた手が好き?」
 ブルーは赤い瞳を見開いた。ささくれが出来る手が好きだなんて、変わっていると思ったのに。
「いや、滑らかな手が好みだが? お前の手は別に荒れてもいないし」
「でも、ささくれが好きだって…」
「ささくれが好きというわけじゃない。ささくれが出来て痛がる手が好きなんだ」
「…えっ……?」
 ますますもって分からない。途惑うばかりのブルーの左手にハーレイが触れた。
「お前、痛いと叫んだだろう? そういうお前の手が好きなのさ」



 ハーレイは大きな両手でブルーの左手を包み込み、穏やかな声で語りかけた。
「…前のお前は、ちょっぴり皮が剥けたくらいで声を上げたりしなかった。こんな小さなささくれ程度で「痛い」と叫びはしなかった。…違うか?」
「そうだけど…」
「もっと酷い傷を負った時でも、お前は隠して微笑んでいた。俺の前でも「大丈夫だよ」と笑っていたっけな。…だがな、ささくれ程度で痛がるお前が本当なんだ。それが本当のお前の手だ」
 こんな小さな傷でも痛がるお前が本当なんだ、とハーレイはブルーの右の手も掴む。
「…それなのに、お前は戦っていた。この右の手が冷たくなるまで……あんなに酷い傷を負うまで戦い続けて、逝っちまった。本当はささくれ一つで痛いくせにな」
「あの頃のぼくはソルジャーだったよ。だから当然…」
「当然も何もあるもんか。痛いものは痛いし、それが普通の反応だ。今のお前は普通に「痛い」と叫ぶことが出来る。小さなささくれで痛いと叫べる。…そんな手をしたお前がいいな」
 これが本当のお前なんだ、とハーレイはブルーの両方の手を並べて優しく撫でた。
「今日はこの手は休業らしいが、これからもうんとサボッていいぞ? 前のお前の手は我慢強くて働き過ぎた。その分まで俺が甘やかしてやる。ささくれで重傷になるんだからな」
「…それでいいの?」
「ああ。俺はお前を甘やかしたいし、本当のお前が大好きだからな」
 うんと甘えて幸せに生きろ、とハーレイの手が前の生で凍えたブルーの右手と、ささくれの痕が残る左手を強く握った。



 ブルー、今度は痛い時は「痛い」と素直に言えるお前のままでいてくれ。
 俺が必ず守ってやるから。
 今度こそ、俺がお前を守ってやるから。
 ささくれが痛くて叫ぶお前を守ってやるから。
 分かるな、ブルー?
 お前は強くならなくていい。その分まで、俺が強くなるから……。




           甘やかされる手・了


※ささくれが出来た、と痛がるブルー。前のブルーよりも弱くて甘えん坊な手。
 今度はブルーが頑張らなくてもいい世界。守って貰える世界なのです。

※聖痕シリーズ、書き下ろしショート、増殖中。お気軽にどうぞv
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