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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

劇場支配人  第1話

マザー、劇場支配人の大任を拝命しました。庭師だったのに大抜擢で大感激です。シャングリラの劇場はとても立派で、スタッフの皆さんも腕利きばかり。今日は午前中に子供たちがクリスマスの降誕劇と歌の練習をしに来ました。これはクリスマスまで毎日続くようです。午後は有志による阿波踊りの勝手連が踊りの稽古に来ただけでした。これは恵まれた職場かも…。支配人は音響も照明もタッチしなくていいですし。

夕食も済み、夜は予約も入ってないし…と部屋に戻ろうとしたら、副支配人という肩書きの大先輩が来て言いました。
「キャプテンの名前でお忍びの貸切が入った。音響機器とシールドは用意したから、観客席に座るように」。
え。…こんな時間からいったい何が?でも先輩は有無を言わさず、私を引っ張っていきました。劇場内の照明は暗く、客席には誰もいないようです。舞台の上にも人の気配はありません。
「この辺りでいいだろう。いいか、命が惜しかったら拍手するのを忘れるなよ」
意味深な言葉を残して先輩は消えてしまいました。そしてシールドが劇場を包み、私は閉じ込められたのです。

危険、キケン、キケン…。頭の中で警報が鳴り響きますが、何をどうすればいいのでしょう?その時、パッと舞台が明るくなりました。派手な照明とミラーボールの光の中に立っていたのは…。
「かみお~ん!」
忘れたくても忘れられない、あのフレーズが響きました。後のことはよく覚えていません。…『そるじゃぁ・ぶるぅ、オンステージ!』とばかりに歌いまくられるカラオケのヒットメドレーだか十八番だか、とにかく音の洪水でした。キャプテン…「カラオケ禁止」じゃないのですか?…禁止なのは「キャプテンの執務室でカラオケ」だけなのですか!?

気がつくと私は支配人室に寝かされておりました。
「拍手するのを忘れただろう?…だから忠告しておいたのに…。観客はそれが仕事なんだよ」
副支配人の先輩が覗き込んでいます。
「キャプテンの名で貸切が入ったら、くじ引きで負けたヤツが観客になる。他の連中はシールドを張って裏方に徹し、見ざる聞かざるだ。…あんたを支配人の座につけたのは…見習いだから後腐れがないし、支配人が観客だったらヤツも張り合いがあって喜ぶし、ってことなんだけど」
なんてことでしょう。これではまるで人柱です!
「あ、バレちゃった?…じゃ、まぁ、そういうことで。次回は拍手を忘れないでね、怒るとサイオンぶつけてくるから」
しゅたっ、と片手を上げて先輩は逃げていきました。

マザー…この職場、栄転ではなかったようです。在任中に「キャプテンの貸切」が入らないことを祈ります…。




 

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