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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

中間試験・第1話

スウェナちゃんと私が見そびれてしまった親睦ダンスパーティーのワルツ。生徒会から録画が売り出されるのを待っているのに、なかなか発売されません。色々ありましたから、高い値がついても完売は必至。それだけに「待てば待つほど値が上がる」と生徒会長さんが呟いた…という噂もあります。ワルツ会場で何があったのか、早く知りたいんですけどね…。でもそれをジョミー君たちの前で嘆くと、必ず言われちゃうんです。
「ぼくたちが一生懸命踊ってる間、そるじゃぁ・ぶるぅの部屋でオヤツを食べていたくせに」
って。ウェディング・ドレスのカタログを見に行っていたなんて口が裂けても言えない私たちは、あの後、嘘をついたのでした。「そるじゃぁ・ぶるぅ」に誘われて断りきれずにお茶をしていた、と。あーあ、ワルツの全貌の録画、早く発売されないかなぁ…。

そうこうしている間に日は過ぎて。今日もグレイブ先生がムッツリした顔で教室に姿を現しました。
「諸君、おはよう。親睦ダンスパーティー以降、地に足がついていない者も多いようだが…学生の本分は勉強だ。その成果が試される時が来た。来週、中間試験がある。入学式の日に言ったことを覚えているか?私が受け持ちのクラスに望むことはひとつ。常に我がクラスが1位であることだ!」
うひゃあ、とかヒィッという悲鳴があちこちで上がっています。中間試験。そういえば…もうそんな時期になるんでしたっけ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」手作りの美味しいお菓子でのんびり、まったりしてばかりいて、勉強なんか授業と宿題の他は全くしていませんでした。やばい…。果てしなくヤバイかも…。
「いいか、我がクラスの平均点が学年1位でなかった場合は…足を引っ張った点数の持ち主は放課後、徹底的に補習とする。各科目の先生方には既にお願いしてあることだが、先生方の出番がないことを祈っているぞ」
補習!…とんでもないことになりました。補習なんてことになったら放課後の自由時間はないでしょう。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の手作りおやつや、生徒会長さんたちとの楽しいティータイムともお別れです。もしかしたら「そるじゃぁ・ぶるぅ」が『パーフェクトの印の赤い手形』を押しに来てくれるかもしれませんけど。そう、私には実力でいい点数を取れる自信が全く無かったのでした。

「かみお~ん♪…あれ、みゆ、どうしたの?元気がないね」
その日の放課後、私は一番に「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋に行きました。スウェナちゃんとジョミー君は掃除当番、キース君とマツカ君は柔道部があるからです。
「あのね…来週、中間試験があるんだって。グレイブ先生がうちのクラスを学年1位にするんだ、って張り切っていて…酷い点数を取った人は放課後に補習してもらう、って」
「補習?…補習になったら、みゆ、ぼくのお部屋にこられなくなる?」
「うーん…来られるかもしれないけれど、うんと遅くなりそう。キース君たちよりずっと遅い時間になるんじゃないかな」
「そっか。じゃあ、みゆのテストに手形を押しちゃう?満点だったら大丈夫だよね♪」
待っていました、「そるじゃぁ・ぶるぅ」!これでテスト勉強なんかしなくたって安心です。
「あ、みゆ、ずるーい!…私も手形を押して欲しいな」
「ぼくも!ぼくにも手形を希望!」
スウェナちゃんとジョミー君が飛び込んできて、手形の約束を取り付けました。次にやって来たサム君も「赤点防止に」と手形を頼み込み、OKの返事を貰っています。そこへ…。
「おやおや。みんな手形を頼んでるんだ?」
現れたのは生徒会長さんでした。そういえば今日は姿が見えませんでしたっけ。もしも生徒会長さんがいらっしゃったら、恥も外聞もなく手形を頼むなんてことは出来なかったかもしれません。
「それは…その…。自信ないですし…。ほっとくと補習になっちゃいますし」
「なるほど。確かにそうかもしれないね」
ああぁぁぁ。会長さんには私のオツムのレベルはきっとバレバレなんでしょう。
「しかし…グレイブ先生のクラスか…。キースはトップクラスの成績を取れそうだけど、マツカは中の上くらいかな。みゆとスウェナとジョミーが満点を取ったとしても、あのクラスが学年1位を取るのは難しいかも…」
考え込む生徒会長さん。でも、学年1位が取れなくたって!私たちさえ補習でなければ…。
「それは甘いな。グレイブ先生はプライドが高い上、キレ易いんだよ」
「「「え?」」」
ギョッとして顔を見合わせる私たち。会長さんは「そるじゃぁ・ぶるぅ」特製シフォンケーキのお皿を受け取りながら複雑な表情を見せました。
「今までに様々な前例がある。学年1位を取れなかったばかりにクラス全員で毎朝グランド十周だとか、早朝から登校して体育館で座禅を1時間とか、教職員用も含めて学校中のトイレを全員が素手で掃除するとか…」
「そ…それって、八つ当たりなんじゃ…」
ジョミー君が口をパクパクさせると会長さんは頷いて。
「そう。立派な八つ当たりだ。でも、それを指摘した生徒は更に可愛がられることになったんだよ」
「可愛がるって…」
スウェナちゃんがブルッと震えました。
「君が想像したとおりだ。グレイブ先生の愛車を昼休みにピカピカに磨かされたり、色々と…ね」

とんでもない事実を聞かされた私たちは呆然とするしかありませんでした。自分さえ酷い点数を取らなかったら安心だとばかり思っていたのに、クラスぐるみで連帯責任。しかも会長さんの読みでは、私たちのA組は1位を取れそうにないのです。いくら放課後のお楽しみを確保できても、グランド十周とかトイレ掃除とかは涙ものかも。
「さっき職員室に行って調べてきた感じでは、君たちのクラスは学年1位を取れないだろう。ぶるぅの手形とキースの天才的な頭脳があってもね。…だが、学年1位を取る方法がないこともない。ひとつは…」
「ぼくが手形を押しまくること!任せてくれれば頑張るよ?」
右手の拳を突き上げて「そるじゃぁ・ぶるぅ」がはしゃいでいます。赤い手形はパーフェクト。確かにこれなら無敵そうです。会長さんはクスッと笑って。
「無敵の方法はもう1つある。…ぼくがA組の生徒になって中間試験を受けるんだよ」
「「「ええぇぇぇっ!!?」」」
なんですって?会長さんは今、なんて!?…私たちはポカンと口を開けたまま、会長さんを見つめていたのでした…。




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