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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

救助班  第1話

マザー、救助班補佐から正式に救助班所属になりました。とはいえ、見習いですから「ミュウの救出」に役立つ「サイオンで警備システムを誤作動させる方法」の実習などをしています。次の部門に転属するまで、シャングリラが平和だといいのですが。

「貯蔵タンクで転落事故発生!…救助班、食糧貯蔵庫に急行せよ!」
緊急指令が飛び込んだのはカップ麺にお湯を注いだ時でした。3分間待っては…くれませんよね。私たちはダッシュで飛び出しました。貯蔵タンクに落ちたとなれば救助は一刻を争いますし。
「こっちだ、早く手を貸してくれ!」
叫び声が聞こえ、ぷぅん、と漂うお酒の香り。タンクに渡した足場の上で全身ずぶ濡れの作業員さんがロープを握って叫んでいました。梯子を伝って登ってみると、溺れかけている人が3人います。浮き輪を投げ込み、命綱をつけて飛び込んで…無事に救出完了しました。なぜサイオンを使わないかって?…サイオンに頼りすぎると肉体の機能が衰えますから。

作業員さん達は、お酒のタンクに落っこちたせいでしたたかに酔ってらっしゃいました。タンクの中身は梅酒のようです。
「いくら好物でも、タンクを開けた隙を狙うとはふてえ野郎だ」
「まったくだ。俺達が移し替えてやらなきゃ瓶には入らねえんだぜ?…湯飲みでちびちびやってるくせによ」
酔ってらっしゃるせいでしょうか、言葉遣いが乱暴ですね。救助のお礼もおっしゃいません。
「しかし執念のサイオンだよなぁ。飛ばされるとは思わなかった」
「あ、褒めて、褒めて!…俺、巻き添えをくわせてやった。マント掴んでやったんだ~。俺と一緒に仲良くダイブ!なんかガボガボ騒いでたけど、今はどこまで逃げたやら~♪」
えっ、マント?…ダイブさせたっていったい誰を!?
「誰の梅酒と聞かれたら~、「そるじゃぁ・ぶるぅ」御用達、ほれ、御用達っと♪」

なんですって!?…またしても「そるじゃぁ・ぶるぅ」ですか!…その時です。
「…おい、ガボガボと騒いでたのか!?…大変だ、ついてこい!」
リーダーが血相を変えてタンクに走り、私たちも急いで登ると…タンクの底に「そるじゃぁ・ぶるぅ」が沈んでいました。頼もしいリーダーはタンクに飛び込み、「そるじゃぁ・ぶるぅ」を抱えてきたのでロープを投げて即座に引き上げたのですが…。
「なんだ、これ?」
リーダーは「そるじゃぁ・ぶるぅ」と一緒に水球の中に入っていました。正確に言うと水ではなくて、球形に閉じた空間に梅酒が満ちているのです。直径3メートルくらいでしょうか?ゴボッ、とリーダーがそこから抜け出し、ゲホゲホと激しく咳き込みました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は梅酒玉の中で気持ちよさそうに眠っています。ネコ科だとばかり思ってましたが、実は両生類ですか?

「…呼吸は問題ないみたいですね。でも、この水球、破れませんよ?」
叩いても蹴っても、棒で殴っても梅酒玉は割れませんでした。そこへ登場したのは我らがキャプテン。
「報告が来ないから見てくるように、とブラウに言われた。…梅酒タンクで閃いたらしい。やはりぶるぅの仕業だったか」
「キャプテン、それはそうなんですけど。…どうしてもここから出せなくって…」
梅酒玉を指して口々に言うと、キャプテンは梅酒玉に腕を突っ込み、「そるじゃぁ・ぶるぅ」を揺さぶりました。
「起きろ!…起きてさっさとそこから出ないと、二度とカラオケをさせてやらんぞ!!」
パチン!!梅酒玉は見事に壊れ、私たちは大量の梅酒をかぶりました。マザー、こんな日はカラオケがいいですねぇ。「そるじゃぁ・ぶるぅ」とキャプテンも誘って歌いまくりたい気分です、ひっく…。




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