シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、通信士補佐になりました。シャングリラには小型艇が色々ありますが、出動することは滅多にないので業務はもっぱら人類側の通信傍受。補佐は皆さんの役に立つ地道な作業。人類側のテレビ番組を受信料も払わず受信してまして…それの選別作業です。各種のテレビ番組まではシャングリラ内では作れませんから。
最初の仕事は「子供向けチャンネル」の番組の選別でした。人類側の子供向け番組をそのまま流すと、感受性が鋭くおとなしいミュウには…特に子供にはよくありません。先輩に教わったマニュアルを元に削除をしたり差し替えたりして、それから船内に配信します。リアルタイム放送でなくても子供は別に気にしませんし。
「えっと…ここのオモチャのCMは削って、代わりに別のを入れるんですね」
「そうね、時間的には『もったいないオバケ』くらいでいいと思うわ」
こんな感じで作業してます。オモチャやイベントのCMは削除。教訓的なCMは残す。番組の方は暴力的なシーンの多いものなら削除するのが基本です。子供向け番組は好戦的なものが多くて、なかなか苦労するんですけど。
「…あっ、懐かしい!これ、『宇宙戦艦ヤマト』じゃないですか~」
オリジナルはSD体制以前だというアニメ番組がモニター画面に流れています。勇壮なテーマソングは製作当時そのままだとか。「荒廃した地球を救うために旅立つ宇宙船」のお話は、SD体制時代の今も子供たちに大人気。SD体制は地球再生プロジェクトですから、当然といえば当然ですね。
「…先輩、これは削除対象になりますか?…戦闘シーン多いですけど、感動的なお話ですよ」
「駄目よ、戦闘シーン多すぎ。前に流したらパニックを起こした子がいたの。救助される時に戦闘機に追われたのが心の傷になったみたいで…。削除、削除!」
う~ん、残念。もう一度、全話とおして見たかったのに…。心の中で呟いて削除します。次にモニターに現れたのは今日から放送開始のアニメ『ベルサイユのばら』、最新リメイク版でした。
「これは録画して後でチェックですね」
リメイク前の『ベルばら』は削除対象外なのですが、最新版は情報がありません。先が読めない続き物は「録画しながらチェックしていき、最終回まで問題なければ後日まとめて放送」という規定ですから、さっそく録画開始です。
「あ、それは録画できたら今日中にダビング。後でキャプテンのお部屋にお届けするの」
「は?」
先輩の指示を聞いた私は目が点だったと思います。キャプテン…『ベルばら』ご覧になるのですか!?
「違う、違うわ、キャプテンじゃなくて!…「そるじゃぁ・ぶるぅ」が見るんですって」
私の点目に、先輩の訂正が入りました。
「『ベルばら』のコミックが大好きだから見せてやりたいっておっしゃってたわ。退屈しやすいって評判だものね」
マザー、最新版『ベルサイユのばら』は先輩がダビングしてキャプテンにお届けしたようです。でも本当に「そるじゃぁ・ぶるぅ」は『ベルばら』大好きなんでしょうか?好きだったとしても、そのコミックの出処は?…実は見たいのはキャプテンでは、と気になって仕方ありません。夜中にこっそり『ベルばら』を御覧になるキャプテンのお姿を想像すると和みます。私の思考は危険ですか、マザー?
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